それはあまりにも唐突に起こった出来事だった。
誰しもが普段と同じ日常を過ごし、明日も同様の日々を送るものであると思い、眠りについた……
だが、目を覚ましたのはごく一部の者だけだった。
里も、山も、森も……
人妖も、動物も、植物さえもが眠りについたまま目覚めることがなく、幻想郷全体を深く冥い静寂が支配していた……
これは明確な"異変"だ。
"それ"は深き夢の世界から現れる悪夢の支配者。
微睡みの中に漂う無垢な精神を貪り、安息を求める者達に恐怖を与えるおぞましき幻魔の軍勢『エファ・アルティス』
現世を救うために悪夢を支配する幻魔との戦いが幕を開ける……
>>2 時系列と注意
>>3 異変側の勢力
【時系列と注意】
物語の舞台となる幻想郷は春雪異変が終わり、妖夢々のエクストラクリア後から数日後の時系列となっています!オリジナル要素が強めになると思いますので、東方projectについて知らない方でも参加しやすくなっていると思います!
また、「始幻想」と「夜想譚」と地続きの世界線となっています。
※キャラ崩壊あり
※死亡や再起不能になる可能性あり
※シリアス多め
※主は心情ロルがかなり苦手
※ロルは2行以上お願いします
※オリキャラは紫や霊夢以上になるとパワーバランスや世界観、敵対者の強さの調整が困難になるため禁止
以上が苦手な方や無理だと言う方はそっ閉じして下さると幸いです。
【エファ・アルティス】
幻魔の女王
「イライザ・インサーニア」
が束ねる幻魔(悪夢の化身)によって構成された一大勢力であり、人々の悪夢の数だけ存在する上に、一部の上位幻魔(幻魔の中でも強い力を持った者)は実体を持って現世に現れ、現世にも直接干渉する事が出来る。
幻想郷全域にかけた『超広域永続昏睡幻術』によってあらゆる存在が昏睡し、自力では目覚めることが出来なくなった世界の中で悪夢の世界へ乗り込む方法を探し、イライザを倒すことが目的となります。
【こんばんは!霊夢さんで参加希望です!】
5:◆3.:2021/03/29(月) 21:27勿論OKです!!
6:悪夢の始まり◆3.:2021/03/29(月) 22:28 【幻想郷全域】
春雪異変が解決し、紫と藍の二人との戦いも、異変解決後の宴も終わり、冥界と現世の境界も修復され、全ての騒動が収まり夜が訪れた……
だが、その日の夜は異様なまでの静寂に包まれていた。
思えば、この時から既に"奴ら"は動き始めていたのだろう。
夜が明けた後の幻想郷は何処までも沈黙に支配されており、人や妖だけでなく、鳥や虫すらもその深き眠りについており、誰も話さず、誰の声も聞こえてこない……まるで世界そのものが死滅したかのような不吉さを孕んだ沈黙が続いている……
そんな沈黙と静寂が支配する世界の中、偶然か、それとも必然なのか……ごく一部の者だけが目を覚ます……
・・・・・不気味なくらい静かね・・・・・まぁ、騒がしくなくて助かるっちゃあ助かるけど・・・・・
(恐ろしすぎるくらいに静寂が広がる夜・・・・・
夜が静かなのは寝る分にはいいのだが、博麗の巫女としての本能か、それとも人間という種族に元から備わっている本能か、なんて言えばいいのかはわからないものの、何か胸騒ぎがしていた・・・・・)
【早朝の博麗神社】
???
「おはようございます、霊夢さん。」
夜が明け、本来ならば鳥の囀りや虫のさざめき、妖怪や妖精の喧騒が聞こえてくるはずであるにも関わらず、何の声も聞こえて来ない……それはまるで幻想郷そのものが死滅してしまったかのように……
いや、命の気配ならば普段通りなのだが、まるで活動することを辞めたかのように不気味な静寂が続いている。
そんな異様な状態の中で、更に見たこともない、1m程の大きさの桃色のシャボン玉が浮遊し、霊夢の前に現れ、霊夢に向けて穏やかな声の女性の声で念話を行い語りかける。
博麗の勘ではこの水球がこの異変の元凶の一派ではないと言うことを告げているものの、完全に無関係ではないとも伝える。
・・・・・アンタ、何者・・・・・?
(純粋なシャボン玉ではないのは明白ではあるが、妖怪とも妖精とも違うような感じの、なんとも珍妙なその桃色のシャボン玉に対して、霊夢は何者なのかと問いかける・・・・・
得体の知れない)存在に対して、警戒しながら・・・・・)
???
「私ですか?私は……この"異変"について知る者です。」
シャボン玉では表情も素性もわからない。
念話ではその本心や考えを読み取れない。
だが、辺りの不気味なまでの沈黙の理由について知っていると言うのは本当だろう。
だが、まだ神社から出ていない霊夢は今、幻想郷がどうなっているのかが把握出来ていないと思われるため、その言葉も全て懐疑的なものになっている。
異変かどうか見定めるのは私よ、アンタみたいなぽっと出の得体の知れないシャボン玉が決めることじゃないわ・・・・・
(相手は・・・・・というか、シャボン玉は今の状況を異変と言ってはいるものの、やはり得体の知れないシャボン玉の言うことはそんなにすぐには信用出来ないからなのか、異変かどうか見定めるのは自分の役目であると言葉を返す・・・・・
今幻想郷に異変が起きているのなら、どこかに異変の黒幕がいるはずだが、不自然な程に静かなのはただ単に夜だからなのではとも思えてくる・・・・・
ただ、それにしても静かすぎではあるのだが・・・・・)
???
「そうですか……まあ、いきなりこんな事を言われて戸惑わない者はいませんからね、暫くは消えていましょう。」
《パチンッ》
謎の声は霊夢の言葉に対して軽口を返す訳でもない、否定や反論をする事もなく、拍子抜けする程あっさりと引き下がり、風船が割れるような炸裂音ではなく、気泡が弾けるような小さな音をたてて水球が消え、同時に念話も終了し、辺りには再び静寂が戻る。
魔理沙
「…………………。」
普段ならば元気よく箒またがってやって来る魔理沙が何を思ったのか神社の石段をゆっくりと歩いて登って来ている。気配や遠目に見た姿は別に普段の彼女と何の変わりも無いが、先程の声の主が話していた"異変"と言う単語が言い知れぬ不安感を伴う。
な、何だったの・・・・・今は・・・・・夢・・・・・ではないわよね・・・・・?
(幻想郷という、妖怪や妖精、魔女や不老不死までもがいるこの地においても、なんとも現実味がないというか、今のは現実ではなく夢だったのてはないだろうかと錯覚し始める・・・・・
そして、普段とは違って石段を歩いて登ってくる魔理沙に気づけば「・・・・・あら、魔理沙・・・・・どうしたの?こんな時間に・・・・・」と、さっきのこともあってか、少々警戒しながら聞いてみる・・・・・)
魔理沙
「……………」
【恋符「マスタースパーク」】
魔理沙は霊夢の問いかけに対して言葉を返すこと無く、黙り込んだまま右手に八卦炉を召喚し、そのまま何の躊躇もなく霊夢に向けて彼女の代名詞とも言える金色に輝く巨大な光線…マスタースパークを解き放ち、あまりにも突然かつ殺意に満ちた襲撃を仕掛ける……
普段から弾幕ごっこをしている事はあったものの、今回はごっこ遊びなどではなく、本気で霊夢を消し去ろうとした一撃をいきなり繰り出しており、位置的に霊夢が避けてしまうと神社が破壊されてしまうようになっている。
なっ・・・・・!?
ドゴゴゴゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢はいきなりのことに理解が追いつかないままだが、なんとか防御しようと弾幕を放って魔理沙のマスタースパークを相殺してなんとか食い止める・・・・・
そして「ちょっと!いきなり何すんのよ魔理沙!」と怒鳴り散らす・・・・・)
魔理沙
「……………。」
魔理沙は一切の言葉を口にせず、そのまま追撃としてスペルカードを手に持つ。まるで意識が存在せず、肉体だけが何者かに操られているかのように……
このまま神社の境内で戦いを続けていれば、神社が破壊されるどころか、結界の要となっている神社の周辺にある木々が薙ぎ倒され、焼き払われてしまうだろう。
これじゃあキリがないっ・・・・・!魔理沙!やるんならもっと神社から離れて思いっきりやりましょうよ・・・・・!
(そう言うと霊夢は、人気のない場所へと移動する為に飛び始める・・・・・
今の魔理沙なら、自分についてきて簡単に誘導できると思ったからなのか、森の方へと、それも、森の中でも特に戦うに十分な場所へと飛ぶ・・・・・)
《ゴオッ》
魔理沙との戦闘による神社への被害を避けるために森に向かって飛ぶ霊夢に向けて全長5mもある巨大な氷柱が放たれる……
ちょっ・・・!?移動すらままならないっていうの・・・・・!?
(幸い、避けてそのまま氷柱が地面に落ちても平気なように人気のない場所の上空までこの時点で既に移動していた為、霊夢は間一髪のところで氷柱を避ける・・・・・
にしてもまさか、移動すらままならないほどに追撃をしたけてくるとは思わなかったのか、霊夢は驚きを隠せないでいる・・・・・)
チルノ
「……………………。」
魔理沙からの突然の襲撃に加えて氷柱が迫って来ている事に驚いている霊夢の前に氷柱を放った張本人であるチルノが現れる、チルノの表情は完全な無であり、死んでいるにしては肌色が良く、眠っているにしてはあまりにも生気の感じられない昏睡した状態である事がわかる。
昏睡状態であるにも関わらず、霊夢の前に現れたチルノは両手を広げて自分の周囲に無数の氷の塊を形成し始め、その氷塊から無数の小さな氷弾を霊夢に向けて放ち、空中で撃ち落とそうとする。
くっ・・・・・!
バッ・・・・・!
(避けるぐらいならまだ簡単に出来る・・・・・
だが、魔理沙同様にチルノまで、しかも続け様に襲ってきた・・・・・
この様子だと、恐らくほかの住人達も同じように何者かに操られている状態であるということが容易く想像出来る・・・・・
そう考えると、これはまだ序章に過ぎないとも思える・・・・・)
《ゴオォォォォォォォォ…》
対話による意志疎通は不可能。
前方からはチルノが放つ吹雪のごとき氷弾の暴風が霊夢を呑み込もうとする……まだ魔理沙の姿は見えないものの、前から迫り来る氷の弾幕にも明確な殺意が感じられる。
まったくもう・・・・・!どうなってんのよ・・・・・!!!!!
ゴッ・・・・・!
(霊夢は負けじと弾幕で抵抗しながら、同時に回避もこなしていく・・・・・
しかし、魔理沙に続いてチルノまで殺意全開で襲ってきているのを見ると、操っているであろう黒幕は近くにいるのか、それとも遠隔操作のような感じで操っているのか、霊夢は辺りを見渡しながら怪しい人物の影はないかどうかを伺い始める・・・・・)
【恋符「マスタースパーク」】
《ゴオォォォォォォォォ》
少し意識を周りに向けると周囲に……いや、幻想郷全域を何か得たいの知れない"何か"が包み込んでいるようなものが感じられる。
眼前から迫るチルノの弾幕を避け、或いは相殺している中、後方から巨大な金色の光線が迫り、目の前のチルノに気を取られているであろう霊夢に対して不意打ちをするようにして破壊エネルギーの奔流に呑み込もうとする。
少しは大人しくしなさいよっ!!!!!
(操られているからか、親しい間柄でも容赦なく攻撃してくる・・・・・
だが、もっと言えば、攻撃している側の本当の意思ではないということ・・・・・
攻撃を回避しながら、少しずつ距離を縮めながら魔理沙に近づいてゆく・・・・・
これで少しでも隙を突ければ・・・・・)
チルノ
「………………。」
【凍符「パーフェクトフリーズ」】
眼前から迫る氷弾、後方からの金色に輝く光線の二つを掻い潜り、チルノに向けてではなく、この場において火力が最も高い魔理沙に向かう霊夢に対して背中を向けられた事で攻撃チャンスと判断したのか、チルノは両手に冷気を集束させて冷凍光線を放ち、霊夢の体を凍り付かせようとする。
そうやすやすと凍るわけないでしょーがっ!!!!!
