小説設定集  新 ロミオとジュリエット

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38:雅 連弾恋愛:2018/03/23(金) 17:12

音葉が死んだ後、気が付いたら幽霊になっていた。
幽霊の体で空中散歩をし(地面や壁などはすり抜けてしまう)両親や友達を見つめる

「私、死んじゃったんだ。最後の最後まで、こんな私のまま。
 羽音くんと連弾したかったなぁ…私は羽音くんが、好きだったのかもしれない」

ピアノに触れたが、鍵盤をすり抜けてしまう。
大好きなピアノにも触れない、羽音くんにさよならもごめんねもありがとうも言えない。
ママとパパにも会えない。友達にも姿を見てもらえない。
死んだのに私は独りぼっちだ。

そんなとき、音楽室に羽音の姿を見つける。
羽音が自分を守れなかったことを悔やむのを聞いて涙が出そうになる。
だが、幽霊は泣けない。

羽音が連弾をしようとするのを見る。羽音は自分と連弾するイメージを持ち左側を開けてくれている。
左側のイスに座ろうとするが座れないため、立ってピアノに触れる。
だが、触れることができないまま連弾を続ける。

二人で奏でる、独りの連弾…

一人分の旋律が音楽室に寂しく流れる。パートナーを失った連弾はどこか音が濁ったように。
そのまま音葉と羽音は弾き続ける。お互いの姿が見えないまま、永遠の愛を囁くように、一度だけ弾く。
弾きながら、羽音は泣いていた。鍵盤にポタポタと涙の粒が落ちる。

その泣き顔を見ながら音葉は笑うが、自分の頬に伝う涙を堪えきれなかった。
幽霊は泣けないはずなのに、もう死んだはずなのに、どうして胸が苦しいのか。

最後の一音で、二人の指先が触れ合う。
同時に「あっ」と呟く。このミスはお互いの修正点であり、最大の課題だった。
お互い一つ前の音を鳴らすところを、もう何年も同じところを鳴らしてしまい、そのたびに指先が触れ合って
 いた。
もう感じることのない体温を思い出す。
このミスを直さなくて良かったと感じる。

弾き終えた羽音は涙を拭い、音楽室を出た。もう二度とピアノを弾かない様に、大きな音をたて扉を閉めた。
今後一切、彼がピアノに触れることは無かったという。
弾き終えた音葉はというと、その後は不明。

だが、ごくたまに羽音の耳には優しい旋律が聞こえるという。
その旋律は想いが深く込められており、まるで愛する人がすぐ傍にいてくれるような気持ちになるという。
それは決まって、彼女のことを思い出させる。そのたびにピアノに触れたい衝動がこみ上げるのだが、彼は
 その旋律が聞こえた日に必ず墓参りをするというのだ。

あの日以来、古びた音楽室のピアノには行っていない。

出来ることならば巡り会い、彼女と連弾をしたい、と羽音はいつでも思う。
遠くで甘ったるいような音葉の微笑みが見える。



そうして彼は、彼女の後を追ったかのように交通事故で死亡した。


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