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ヴィクターside
___海の奥深くまで進んだ。
此処まで来るのに、49枚の紙を集めた。きっとこれらはレイシーの書類だ。飛び込む直前、俺は使えない魔法で瞬時にして書類の枚数を数えたのだが、数えたところ50枚だった。
「あと1枚か……」
そう言ったつもりだったが、深海ではただゴポゴポと口から泡を吹くだけだった。
_____数分後。俺は残りの1枚を見事に見つけ、全ての書類を見つけることが出来た。………だが。俺も所詮ただの人間。流石に息が保たない。
「くっ………………あぁ…」
最後に踏ん張り、ついに陸まで上がってこれた。そういえばこの書類。不思議なバリアが施されていて、海の中でも全く濡れなかった。
……ってそうじゃなくて!
レイシーはとても驚いた顔をしていた。俺はその顔を視界のド真ん中で捉えたのを最後に、意識を失った___。
「…………ッ…カハッ!」
目が覚めた。あれから3時間ほど経っているようだ。…だがなんだろうか。
この頭への柔らかさは…?砂浜とは少し違う。………一体なにが?
「………………」
「………へぁっ!?」
俺が頭を置いていたのは、
レイシーの膝だった。
「化け物でも見るような目で見るのやめてくれない?」
「えっ……あ、あぁ、ごめん…」
レイシーって幽霊じゃないか…。
心の中でそんなツッコミを入れたあと、謎の違和感が胸を締め付ける。
熱い、熱い、熱い。胸が熱い。
どうして、どうして、どうして…?
この胸の熱さは_______
砂浜の熱さなんかじゃない。
やがて俺は気付いた。
この想いは_________
『恋』なんていうものなんだ。
これからは多分夢の中だけが舞台になると思います…。
50:閖時雨◆YQ:2016/12/08(木) 22:18 この素直な気持ちに気付いてしまったら…。もうドギマギしてまともにレイシーの顔なんて見れないじゃないか。
「……………………ッ…」
息が詰まりそうになる。
「……?どうしたの、ヴィクター?」
レイシーが心配そうに首をかしげる。
なんとなく恥ずかしくなり、ぷいと横を向いた。
「お…俺もう行くな」
「えっ…?ち、ちょっと待ってヴィク………」
「……じゃあな…」
「待っ…」
レイシーがなにか言いたげなのを遮り、俺はフラフラと海辺へ散歩に出掛けた。
あれから数日経った今日。
レイシーはやはり怒っているのだろうか…。それだけが気がかりだ。
「…謝りに行くか……?」
何故かクエスチョンマークの付いた独り言を無視し、いつもレイシーの居る場所へと移動した。
「…ヴィクター………………?」
「……よ…」
俺は力なく挨拶した。緊張しているのだ。これからどうなるのかということが気になって。
こっぴどく叱られるのか、はたまた愛想をつかされて無視されるのか。
「…ッ………!」
俺は殴られても良いようにぎゅっと目を瞑った。
パァン!
「……………は……………………?」
俺の頬に激しい痛みが走った。
…と同時に激しい音も。
ふと見ると________
__レイシーが俺に抱き付いていた。
「馬鹿ッ……!ヴィクター……!私ッ…心配ッ………したのよ……!?…でも、良かった………」
涙ながらに叱られた。
__まるで『我が子』を叱るように。
そして、先程の痛みはレイシーによる平手打ちだったらしい。
「………う…」
とにかく落ち着け…。焦っても意味はない。と、とりあえず退かせば良いか…?
「……レ、レイシー…?苦し…」
「へっ…あぁ、ごめん……。つい…」
そう言ってレイシーはとりあえず俺から離れた。__暫く沈黙が続いて。
先に口を開いたのはレイシーだった。
「…でも、本当に心配したのよ!?今までッ……なにしてたの!?もうッ…本当に…」
レイシーは顔を覆って泣き始めた。
こ、これは…。謝って泣き止ませなければいけないパターンか!?
「な、泣くなよレイシー…。今まで……えぇと…ち、ちょっと散歩…しててな」
「………数日間も散歩なんて考えられないけれど」
うっ…痛いところを突いてくるな。
もう、告白してしまおうか。
「…じ、実は…俺、レイシーのこと……」
___『好きになってたんだ』___
「ッ……………………………」
なんて言えたら苦労しねぇよな…。
「…?」
レイシーは不思議そうに首をかしげている。
と、匿名なのは気にしないで下さい…。
55:匿名◆YQ:2016/12/17(土) 19:30 「いや…もう……ホント………」
どうにかして。どうにかして。誰か。
このとんでもなく気まずい状況を。
この如何にも「どうしたの、ハッ…も、もしかして貴方……う、うぅん、なんでもないの」とかなんとかいう少女漫画にありがちな展開になること、間違い無し!?もしかしてこの状況、大ピンチ____!?
