ようこそ、美しい死の花園へ【自創作】

葉っぱ天国 > 匿名 > スレ一覧
130:匿名 :2019/07/09(火) 21:25

ザザザッ……ザー
古ぼけたようなテレビからは砂嵐の音が聞こえる。白く綺麗な手はテレビに触れる。その途端、テレビは現代の番組を写し出す。それは、最近起きている不可解な事件についてのニュースだった。『不可解な誘拐事件多発。犯人未だ捕まらず』などとテロップが出ている。ニュースキャスターはその事件の内容を淡々と語っていく。手がテレビに触れる。するとニュース画面から、会話している様子に変わっていく。
「ねぇ、最近誘拐事件が多いけどさぁ。これって、神様が要らない人を引き抜いているんじゃない?」
「えぇ、神様が?……まぁ、でもそうかもねぇ、確かに誘拐されてる人は…ねぇ……」
その人は唇の端をつり上げ、テレビに触れた。ザザザッ……ザザッ砂嵐の音が館一杯に響いた。


ニュース番組がカップ麺のゴミやらが散乱した部屋に染み込んでいく。空は曇っていて、今にも悪いことが起こりそうだった。ニュースは世間を騒がせている誘拐事件のことを放送していた。その誘拐事件は、いわゆる『ニート』だとか、そういう人達が多く連れ去られている、と報じられていた。しかし俺は違う。自宅警備員という立派な仕事をしているのだから、誘拐はされないだろう。そう思い、ベッドに入って目を閉じた。

目が覚めるとそこには、洋風の館に花畑が広がっていた。ポカンと口と目を開く。俺が戸惑っていると館から一人の女性が現れ、ゆっくりと近づいてきた。
「ようこそ、いらっしゃいました。ここは花の館という場所です。最高の時間を提供いたします。私の名前は、テラ・マーテル。お見知りおきを…」
さっきの女性、テラ・マーテルに丁寧に挨拶をされた。それから彼女は、
「どうぞ、中へお入りください。お菓子やお茶もございますので。」と言った。
「わかりました。」
俺はそう返事をした。こんな綺麗な場所で、綺麗な人に会えるだなんてきっと二度と見られない夢だ。ここは相手の誘いに乗ろう。そう思ったのだ。
「ただ……約束がございます…。」
フッと薄い笑みを浮かべる彼女。
「ここには、世界中の花が咲き誇っております…。その花達を、傷つけることだけは、お止めくださいね。」
なぁに、簡単なことじゃないか。そう思い頷く。
「では、どうぞ…」
館へと続く飛び石を踏みながら、ずいぶんといい夢だな、と感じていた。


匿名 :2019/07/09(火) 21:45 [返信]

キィ……
木製の扉が小さく音をたてて開いた。
「ようこそ、花の館へ」
そこには、数人の人が居た。お下げの人や、今にもマジックを披露しそうな人、風俗店にいそうな人や、不思議な形のスカートを履いた人、帽子に傘を持った人…不思議な組み合わせだ。俺にはメイドカフェやら美少女カフェやらを巡る趣味はないのだが。
「どうぞ、こちらへ〜」
人懐っこそうな少女…。どちらかと言えば幼女に近いだろうか。その子が俺を部屋の中央にある、テーブルに案内した。そこにはお菓子やらお茶やらが並べられていた。いくつか席があるところから見るに、茶会でも開く為の机なのだろう。俺はそのうちのひとつに座る。テラ・マーテルも、椅子に座り、側にいた幾人かも席に座った。
「何か言いたそうな顔ですね…。私で良ければ聞きますから、どうぞお話ください」
ニコリとテラ・マーテルは笑う。その笑顔は、心を開ける鍵みたいに、俺の心を開けた。お菓子をつまみ、お茶を飲みながら、今までのことについて、話していた。会って間もない他人だ。なのに心落ち着くのはなぜだろう。俺は、ふぅ…と一息ついた。
「話を聞いてくれて、ありがとう。そういえば、お代は…?」
こんな素敵なところで、素敵な体験ができたのだから、お代は弾むのだろうか。そんなことを考えながら、テラ・マーテルの口元を見つめる。
「お代ですか、そうですねぇ…あなた達がお金と呼ぶものは、こちらではただの紙切れですし…」
こちらでは?その言葉にちょっとした違和感を覚えた。ここは異界なのか?
「ですから…お代は、あなたです……」
今までと変わらぬ笑みでそう言い放ったテラ・マーテルを、驚いた目で見る間もなく、視界はどんどん暗くなっていった。
「おやすみなさいませ…花の館で、これからも良い夢を…」
そんな声が聞こえた気がした。


雨が降っていた。この世界の天気は全てテラが操っている。花に水やりをする時間なのだろう。
外にいるテラに、カルミアは声をかける。
「こんなことをしても、いいんでしょうか…?」
「あら、カルミア…。こうしなければ、生きられない。そうでしょう?」
「それは…」
「人間と同じですよ。生きるために他の生物を殺、す。そして生きる」
「それに、人間界であまり必要とされてない人達つれてきてるんだし、いいんじゃないですか…?」
後ろから別の声がする。そこにはスイレンが立っていた。
「まぁ、そうですね」
カルミアは頷く。
「さぁ、戻りましょう。次のお客を接待する準備をしなくては…」
そうテラが言い、三人は花の館へ入っていく。
その後ろには、雨に濡れたスニーカーが転がっていた。



以上!終わり!!
文才なくて申し訳ない
>>130で、誤字った。「ニュース番組が」じゃなくて、「ニュースキャスターの声が」でした。


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