「聞いて、No.1780。あの子ね、あなたの妹なのよ!」
嬉しそうに話す彼女の気分を害す気にはなれなかったし、しようとも思わなかった。彼女の長年の夢が叶った。それでいいじゃないか。諦めよう。
限りあるものには永遠を求める。それが生き物なのだと知ったのはいったい、いつのことだったか。
No.1780は窓に映った自身の輪郭をなぞった。
不死身計画。
不死への第一歩として始動した計画は徐々に形を変えていき、それがやがて人造人間の開発を行うようになったらしい。とはいえ、所詮ロボットはロボット。人間に近づきはしてもそれに変わりはないからか、なかなか手こずっていると当時聞いた覚えがある。
今はどうだろう。
複数体分のやけに整った顔を見つめながらNo.1780は考えた。
No.1780が生産された後も次々とロボットはつくられていった。
表情がない、思考が人間的ではない、感情がない。
ロボットとしては当たり前のそれらを備えて生まれてきた個体達は皆失敗作と数えられる。
かくいうNo.1780も失敗作なのだろう。面と向かって言われたこともなければ、自分自身思ったこともないが。
そして、このまま人造人間の生産ロボットが5桁を超えるかと思われた二週間前。
終わりの見えなかった開発でそれは製造された。
自然に動く顔パーツ、利己的でなく、ロボットにしては若干とぼけた思考、あるよう見える感情。
全てをもった傑作が生まれたのだ。
そこからの話ははやかった。
これからは、その個体をもととすることとなり、失敗作であるNo.1780達は廃棄処分を余儀なくされた。地下を通る列車に詰め込まれ、死への道をまっすぐ進んでいく。目的地につけば跡形もなく潰される未来が待っている。
ふと、詰め込まれる前に聞いた話を思い出した。
傑作の話だ。
研究員はそれはそれは嬉しそうにNo.1780に話したのだ。
彼女はNo.1780の妹であると、No.1780と同じ基盤をもとにつくられたのだと。No.1780の手を大事そうに握って。
No.1780には全く関係のない話を___
「あなたが私だったらよかったのに」
ぼそり、No.1780は内臓されていた音声データを流す。
素直に実験の成功を祝えないのだってやはり、No.1780が失敗作だからなのだ。
面白かったです
いい意味で予想を裏切られました
ありがとう