えのぐ
ーーーー私を染めてーーーー
美術室から見えるこの景色。私が大好きな景色。
海、海、海そして、青空。自然豊かで賑やかで。明るくどこか寂しいこの景色。誰かが言っていた。世界は広いキャンパスだって。
全部が真っ青で、綺麗な世界。いつか、ここに大きな自分だけの絵をーーー
でも、でも!これじゃぁまだ足りない。私の好きな景色。好きなもの。好きなヒト。大好きな世界が、ここにある。
視線を下へ落とす。
蹴球で遊ぶ人達。その中からあのヒトを見つける。たった1人、金色で塗られたあのヒトを。筆を持つ私の手が止まる。
はぁ。
大きなため息をついて、手を動かす。
彼処に交ざりたい。交ざりたくない。混ざりたい。混ざりたくない。
今日は、今日こそは、話しかけてみようかな。女子もいるし、一緒にやってみようかな。
そんなことを考えているいると、チャイムが鳴った。早いよ。まだ、混ざれていないのに。まだ、絵が完成していないのに。
キャンパスと筆を片付けて、下駄箱へ向かう。
あの空と海は、私。この大きなキャンパスを、貴方の虹色で染めてくれる日を待っているーーー。
我ながら厨二病っぽいな。フフっと笑い、昇降口を出る。
また明日な。
誰かに肩を叩かれて、後ろを振り返る。
私の真っ白な心が、何かに変わった。