(博麗の巫女として、常人よりも警戒しながらの戦闘は得意だ・・・・・
チルノや魔理沙の攻撃は当たれば脅威だが、避けてしまえばそうでもない・・・・・
チルノの攻撃の時は魔理沙に、魔理沙の攻撃の時はチルノに警戒心を強めながら、それでもギリギリの紙一重で攻撃を避けてゆく・・・・・)
【苛烈なる挟撃】
前方には魔理沙の放つ星型光弾やレーザーによる弾幕、後方からは当たれば体が凍り付く氷弾の弾幕と言うように種類の異なる多彩な弾幕による挟撃が霊夢を襲う。
だが、挟撃としての弾幕の性質上、チルノと魔理沙は互いの放つ弾幕を避ける必要が出て来ており、霊夢への攻撃を仕掛けると同時に弾幕を避けることも行っている。もし、上手く二人の弾幕を利用して同士討ちさせるような形に出来れば……
《とりあえず、この状況を打破しなければ何も進まないわね・・・・・》
(そう思うと、霊夢は魔理沙とチルノの攻撃を逆に利用しようと考え始める・・・・・
どうにかして同士討ちさせることで隙を突ければ、この異変の解決にも近づく・・・・・
霊夢は早速、ただ自分を攻撃しようとしてくる二人の攻撃を、上手いこと誘導しようと飛行し始める・・・・・)
魔理沙&チルノ
「………………。」
魔理沙とチルノは意識を失っているため目を閉じているものの、霊夢の動きに合わせて顔を動かし、霊夢を真っ直ぐに追尾しながら弾幕を放ち続ける。
少しでも気を緩めれば魔理沙の放つレーザーによって体を撃ち抜かれるか、チルノの放つ氷弾によって凍り付かされてしまうと言う危機的状態となってしまっている。些細な判断ミスは死へと直結する……
生と死が紙一重となる異変……幻想郷の守護者は常に試練に見舞われている。
《笑えない状況ね・・・・・》
(この攻撃を相殺させるにしても、一歩間違えれば取り返しのつかないことになる・・・・・
チルノはまだ妖精だから魔理沙の攻撃や自分の攻撃に巻き込まれたとしても、まだ平気だろう・・・・・
問題は魔理沙、攻撃を相殺させようとして魔理沙が攻撃に巻き込まれてしまったら、魔理沙自身の攻撃もそうだが、チルノの攻撃は特に命を落とすことにも繋がりかねない・・・・・)
チルノ
「………………。」
【氷符「アイシクルフォール」】
魔理沙
「………………。」
【魔符「スターダストレヴァリエ」】
操られている二人の事を思い反撃や攻撃の誘導について悩む霊夢とは対照的に自分自身の意識を奪われ、その力を利用されている二人は躊躇い無く追撃を行う。
チルノは両手を振り上げて霊夢の頭上に無数の氷柱を形成して雨のように降らせ、魔理沙は両手を交差させて少し力を溜めた後に勢いよく両手を広げて巨大な星形の弾幕を広範囲に解き放ち、頭上からと正面からの二方向からの猛攻を繰り出す。
もし、チルノの放つ冷気系統の技を上手く魔理沙に当てることが出来れば魔理沙を一時的に凍らせて動きを封じることが出来るかもしれない。
・・・・・こうなったら・・・・・イチかバチか・・・・・!
(霊夢は、このままでは本当にやられてしまうと感じたのか、こうなったら一時的に魔理沙をチルノの攻撃を利用して凍らせて動きを止めてチルノとの一対一に持ち込むしかないと判断して、魔理沙の攻撃をギリギリで避けながらチルノの攻撃を誘導し始める・・・・・
下手をすれば、自分が命を落とす可能性もあるかもしれないが、やるしかない・・・・・)
《ドドドドドドドドドドドドドド》
雨のように頭上から降り注ぐ氷柱と視界を奪うように放たれる巨大な星形光弾の弾幕が霊夢を仕留めようとするが、そのどれもが本来の彼女達のものに比べると密度や精度が甘く、二人を操っている黒幕はスペルカードをただただ相手を打ち倒すためだけの武器としてしか使っていないのだと言うことがわかる。
そんな中、チルノは両手を合わせて冷気を集中させ始め、先程の強力な冷凍光線、パーフェクトフリーズを放とうとしている。本気で放たれた場合、この技に掠るだけでも体が凍り付く効果があり、これを上手く誘導する事が出来れば魔理沙を凍らせて最低限のダメージで戦闘不能にする事が出来るかもしれない。
《もし普段よりも性能が高かったらと思うと、ゾッとするわね・・・・・》
(こんな容赦なく攻撃してくる状況下で、もしも普段よりも技の性能が高かったらと思うと、心底恐怖する・・・・・
そして、チルノが再びさっきのとんでもない技を放とうとしているのを見て今がチャンスだと思ったのか、攻撃を逆に利用して魔理沙の動きを封じることができるように、呼吸を整え始める・・・・・)
魔理沙
「………………。」
魔理沙は煌々と輝く星弾を放ちながら真っ直ぐに霊夢に向かう。チルノが冷凍光線を放とうとしている中でも魔理沙も八卦炉を手に、マスタースパークを放つ準備をしている事から、上手く誘導する事が出来れば二人まとめて撃破する事が出来る。
《ゴオォォォォォォォォ》
《ヒュオォォォォォォォォ》
そして、遂に二人はこの戦いを終わらせるため、それぞれの持つ最大技を解き放つ。霊夢の背後に回り込んだチルノは冷凍光線(パーフェクトフリーズ)を、霊夢の正面にいる魔理沙は破壊光線(マスタースパーク)と直撃すれば大妖怪クラスでもただでは済まない破壊力の光線が霊夢に襲い掛かる。
今っ・・・・・!!!!!
バッ・・・・・!
(霊夢はチルノと魔理沙の攻撃が放たれた瞬間、本当にギリギリまで迫ってきたその時に、宙高く飛んでそのまま二人の攻撃を激突させる・・・・・
魔理沙とチルノの動きをこれで一時的に封じられなければ、絶体絶命なのだが、果たして・・・・・)
魔理沙&チルノ
「…………!!」
瞬時に光線の軌道から逃れた事でチルノと魔理沙の二人が放った光線が激突すると、刹那の拮抗の後、魔理沙の放ったマスタースパークが冷凍光線を打ち破り、チルノの体をマスタースパークが吹き飛ばして"一回休み"にし、打ち破られた冷凍光線の一部が魔理沙の手足を凍らせて戦闘不能に陥らせる。
妖精であるチルノは消し飛ばされたとしてもまた蘇り、魔理沙もある程度の回復魔法を使える事から二人とも再度復帰してくるものの、それでも時間稼ぎには充分になる。
二人は明らかに何者かに操られており、この異常事態と神社に現れた桃色の水球が無関係であるとは考えにくい……
今の内にできるだけ遠くに避難した方が得策ね・・・・・
(そう言うと、霊夢はチルノと魔理沙の二人が戦闘不能になっている今の内にと、なるべく遠くへと避難するように飛行し始める・・・・・
霊夢は、もしや人里も同じように操られている人間達がいるのだろうかと、上空から人里を少し観察してみる・・・・・)
【人間の里/広場】
人間の里に辿り着いた霊夢の眼下では、案の定、里の人々が倒れ、意識を失っていると言う異様な光景が広がっており、普段通りの日常を過ごしている最中、突如として意識が奪われたのだと言うことが判明する……
里に到着するまでにも森の中で妖怪や妖精だけでなく、野生動物達も昏睡状態に陥っていた……
異様な道化師
「クスクスクス…
やはり"イライザ様"の力は素晴らしい。この地にいるすべての者を昏睡させる事が出来るとは……!」
そんな人間の里の広場では、飄々とした態度で踊るようにして広場で倒れている人々を見て喜んでいるピエロのような姿をした異質な存在がいる。
完全に幻想郷の全ての者が意識を失っていると思っているからか、彼は油断しており、機密情報であると思われる謎の人物の名前を口にしている。
《イライザ・・・・・?聞かない名前ね・・・・・》
(謎の不気味な笑みを浮かべる道化師が出したイライザという名前・・・・・
どんな人物かはまだわからないが、初めて聞く名前であると同時に、さっき博麗神社にて現れた謎のシャボン玉を思い出す・・・・・
あれはそのイライザがシャボン玉を介して自分の目の前に現れたのか、それともまた違う人物がシャボン玉を介して現れたのかは謎だが、少なくともイライザという謎の人物は、この幻想郷に住まう妖怪とも妖精とも違う別の種族であろうということは察することが出来る・・・・・)
異様な道化師
「ぐっすりと眠り込んでいる今、誰もかれもボクに逆らえない。
この幻想郷にどれだけの数の有力者がいるのかは知らないけど、今なら殺り放題だ!」
この道化師の目的は、昏睡状態になった幻想郷の有力者達の殺害。
先程のチルノや魔理沙も多大なダメージを受けたにも関わらず目覚めることが無かったように、意識を何かしらの手段で奪われ、封じられている現在の状況では、まともに対抗する事が出来ない……
有力者や守護者が全滅してしまえば、もはや夢の支配から幻想郷が逃れる事は永劫に叶わなくなり、永遠に支配される傀儡にされてしまうだろう……そうなれば、底無しの悪意を持つヴァイスリゾームの手先として消耗されると言う破滅的な未来しか無くなる……
果たして本当にそうかしらね・・・・・?
(これ以上事態が悪化する前になんとかして防がなければと思い、霊夢は上空から地面へと降り立つ・・・・・
相手は自分の存在にも気づけないあたり、気配を察するのはできないのか・・・・・
それとも、敢えてこうして降りてくるように誘導したのか、それともただ気づかれなかっただけなのか・・・・・)
異様な道化師
「………!!?」
幻想郷内で意識がある者が居るとは思っていなかったのか、目の前に現れた霊夢を見て、驚き、思わず少し後ずさるものの、たまたまイライザの術にかからずに済むような幸運に恵まれただけの存在だと考え、すぐ冷静さを取り戻す。
異様な道化師
「イライザ様の術にかかっていない奴が居た……!?
……ケケケ!どうやって逃れたのかは知らないが、夢の中に居た方が苦しまずに済んだものを!!」
道化師は左手に持っていた歪な顔のようなボールを霊夢に向けて投げ付ける。すると、空中で歪な頭が巨大化し、民家を丸ごと噛み砕けるようなサイズにまで肥大化して霊夢を喰らおうとする。
アンタ、さっきからイライザイライザ言ってるけど、肝心のそのイライザさんは私のことを知ってか知らずか、アンタには前もって何も伝えていなかったようね・・・・・?
(霊夢は、民家が巻き添えにならないように誘導しながら襲撃を避けつつ、謎の不気味な道化師に上記を述べる・・・・・
道化師の反応からして、幻想郷には博麗の巫女という守護者がいることを知らないようにも見受けられることから、この道化師を刺客としてよこしたイライザという謎の人物も、博麗の巫女を知らないのか、それともただ単に道化師には伝えていないだけなのか・・・・・)
異様な道化師
「ケタケタケタケタケタ!!!
確率にすると1兆分の1の幸運……いや、凶運と呼ぶべきかな?キミが何者なのかはキミを始末した後にでも伺うさ!」
【戯符「悪夢の曲芸術」】
道化師の投げた巨大な人面のボールは霊夢に避けられるとそのまま道化師の元へ戻り、術者である道化師自身もその巨頭の上にまるで玉乗りをするかのように飛び乗り、ケタケタと笑いながら腰の後ろから毒々しい紫や赤、黒の混ざった青、暗い緑色の刃身を持った色とりどりのナイフを無数に取り出す。
キラー・クラウン
「ボクは高等幻魔の一人、『キラー・クラウン』!
悪夢のショーを取り仕切るピエロ達の団長だ!
