夏の創作

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1:匿名:2019/07/29(月) 22:46

もうこれ以上匿名板に創作系スレ要らないよってなれば勝手に下がるだけの、気まぐれ創作スレ
だから目障りだったら書き込まず下げてくれ
基本的にリレー小説式だけどふざけ過ぎはやめてね
(世界観のイメージはファンタジー)

以下スタート

144:匿名:2019/09/02(月) 12:21

分厚く重たいドアを閉め、月明かりと街頭の灯りを頼りに歩き始めた。

145:匿名:2019/09/03(火) 00:41

方位磁針を頼りに、エカラットはぐんぐんと進んでいた。手のひらのたくさんの深い傷の応急処置は済んでいたがじわりと血が包帯に滲み出している。

146:匿名:2019/09/07(土) 11:32

「手、大丈夫?」
滲んだ赤黒いそれをじっと見つめながらヴァレンティノか尋ねた。
その言葉からは声音が分かりにくい。
「利き手ではないからな。特に問題はない」
高揚感からかエカラットはほとんど聞き流すようにそう返事をしたが、ヴァレンティノは彼女の手から視線を離さなかった。

147:匿名:2019/09/07(土) 11:52

「...僕が治してあげようか、カーラ」
地の底から這ってきたような冷たい声。
エカラットは背筋が凍るような感覚に我に返り、思わずぞっとしてその手を彼の目が届かない後方に隠した。
「だからいいと言っているだろう!プラエである私がこの程度の傷で根を上げるものか!」
「そっか。無理だけはしてはいけないよ」
彼女の剣幕などどこ吹く風で、ヴァレンティノはエカラットの顔に眼を戻してにっこりと微笑んだ。

148:匿名:2019/09/08(日) 00:11

暗闇でよく見えない。だが、月明かりとペルマナントがもつランプの光が微かに彼の顔を映し出す。
綺麗な瞳だ。暗いと余計に緑が深い。
「……あまり見るな」
エカラットは彼の奥に感じるただならぬ闇と怠惰と端麗さに身震いをする程だった。

149:匿名:2019/09/08(日) 00:41

しんとする雰囲気にはお構い無しに彼が笑った。
「ごめんって、そんなに怒らないで。どうしても無理そうだったら言ってくれればいいから」
今のエカラットには彼に頼る心などない。恐らくヴァレンティノはそれをわかった上でエカラットに笑いかけたのだ。急にペルマナントが、ランプを彼女の顔にガシャン!っと近づけた。突然のオレンジの光に瞳孔がギュッと縮むのがわかる。
「な、な、、?!」
エカラットが目を細める。

150:匿名:2019/09/08(日) 00:48

「あまりヴァーレ様の奥に触れないで下さいませ。彼は気が張っております。暴走なさらないよう、くれぐれもよろしくお願いしますね」
耳元で静かにペルマナントがいった。鼓膜がゆったりと揺れる。透き通るような声に、一瞬ぐらりとしてしまった。暴走、が、エカラット自身のことなのか、それとも彼のことなのか。分からないが、どちらにしろ恐怖を覚えた。

151:匿名:2019/09/08(日) 00:56

近づいたペルマナントの顔をじっと見つめたが、その感情ははかれない。ただ、ふふっと口角を上げたその顔が人並外れた美しさだということは確かだった。
ん?とヴァレンティノが首を傾げる。
「なんでもありません、さぁ進みましょう」
純白の髪の毛が揺れて、ペルマナントは先に進み始めた。ランプの光を失った周辺はすぐに闇に持っていかれる。
「ちょ、ちょっとまって、急に進むな!」
つい感情的になる。それさえもヴァレンティノは笑って流していた。

152:匿名:2019/09/11(水) 00:06

進むべきほうはもちろんエカラットの血が教える方である。たまに彼女が道を指し、それに従って3人で歩く。

153:匿名:2019/09/12(木) 18:37

体の弱いペルマナントが息を切らす。それに比べ、エカラットは表情ひとつ変えずにずんずんと進んでいた。「ペル。もしすごく辛いなら力を、」ヴァレンティノが言いかけると、だめですと彼女が返す。
「今無駄にお力を使わないでくださいませヴァーレ様。」

