リバースアイドル! 〜崖っぷちアイドルの逆転劇〜

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
4:関西ドリーマー◆o6:2021/01/31(日) 12:14

麺を口に運ぶ割りばしが動きを止め、響き渡る静寂の中で目の前の社長はただただ目を伏せる。
あたしはその空気に耐えきれず、しどろもどろになりながらも言葉を紡いだ。

「えっと…お、終わりって…?」
「す、水曜日のライブを最後に…」
「水曜日って来週の?」
「いや、今週の」
「それって明日じゃんか!!」

ダンッ!カップ麺と割りばしを机に置き、その横で手を思いきり叩きつける。
机と同時に社長の肩もビクリと揺れた。

「あたしこれでも頑張ってきたんだよ!?」
「そ、そそそれは分かってるよ」

「大体ねぇ社長、あんた地下アイドルの曲をインディーズのヘビメタバンドに任してるからおかしいのよ!
なによ『GOLD BALL』って! あんなん売れるわけないじゃん!!」
「うわあああ!」

がしっ、机に足をついて社長の胸ぐらを掴む。

「あたしを見てよ! アイドルなのに火曜日の昼間から上下スウェットでラーメンすすってんのよ!?
あたしより若い他の子達が爽やかな汗流して踊ってる時になんなのよこのザマは!!」
「ご、ごめん本当にごめん…でも作詞家と作曲家を雇うお金がなくて…」
「だからってヘビメタバンドはないでしょーよ!!」

一通り言い終えたあと、あたしは肩で息をしながら少しの間固まっていた。
受け止めきれない現実の整理をするためだ。
あたしももう20歳。アイドルとしての賞味期限は短い。
その上、倒産間近の事務所。つまり、この状況は…

詰み。ただそれだけ。
あたしという名の駒が真っ暗な盤上に取り残されている。
その時初めて人生の危機感を感じた。


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