キミには特別に"ボク達"のショーを特等席で見せてあげるよ!!」
手にした色とりどりのナイフを高速でジャグリングし始めると、彼が乗っている巨頭が口を開き、その中から狂気の笑みを浮かべた無数の道化師達が這い出て来る……その一体一体から感じられる妖力や魔力はさほどの脅威ではないものの、キラー・クラウンと名乗る道化師の"ショー"と言う言葉から何をしでかして来るのか予測する事が難しくなっている。
なるほど・・・・・塵も積もれば山となるってことね、力でダメなら数ってこと・・・・・
(霊夢は、這い出てきた道化師達がどんな行動に出たとしても瞬時に対応できるように身構え始める・・・・・
まだ自分にのみ攻撃してくるだけならばまだいいものの、近くにある民家にでも突っ込まれたり、攻撃されたりでもしたらかなり厄介だと思いながら、逆に自分はできるだけ民家を巻き込まないように戦わなければならないと警戒する・・・・・)
悪夢道化師達
『ケタケタケタケタケタ!!!!』
無数に現れた道化師達は耳を塞ぎたくなるようなおぞましい笑いの合唱をあげ、道化師の一部が霊夢に向かってブーメランのように血錆びが付いた曲刀を投げ付け、更に別の一団が手にしたショットガンを発砲し、遠距離から中距離攻撃を仕掛けていく。
あまり私を見くびらないことねっ・・・・・!
(次々と攻撃を避けて上記を言えば、霊夢は続けて「博麗の巫女は代々幻想郷を守ってきた守護者なのよ、あんた達みたいな得体の知れない化け物なんかにそうやすやすとやられるわけにはいかないのよ・・・・・!!!!!」と言い、手当り次第に道化師達に弾幕を放ってゆく・・・・・)
悪夢の道化師達
『ケタケタケタケタケタ……!!』
『キィィィィィィィィィィィッ!!!』
霊夢の放った弾幕が直撃すると、耐久力もそれほど高くはないためか、それとも下等な幻魔が現世に顕現すると脆い実体しか得られないからか、次々と道化師達が砕けて行くものの、道化師達が一斉に各々が手にした曲刀を投げ付けたり、銃器を発砲したり、両手に持った刃物を振り上げ、金切り声を上げながら高速で霊夢に向かって突進し始め、数の多さを利用した飽和攻撃を仕掛ける。
この妖怪や妖精がわんさかいる幻想郷で、そんな物理攻撃程度でやられるとでも本気で思っているの・・・・・?
ドドドドドドドドドッ!!!!!
(霊夢からすれば数は多けれどこの程度の物理攻撃、武器を使っての攻撃だとしてもすべてを避けることはそう難しくはない・・・・・
霊夢は、避けながらすべての道化師達に弾幕を浴びせながら次々と道化師達を砕いてゆく・・・・・
下等な幻魔程度ならば所詮はこの程度か・・・・・)
キラー・クラウン
「ケケケケッ!まだまだショーは始まったばかりさ…!」
無数のナイフ
『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!』
キラーは無数に押し寄せる、ピエロの大群による刃物や銃弾を用いた攻撃の嵐の中、弾幕ごっこによって鍛えられた反射神経と勘によって避け、反撃として放つ光弾によってピエロ達が瞬く間に破壊されていくのを見て、劣勢に追い込まれつつあるにも関わらず楽しそうに笑い続けている。
ジャグリングしていた色とりどりのナイフを霊夢に向かって投げ付けると、それら全てに目玉と口が現れ、おぞましい笑い声を上げながら高速で回転し、霊夢に向かって追尾し切り裂こうとする。
ピエロ達による飽和攻撃も継続しているため、新たに追尾する生きたナイフが霊夢に襲い掛かると言ったように徐々に厄介なキラー・クラウンの力が牙を向いていく……
雑魚にしては結構健闘するじゃないの!
(霊夢は、数が増えることも先に考えて紙一重になってきてはいるがすべての攻撃を避け続ける・・・・・
そして、上空へ高く飛び弾幕の雨を降らせ始める・・・・・
民家を巻き込まないようにするのは大変ではあるが、それでも巻き込まないようにしながら弾幕の雨を降らし続け道化師達を一気に消しにかかる・・・・・)
キラー・クラウン
「ケケケッ……!
まだまだショーは始まったばかりさ!」
キラー・クラウンの投げた生きたナイフは
キラー・クラウン
「ケケケッ……!
まだまだショーは始まったばかりさ!」
《ギュオォォォォォォォォォォォッ》
霊夢の上空から放った弾幕の雨によって飛行能力を持たないピエロの大群は一方的に撃ち抜かれ消滅していくものの、キラー・クラウンの投げた生きたナイフは十本中三本が撃ち落とされたものの、残った七本は執拗に霊夢に向かって飛び掛かり続ける。
更に追い討ちをかけるべく、キラー・クラウンは自分が乗っている巨頭に大きく口を開けさせ、その口内に魔力を集束させる事でこの辺り一帯をまとめて吹き飛ばせるほどの破壊力を持ったエネルギー波を解き放とうとし始め。
もし、これが放たれてしまえば例え霊夢が回避に間に合ってもこの近辺に住む全ての者がバラバラに吹き飛ばされ絶命させられてしまうだろう……
くっ・・・・・!次から次へと・・・・・!
(霊夢は、少しの間も与えないほどにすぐにまた更なる追撃を、それも今度は霊夢自身へではなく人里へ向けて放とうとしている・・・・・
戦いで自分がボコボコにされて傷つくのはまだぜんぜんいい・・・・・だが、里の住人達を巻き込むような、それも命に関わるようなこととあれば尚のこと食い止めなければならない・・・・・
霊夢は、キラー・クラウンへ向けて猛スピードで飛んでくる・・・・・)
キラー・クラウン
「おっ!勇敢だねぇ!でも残念!もうボクにも止められないよぉ?」
クラウンはケタケタと笑いながら迫ってくる霊夢を見て、集束させたエネルギー波を解き放とうとする。もし、ここで結界を使って集束されたエネルギー波を暴発させることが出来れば……
だが、もし結界が抑え込めずに破壊された場合、防御や避難する間も無く霊夢は消し飛ばされてしまうだろう……より安全な策や方法があるのならば別の手段を用いて対応する事も可能かもしれない。
なら私が止めるまでよ・・・・・!!!!!
(霊夢は迫ってくるナイフを利用してキラー・クラウンに突っ込んでそのままナイフをキラー・クラウンに当てるつもりだったが、このままでは間に合わないということを悟ると、結界を展開させようとする・・・・・
失敗すれば死、あるのみだが、やらなければやられることもまた確か・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!
防ぐんだ?防げるんだぁ?だけどさぁ、そ・れ・もいつまで持つかなぁぁぁぁ?火力アーップ!だよ!!」
巨頭が解き放った強烈なエネルギー波が波動状に放たれ、霊夢の展開した結界と激突し、辺りに凄まじい轟音が巻き起こり、周囲の建物がカタカタと震え始める中、キラーはケタケタと大笑いをしながら巨頭をペシペシと叩いて更にエネルギー波の威力を上げ、その圧倒的な火力によって無理矢理押しきろうとする。
キラーは霊夢が周囲への被害を恐れて避けられないことを利用しての攻撃であり、こうしている間も追撃出来るように空中を浮遊させているナイフ達を霊夢の頭上から降り注がせる事で二方向から同時に攻撃を加えようとする。
このまま防戦一方でいれば確実に押し負けてしまうだろう……
くっ・・・・・!?
バッ・・・・・!
(霊夢は咄嗟に頭上の方にも結界を展開させる・・・・・
が、一つの攻撃を防ぎながら、もう一つの攻撃を防ぐのはかなり負担がかかる・・・・・
結界にも徐々に亀裂が入り始める・・・・・)
キラー・クラウン
「さあ、これで更に技を追加したらどうなるのかな?楽しみだなぁ!」
クラウンは右手を振り上げて自身の持つ魔力によって直径5mもの魔光弾を形成していく……この魔光弾は着弾すると広範囲に爆発が巻き起こるため、結界で防いだとしても爆発による影響で霊夢の周辺が丸ごと吹き飛んでしまう……
巨頭から放つエネルギー波、空を舞う生きたナイフ、それらを前にキラーは亀裂が入り始めた結界を見て勝利を確信し、このまま一気に圧倒的な手数で押し潰そうとしている……
【オリキャラで参加希望です。】
63:◆3.:2021/04/25(日) 05:37 【OKです!
世界観や物語を崩壊させるようなキャラにならないようにしてくださいね〜】
ぐっ・・・・・!
ゴォッ・・・・・!
(霊夢は、もうこうなったらと弾幕を形成して飛ばして相手の魔光弾を相殺しようとする・・・・・
恐らくキラー・クラウンそのものの戦闘力はさほど高くはないと思われるが、こうも立て続けに攻撃を繰り出されては、戦闘力の高い低いは関係なくなってくる・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!
防御から攻撃に回るつもりかい?馬鹿だねぇ、それは悪手にしかならないよ!」
これまでは結界の展開に回していた力を反撃のための弾幕として使うようになれば当然、ただでさえ亀裂が生じていた結界ではエネルギー波と生きたナイフを防ぎきれなくなってしまう……
霊夢の放った弾幕が魔光弾を狙っているとわかると逆に迎え撃つように魔光弾を放ち、霊夢の弾幕によって幾らか勢いや威力が削れているものの、それでも今の霊夢の結界を破壊して消し飛ばすには充分すぎるほどの威力がある……
生きたナイフは霊夢が回避しようとしても即座に追撃できるように霊夢の側面や背後に回り込んでガリガリと結界を削り始め、正面から放たれたエネルギー波は言わずもがな。
何かしらの打開策が無ければ今ここで霊夢は絶命することになってしまうだろう……
「ん……ん……?」
よく食べに来る人里の団子屋前で、彼は片手に三色団子を持ちながら地面に突っ伏していた。
広場から離れているものの、彼の耳には度重なる騒音が届いており、彼は騒音と自身に対する違和感で目を覚ました。
肩まである長い銀髪を揺らしながら立ち上がり、緋色の目で辺りを見回せば、先程まで話していた団子屋のおばちゃんや、後ろを歩いていた買い物帰りの女性等々が、死んだ様に眠っていたのである。
明らかにオカシイ事が起こっているのを彼は瞬時に察知して、聞き慣れない弾幕の音を頼りに二人の居る広場へ向かった……
>>66
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http://ha10.net/test/write.cgi/yy/1595239279/l2】
《このままじゃやられる・・・・・っ・・・・・!やばい・・・・・っ!》
(力の高い低いではなく、つまりは戦い方が勝敗を分ける鍵となる・・・・・
今この状況において、人里が戦いの場となっていることも、キラー・クラウンからすれば霊夢が自由に戦えない制限を生むことに繋がるため、正に敵の狩場にはうってつけというところだろうか・・・・・
霊夢は、打開策が思い浮かばないまま、死を覚悟しそうになる・・・・・
博麗の巫女と言えどもここまで追い詰められれば、瞬時に何か反撃の方法を思いつくのは困難を極めるだろう・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!思ったよりも大したことは無かったね!!
しかし……どうしてイライザ様の術にかからなかったのかはわからなかった……ま、今となっちゃどうでもいい事だけどね!」
醜悪な巨頭
『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!』
キラーの放った魔光弾が炸裂し、凄まじい爆音と衝撃が辺り一帯を薙ぎ倒し、周辺の建物もろとも霊夢を吹き飛ばし、クレーターを形成する。
キラーは逃げ場も無く、完全に追い込まれた状態であった霊夢では最早助かることはないだろうと確信しており、巨頭と共に楽しそうに、だが悪意と狂気に満ちた笑い声をあげて嘲笑う……
・・・・・
(霊夢がいたはずの場所には、キラー・クラウンの攻撃によって形成された巨大なクレーターだけができており、霊夢の死体は確認することは出来ない・・・・・
跡形もなく消滅した、と考えるのが自然だろうか・・・・・)
キラー・クラウン
「さぁて、次の標的は………」
回避出来ないように生けるナイフを霊夢の側面や背後に移動させていたため、例え結界が破壊される寸前に逃れようとしたとしてもナイフの餌食になっているだろう。
死体の確認は出来ないが、里の一角を吹き飛ばすほどの威力を受けたとなればただの人間の耐久では生存は不可能だ。死体すら残らないのも無理はない。
悪夢を支配するイライザの術にかかっていなかった事には驚いたものの、さほど強力な技や力を見せてくる事も無かったため、所詮は運が良かっただけであり、他に術がかかっていない者もいないだろう。
となれば、後はこの里にいる不穏分子の抹殺を行うだけであると考え、生きたナイフを手元に回収して巨頭を元のテニスボールサイズにまで縮めて戦闘警戒を解く。
・・・・・
(里の一角が吹き飛ばされるほどの威力の攻撃だったため、死体を確認しないで警戒態勢を解くキラー・クラウンを祝福するかのように、月明かりが雲の隙間から差してくる・・・・・
辺り一帯はさっきまで霊夢との戦いがあったのが嘘かのように再び静まり返っている・・・・・)
キラー・クラウン戦闘警戒を解いた次の瞬間・・・・・
ゴォッ・・・・・!
