春人side
気づいたら、俺の周りにはいつも人が集まっていて、どんなときでも俺は中心にいた。
家族とも、友達関係だって、不自由なくて。
勉強も、何だって簡単にこなしてきた。だけど、俺には手に入らないものがあったんだ。
それは…、
「自由」 簡単に手に入りそうで、本当は難しいものなんだ。
俺の家は、世界的にも有名な会社。簡単にいえば、お金持ちの家、という事。
皆には、羨ましがられる。何でも欲しいものは大抵手に入るから。でも、俺はそんな自分の家柄が嫌で嫌で、仕方ない。
将来は、決められている。
生涯共に過ごすパートナーですら、敷かれたレールを歩くだけ。
そんな人生に嫌気がさしていたある日、俺は初めて生徒会長として、集会に出る事となった。
壇上に上がれば、いつものように皆の視線が集まる。
あぁ、皆、俺の内面は見ようともしないくせに…。そんな考えが頭を巡る俺は、ひねくれてしまった。
マニュアル通りの笑顔で、挨拶をして、集会は終わる。自分も教室に戻ろう
とした時、ふいに聞こえた声。
「生徒会長、顔色悪そうじゃなかった…?笑顔が、辛そうにも見えたんだけど…、あっ、緊張かな?」
あとから聞いて分かったこと。
あの声の彼女は、白坂知奈という。
あとから思ったこと。
俺は彼女を、好きになってしまったようだ。
春人side 終
すみません、訂正です。
白坂知奈→白坂知菜 です。