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「ハァ…ハァ………レイシー!」
レイシーを捜し始めてから凡そ30分。走り難い砂浜を駆け抜け、やっとの思いでレイシーを見付けた。
「…なによ、ヴィクター。どうせ私のこと嫌いなんでしょ。文句あるんでしょ?それなのにどうして近寄ってくるのよ。嫌いな相手と顔会わせてもつまらないじゃない」
「違う!」
「は…?」
「…ごめん。レイシー。俺、ずっと黙ってた」
「なによ。私に対しての文句?お気の済むまでぶつければ良いですよ、文句。私幽霊だし。不満があってもそこを直す気は更々無いですけどね」
「煩いんだよ!そうやってうじうじうじうじ…!俺がッ……俺がいつ!嫌いっつったよ!?」
「……!」
これが最後のチャンス。そんな訳ないのに、そんな気がした。もう二度と…俺のこの思いを、伝えられない様な。
「あのな、レイシー…」
「…?」
すぅぅと息を吸い込む。苦しくなる程に。限界まで吸い込んでから、吐き出す。世間で言う深呼吸だ。充分に息を整えてから、俺は俺の正直な思いをそのままレイシーにぶつけた。
「俺…レイシーのこと、好きなんだ」
ぎゅっと目を瞑る。レイシーの反応を窺うのが恐かったからだ。
そろそろと目を開けると…。
案の定レイシーは驚いていた。
………デ・ス・ヨ・ネ!!
「あ、あー…おーい、レイシーさーん?」
目の前でひらひらと手を振ってみる。
すると漸く気付いた様で、ビクンと肩を揺らした。
「…駄目よ、ヴィクター」
「…は?なにが」
「私達は…恋をしちゃ駄目なの」
「………………………」
一拍置いて。
「ハァァァァ!?」
折角思いを伝えたのにこの仕打ち!?
「な、なんでだよ!」
「だって私達……………」
「俺達………?」
そして俺は次のレイシーが発する言葉を待った。
「だって私達……………」
「俺達………?」
「……親子なんだもの」
「…ハァァァァァ!?」
本日2度目の「ハァァァ!?」である。
だが驚きは此方の方が断然上だ。
「……ねぇ、ヴィクター。貴方の親の名前…レイシー・アーグリッシュでしょ?」
「そうだけど…。って、なんで知ってんだよ!?」
「だから…私達は親子。そして貴方の母親、レイシー・アーグリッシュは…私なのよ」
「ハァァァァァァァァァァァァ!?」
本日3度目。
「でっ、でもっ…。母さんはもう死んで……」
「…私は幽霊よ。レイシー・アーグリッシュの生まれ変わり」
「………………あ…」
辻褄が合ってしまった。
というのはこの間、俺はこっそり見てしまったんだ。レイシーが隠していたあの書類を。その書類には…。
俺と、母親のデータがびっしりと書かれていた。特に俺のことが。
あれは…今の俺と会っても不自然がないように、今の俺に合わせようとしていたのかも知れない。
「レイ…いや、母さん…なのか…?」
「…そう。私はレイシー・アーグリッシュ。久しぶり………ね…ヴィク…タ………」
レ…じゃなくて、母さんはついに泣き出してしまった。息子に逢えたから…だろうか?
「うっ…………くっ…」
泣き出した母さんを見ていると、…どうやら貰い泣きのようだ。俺の目からも、涙が溢れていた。
「うっ…か…あ…母さぁぁぁぁん!!!」
「ヴィクター…………!」
俺と母さんは抱き合った。俺は母さんに逢いたかった。母さんが死んだ時から。俺は母さんが……母さんが、大好きだったから______。
「…逢えて嬉しいよ、母さん……!」
「えぇ…私もよ、ヴィクター……」
_____俺達は、こうなる運命だったのかも知れない。俺が母さんに逢えなくて。寂しくて。悲しかったから。
それに同情した神様が、母さんに逢わせてくれたのかも知れない___。
______恋する君も、母さんも、
同じ夢の中ではあるけれど、
永遠に、繋がっている____。
完
これにて、『恋する君は夢の中』、
終了となります。
長くなってしまいましたが、
これまで読んでくれていた皆様、
本当に、有難う御座いました!!!
エラーですかね、上がってる……。
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