154:匿名:2019/09/15(日) 16:22

「でも」
「いいんです」
何かを言いかけたヴァレンティノを遮ってペルマナントは静かに首を横に振った。
「そのお力はとっておいて下さいませ...あの方のために」
その言葉が言外の何か深い意味を含有しているようにエカラットには聞こえた。
彼らよりも先にいて尚彼女の耳はしっかり二人の会話を捉えている。
エカラットは後方をそっと振り返った。
暗がりの中でも分かるほど疲弊し切ったその表情に対して、ペルマナントは不気味なほど落ち着いた佇まいをしている。
「...それなら今日はもうこの辺りで休もうか」
ヴァレンティノはそれでもまだ納得がいっていない様子だったが、引き下がることにしたらしい。
自分を見つめるペルマナントに休息を提案した。

155:匿名:2019/09/15(日) 23:34

「休むだと?まだ全然進んでいないぞ?神秘のかけらを追うのにそんな調子で、これからの道のりに一体どれほど時間を費やすつもりだ?」

急く気持ちを抑えきれない。
エカラットはヴァレンティノを非難するように一気にまくし立てた。
だがヴァレンティノの方も負けずに言い返してくる。

「ペルがもう限界なんだよ!この子にこれ以上無理をさせるのは本当に危険だ。カーラ、今日はもうここで野宿させてくれないか?」

156:匿名:2019/09/15(日) 23:44

エカラットはそれには返事をせず、心を鎮めようと大きく息を吐きながら夜空を見上げた。
半分に欠けた月が煌々と輝いてそこら中に白銀の光を落としている。
自身の紅の瞳に相反するその色に宥められたのか、エカラットは息を吸い込んでゆっくり口を開いた。
「分かった。お前達はもう休むと良い。私とて神聖な精霊を無理矢理歩かせるのは心が痛む」
それだけ言って後は振り返りもせずに歩き出す。

157:匿名:2019/09/15(日) 23:55

「待てカーラ!君はどうするつもりだ?」

後ろからヴァレンティノの声が追いかけてくる。
エカラットは面倒くさそうに立ち止まり、前方を向いたまま叫ぶようにそれに答えた。
「このまま真っ直ぐ進む。お前の風魔法でもなんでも使って、明日には私に追いついて来いよ」

158:匿名:2019/09/16(月) 00:15

再び歩き始めようとするが、ヴァレンティノの鬼気迫るような声がまたしてもエカラットを止めた。
「そんなの危険だ!夜はどんな異形のものが現れるか分からないんだぞ。戻れ、カーラ!」

「私に命令するな!どこまでお前は私を侮る気だ!よく聞け、私は誇り高きプラエフェクトゥスの...」

159:匿名:2019/09/16(月) 00:16

その瞬間だった。
鈍器で頭を思い切り殴られたような衝撃を受けエカラットは声もなく地面に崩れ落ちた。
冷たい土の感触に、一瞬何が起きたのか分からず目を見開く。

「カーラ!?カーラ、どうした!?」

意識は何とか保つことが出来たようだ。
ヴァレンティノの悲鳴がガンガンと頭を揺さぶる。
エカラットは起き上がろうと上体を起こそうとしてすぐ頭に激痛を感じ呻き声を上げた。

いや、頭だけではない。
体が燃えるように熱い。
エカラットはひゅうひゅうと口で呼吸し、地面に倒れたまま抱えた膝に頭を押し付けた。

160:匿名:2019/09/16(月) 00:30

『たとえ君がどんな危機に陥っても、生き延びることだけは諦めては駄目だよ』

霞んでいくエカラットの脳裏にいつか聞いた誰かの教えが蘇ってくる。

そんなの言われるまでもない。

心の中で声を一蹴してから再び彼女は呼吸を整えようとした。

突然ひんやりと冷たい何かが額に触れる。
エカラットはヒュッと息を飲み込んで目を上に向けた。

「うわっ、酷い熱だ...」
口呼吸に必死で全く気がつかなかったが、ヴァレンティノがすぐそばまで駆けつけていたようだ。
深刻そうな顔でエカラットの額に白い手のひらを当てている。

