零番線特急

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
4:麗奈:2021/04/06(火) 20:35

いつも一緒にいた少年の事を好きになったのがいつかなんて覚えてないけれど、慶太も少なからず私に好意を抱いてくれていると思っていたのに。
ホームに降り立つと、いつもの癖で向かい側のホームを見てしまう。
そこには、制服姿の慶太が居て、恥ずかしそうに手を振っていた。
私は頷くだけだが、莉菜は律儀に振り返す。
ちょうどその時、慶太の姿をかき消すように電車がホームに入って来た。

私は2人の間に特別な空気が生まれるのを見たく無くて、黙って電車に乗り込んだ。
発車ベルに変わって、地元の作曲家が作ったらしい童謡が流れてくる。
それを合図に私達は向かいのホームにいる慶太に軽く手を振って「また明日」と別れるのだ。
今日もまた、私たちは窓際に立って慶太を見ていた、これがいつものパターン。
だが今日はちょっと違っていた。慶太は片手を上げたまま、ぽかりと口を開けている。
何かあったのだろうか。慶太は、私たちでは無く宙を見つめたまま微動だにしない。
電車が動き出し、遠ざかる彼の姿は可愛らしい様な、間抜けな様な感じで。
明日何があったのか聞いてみようと思った。


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