(キラー・クラウンの頬を、何かが掠ってゆく・・・・・
そして、頬を掠った何かはそのまま空中で爆発を起こして消える・・・・・
見た目としては、さっきの霊夢の放った弾幕に似ている感じだ・・・・・)
キラー・クラウン
「…………!」
後方と側面からも攻撃を仕掛けた事で回避できない状況にしつつ、結界もろとも全て消し飛ばした事で勝利を確信していた中、背後から霊夢の放ったものに似た弾幕が頬を掠ると後ろを振り返る。
元々現世の生物ですらないキラーには血液は存在しないためか、仮面のような彼の顔の傷口からは血が流れず、仮面の下にある無数の目がギョロギョロと周囲を見渡して警戒し始める。
グォッ・・・・・!!!!!
(キラークラウンが周囲を警戒してもお構い無しに、弾幕は次々と放たれる・・・・・
それこそ、無数の目で周囲を見渡しながらでも防御が間に合わないほどのスピードで、次から次へとキラー・クラウンめがけて弾幕が放たれる・・・・・)
キラー・クラウン
「ぐぎぎ……まだしぶとく生きていたのか……!
だ・け・ど!何処にいるかはわかったよぉ!!」
【巨芸「笑う暴食頭」】
放たれた弾幕が次々とキラーの体に炸裂すると、現世に顕現するために作り出した実体には痛覚が存在しないため、痛みやダメージはそれほど無いものの、再生するためには時間も魔力も必要となる。
加えて実体が破壊されれば周囲に逃げ込むための悪夢の源が無ければ存在を維持で来なくなり消滅してしまう。
手にしたテニスボール程度の大きさの歪な頭を投げ付け、最初に見せたように空中で徐々に巨大化し、放たれた弾幕を貪り喰らいながら霊夢が居るであろう方向に向かわせる。
どこ見てんのよ・・・・・?
ドガッ・・・・・!
ゴッ・・・・・!
(霊夢はいつの間にかキラー・クラウンの背後に回っており、そしてそのまま強い蹴りを食らわせ、更にそのまま追撃として弾幕を再び放つ・・・・・
霊夢の声には、相手に対する怒りがこもっているのが感じられる・・・・・)
キラー・クラウン
「!!!」
いつの間にか背後に回り込んだ霊夢の蹴りを受けて大きくよろめく。
体格的に霊夢とあまり身長の変わらないキラーは体重も軽く、防御技を持たないキラーは衝撃を受けると簡単に動いてしまう。
キラー・クラウン
「おかしいなぁ、どうやって生き残ったんだい?」
【刃芸「生けるナイフ」】
確かに逃げ場を奪った上で結界もろとも消した筈の霊夢がどうやって生き残ったのかについて問いかけると、振り向き様に右手を大きく振るい、その袖下から五本もの生きたナイフを投げ付け、切り裂こうとする。
アンタに説明する必要があるのかしら?
ガッ・・・・・!
(霊夢はキラー・クラウンを睨みつけながら、蹴り上げて反撃したり、刃以外の部分を掴んでナイフ同士をぶつけさせたりして反撃に出始める・・・・・
ナイフが生きていたところでなんだとでも言いたげな表情で、じわじわと距離を詰めてゆく・・・・・)
キラー・クラウン
「…………なるほど、飛んで逃げた……と言う感じだね?
まあ、それなら対処法方は簡単だ!こっちにおいで!!」
キラーはケタケタと笑いながら、見た目や言動に反してそれなりに洞察力や判断力があるのか、即座に霊夢が飛んで逃げたのだと推察すると、先程投げた巨頭がキラーの頭上を飛び越えて戻ると、そのまま霊夢を喰らおうと飛び掛かる。
生けるナイフもろとも頭上から襲撃させることで回避先が頭上や地下ではなく、左右前後に限定した上でキラーは再度腰の後ろから十本以上のナイフを取り出してブーメランのようにして投げ放ち、これまた空中で目口を生やさせ、それぞれに明確な殺意と悪意を持たせてほぼ全方向から同時攻撃を仕掛けようとする。
武器を用いての攻撃・・・・・本当にワンパターンね・・・・・?
(霊夢は、すべての攻撃が自分へ到達する前に避けて、そのまま巨頭やナイフ達を誘導し始める・・・・・
霊夢自身も反撃手段が多いというわけではないが、キラー・クラウンがほとんどの攻撃を武器達に任さっきりなことから、やはりキラー・クラウン自身の戦闘力はそれほど高くはなく、武器の方に警戒力を高め始める・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!
いやぁ、まさかここまで持ちこたえるだなんて"夢にも"思わなかったよ!つまらない肉塊の体しか持たないちっぽけな人間にしてはやるなぁ!!」
キラーは両手の指を同時に鳴らすと何も無い空間から八つの青や赤、黄、緑とこれまた色とりどりの小さなボールを取り出すとそれを用いて高速でジャグリングをし始め、余裕淡々と言った様子からか、それともこれも次の技の準備か、もしくはその両方からかは不明だが曲芸を続けていく。
霊夢の眼前には巨頭が何重にも重なった醜悪な牙と口を剥き出しにして霊夢を飲み込もうと迫り、その巨頭の横や上には十本もの生きたナイフが笑いながら回転して霊夢を切り裂こうとする。
気味が悪い連中ね・・・・・
ガッ・・・・・
(霊夢は試しに結界を展開して、巨頭やナイフ達を閉じ込めてみる・・・・・
これで少しは時間を稼げればと思っての行動だが、果たしてこれが吉と出るか、それとも凶と出るかはわからなければ、寧ろ不利になる可能性だってある・・・・・)
《ガガガガガガガガガガガガガガッ》
霊夢の展開した結界によって巨頭と生きたナイフが封じ込められる。
霊夢の展開する結界の強度はそれらの攻撃を完全に防ぐことが出来るようだが、結界内では巨頭や生きたナイフが滅茶苦茶に暴れまわり、ゲラゲラとけたたましく笑い続け、異様な光景となっている……
キラー・クラウン
「ほらほら、新しいものが見たいようだから今度はジャグリングも見せてあげるよ!」
《ドドドドドドドドドドドドドッ》
キラーはいつの間にか結界上空まで飛び上がっており、手にした十個のボールを一斉に霊夢目掛けて投げ付ける。地面に激突したボールは爆発を巻き起こし、爆発によって生じた岩がまるで弾丸のように飛び交い、上からは爆発するボール、下からはその爆発によって巻き上げられた塵や岩、石が霊夢を挟撃しようとする。
くっ・・・・・!視界が・・・・・
(巻き上げられる塵によって視界を遮られた状態で上下から繰り出される猛攻撃に、霊夢は紙一重で避けることでなんとかギリギリで対応している・・・・・
しかし、視界が遮られている以上、攻撃がいつ直撃してもおかしくはない・・・・・)
《ヒュオッ》
土埃によって視界が遮られ、辛うじて上からの爆破玉と下からの破片を避ける霊夢に向かって一本のナイフが迫る。先程放たれた生きたナイフ達は未だに巨頭と共に結界内で暴れまわっているため、キラーが新たに取り出して放ったものだ。
吸血鬼のような高い再生力も、妖怪のような生命力も無い、あくまでも人間である霊夢に対して刃物で一度傷を付ければその時点で継戦能力はほぼ失われる。何の事はない、ナイフ一発を当てればキラーの勝ちは決まるため、キラーは積極的にそれを狙っている。
ズブッ・・・・・
ゴポッ・・・・・
え・・・・・?
(霊夢は爆破と破片の挟み撃ちを避けることに専念するあまり、ナイフに気づくのが遅れ、右胸に刺さりそのまま吐血して宙高くから地上へと落ちてゆく・・・・・
所詮霊夢も一人の人間、妖怪や妖精とは違う・・・・・)
キラー・クラウン
「ケタケタケタケタケタ!!!これは当たったかな?
今度は変に逃げられないように完全に仕留めてあげるよ!」
キラーは右手にジャグリングボールを持つと、今度はそのボールに爆発ではなく人体の貫通が出来るように魔力を込めつつ、霊夢の腹部目掛けて投げ付ける事でナイフが刺さった霊夢の体を貫き、確実に仕留めようとする。
・・・・・
ドォッ・・・・・!
(霊夢は落ちてゆく中、何とか必死に抵抗しようと力を振り絞って弾幕を放つ・・・・・
しかし、ダメージを負った状態でできる反撃など、たかが知れてる・・・・・
そして、まだ反撃できるほどの力が残っていたことに、自分でも驚いていた・・・・・)
キラー・クラウン
「無理はしない方がいいよぉ?」
キラーの投げつけた貫通性に特化したボールが霊夢の放った光弾を次々と貫いて行くものの、霊夢の目の前で磨耗しきって消滅するが、弾幕を突き破って迫るボールに気が取られているであろう隙を付いて右手に持った短剣のように巨大なナイフを振るい、霊夢の喉を切り裂いて即座に絶命させようとする。
キラーは気遣うような言葉を口にしているものの、彼の中に霊夢への慈悲や慈愛などは毛頭無く、悪意しか含まれていない……
ぐっ・・・・・!
ビシャッ・・・・・!
(霊夢は、喉を切られないように咄嗟に腕でガードするが、腕でガードすれば当然喉の代わりに腕を切りつけられ、出血する・・・・・
が、霊夢はこれを逆にチャンスだと受け取り、切りつけられた腕を思いっきり振るい、敢えて血を出すことで相手の目に飛び散らせて血で目潰しをしようとする・・・・・
そして、至近距離まで相手の方から迫ってきてくれたことで、相手に思いっきり蹴りを食らわそうとする・・・・・)
キラー・クラウン
「!!!」
キラーの無数の目が蠢く仮面の下へ霊夢の血による目潰しを受けると痛覚は無くとも視界が一時的に失われ、キラーが追撃として振るったナイフによる心臓への刺突が空振りに終わり、逆に霊夢が反撃出来るチャンスが生じる。
っ・・・・・!
ドガッ・・・・・!
(霊夢はキラー・クラウンが目を潰されたことで、反撃をするチャンスが生まれた瞬間を見逃さなかった・・・・・
そのまま霊夢はキラー・クラウンの体を蹴り、そのまま地面へ落として更に弾幕による追撃をそのまま行おうとする・・・・・
自分の血まで利用したからには、これが吉と出てもらいたいところではあるが、果たして・・・・・)
キラー・クラウン
「そうかぁ……そうかぁ!ボクはここで終わりかァ!
ケタケタケタケタケタ!!!」
霊夢によって地面へ叩き付けられたところへ、霊夢の放った集中弾幕を受ける。するとキラーの体に無数の亀裂が生じていき、限界を迎えて実体が砕け、終焉が近付いて来るのを感じ取るものの、キラーは憎しみや後悔と言った本来の生命体が潰えるときに見せるような感情は一切見せず、高笑いしながら砕け散り、跡形もなく消滅していく……
はぁ・・・・・はぁ・・・・・随分、あっさり終わったわね・・・・・
(とりあえずは一旦解決、といったところだろうか・・・・・
だが、あの不気味な道化師の言葉からして、今回の大元が今もどこかで暗躍しているはず・・・・・
なるべく早く再び戦闘をできるように少しでも回復しておかなければならない・・・・・)
《ザアァァァァァァァァァ…》
術者であるキラーの消滅に伴い、結界内に隔離していた巨頭や生きたナイフ達もキラーと同じように実体を失い、塵となり消えていく……
ナイフが刺さり、出血すると言う手傷を受けてしまったものの、幻想郷に襲来してきた刺客を排除することができた。
キラーの目論見や背後に控えているであろう組織に対する警戒を怠ってはいけないものの、一時的に脅威が取り除かれたと言ってもいいだろう。
予想外の苦戦を強いられはしたものの、勝利した……筈だった。
???
