毎日に飽き飽きしていた

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
4:◆s6:2017/08/26(土) 17:30



「…暑い、」

そんな言葉が似合うような陽射しを浴びながら、塾の帰り道をノロノロと歩いて行く。
揺ら揺らと揺れる陽炎を見ていると、クラクラして今にも倒れてしまいそうだ。
昨日迄の大雨が信じられない位にカラッとよく晴れていた。所々にある大きな水溜が、昨日迄の大雨の唯一の証拠だった。
水溜は青い空を、点々と浮かぶ雲を、眩しい太陽の光を、まるで鏡のように映し出していた。

勉強ばかりの毎日に飽き飽きしていた私には、水溜が映し出す空がとても美しく見えた。水溜の中の世界はさぞかし素敵なものなのだろうとも思えた。

何を血迷ったか、暑さで如何にかなってしまったのだろうか、私は足元にあった水溜に意味も無く足を入れた。

先週買ったばかりのパンプスが、じわりじわりと汚れた水で濡れて行く。こんな事しなきゃよかった、と後悔した瞬間に、

「…え、」

私は水溜に沈んでいった。あんなに浅かった水溜が突然に海のように深くなり、足を取られたのだった。自然のままに身を任せた。水の中の筈なのに不思議と息は苦しくなかった。


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