161:匿名:2019/09/16(月) 00:53

「...て...いい」
反射的に恐怖を感じて、彼女は呼吸の合間から口をパクパクさせて何事かをヴァレンティノに訴えた。

「何だい?どうしたの、カーラ」

エカラットは息も絶え絶えに声を絞り出した。
「...治さなくて...いい」

ヴァレンティノが驚いたように彼女の額から手を離す。それから悲しげに言った。
「カーラ、僕は見境なく他人から寿命を奪い取るような怪物ではないよ。どうかこれだけは覚えて僕を信じてほしい」

優しい声。
エカラットは恐る恐る視線を彼の目に移動させた。
緑色の瞳がエカラットを真っ直ぐに見つめている。
その輝きは月光よりも眩しい光を放っていた。

162:匿名:2019/09/17(火) 13:54

「きっと強いストレスだ」
ヴァレンティノがエカラットの身体を仰向けにさせた。夜空がエカラットの瞳に映った。どれほど歩いたんだろう、、。エカラットはその時初めて正気に戻ることになる。


ふわっとエカラットの体が重力から自由になった。ヴァレンティノが彼女を抱えあげたのだ。ひぃっと喉に息が詰まった様子だが、彼女は体のだるさから抵抗はしなかった。だるんと腕が揺れ落ちる。その強さとは裏腹に、華奢で、軽いその身体を、ヴァレンティノは大切そうに木の下におろした。
「休むといい、そもそも巻き込んだのは僕だ。ごめん」
彼は申し訳なさそうに彼女の足元に座る。その行為は、敬意を表したものであった。ペルマナントもすぐそばに腰をおろす。
「、、、、お前は自分のために動いたのではなかろう。仕方ないことだ。」
エカラットは静かに目を閉じた。

163:匿名:2019/09/17(火) 14:20

すぐにエカラットは眠りについたよだ。相当体に負担をかけていたに違いない。その様子を見て、ヴァレンティノは彼女の頸動脈に手をかけた。一度に体のすべての機能を回復させるために、大きな血管を選んだのだ。
ベルマナントも仕方ないと納得したように目をふせた。ヴァレンティノは精神を整え始め…だが、それは小さな手に拒まれた。エカラット自身が彼の腕を力なく掴んだのだ。
「...カーラ」
「治さなくて良いと言ったはずだ」
目を閉じ、先程と変わらぬ表情でエカラットは深く息をしている。
「すぐに力を使おうとするな。ペル、彼女だってさっき止めていただろ。なぜ止めない」
弱々しく、ただしっかりとした意思でいう。
掴んだままのヴァレンティノの腕を強く握った。
「たまには、自分のために使ったらどうだ」

彼女は、ヴァレンティノの行動の裏を既に分かっていた。自分よりも、人のため。自分は二の次。
口を開けないでいる彼を、ペルマナントは何も言えずに見ていることしかできなかった。ペルマナント、彼女自身もわかっていたのだ。彼はずっと人を助けることしかしてこなかった。使命だった。生きる術だった。それが、彼の人生だった。

164:匿名:2019/09/17(火) 17:46

ヴァレンティノの腕を掴んだままエカラットは再び眠りについたようだ。寝息も立てず、まるで生きていないかのように眠っている。ヴァレンティノは腕の温もりを感じながら、無性に泣きたくなった。
知らなかった、自分が好きでこんな生き方をしているのではなかったのだと。
全てを察知したペルマナントが、横になる。

「ヴァーレ様。私はヴァーレ様の生き方を愛しております。あなたの望んだ生き方でなかったとしても、そうやってこれまで生きてきたのですから」
素晴らしい人生です、と続けた。
ペルマナントの精一杯の言葉に、ヴァレンティノは笑みが零れた程だった。

165:匿名:2019/09/17(火) 17:48

ヴァレンティノは、腕の温もりの正体を起こさぬよう、静かに横になった。一日で色んなことがありすぎた。3人は深い眠りについた。

166:匿名:2019/09/17(火) 18:27

『お前も支配された生活になるさ、じきに』
『ヴァーレ、お前はこうなるんじゃない』
『あの子は自由にしてあげて!!』
『人のために生きなさい。あなたの生き甲斐よ』
『これからは、こうやって生きるんだぞ』
『ごめんね、』

