恋する君は夢の中

葉っぱ天国 > 短編小説 > スレ一覧キーワード▼下へ
1:たこやきとり:2016/11/25(金) 21:02

>>2】スレ主から
>>3】ルール
>>4】小説について

57:匿名◆YQ:2016/12/18(日) 19:23

「ハァ…ハァ………レイシー!」

レイシーを捜し始めてから凡そ30分。走り難い砂浜を駆け抜け、やっとの思いでレイシーを見付けた。

「…なによ、ヴィクター。どうせ私のこと嫌いなんでしょ。文句あるんでしょ?それなのにどうして近寄ってくるのよ。嫌いな相手と顔会わせてもつまらないじゃない」

「違う!」

「は…?」

「…ごめん。レイシー。俺、ずっと黙ってた」

「なによ。私に対しての文句?お気の済むまでぶつければ良いですよ、文句。私幽霊だし。不満があってもそこを直す気は更々無いですけどね」

「煩いんだよ!そうやってうじうじうじうじ…!俺がッ……俺がいつ!嫌いっつったよ!?」

「……!」

これが最後のチャンス。そんな訳ないのに、そんな気がした。もう二度と…俺のこの思いを、伝えられない様な。

「あのな、レイシー…」

「…?」

すぅぅと息を吸い込む。苦しくなる程に。限界まで吸い込んでから、吐き出す。世間で言う深呼吸だ。充分に息を整えてから、俺は俺の正直な思いをそのままレイシーにぶつけた。

「俺…レイシーのこと、好きなんだ」

58:匿名◆YQ:2016/12/18(日) 19:29

ぎゅっと目を瞑る。レイシーの反応を窺うのが恐かったからだ。
そろそろと目を開けると…。

案の定レイシーは驚いていた。

………デ・ス・ヨ・ネ!!

「あ、あー…おーい、レイシーさーん?」

目の前でひらひらと手を振ってみる。
すると漸く気付いた様で、ビクンと肩を揺らした。

「…駄目よ、ヴィクター」

「…は?なにが」

「私達は…恋をしちゃ駄目なの」

「………………………」

一拍置いて。

「ハァァァァ!?」

折角思いを伝えたのにこの仕打ち!?

「な、なんでだよ!」

「だって私達……………」

「俺達………?」

そして俺は次のレイシーが発する言葉を待った。

59:匿名◆YQ:2016/12/18(日) 20:13

「だって私達……………」

「俺達………?」


「……親子なんだもの」


「…ハァァァァァ!?」

本日2度目の「ハァァァ!?」である。
だが驚きは此方の方が断然上だ。

「……ねぇ、ヴィクター。貴方の親の名前…レイシー・アーグリッシュでしょ?」

「そうだけど…。って、なんで知ってんだよ!?」

「だから…私達は親子。そして貴方の母親、レイシー・アーグリッシュは…私なのよ」

「ハァァァァァァァァァァァァ!?」

本日3度目。

「でっ、でもっ…。母さんはもう死んで……」

「…私は幽霊よ。レイシー・アーグリッシュの生まれ変わり」

「………………あ…」

辻褄が合ってしまった。
というのはこの間、俺はこっそり見てしまったんだ。レイシーが隠していたあの書類を。その書類には…。

俺と、母親のデータがびっしりと書かれていた。特に俺のことが。
あれは…今の俺と会っても不自然がないように、今の俺に合わせようとしていたのかも知れない。

60:匿名◆YQ:2016/12/18(日) 20:45

「レイ…いや、母さん…なのか…?」

「…そう。私はレイシー・アーグリッシュ。久しぶり………ね…ヴィク…タ………」

レ…じゃなくて、母さんはついに泣き出してしまった。息子に逢えたから…だろうか?

「うっ…………くっ…」

泣き出した母さんを見ていると、…どうやら貰い泣きのようだ。俺の目からも、涙が溢れていた。

「うっ…か…あ…母さぁぁぁぁん!!!」

「ヴィクター…………!」

俺と母さんは抱き合った。俺は母さんに逢いたかった。母さんが死んだ時から。俺は母さんが……母さんが、大好きだったから______。

「…逢えて嬉しいよ、母さん……!」

「えぇ…私もよ、ヴィクター……」



_____俺達は、こうなる運命だったのかも知れない。俺が母さんに逢えなくて。寂しくて。悲しかったから。
それに同情した神様が、母さんに逢わせてくれたのかも知れない___。

______恋する君も、母さんも、
同じ夢の中ではあるけれど、
永遠に、繋がっている____。

                完

61:匿名◆YQ:2016/12/18(日) 20:46

これにて、『恋する君は夢の中』、
終了となります。
長くなってしまいましたが、
これまで読んでくれていた皆様、
本当に、有難う御座いました!!!

62:匿名◆YQ hoge:2017/01/04(水) 16:52

エラーですかね、上がってる……。


新着レス 全部 <<前 次100> 最新30 ▲上へ
名前 メモ
画像お絵かき長文/一行モード自動更新