坊ちゃん一緒に遊びましょ!

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1:Pnmm :2020/12/29(火) 18:14

ボディーガードとして柚咲家のお坊ちゃん、柚咲一角(おきなし いっかく)様に仕えるはずだったお父さんが殉職しちゃった…
代わりにお坊ちゃんの警護をすることになったのは私、沖梨うずめ!
私がお父さんの意志を引き継ぎ、金持ち学園のいじめや権力争いから一角坊ちゃんをお守りします!たぶん!

6:Pnmm :2020/12/30(水) 15:36

教室の席についたところで、一角お坊ちゃんは無言で私に小銭を1枚投げた。

「えっえっえっ」

慌ててキャッチしてみると、手の中にあったのは平成元年の500円玉。
意図が分からずに坊ちゃんの方を見ると、冷たい目を向けられた。

「プラチナコーヒー、微糖」
「……買いに行け、と?」
「それ以外ないでしょ。ほんと頭悪いな」

周囲に聞こえないくらいボソッと微かな声だったけど、私は聞き逃さなかった。

プラチナコーヒーは週末頑張ったご褒美とかに食べるハーゲ〇ダッツ的なポジションじゃん?!
少なくとも月曜から飲む物じゃないよ!
金持ちの道楽にも程がある!

──って、そうじゃない。

「坊ちゃん、私はSP、ボディーガードなの! パシリじゃありませ〜ん!」
「てっきり僕は小間使いだと思ってたよ」
「こまっ……」

確か坊ちゃんは細々した買い物も外商さんに任せていると聞いたことがある。
きっと外の自販機で飲み物を買ったことも無いんだろうなぁ……。
いや別にジュースを買うくらいの雑用はしても構わないんだけど、SPとして坊ちゃんの傍を離れるのは避けたい。

「そっかー、坊ちゃん自販機の使い方分からないもんね……すぐに戻るから教室から出ないでね」
「──は?」

私が頭を抱えて呟いていると、坊ちゃんは怪訝そうな顔をして威圧感のある声を出した。

「勝手に決めつけないで欲しいな。自販機の使い方くらい分かる」

坊ちゃんは私の手から500円玉をひったくると、早足で教室を後にする。

「一角お坊ちゃんがはじめてのおつかい……!? みんな〜聞いて! 一角坊ちゃんがはじめてのおつかいするって! あっ、そうだ動画撮ってご両親に見せよ〜」
「おいバカ、騒ぐな!」
「あーあ、坊ちゃん言葉遣い崩れてるよー」
「……っ、さ、騒がないで下さいね……ッ!(こいつのせいで調子が狂う!)」

500円玉を握りしめる手に爪がくい込んでいる。
はじめてのおつかい緊張してるのかな。

坊ちゃんは震える手で自販機のボタンを押し、出てきたコーヒー缶を取ったらすぐにスタスタと背を向けて歩き出してしまう。

「坊ちゃん坊ちゃん、お釣り取り忘れてるよ〜」
「なっ……(あの小さい小窓からお釣りが出るのか! 取り忘れなんて、まともに自販機も使えないとアイツに思われたらどうする!? かといって大勢の人が見ている中、たかが小銭を取りに戻るのは恥をかく……!)」

坊ちゃんは足を止め、小刻みに震えながら俯いている。

「坊ちゃ〜ん?」
「お釣りは……チップとして君にあげるよ」
「えっ、ほんと!? しかもギザ十! うえ〜い!」
「(なんだコイツ……たかがギザ十で大喜びするとか……馬鹿な上に安い女だな)」

相変わらずお坊ちゃんは私に対して蔑むような視線を向けているけど、まぁ多分その内普通に接してくれるよね。

「さすが柚咲君!」
「使用人に対する気遣い!」

自販機で飲み物を買うだけで跪かれる坊ちゃんマジすげぇな!?
でも私は使用人じゃなくてSPね!!?

7:Pnmm :2021/01/02(土) 18:40


お坊ちゃん専属SPといっても、まぁ暇だ。

学校のセキュリティはしっかりしてるから、いきなり暴漢が襲いかかったり……なんてことは無い。
授業を半ば流し気味に受けつつ、常に360°警戒態勢で怪しい人物がいないか見張ってはいるけど。

窓の外に怪しい影!──と思ったらカラスだし……。

「なしさん……沖梨さん!」
「ゔぁっ、はい!?」

ぼーっと窓の外のカラスを眺めていたら、世界史教師の里岡(さとおか)先生に指し棒で額をグリグリえぐられていた。
美人だけど圧のある切れ目に睨めつけられ、思わず萎縮してしまう。

「……ある壁対して2.0N(ニュートン)の力で押したら……壁から返ってくる抗力は何N?」
「ひっ!」

口元は微笑を浮かべてるけど、眼鏡のレンズ越しの目は笑っていない。


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