「あら、随分と手こずったみたいね?
"私の術"が効かなかった事や"博麗の血筋"と言っていたから警戒していたのだけれど……過大評価が過ぎたみたいね?」
《ゾワッ》
霊夢の背後から声が聞こえてくる……
先程までは誰も居なかった筈の場所に涌き出るようにして現れたその声の主は今倒したキラーすら比較にならないレベルの強大な力を有しており、その姿を見ずとも肌にビリビリと伝わる強力なオーラと、身体中に冷や汗が出る程のおぞましい雰囲気を伴っている……
・・・・・
(思わぬ出来事に、鳥肌が立つ・・・・・
しかし、キラー・クラウンの言葉と、突如として現れた謎の人物の言葉を聞く限り、今背後にいる人物こそ正しく、この騒動の黒幕にして総大将・・・・・)
・・・・・アンタが、イライザ・・・・・?
(霊夢は振り返ることなく、背を向けたまま上記を述べる・・・・・
流石に今やりあったところで、到底勝ち目はない・・・・・
まず間違いなく簡単に手にかけられてしまうのは目に見えている・・・・・)
イライザ
「ええ、その通り。私がこの幻想郷に昏睡術をかけて意識を奪い、その肉体を傀儡とした幻魔達の女王であり……貴方達にとっての"敵"よ?」
イライザは霊夢がこの里に着く前に操られたチルノと魔理沙との戦闘を繰り広げていた事まで知っているようで、クスクスと不敵な笑いを溢しながら自分を明確に霊夢や幻想郷にとっての敵であると応える……
イライザを倒せば幻想郷の住人達は目を覚ますだろう。
だが、それを実行するには絶望的なまでの力の差がある……
何時でも不意討ちをしかけられたと思われるものの、それをせずに敢えて霊夢の背後に姿を現し、言葉を交わしていることから、イライザは姿を現すと言うリスクを遥かに凌駕するほどの力があると言うことを暗に示している……
随分と厄介なことをしてくれるのね・・・・・あの不気味な道化師も、戦闘能力は低いくせして戦ったらこのザマよ・・・・・?
(回復が必要な時に敢えてタイミングを見計らって出てきたとも思えるイライザ・・・・・
あの道化師を部下に持つボスならば、それもまぁまぁ納得が行くが・・・・・
しかし、問題なのはこの状況・・・・・どう頑張ってもダメージを負っている今の霊夢に勝ち目はない・・・・・)
イライザ
「クスクス……彼は純粋な悪夢の化身でありながら現世に実体を持って現れる事が出来る稀有な存在だった……実体化した時に大きく力が失われてしまったようだけど、それでも今の幻想郷を制圧するには充分な戦力を持っていたわ。悪夢の中で戦っていればまず貴方に勝ち目は無かったのよ?」
キラー・クラウンを始めとする幻魔の大半が悪夢の世界でのみ充分な力を発揮することが出来る。逆に現世に体現できる者や現世に干渉することが出来る者はイライザを含めても十に満たない。
これがイライザが大軍団を送り込まなかった理由でもあり、雑兵では現世に出てくることすら出来ない。
故に優秀な手駒の一つを失った事に僅かばかりの憤りを感じているのか、万全の状態でならば敗れることも無かったと言う。
イライザ
「まあ、幾ら弱まっていたとは言え、たかが人間一匹に敗れるようならそこまでの奴だったって事になるのだけれどもね?」
霊夢に向かって一歩前へ歩き出す。
イライザの言葉通りであるのならば、今のイライザの放つ肌を打つ強烈なプレッシャーさえも本来のものよりも大きく劣化しているものであり、その本来の力は想像を絶するものとなっているだろう……
次の瞬間、イライザは霊夢の目の前に姿を現す。
イライザの双翼にある禍々しい眼が霊夢を嘲笑うように注視しており、彼女の死人のように白い肌、底無し沼のような深紫色の瞳が霊夢の魂すらも引き込み、呑み込もうとしているかのような感覚さえ感じられる。
イライザ
「さて、楽しいお喋りの時間は終わりにしましょうか?幸運な巫女さん?」
イライザは再び一歩、二歩と歩みを続けながら言葉を続ける……
イライザの言葉の一つ一つが感覚を、意識を鈍らせ、翼にある眼光は心の底にまで入り込んでくるような違和感を伴い、それらが合わさる事で魂すら引き寄せられるような感覚が強くなって来る。
ただの気のせいや比喩表現などではなく、実際に魂が根底からイライザへ引き抜かれようとしている。
・・・・・っ・・・・・!
(言葉にし難いこの威圧感・・・・・
動こうにも動けなくなるこの圧倒的かつ静かな殺意の塊・・・・・
万事休す、とは正にこのことか・・・・・)
イライザ
「さようなら、紅白の巫女さん?」
《ザザザザザザザザ…》
不敵な笑みを浮かべたまま言葉を介してイライザが魂にさえ干渉する力を強めようとした瞬間、霊夢の視界の歪みが大きくなり、次の瞬間、意識が失われ………
【???】
イライザによって魂を奪われたのだろうか?
辺りには幻想郷の様々な環境や地形が滅茶苦茶に融合したような異様な空間が広がっている。
霊夢のいる博麗神社の一部に魔理沙の魔法店が隣接して存在し、周囲を見渡すと霧の湖に紅魔館の時計塔が建ち、妖怪の山の一角に広大な太陽の畑が存在していたり、魔法の森と人間の里がグチャグチャに融合し、空は薄い桃色の空が広がり、不思議な空間が何処までも広がっている。
・・・・・何よ、これ・・・・・
(意識を失っている間に自分の予想を上回る何かが起きたとしか思えないような、理解が追いつかない不気味な光景を目にし、霊夢は何がなんだかわからなくなる・・・・・
そもそも、自分が今いるここが本当に幻想郷なのか、自分は今生きているのか死んでいるのか、それすらも疑わしくなってくる・・・・・)
夢の案内人
「お目覚めのようですね?
……いえ、この言い方は多少語弊がありますかね?」
霊夢の目の前に博麗神社にも現れたものと同じ桃色の大きなシャボン玉がフワフワと宙を漂いながら出現し、再び脳内に直接語りかけるように言葉をかける……これの正体は敵か、それとも味方か……
またアンタ・・・・・?
(理解が追いつかない状況で更に混乱してくる・・・・・
意識を失う少し前に霊夢はイライザの姿をイライザが自ら霊夢の前に現れたことで見てはいるものの、その後すぐに意識を失ってしまったのでどうも容姿に関しては記憶が曖昧なこともあり、今目の前に入るシャボン玉、そして直接語りかけてきている声の主がイライザなのではないかと疑いを持つ・・・・・)
夢の案内人
「また、とは心外ですね。
危うく"あの女"に消されてしまうところを助けてあげたと言うのに。」
混乱している霊夢に対して言葉を返す。
声の主はイライザに対して快く思っていないようにも聞こえる。
仮に声の主がイライザであった場合、わざわざ遠回しに声をかけたりせずとも、最初に神社に現れた時に神社ごと消し去った方が確実だった筈だった。にも関わらずこうして異世界へ引きずり込んだのには何かしらの狙いがあるのか……
そう・・・・・助けてくれたことには感謝するけど、そっちの正体がわからない以上、こっちだって完全に信用することはできないわ・・・・・
(助けてくれた、ということは敵ではなさそうだと判断するものの、素性も何もわからない相手にはさすがに完全に信用することは出来ないと言葉を返す・・・・・
そもそも今いるこの世界の光景からして、不審に思うのも無理はないだろう・・・・・)
夢の案内人
「……私の素性については"まだ"明かすことは出来ませんが、その代わりに貴女を取り巻く現状についてなら説明することは出来ますよ。
真偽のほどがわからなくとも、何かしらのヒントやきっかけにはなるかもしれませんよ?」
声の主は落ち着いた様子で霊夢に自分の正体についてはとある理由から話すことは出来ないものの、その代わりにこの空間が何なのか、何故此処に引き込まれたのか、イライザ達幻魔の目的や正体等、現在の状況について説明することなら出来ると応える。
それなら、一通り言える部分は全部吐いてもらいたいわ・・・・・この不気味な空間についても、ね・・・・・
(明かすことは出来ないが、情報を提供しようとしてくれる辺り、少なくとも敵ではない、と言ったところだろうか・・・・・
そして、それならば言えることならば全部吐いてもらおうと霊夢は考えて、現状についてと、幻想郷が朽ち果てたようなこの不気味な異空間は何なのかと問いかける・・・・・)
夢の案内人
「わかりました、お答えしましょう。」
声の主は穏やかな声で淡々と説明をし始める。
その声からは感情を読み取ることは出来ないものの、現状、何も危害を加えるような様子は見えず、感じられない。
夢の案内人
「まず……ここは"夢の世界"と呼ばれる空間です。
もっとも、現在は悪夢の化身である幻魔によって支配されてしまっていますが……」
ここが夢の世界である事と共に、キラー・クラウンも言っていた"幻魔"と言う単語の意味が判明する。幻魔は悪夢が形を成し、自我を持った存在であり、現実にすら影響を及ぼす程の影響力を持っている……
なるほど・・・・・現実じゃあないってことね、ちょっと安心したわ・・・・・
(相手の言葉を聞けば、今いるこの空間及びこの光景は現実のものではなく、夢の空間における幻想郷であるということを知り、夢であっても幻想郷がここまで滅茶苦茶にされているのは解せないものの、現実じゃない分少なくともまだホッとした部分はある・・・・・
そして「で、その幻魔ってのはどこにいるの?叩きのめしてやるわ」と怒りを顕にし)
夢の案内人
「話が早くて助かります。
ですが、奴らは恐ろしく狡猾かつ非情な存在です。
本来ならば悪夢を喰らい、彼らを抑え込む筈の貘達ですら手に負えないほどの力を持った幻魔を前に無策で乗り込むのは危険過ぎる……」
声の主は幻魔の実力を知っているのと、先程のイライザの"悪夢の中では幻魔は本来の力を出せる"と言う言葉からこの先にはあのキラー・クラウンをも容易く凌駕する様々な悪夢の化身達が立ちはだかる事になる……
夢の案内人
「ですが……何も手がない訳でもありません。」
そこに声の主は幻魔が圧倒的優勢にある現状を打破する策を一つ考えているのか、強大な力を持った幻魔にも対抗しうる考えがあるのだと言う。
それじゃあ、その手っていうのを早いとこ教えてもらおうかしら?このまま得体の知れない奴らに幻想郷を滅茶苦茶にされるのはごめんだからね・・・・・
(正夢という言葉もあるくらいだからか、霊夢は早く手を打たなけれはこの悪夢の世界が現実になるのではないだろうかという不安が脳裏を過ぎり、この状況を打破する方法を聞き出そうとする・・・・・
得体の知れない奴らに幻想郷を滅茶苦茶にされるのは、冗談ではない・・・・・)
夢の案内人
「はい、私が場所を指定しますので、そこへ幻魔達の女王『イライザ・インサーニア』を呼び寄せて下さい。」
夢の案内人
「そうして下されば後は私がイライザをこの夢の世界から永劫に追放します。幻魔は夢の世界から核ごと追い出されてしまえばそのまま消滅します。イライザさえ葬ることが出来れば統率者を失った幻魔は壊滅し、その多くも消滅します。」
声の主は例え高等幻魔を全て倒せるだけの実力が霊夢にあったとしても、イライザ本体との戦闘になればその力の差から対抗することが出来ずに容易に滅ぼされてしまうと考えているのか、イライザを所定の位置にまで誘き寄せ、誘き寄せたところを夢の世界から完全に追放し、消滅させることだけがイライザを葬る策だと言う。
人間で例えるのならば酸素に満ちた地上からいきなり真空の宇宙へ放り出されるようなものであり、キラー・クラウンのように事前に現世へ現れるための実体(人間で言う宇宙服)を用意する暇すら与えなければそのままイライザを滅ぼすことが出来るだろう。
とは簡単に言うけれど、相手側が呼ばれてそう簡単にぬけぬけとやって来るものなの?