「ヴィクター……」
「ッ!?は、はい………」
「さっきからさ…」
ふとレイシーの顔を見ると____。
___レイシーは泣いていた。
「え…?」
「もうッ…なんなのよ!さっきからヴィクター可笑しいじゃない!なにか私にバレたら不味いこととか、やましいことでもあるの!?それとも私が悪いの!?文句があるならッ……なにか私に文句があるなら、はっきり言ってよ!」
「え、いや…レイシー。……悪い」
「謝って済む話じゃないでしょ!?」
「………」
「はっきり言いなさいよ!!この馬鹿ヴィクター!!貴方らしくないじゃない!こっちが調子狂うのよ!…気持ち悪い」
「ッ_____!!」
レイシーはそれだけ言い残すと、去って行った___。
俺は自分で自分が涙目になっているのを理解した。うつむいて、必死に堪える。力を抜けばきっと…大粒の涙が溢れてしまうから。それだけは男として避けたかった。でも、_泣きたかった。
「うっ……」
ハッと気付けば、俺は既に白い砂浜に目から溢れ落ちる水滴をポツポツと残していた。
「……………謝らなきゃな。レイシーに」
俺はそう決めて、レイシーを捜し始めた。
「ハァ…ハァ………レイシー!」
レイシーを捜し始めてから凡そ30分。走り難い砂浜を駆け抜け、やっとの思いでレイシーを見付けた。
「…なによ、ヴィクター。どうせ私のこと嫌いなんでしょ。文句あるんでしょ?それなのにどうして近寄ってくるのよ。嫌いな相手と顔会わせてもつまらないじゃない」
「違う!」
「は…?」
「…ごめん。レイシー。俺、ずっと黙ってた」
「なによ。私に対しての文句?お気の済むまでぶつければ良いですよ、文句。私幽霊だし。不満があってもそこを直す気は更々無いですけどね」
「煩いんだよ!そうやってうじうじうじうじ…!俺がッ……俺がいつ!嫌いっつったよ!?」
「……!」
これが最後のチャンス。そんな訳ないのに、そんな気がした。もう二度と…俺のこの思いを、伝えられない様な。
「あのな、レイシー…」
「…?」
すぅぅと息を吸い込む。苦しくなる程に。限界まで吸い込んでから、吐き出す。世間で言う深呼吸だ。充分に息を整えてから、俺は俺の正直な思いをそのままレイシーにぶつけた。
「俺…レイシーのこと、好きなんだ」
ぎゅっと目を瞑る。レイシーの反応を窺うのが恐かったからだ。
そろそろと目を開けると…。
案の定レイシーは驚いていた。
………デ・ス・ヨ・ネ!!
「あ、あー…おーい、レイシーさーん?」
目の前でひらひらと手を振ってみる。
すると漸く気付いた様で、ビクンと肩を揺らした。
「…駄目よ、ヴィクター」
「…は?なにが」
「私達は…恋をしちゃ駄目なの」
「………………………」
一拍置いて。
「ハァァァァ!?」
折角思いを伝えたのにこの仕打ち!?
「な、なんでだよ!」
「だって私達……………」
「俺達………?」
そして俺は次のレイシーが発する言葉を待った。
「だって私達……………」
「俺達………?」
「……親子なんだもの」
「…ハァァァァァ!?」
本日2度目の「ハァァァ!?」である。
だが驚きは此方の方が断然上だ。
「……ねぇ、ヴィクター。貴方の親の名前…レイシー・アーグリッシュでしょ?」
「そうだけど…。って、なんで知ってんだよ!?」
「だから…私達は親子。そして貴方の母親、レイシー・アーグリッシュは…私なのよ」
「ハァァァァァァァァァァァァ!?」
本日3度目。
「でっ、でもっ…。母さんはもう死んで……」
「…私は幽霊よ。レイシー・アーグリッシュの生まれ変わり」
「………………あ…」
辻褄が合ってしまった。
というのはこの間、俺はこっそり見てしまったんだ。レイシーが隠していたあの書類を。その書類には…。
俺と、母親のデータがびっしりと書かれていた。特に俺のことが。
あれは…今の俺と会っても不自然がないように、今の俺に合わせようとしていたのかも知れない。
「レイ…いや、母さん…なのか…?」
「…そう。私はレイシー・アーグリッシュ。久しぶり………ね…ヴィク…タ………」
レ…じゃなくて、母さんはついに泣き出してしまった。息子に逢えたから…だろうか?
「うっ…………くっ…」
泣き出した母さんを見ていると、…どうやら貰い泣きのようだ。俺の目からも、涙が溢れていた。
「うっ…か…あ…母さぁぁぁぁん!!!」
「ヴィクター…………!」
俺と母さんは抱き合った。俺は母さんに逢いたかった。母さんが死んだ時から。俺は母さんが……母さんが、大好きだったから______。
「…逢えて嬉しいよ、母さん……!」
「えぇ…私もよ、ヴィクター……」
_____俺達は、こうなる運命だったのかも知れない。俺が母さんに逢えなくて。寂しくて。悲しかったから。
それに同情した神様が、母さんに逢わせてくれたのかも知れない___。
______恋する君も、母さんも、
同じ夢の中ではあるけれど、
永遠に、繋がっている____。
完
これにて、『恋する君は夢の中』、
終了となります。
長くなってしまいましたが、
これまで読んでくれていた皆様、
本当に、有難う御座いました!!!
エラーですかね、上がってる……。
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