【短編】宇佐見蓮子は叫ばない 「闘技場」

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3:フロウリバー:2023/08/10(木) 22:15 ID:Pd2

 「イタリアに滞在したのは7日間だったんだが、イタリアはとても美しい景観でね、3分もその美しい景観に気を取られてしまったよ。で、滞在三日目にローマへ行ったんだ。サンタンジェロ城にも行ったんだが、サンタンジェロ城へ行く道中にあるサンタンジェロ橋も美しいんだ。まさに芸術の街だよ。余談だが、サンタンジェロ城の名前の由来だが、時の教皇グレゴリウス1世が城の頂上で剣を鞘に収める大天使ミカエルを見て、ペスト流行の終焉を意味するとしたことに由来しているそうだ。・・・話を戻そうか。ポポロ広場にある建物もなかなか良くてね、イタリアの建物は芸術的なんだ。そして、ローマへ行くときに絶対に行こうとチェックしておいた場所、ローマのコロッセオへ行ったんだ。コロッセオはローマの街を象徴する円形の闘技場なんだが、私はそこで奇妙なものを見たんだ。」
「奇妙なもの?」
メリーが尋ねる。その問いに蓮子は口を開いて答える。
 「えぇ、奇妙なものよ。私はコロッセオの内部に立ち入って通路を歩いていた。その通路では、なにか変な物音がした。鉄の尖った部分を引きずりながら歩く、そんな感じの物音がね。しかし時間は無尽蔵にあるわけではない。だから私は物音については深く考えず、そのまま通路を通ってハイポジウムという地下施設に入ったんだ。丁度夕方だったかな。そのハイポジウムへ入った時、なにか闘志のようなものを感じた。その闘志に気圧されて少しだけ後退りをしてしまったんだ。その闘志の正体を探るため、私は注意深く部屋の中を観察した。すると驚くことに、熊などの屈強な体格の動物や、剣や斧を持った人間たちが奥の方にいたんだ。なぜこんなところに?と思ったんだが、コロッセオは闘技場、そしてハイポジウムは闘技に出場する戦士たちの待機場だったことを思い出した。多分闘技に出場するために控えている亡霊たちだったのかもしれない。そう考えながら私はハイポジウムに背を向け、そこから立ち去っていったんだ。そして最後にコロッセオの闘技場のところに行った。その闘技場の上の通路の方から私は実際に戦士たちが戦ったであろう格闘場を眺めていた。すると、なんということだろうか。どこからともなく複数の闘士たちが格闘場にあがってきたんだ。そして格闘場に上がってきた彼らはそれぞれの武器を持つと戦いを始めた。血なまぐさい凄惨な殺し合いを始めやがったんだ。私は恐る恐るその光景を眺めていた。しばらくして、一人の男が他の闘士たちを倒し、一人壇上で立っていた。彼の顔は返り血を浴びており、獲物には真っ赤な鮮血がべっとりと付着していた。するとその男は私が上から見ていることに気がついたんだ。


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