双子観察日記

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1:ひまり:2015/05/05(火) 20:31

「あっ、双子ちゃんだ!」
自分たちを指摘する、周囲の声に二子そらは顔をしかめた。
そらは隣を歩いている、双子の妹のひなを見る。
ひなは、そんな周囲の声は聞いていなさそうだった。
「ねぇ、ひな……」
「ん?どうしたの、そら」
ひなが聞き返すと、そらは深いため息をつく。
「ひなはさ、こうやって周りから見られて恥ずかしくないの?」
そらが低い声で質問すると、ひなはあきれたような表情を見せた。
「んもー。そらは周りを気にし過ぎ!別に悪口を言われてるわけじゃないんだからさ」
妹にズバリと言われ、そらは少し落ち込む。
「ひなは良いよね。成績もいいし、友達だって多いんだからさ」
朝からぐちぐちしている姉を見て、ひなは痺れを切らしてそらの腕を引っ張った。
ひなはぐんぐん前に進む。
そらは痛いと思いながらも、その手を振り払うことはしなかった。
そらは、ひなが大好きだから。
いつも自信に満ちた顔も、優しくて小さい手も。
幼稚園の時から何も変わっていない。
小学校に着いたのか、ひなはそらの腕をはなした。
そうかと思うと、突然振り返りにかっと笑う。
「そらはさ、可愛いんだから、もっと自信持っていいんだって。私は良かったと思うよ。そらと双子に生まれて」
そう言うと、ひなは鼻歌を歌いながら内履きに履き替える。
「そら、早くいくよ?」
ひなはまだ昇降口に突っ立っているそらを見て、早くとせかした。
「う、うん」
そらは顔を赤くしながら慌てて靴を履きかえる。

2:ひまり:2015/05/05(火) 20:49

2年E組の教室に入ると、ひなは早速多くのクラスメイトに囲まれた。
「ひな、おはよう」
「ひなちゃん、今日の昼休み私と一緒に遊ばない?」
「おい、ひな。今日の放課後俺たちとサッカーしようぜ!」
「ひな〜!」
男子から女子まで、性別を問わずに話しかけている。
そらはそんなひなの姿を見て、そっとその場から立ち去った。
すると、背後から肩をつかまれる。
振り返ると、そこにいたのはクラスメイトの笹だった。
「あの、ひなちゃん……」
内容をはなしだそうとする笹を慌てて止めて、自分はひなじゃないことを伝えた。
「あ、吉森さん。私はひなじゃなくてそら。ひなはあっちだよ」
そらがひなのいる方向を指さすと、笹は恥ずかしそうにうつむいた。
「ごめんなさい……」
それだけ言うと、笹もひなに話しかけて行ってしまった。

3:ひまり:2015/05/06(水) 15:56

「あーあ……あんなことなら私がひなになれば良かったかな〜」
なんて、くだらないことを考えながらそらは席に着く。
―キーンコーンカーンコーン……
チャイムが鳴り、授業が始まった。
一時間目の授業は算数で、ひなはたくさん手を上げていた。
それに比べてそらは先生に言われたところをただ解いているだけ。
積極的なひなとは対照的だ。
放課後になり、そらはさっさと帰ろうとした。
しかし、途中でそらは誰かに呼び止められた。
見てみると、ひなだった。
「あれ、ひな。放課後はサッカーするんじゃなかったの?」
そらが訪ねると、ひなは首を縦に振った。
「うん。サッカーはするよ。だけど、私はそらを誘いに来たんだよ」

4:ひまり:2015/05/06(水) 16:00

これも、ひなの優しさ。
こうやって気遣いができるから、皆ひなの周りに集まってくるのだとそらは思ったのだけど。
「ううん。私は良いよ。絶対邪魔じゃん」
「えっ?でも……」
「いいって。でも、早く帰ってきなね」
じゃあ、とそらは走っていってしまった。
「そら……」
一人残されたひなは、ただ立ち尽くすしかなかった。


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