(夢の案内人が言うように、簡単に呼び寄せることはできるのかどうかが不安でもある・・・・・
イライザも馬鹿ではないだろう、呼び寄せることが出来たとしても警戒してあちらの方から寧ろ攻撃を何かしら仕掛けてくるであろう可能性も考えられる・・・・・)
夢の案内人
「呼んだところで大人しく着いてくることは無いでしょうね……」
夢の案内人
「ですが、貴方がイライザの前に辿り着いた後、撤退するようにして移動すれば確実に追いかけて来るでしょう。」
夢の案内人はイライザの力を前に負けを悟って退却するように見せることで、弱者をいたぶり、ジワジワと弱らせる事を好む卑劣なイライザの性格を逆手に取って誘き出すことが出来るだろうと言う。
これが成功すればイライザは確実に滅びるだろう。
だが、そこに辿り着くためにはキラー・クラウンのような高等幻魔が立ち塞がり、辿り着けたとしても上手く逃げる事が出来なければ霊夢の死……そして幻想郷の崩壊は確定的なものとなってしまうだろう……
追いかけられている間に勘づかれたらどうするの?
(ついさっきイライザと遭遇した時に感じた得体の知れなさは紛れもなく本物だった・・・・・
夢の案内人の言うようにおびき寄せることに成功して途中まで上手くいったとして、もし途中で勘づかれたらその時にはどういう手を打つつもりなのか、今の内に考えておかなければならない・・・・・)
夢の案内人
「気付かせないように死力を尽くして、逃げ、戦うしかありません。
あの女の性格から貴方を一瞬で消し去るような事はしないでしょうから……」
この作戦が成功するかどうかは霊夢の回避能力、そしてイライザの陰惨な性格の二つに賭けるしか無い……もし、霊夢が回避しきれなければ……もしイライザの気分や興味、感心が霊夢に向かわなくなれば……もし誘導に失敗してしまえば……
夢の案内人
「ですが、もし……この策が見抜かれた場合……貴方達は確実に終わる……」
言わずもがな、全ては破滅し、終わりを迎えてしまうだろう…
広大な幻想郷の中でイライザの術から唯一逃れることが出来た最後の希望たる霊夢が消されてしまった場合、もはや誰もイライザに対抗することが出来なくなる……全ての希望は霊夢一人にかかっている。
上手くいくかどうかなんて気にしている余裕はない、とにかくやるしかないってわけね・・・・・
(こうなったらもうなにがなんでもやるっきゃないと悟り、霊夢は覚悟を決める・・・・・
やれば自分の命が尽きるかもしれないが、やらなければ幻想郷がイライザの手に落ちる・・・・・
自分の命を危惧している場合ではない・・・・・)
夢の案内人
「貴方ならそう言ってくれると信じていました。
本当なら私ももっと手助けをしたいのですが……
残り私に出来るのは貴方をなるべくイライザの近くへ飛ばすことだけです。」
声の主は霊夢に対してもっと支援を行いたいと言う考えはあるものの、引きずり出さない限りイライザに手出しできない理由があるようで、霊夢の覚悟を決めた応え聞くと、少し安心しているように聞こえる……
私がやらなきゃ誰がやるって言うのよ・・・・・
(なんとしてでもイライザ討伐を成功させなければならない・・・・・
今のこの空間の幻想郷は、擬似現実だ・・・・・
霊夢がこの作戦を成功させなければ、この悪夢は悪夢ではなく、現実のものとなる・・・・・)
夢の案内人
「では私が貴方をイライザの懐まで移動させます。
そこが私の力が及ぶ最大限可能な悪夢の世界誘導地点でもあります。
どうか……御武運を………」
霊夢の目の前で浮いていた桃色のシャボン玉が膨らみ始め、何倍にも大きくなるとそのまま霊夢の体を包み込み、幻魔が犇めく悪夢と恐怖の世界……夢に干渉する種族でなければ入ることすら叶わない悪夢の世界の深層へと誘って行く……
【→悪夢の世界/深層】
《オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……》
霊夢の体を包み込んでいたシャボン玉が徐々に力を失い消滅する事で霊夢の眼前に広がるのは空が緑、紫、赤と様々な色へと変化する不気味な空が何処までも広がり、静寂に包まれ、寂れた博麗神社のような空間となっておる。
辺りを見渡すと、悪夢の博麗神社の正面側……つまり、博麗神社から見て外の世界に位置する辺りに、無数の廃館や朽ちた病院、寂れた学校やらが無秩序に融合する事で歪ながらも巨大な要塞が形成されている。
その異形の要塞からは無数の悪意ある魔力が蠢いており、要塞の中枢からは途方もない悪意と魔力が感じられる……この力の正体こそがイライザの本体なのだろう。
夢の案内人
「…………向かったようですね。
では、私も準備する事にしますか。
もっとも……"彼女達"が素直に協力してくれると言う根拠はありませんが……」
霊夢をイライザが支配する悪夢の深層、幻魔の世界へと送り込んで直ぐに霊夢の前には頑なに姿を現すことが無かった声の主が桃色のシャボン玉があった場所に現れる。
彼女は白黒の衣装に身を包み、青髪青瞳、眠たげな瞳をしながら、その手には悪夢の破片である桃色のスライムのようなモノを手にしている。その名は"ドレミー・スイート"幻魔と同じく夢を支配する存在であるものの、悪夢から生まれ、悪夢を支配し、新たなる悪夢を増殖させ続ける幻魔達とは対照的に人妖達の精神を蝕む悪夢を喰らい、幻魔から人々の安眠を守る獏だ。
霊夢がイライザを誘き寄せるまでの間に"彼女達"の元へと移動し、その助力を乞い、イライザもろとも幻魔達を一掃しなければならないのだが……その説得も恐らくは一筋縄では行かないだろう。霊夢がその命を賭けて幻魔達の巣窟からイライザを引きずり出す以上、こちらもまた命を賭けよう。
全てはイライザを討ち滅ぼすために。
・・・・・歪で不気味な場所ね、本当に悪趣味・・・・・
(イライザの拠点の前まで移動させられると、その異様な光景から歪で不気味で悪趣味だと述べる・・・・・
しかし、イライザの凶悪さはこんなものでは済まないだろうと思いながら、霊夢は要塞へ向けて一歩踏み出す・・・・・
中に入るまでに何か罠がないとも限らない、慎重に進まなければならない・・・・・)
《キャアアアアアアアアアアアアアッ》
霊夢が要塞に向かって歩み始めたところ、要塞の至るところから様々な悲鳴が聞こえ始める……その数は一つや二つではない……それも、ただの悲鳴ではなく、断末魔の叫びのようなものが幾つも木霊して聞こえて来る……様々な者達の恐怖が形を成した悪夢の要塞である以上、どれだけおぞましいものが潜んでいてもおかしくはないだろう。
要塞の入口と思われる、何故か開け放たれ、所々に返り血が付着し、ボロボロになった布切れがカーテンのようひはためき、扉の奥、カーテンの向こうには暗闇が広がっており、その暗闇の奥から何百もの視線が感じられる……
・・・・・気が狂いそうだわ・・・・・
(この悲鳴や視線がイライザの敢えて作り出した演出なのか、それとも今本当に起きていることなのか、わからなくなってくる・・・・・
今正に誰かが襲われて断末魔の悲鳴を上げていたとしてもおかしくはないほど狂気に満ちた世界であるため、悲鳴がイライザによる演出であろうとなかろうと、生々しく聞こえてくる・・・・・)
【悪夢の要塞/第一階層】
幸いにも要塞への侵入を阻まれることはなく、要塞内部への侵入に成功する。要塞の最下層部分、つまり第一フロアは床、天井、壁の全てが錆び付いた鉄板のようなもので構成され、窓が一つも存在せず、証明もまともに無い
また、通路の両側には無数の鉄製の扉が並んでいるものの、部屋の内容を説明するプレートには
「Δωμάτιο βασανιστηρίων(拷問部屋)」
「Αίθουσα επεξεργασίας πτώματος(死体処理室)」
「Αίθουσα εκτέλεσης(処刑部屋)」
等、恐ろしい単語の部屋しか存在せず、通常の建造物にあるような応接室や食堂、居間等は一切存在せず、ひたすらに他者を苦しめ、虐げ、命を奪うことのみを求め、存在の大半をそれらに頼っている幻魔らしいものとなっている。
鉄と血の濃密な臭いが充満しており、通路の奥の暗闇からは絶え間無く悲鳴や断末魔、唸り声が聴こえて来る。現世にいる生命体や知的存在とは根本から異なる者達である事が伝わってくる。
・・・・・まるで刑務所・・・・・いや、それ以上ね・・・・・
(悪夢の中の現実というのは、まさしく悪夢と呼ぶに相応しい世界だ・・・・・
捕まれば二度と安息は訪れないであろう恐怖と拷問の詰め合わせ・・・・・
悪夢という言葉を具現化した建物が、この要塞なのだろう・・・・・)
《ガチャッ》
霊夢が通り過ぎた部屋の扉が開け放たれ、その中から巨大な口しか顔に無い者、目が五つある者、右腕がチェーンソーになっている者等、人型をしながらも、顔のパーツが欠如していたり、関節を無視して動いている等、異様な姿をした者達が鉈やナイフを持って霊夢を追いかけ始める。
その異形達は共通して返り血に染まっており、その目や感じられる雰囲気は明確な悪意と殺意に満ちている……
・・・・・っ!
(いくら博麗の巫女と言えども、こんな不気味な場所でこんな異様な見た目の敵に追いかけられては、人間に元々備わっている恐怖心がわいてくる・・・・・
霊夢は猛スピードで要塞内を走りながら、弾幕でなんとかしようと応戦し始める・・・・・
人間、本当に怖い時は声なんて出ないとはよく言うが、まさか身をもって体験することになるとは・・・・・)
《ヒュオッ》
悪夢の拷問官達はそのおぞましい見た目とは裏腹に、耐久性そのものはさほど高くはなく、キラー・クラウンが生み出した道化師軍団とそれほど代わり無く、容易に撃破する事が可能であり、霊夢の放つ光弾が数発当たるとそれだけで塵となって消えていく。
だが、再現無く現れる大量の拷問官達による波状攻撃から逃れるべく要塞内を駆け抜ける霊夢であったものの、通路の曲がり角で待ち伏せしていた頭部の存在しない拷問官が手にした無数の棘が付いた棍棒を霊夢目掛けて振るい、打ち倒そうとする。
きもっち悪いのよアンタ達・・・・・!!!!!
ドドドドドドドドドッ・・・・・!!!!!