なにかに意識が引っ張られるようにして目が覚めた。急に、バチッとこの世界に戻されたのではなく、静かに、重く、確実に戻された。
さっきまで眠りについていたとは思えないほど意識がハッキリしている。昔の微かな記憶の夢を見ていたようだ。

167:匿名:2019/09/17(火) 18:37

少し体を起こす。左どなりのエカラット、右どなりのペルマナント共に眠っている。どのくらい寝ていたのだろう。あたりは明るくなってきていた。
「夜明けか、、、」
ヴァレンティノは弱くなったエカラットの握る手をそっとずらし、川に近づいていった。夜は気が付かなかった。さらさらと綺麗な音色を奏でながら水が流れている。これこそ、人間の愛した水の芸術なのであろう。
手を入れてみる。きんと冷えたそれは彼の生命を震えたたせた。少しすくって自分の口に運ぶ。久しぶりに口に入れるものとしては充分すぎるくらいの代物だ。腰につけた筒を手に取り、水につけた。カプカプと筒も水を飲み込み、あっという間に満たんになった。みんなで飲むとしても一日はもつ。またその筒を腰にさげると、ふと気配に気づいた。

168:匿名:2019/09/17(火) 22:21

ペルマナントが目を覚ましていたようだ。彼のすぐ近くまできていた。
「、、おはよう、よく眠れた?」
彼が笑いかけると、彼女は首を縦には振らなかった。
「すごく、嫌な夢を見ていました。」
「奇遇だね、僕もだよ」
ペルマナントもしゃがみ込む。人差し指を水に入れ、つめたいっと無邪気に笑った。
「ここは綺麗な水が流れているよ。ずっと向こうから来ている。多分、村があるね、」
「そこに、、、、、」
言わずとも彼はわかるだろうとペルマナントがヴァレンティノの瞳を覗き込む。可愛らしい仕草に動揺もすることもなく、彼はうん、と答えた。
「きっと、お師匠様が」

169:匿名:2019/09/20(金) 10:14






燦々と太陽が照りつける朝。夜の寒さが嘘のようだ。
「あっつい...倒れそうだ」
弱音を吐かないエカラットでさえもそう呟いた。
ペルマナントも純白の長い髪をしばり、白い頬を赤らめている。
この世界は、四季が区別できないのだ。真夏のようで、真冬でもあり、春のようで、秋なのでもある。だからこのような異常気象になるのだ。

170:匿名:2019/09/21(土) 18:28

エカラットの高熱はまだ下がっていなかったが、猛暑に文句をつける程度の気力は回復したようだ。
ヴァレンティノ達が汲んできた川の水を一飲みしてすぐに立ち上がろうとする。
しかし流石に身体を動かすのは難儀であるらしく、力がうまく入らないのか膝から崩れ落ちてしまう。

171:匿名:2019/09/26(木) 10:16

ヴァレンティノがすぐさま支えにはいるが、エカラットは大丈夫だ、と拒否を示す。

172:匿名:2020/01/23(木) 22:51

「それより私たちは、というよりもお前の師匠は一体どこに向かっているんだ?『こちら側』の世界の西には何がある?」

発熱に加えてうだるような暑さに頭がぼうっとするのを感じながらも彼女は声を張り上げた。

エカラットはあの湖の向こう側の世界の住人であるから、彼女が持っている、ヴァレンティノ達が住む世界についての知識量は極めて乏しい。
神秘のかけらを守護するという使命を負っているプラエフェクトス族はそもそも、滅多に自民族の領域外から出たりしないものなのだ。

一刻も早く神秘のかけらを取り戻すために、エカラットとしてはこちら側の世界のことを少しでも知りたいのであった。
それにほとんど何も勝手の分からない場所で行動を続けるのも不安である。

173:匿名:2020/08/27(木) 13:37

ヴァレンティノとペルマナントが、少し困ったように顔を見合わせた。
こちらに伝えるべきかどうか迷っているらしい。

良いから早く教えろ、と声を荒げそうになるのを我慢し、エカラットは2人が口を開くのをじっと待った。

「西っていうだけだと、まだ確信できないけど」

先に答えたのはヴァレンティノである。

「今目指している方向の西の果てにはね、僕たちが、いや、お師匠様が昔住んでいたヒーラーの廃村があるんだ」


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