基本1レス完結の短編になります
恋愛要素はそんなに濃くありません
>>16
ええと、申し訳ありませんがこのスレで物語を書くのは私だけってことで……
文章自体はいいものなので、個人のスレを立てて書くことをオススメします
あっ。そうなんですか!
すみませんでした!
お邪魔しました〜!
コツコツコツ……。上履きの音が、廊下に響く。
ゆっくり歩いて、辿り着いたのは1年2組の教室前。小さく三回深呼吸をして、私はそーっと扉を開いた。
「―――浜口君、いる?」
「珍しい、な。北条さんがオレを呼びに来るなんて」
「そうね」
通学路。二人で肩を並べて、何度目か分からない、ぎこちない会話をする。
普段は彼からの誘いが殆どだったけれど、今日はそれが無くて。黙って一人で帰ればいいものを、何だか少しモヤモヤしてしまったから。
……実際は、日直の仕事で居残ってただけだったみたいだけどね。
「……今日は?」
「コーヒー」
いつも通り、自動販売機の前で立ち止まる。短い会話の後に、浜口君は二本コーヒーを買い、片方を私に差し出してきた。
「ありがと」
それを受け取って、私は缶のフタを開ける。そして、ちびちび飲み出すと、隣の彼の顔がやけに歪んでいることに気がつく。
「……飲めないなら飲めないって言えばいいのに」
「ブフォッ!」
私の発言は図星を突いていたらしく、浜口君はものすごい顔をしながらコーヒーを吹いた。
……彼はいつだってそう。初めて一緒に帰った時も、恥ずかしさからなのか何なのか、「一緒に帰ろう」の一言を誤魔化そうとしていた。
「別に、無理に大人ぶらなくてもいいよ」
私みたいにね。流石にその言葉は飲み込めた。
一度誤魔化すと、がっかりされるのを恐れてもう戻れなくなって。常に自分を隠し続けるから、疲れてしまう。それを、浜口君には経験して欲しくない。……ちょっと手遅れかもしれないけれど。
「素のあなたも、いいと思う」
そんなちょっとしたお節介が原因なのか、私は言うつもりのなかったことを、いつの間にか口走ってしまっていた。
自分でも恥ずかしいことを言った自覚がある。相手に気まずい思いをさせていないか、それが心配になって、私はちらりと横目で浜口君の顔色を伺う。
「……」
その時の彼は、本当になんとも言えない顔をしていて。驚いてるのか、怒ってるのか、何なのか、全く検討がつかなかった。
……表情を読み取ろうとするあまり、見すぎていたらしい。彼は私から恥ずかしそうな顔をして目を逸らし、「……ありがとう」と小声で言った。きっと、これはさっきの私の恥ずかしい発言に対する返事だろう。
「……」
そんな風にをされると、こっちまで恥ずかしくなってきてしまう。とりあえず、私は近くに公園を見つけたので、「一旦、あそこで休む?」と声をかけて強引に話を終わらせたのだった。
「……そういえばさ」
「……何?」
ベンチに座り、お互い、少しの時間放心していた所で、突然浜口君がそう切り出してきた。
「どうして、オレなんかを呼びに来てくれたんだ? その……先に帰ってくれて良かったのに」
遂に聞かれてしまった。言い訳を考えるのよりも先に、そんな事を思う。
……正直、私にも動機はよく分かっていない。ただ、いつもと違っていたからモヤモヤしただけ、なはず。だからきっと、
「当たり前に、なってたのかもね」
「当たり前に? ……あ」
浜口君は私の言葉に不思議そうに首を傾げていたが、やがてピンと来たみたいで、顔を少し赤くして俯いた。
そう、当たり前になっていたのは、「二人で一緒に帰ること」。お互いの都合もあるから流石に毎日まではなかったけど、結構な回数私達はこうして並んでいた。
「やめる?」
「それは……」
本当はやめたいなんて微塵も思っていないが、試しに尋ねてみると、浜口君は焦ったような表情をした。……ホント、分かりやすい。
「冗談。さ、そろそろ行くわよ」
「あ、ああ……」
早めにネタばらしをしてあげると、彼が心の底からホッとした表情をするものだから、吹き出してしまいそうになる。
こうして、私達はまた肩を並べて通学路を歩き出した。あと何度、これを繰り返すのかは分からない。けど――やっぱり、こういうのは悪くない。
うぉぉー!からかい上手の高木さんSSで、希少な浜北SSや!
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