(霊夢は四方八方へとめがけて弾幕を撃ち放ち、拷問官たちを消滅させにかかる・・・・・
耐久力が高くないのがせめてもの救いか・・・・・
しかし、気持ち悪さでは圧倒される・・・・・)
《ズオォォォォォォォォォォ…》
通路の角から不意打ちを仕掛けようとした拷問官、通路から追いかけてくる異形の拷問官達を全方位に向けて撃ち出された弾幕を受け、次々と塵となって崩れ去って行くが、その後ろから押し寄せる拷問官が直ぐに新たな波となって霊夢に迫る。
そんな中、無数の拷問官に追いかけられた霊夢が一際開けた広間に到着すると、異形の群れが広間の入口で突然動きを止める。それは単に脅威が去ったのではなく、寧ろその反対、彼らを遥かに凌ぐ脅威が支配する場所であることを示している……
その証拠に、広間の中央にある巨大な断頭台から強烈な悪意と殺意が混ざり合った異様な魔力が感じられる。この魔力はキラー・クラウンと同等かそれ以上の魔力となっており、殺意の点で言えばあのイライザにも比肩するほど……
・・・・・あの化け物たちが計画的に私をここへ誘導したのか、それともただの偶然かはわからないけれど、いずれにせよ私は「飛んで火に入る夏の虫」ってわけね・・・・・
(イライザと対峙する前に、早くもイライザとは別の可能性がある何者かの脅威を感じる・・・・・
あの化け物立ちに自分をここまで計画的に誘導することが出来るほどの知能があるかどうかまではハッキリとはわからないが、いずれにしても今自分は窮地という名の鳥籠に囚われた・・・・・)
悪夢の処刑者
『グゥゥゥゥゥゥ……』
断頭台の裏からは顔を隠すように深く黒い頭巾を被った身長3m以上はある見上げるような大男が地響きのような唸り声をあげながら現れる。
全身には無数の血管が浮かび上がり、両手で持てる歪な血染めの斧のようなものを手にしており、頭巾には血で文字が描かれていると言う異様な風貌をした大男であり、明らかに対話が通用しないと言うことがわかる……
・・・・・話し合い・・・・・は通用しなそうね・・・・・
(イライザと対峙する前にこんな巨大な化け物をなんとかしなければいけないという現実が、霊夢に襲いかかる・・・・・
さすがは悪夢の要塞、と言ったところか・・・・・
しかし、不思議と負ける気もしない・・・・・)
悪夢の処刑者
『グォォォォォォ!!!』
《ゴオッ》
悪夢の処刑者と霊夢の間には親子以上の体格差があり、一見するとどう足掻いても勝ち目など無さそうに見える……だが、幻魔達は何も守れない、救おうとさえしない。ただの破壊衝動と殺戮衝動のままに生きるだけの怪物だ。幻想郷の未来を、運命をかけて挑む霊夢とは体格差以上に覚悟や決意に大きな差がある。
悪夢の処刑者は手にした歪な斧を右手だけで持ち、そのまま大きく振り上げ、地鳴りが生じるほどの足音をたてながら霊夢に向けて迫り、手にした斧を振り下ろすことで霊夢の体を切り裂こうとする。
line.me/ti/g2/bokaH6F0kT18R7RNJq_s-A
139:博麗の巫女◆gI:2021/05/30(日) 12:15 あまり私を見くびらないことね・・・・・?
ドガガガガガガガガガガガッ!!!!!
(霊夢は悪夢の処刑者が斧を振り上げると同時に、瞬時に飛んで攻撃を避けるとそのまま上空から弾幕の雨と言わんばかりの猛攻撃を立て続けに放ち始める・・・・・
この攻撃が効くかどうかは別として、これで少しでも動きを鈍らせることが出来ればまだいい方である・・・・・)
《グオッ》
悪夢の処刑者の体に霊夢が放つ弾幕が着弾し、ダメージを受けていくものの、その巨体故かかなりのタフさと頑丈さを持つ事から決定打にはならないようで、霊夢の弾幕を受けながらも弾幕の中を突っ切るようにして飛び上がり、手にした斧を振るって反撃しようとする。
くっ・・・・・!
(霊夢は相手が巨体のくせして思ったよりも速く動けることに対して少々驚きながらも「その程度じゃあ私には傷一つつけられないわよっ・・・・・!!!!!」と言い、再び弾幕を放ち始めふ)
くっ・・・・・!
(霊夢は相手が巨体のくせして思ったよりも速く動けることに対して少々驚きながらも「その程度じゃあ私には傷一つつけられないわよっ・・・・・!!!!!」と言い、再び弾幕を放ち始める・・・・・
しかも今度は、顔面に集中的に放ち始める・・・・・)
【途中送信すみません!】
《ドゴオォォォォォォォォォォッ》
悪夢の処刑者が勢い良く斧を振るうが、霊夢が避けた事で空振りするとそのまま続けて攻撃しようとするものの、距離を詰めすぎたせいか、霊夢の放った至近距離からの弾幕を避けられずに顔面部分に直撃し、彼の被っている黒い頭巾がところどころ破れる。
破れた頭巾の切れ目の下には無数の血走った目玉と赤黒い管のような小さい触手が腐肉に群がる蛆のように大量に見え、相手の素顔はかなりおぞましいものである事が見える……
隠したい気持ちもわかる顔ね、本当に不気味・・・・・
ダダダダダダダダダッ!!!!!
(霊夢は顔の頭巾が敗れたのを見て、やはりある程度は効いているようだと確信すれば、そのまま弾幕攻撃を顔面、及び今度は足元にも放ち始め、相手を転倒させようとする・・・・・
今の自分は攻撃手段は一応弾幕のみに留めているが、悪夢の処刑者に関しては斧を振るうだけしか攻撃手段がないようにも見える・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲギャギャギャギャギャッ!!!』
霊夢の弾幕を顔と脚に受けた悪夢の処刑者は被っていた頭巾が完全に無くなり、バランスを崩して地面に倒れ込み、手にしていた斧を手放し、前のめりに倒れた状態になるものの、悪夢の処刑者の脇腹から百足の脚のようなものが生え、斧を手放した代わりに両手が鋭い鉤爪を生やし、黒い手袋を内側から貫く……
悪夢の処刑者は無数の目玉と触手が蠢く中で大きく裂けた口を持ち、不快な笑い声をあげ始め、そのまま霊夢に向かってこれまで以上のスピードで飛びかかり、霊夢の体を引き裂こうとする……
・・・っ!?
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢は猛スピードで突進してきた悪夢の処刑者に向かって弾幕を放ちながら同時に宙高く飛行して応戦する・・・・・
もっと動きがのろいものかとばかり思っていたが、巨体の割りには見合わずに早いその動きとその異様な見た目に、霊夢は顔をしかめている・・・・・
人間である霊夢からすれば見た目も動きもパワーアップした巨大なゴキブリと戦っているようなものだ・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギャッギャッギャッ!!!』
複数の血走った目、百足のように這い回る姿、無数の蛆が顔に群がっているような生理的な嫌悪感、骨や筋肉すら存在しいような針金のよに細く鋭い爪というように、人間が気持ち悪いと判断する様々な要素を取り込んだ見るもおぞましい姿となった処刑者は宙へ逃れた霊夢に向かって追撃すべく飛び掛かる。
だが、この場所は室内であり、どれだけ高く飛ぼうともその高度には限界がある……霊夢の放った弾幕によって体の一部が消し飛ぶものの、消し飛んだ箇所には先程まで霊夢を追いかけ回していた異形の処刑者の手足や頭が生え、攻撃する程に変異を繰り返すようになっている。
決定打に欠けた状態では絶望的な消耗戦を強いられ、肝心のイライザの元へ辿り着く事すら出来なくなってしまうだろう……だが、幸いにもこの広間には攻撃に使えそうな"物"がある。これが飾りで無ければ、致命的なダメージを与えられる可能性は高い。
・・・あーっもう!!!!!こうなったら手当り次第よ・・・・・!!!!!
ガッ・・・・・!
(近くにあった不気味な甲冑が持っていた剣を掴めば、そのまま霊夢は剣を振り上げてこれで何とかなるならと悪夢の処刑者の体を突き刺したり、切り刻んだりし始める・・・・・
しかし、剣がそこそこ重いことや、剣なんて使い慣れていないことも相まって動きが鈍くなっている・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギィィィィィィィ!!!』
精神への干渉や攻撃、実体の無いものへの攻撃は幻魔の専売特許的な面があり、霊夢が拾って振るう幻魔の剣が処刑者の体に当たると、処刑者自身にもダメージが通る。血液が存在しないため流血はしないものの、斬り傷が再生されずに残る。
だが、剣の硬度は処刑者と比べると脆く、一度振るっただけで折れてしまい、連続的な使用は不可能であり、これもまた決定打に欠ける……
処刑者は今度は口を大きく開き、四重の牙を剥き出しにして霊夢の体を喰い千切ろうと再度飛び掛かる。だが、この広間には火力や威力においては最適と思われる"物"が存在している。そこへ上手く誘導し、作動させる事が出来れば処刑者を撃破することが出来るかもしれない。
こうなったらっ・・・・・!!!!!
ガッ・・・・・!
(霊夢は元々は悪夢の処刑者の持ち物だった斧に目をつけ、これを使って悪夢の処刑者に反撃をしようとする・・・・・
しかし、形の歪さが明らかに人間用の作りではなく、悪夢の処刑者用に作られている武器と言っても過言ではないような形だからか、どうも振り上げづらい・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギャアァァァァァァァァッ!!?』
元々は悪夢の処刑者の持ち物だったものの、悪夢の処刑者から奪い取り、霊夢が振るった斧が本来の持ち主である処刑者の頭に直撃すると、処刑者の頭が切り落とされ、床に落ち、落ちた頭部が寄生を発しながら塵になって消滅していく……
だが、頭を失った悪夢の処刑者が再度頭部を生やそうと力を集中させ始める。今の一撃で本来の対象である人間の精神体よりも遥かに強固な悪夢の処刑者の頭を切り裂いた事で斧はかなりの消耗を受けてしまっており、あと三回も振れば破壊されてしまうだろう。
くっ・・・・・!
(悪夢の処刑者の体の頑丈さには斧の頑丈さは劣るのか、人間用ではない上に初めて使う武器ではあるものの、ハッキリとこの武器がもう長持ちはしないだろうということがわかる・・・・・
勝負を決するのは、この斧で悪夢の処刑者を仕留められるかどうか・・・・・)
悪夢の処刑者
『ォ……オォォォォォオォォォオオォ……』
《バキバキバキバキバキ》
切断された悪夢の処刑者の頭部断面から、頭ではなく、3mもある巨大な蜘蛛の脚が生え、処刑者の背中から憎悪に歪んだ老若男女の顔が無数に浮かび上がり、呻き声をあげ、両手足の関節が明らかに本来ならば曲がらない方向へとねじ曲がり、首の断面から生えた蜘蛛の脚と合わさってガサガサと地を這い回る蜘蛛のように俊敏に霊夢に向かって飛び掛かる。
頭を切り落としても絶命しない。
新しく無数の顔を出現させることが出来ると言う、明らかに生物の理から外れた異形……それこそが幻魔なのだろう。
ああぁぁああああああぁああぁぁぁぁきもっち悪い!!!!!
ゴッ!!!!!
(もはや斧の耐久力に関して気にせずに無我夢中で悪夢の処刑者に向かって斧を振り下ろす・・・・・
もう斧がどうなろうととにかく目の前のこの気持ち悪い異形のモンスターを一刻も早くこの世から消し去りたいという気持ちでいっぱいになっている・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!』
悪夢の処刑者に幾度と無く振り下ろされた斧が悪夢の処刑者の巨体を切りつけて行くものの、切り裂いた傷口から新たな顔が現れ、その無数に存在する顔が口を大きく開けて笑い始める。
それはまるでどれだけ攻撃しても無駄だと言わんばかりに……
その証拠にどれだけ切り裂こうとも処刑者は傷の再生こそ遅れていれど、それも時間と共に回復してしまうため威力が弱すぎる……
そんな中、悪夢の処刑者が潜んでいた部屋の中央にある巨大な"断頭台"が視界に入る。上手く誘導してこの断頭台に付けられた巨大なギロチンの刃を落として処刑者の体を両断する事が出来れば確実に打ち倒せるだろう。いや、勝機があるとすればそれしかない。
こうなったら・・・・・
(一か八か、悪夢の処刑者を挑発するなりなんなりして誘導し、断頭台へとおびき寄せて攻撃するしかないと悟る・・・・・
そして「はぁ〜い化け物さぁ〜ん♪こっちよこっちぃ〜♪そんなのろっのろした動きじゃあ私をしてることは出来ないわよぉ〜?」と、悪夢の処刑者を馬鹿にし始める・・・・・)
悪夢の処刑者
『ゲキャキャキャキャ!!!』
終始言葉や言語らしいものを使用していない事から言葉による意志疎通が出来るのかどうか、挑発が効果を出しているのかどうかは不明だが、悪夢の処刑者はけたたましい笑い声をあげながら蜘蛛のように床を這い回り、霊夢に向かう。処刑者の背中や傷口に現れた無数の顔の口内から新たに尖端が鋭く尖った蜘蛛の脚が伸び始め、純粋な手数も増えつつある……
《本当に気持ち悪いわね・・・・・》
(霊夢は内心背筋に寒気が走るほどの気持ち悪さを感じているものの、ここで怯むわけにはいかず、霊夢は断頭台へと悪夢の処刑者を勘づかれないように誘導する・・・・・
ギロチン程度で本当に倒せるのだろうかという半信半疑な部分もあるが、やるしかない・・・・・)
《本当に気持ち悪いわね・・・・・》
(霊夢は内心背筋に寒気が走るほどの気持ち悪さを感じているものの、ここで怯むわけにはいかず、霊夢は断頭台へと悪夢の処刑者を勘づかれないように誘導する・・・・・
ギロチン程度で本当に倒せるのだろうかという半信半疑な部分もあるが、やるしかない・・・・・)
悪夢の処刑者
『ギシャアァァァァァァァァァッ!!!』
《バッ》
断頭台近くにいる霊夢を追って這い寄る処刑者は残り10mとなったところで大きく跳び跳ね、無数の顔の口内から伸びた幾つもの蜘蛛の脚が霊夢の体を貫こうと飛び掛かる……
うわっ!?
