缶けり 

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1: ◆OM:2017/08/26(土) 13:19





   日が暮れたら踊ろうか:>>2




6: ◆Ts:2017/09/22(金) 20:42



>>5 ありがとうございます〜。応援よろしくお願いします


7: ◆Ts:2017/09/22(金) 20:43

 目的地に赤いランプが光った。導かれるように近づけば、あちらも応答するようにサイレンを鳴らす。
真っ白な車体が闇に溶けてしまいそうな、そう、救急車だった。

何かあったのだろうかと気になって仕方がないが、周りの人々は一切気にすることなく傘をさして歩いていて、まるで自分だけ隔離されたような気分に陥った。
きっと、自分だけ傘を持っていないのもあったのだろう。

そう言おうにも、土砂降りの雨の中迎えを待つ間は退屈で仕方なかった。救急車から三人の隊員は降りて行った。野次馬はいない。その姿を目で追いながらちょっと変なことを考える。もしかしたら、傘を差さずに帰れるのではないか。

思い切って3秒ほど雨に当たったところで諦めがついた。周りから見たら馬鹿らしかったのだろう。
でも救急車すら気にしない彼らの目に、単なる子供の奇行が目に止まるはずもなかった。

人並みに逆らい続けるのは窮屈で仕方ない。自分から波に立ち向かう必要なんてないだろう。
道から外れ、近くの花屋へ寄った。だがどれもあまり変わりもしないように見え、むずむずとしてきた鼻に耐え切れずすぐに店を出た。

カフェの前で立ち止まり、近くの壁に背中を預けた。目の前の駅に電車が停まったようだった。そんな中、三人の隊員は忙しなく動き着々と仕事をこなす。ちょうど目に止まる位置での出来事だった。電車が発車すると身体に震えが走った。振動で小刻みに壁が揺れていたのだった。アトラクションにでも乗った気分でいると、すぐにそれは過ぎていった。


不安になり覗き込む。迎えはまた来ていないようだった。また同じことを繰り返すうち、隊員達は仕事を終わりに近づけていた。見慣れた顔が覗き込んだ。迎えが来たのだった。

持ってきてもらった傘を差しながら歩く。雨のせいで差す前の傘でさえ濡れていた。傘を差し土砂降りの雨の中を歩くと、ぽたぽたと傘の端から水滴が落ちてきた。
まるで、水の膜にでも包まれているかのように心地よかった。こんな中を傘を差さずに帰ろうなんて馬鹿馬鹿しい、と笑えてきた。

救急車は発車していた。また新しい電車が出た。ほんの短い時間の中で目を凝らすだけで、世界は着々と動いているのであった。



8:かてぃあ◆E2:2017/11/05(日) 09:44







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