白い服の少女

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3:新菜:2015/01/11(日) 20:19

「じゃあ、早くいこっ!皆待ってるよ!」
「あ。ううん。悪いけど、紗那。私はもうちょっとしてから行くよ」
「そう?早く来てね」
「うん」
私は紗那に手を振って、再び携帯電話を開いた。
私、木下 雫は高校1年生になりました。
でも、私は入学式には出ない。
私は―あの日、妹と交わした約束を守り続けているから。
―キーンコーンカーンコーン……
その時、不意にチャイムが鳴った。
私が後ろを振り返ってみると、そこに、小さな女の子が1人で立っている。
赤い服に、赤い靴。
あれは……―美紀?
私がそう思うまでもなく、その、私の妹らしき少女は、こちらに向かってゆっくりと歩き始めたのだ。
そして、近づくに連れて思い出してきた。
美紀は……死んだ。
そうだよ。
何でこんなことすぐに思い出せなかったの……
美紀は、もう10年も前に死んだじゃん!
青い顔をして、後ずさりする私を、美紀の大きな目が見詰めている。
「み、美紀……」
「お姉ちゃん……助けてほしいの……」
美紀は、制服のスカートを、小さな手でぎゅっとつかみながら言った。
「な、何よ……」
「お姉ちゃん……ごめんね。一回死んでね?」
美紀は、私のスカートから手を放し、その、小さくて白い手を、私の首めがけて伸ばしてきたのだ。
「やっ、やめ……」
死人を前にして、私が抵抗できるはずもなく……
首から、ボキッという、骨が砕ける音が響いて……
痛みも何も感じずに、私は死んだ。


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