バッ・・・・・!
(飛び跳ねてきた悪夢の処刑者を間一髪で避けると同時に、あまりの気持ち悪さに思わず挑発することすら忘れてしまい声を上げる・・・・・
しかし、同時に運良く断頭台まで誘導することに成功する・・・・・)
悪夢の処刑者
『キチキチキチキチキチ…』
飛び掛かりを回避した事で断頭台にて縄で吊り上げられた巨大な刃の真下にまで頭は無くなってはいるものの誘導する事に成功しており、このまま縄を切って刃を落とせば悪夢の処刑者の体を両断させることが出来るだろう。
だが、その事を知ってか知らずか、霊夢目掛けて切り落とされた頭部の断面から伸びた無数の蜘蛛の脚が一斉に霊夢目掛けて伸ばされ、霊夢の体に突き刺そうとする。
往生際の悪いやつね・・・・・!
(霊夢はこの状況でまだ平然と反撃してくる悪夢の処刑者の往生際の悪さ、しつこさに恐怖や気持ち悪さを通り越してある種の関心すら覚えながら、今度は頭部の断面から伸びてきた無数の蜘蛛の脚を誘導して、相手の攻撃を逆に利用して縄を切ることでこの戦いを終わらせようとする・・・・・)
《ザンッ》
悪夢の処刑者
『ギギッ……ギャアアアアアアアアアアアッ!!!』
霊夢によって、伸ばした蜘蛛の脚で自ら縄を切ると、そのまま悪夢の処刑者の胴体……無数に浮かび上がっていた顔の中でも一際大きな顔が真っ二つに両断され、切り離された処刑者の上半身と下半身がそれぞれジタバタともがき、無数に浮かぶ顔の全てが断末魔の叫びを上げながら黒い塵となって崩れ、消えていく……
更にそれに呼応するように周囲の通路で霊夢が逃げることを阻止していた無数の異形の拷問官達も同じように呻き声をあげながら崩れ、消滅していく。
上手くいったようね・・・・・
(相手の攻撃を逆に利用して縄を切るという思いつきの作戦が、意外と上手くいったことでなんとか安心し上記を呟く・・・・・
そして「にしても・・・・・他の奴らも一気に消滅するなんて、あの気持ち悪いやつと魂か何かしらが繋がってでもいたのかしら・・・・・」と呟き、その場を後にしてイライザのいる場所目指して向かってゆく・・・・・)
【幻魔の要塞 第二階層】
《コォォォォォォォォォォ……》
悪夢の処刑者を打ち倒した事で妨害していた拷問官達が死滅した影響で何の障害にもぶつかることなくフロアを進めるようになった。そして霊夢の"勘"が示すがままに進んだ先には上層へと通じる階段があり、それを登りきった先に待ち受けていたのは、ところどころに乾いた血の染みが点在する寂れた病院のようなフロアに出る。
断末魔や悲鳴が聞こえていた先程までとは打って変わり、異様なまでの静寂さに包まれているのだが、常に誰かに監視されているような異様な視線を感じる。
・・・・・まだ騒がしい方がマシだったかもね・・・・・
(ここまで静かだと、人間に元々備わっている恐怖心がわいてくる・・・・・
さっきまでの断末魔や悲鳴が四方八方、ありとあらゆる場所から聞こえてきていた時の方がまだマシだったかもしれないと独り言を呟く・・・・・)
《ソペタペタペタペタペタ……》
霊夢が十字路を通り過ぎると、裸足の人間が凄い速さで走り抜けるような音が聞こえてくる……このフロアは寂れた病院のようなエリアとなっている事もあり、無念のまま病死した亡者達の怨念が染み込み、腐敗した無数の骸が生きている霊夢を憎んでいるような……そんなおぞましい視線が物陰や通路の影、背後からの感じられる。
だが、その視線のしたところを見ても、誰も居ない、何の痕跡もない……走り抜けた何者かの姿もわからない……直接的な攻撃をしてきた第一階層の拷問官達とは違って、姿を見せない不気味さが感じられる。
《・・・・・得体の知れない不気味さはあるけれど、攻撃してこない分まだいい方ね・・・・・》
(どこに何がいて何をしているのかがわからないという恐怖こそあるものの、今の時点では悪夢の処刑者のようにこちら側に攻撃を仕掛けてくるわけではない分、実害が出ないのであればまだいい方だと前向きに考えることも出来る・・・・・
このまま問題なくただ恐怖を感じるだけでイライザのいる場所までたどり着ければいいのだが・・・・・)
《ズッ》
足音のした十字路の方向、つまりは霊夢の直ぐ後ろに突然、感じられる視界がいっそう強くなる。それは真後ろに何者かが現れたと言うことを示しており、これまで様子見していた悪夢の化身が遂に牙を剥き始めてきたのだと思われる。
上手く後ろに迫った何者かに対して先制攻撃を仕掛けることが出来れば一気に有利になれるだろう。
・・・・・
ズゥッ・・・・・!!!!!
(霊夢は攻撃する直前まで気づいていないふりをして、そしてそのまま振り返ると同時に弾幕を連撃する・・・・・
正直、悪夢の処刑者同様にこれくらいで倒せるわけでもなければ、何とか出来るわけでもない敵だろうということは想像がつくが、少しでも何かしらのダメージを与えることが出来るなら・・・・・)
《ドドドドドドドッ…》
確かに視線を感じた筈であり、攻撃のタイミングも完璧だった筈であるにも関わらず、霊夢の放った弾幕は背後の通路の奥にある壁に激突し、爆音が周囲の沈黙を引き裂いて鳴り響く……
その次の瞬間、霊夢が振り返った瞬間を狙ったように、霊夢の背後……先程までは正面だった方から無数の手が霊夢の体を拘束しようと伸ばされる。
なっ・・・・・!?
ぐっ・・・・・!
(霊夢は予想外の出来事に反応が遅れ、そのまま無数の手に捕まってしまう・・・・・
もし最初からこうやって捕まえることを狙った上でのことだったのだとしたなら、こればかりは迂闊だった・・・・・
自分が隙を見せたのが悪い・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ゲラゲラゲラゲラゲラ!!
ニンゲン…ウマソウナ……ニンゲン……』
辺りの暗闇に紛れて姿を現した幻魔……その姿はまさに"異形"そのものであり、仮面のような顔に無数の孔が開き、おぞましい数の手で形成されたその姿は、最初は辛うじて人に近い姿を取っていたキラー・クラウンや悪夢の処刑者とは違い、完全に人の形を放棄したものとなっており、四肢を拘束された霊夢に向かって無数に存在している頭の一つが大きな口を開けて霊夢の頭を噛み砕こうと近付いて来る……
そう簡単に食べられるわけないでしょーがっ!!!!!
ドォッ・・・・・!
(霊夢は火事場の馬鹿力と言わんばかりに拘束状態から必死にもがいて片手を引き抜けば、そのまま幻魔の大口へとめがけて無数の弾幕を放ち始める・・・・・
自分でもこの状態から攻撃ができることに内心驚いている・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グ……ゲゲゲゲゲ………』
《ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタ……》
霊夢の放った弾幕がカシキの頭の一つを捉え、打ち砕くと、霊夢から手を離し、凄まじい勢いで後ろへと飛び退いて行き、再び通路の奥にある暗闇の中へと溶け込もうとしていく。
くっ・・・・・!待ちなさいっ・・・・・!
ゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢は暗闇に溶け込もうとする相手に追加の弾幕攻撃を放つ・・・・・
ここで逃せばまたさっきのように不意打ちの襲撃を仕掛けてくる可能性が高く、博麗の巫女と言えど人間である霊夢は全ての不意打ち攻撃に即座に対応できるという保証もない・・・・・
早めに仕留めておく必要がある・・・・・)
霊夢の放った弾幕が辺りの暗闇を切り裂いて突き進んで行くものの、カシキ自体には命中せずに逃れられてしまう。
カシキの姿が消えると、再び周囲から暗闇の奥からカシキがじっと様子を伺っているようにも見える……何時、何処から攻撃をされるのかわからず、視界すら満足に使えないのですが暗闇の中、言い知れぬ恐ろしさを引き立たせている。
《厄介なやつね・・・・・》
(四方八方へ警戒をしながら、霊夢は札を構える・・・・・
相手は暗闇に見を潜めることが出来る、言わば闇の具現化とも言えるような魔の存在・・・・・
人間と比較すれば圧倒的有利な立場にあり、それは例え博麗の巫女だとしても変わりはないのかもしれない・・・・・)
《ズルッ》
目の前の暗闇に消え、微かな沈黙の後に、前後左右のどちらでもない、霊夢の頭上にカシキが音もなく姿を現し、無数の手で霊夢の両手を抑えると同時にその首を締めようとする。
っぐっ・・・・・!?
(人間の力では抵抗も無に等しいほどの力で首が締まってゆく・・・・・
ここで終わるわけにはいかないとはわかっているものの、ろくに抵抗できない状況であるのもまた事実であり、このままではそう遠くないうちに窒息死してしまう・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ヒヒヒヒヒ……イヒヒヒヒヒヒッ!!!
クルシメ……モットクルシメ……!!!!』
カシキの伸ばした手が霊夢の首を締め始め、更に反撃が出来ないように両手を押さえている現状ではまともに対抗することが出来なくなっているだろう……それが"普通の人妖"であれば。
霊夢の脳裏には、巫女としての勘に近い"直感"が次の対策を啓示する。
霊夢の持つ霊力は邪悪な存在を討つ力。両手は封じられてはいるが、練り上げた霊力を蹴りと共に繰り出し、当てることが出来れば逆転を狙えるかもしれない。
・・・・・っ・・・・・こっ・・・・・のっ・・・・・!!!!!
グォンッ!!!!!
(霊夢は首が締まってゆく中で、出せる限りの力を出して霊力を蹴りと共になんとか繰り出す・・・・・
この攻撃を機に、霊夢の反撃からの勝利が先か、それとも霊夢が力尽きるのが先か・・・・・
どちらか一つなのは間違いないだろう・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『!!!?』
霊夢の繰り出した霊力を纏った蹴りがカシキの頭の一つを蹴り飛ばすと、カシキは霊夢の首と手を拘束していた無数の腕を離し、そのまま地面に倒れる。特に意識をしていなかったにも関わらず、霊夢の蹴りはカシキの無数のある頭の中でも核に位置するモノを破壊しており、それが甚大なダメージとなってカシキを追い詰めている。
カシキ・ヒェリ
『グゲゲ……グゲ……』
核を破壊して大ダメージを与えることにこそ成功したものの、カシキは無数の腕をバタバタと無秩序に動かしてもがきながら無数にある頭の口から幾つもの新しい手を伸ばし始めており、このまま放っておけば悪夢の処刑者と同じように厄介な形態変化を遂げられてしまうかもしれない。
今この場で霊力を活かした渾身の一撃を撃ち込んでカシキを丸ごと消し飛ばすようにすれば、変異しきる前に倒しきれるかもしれない。
げほっ!?げほっ・・・!?
(霊夢は腕が離れたことで締まっていた首がなんとか開放され、咳き込む・・・・・
しかし、離されたからといって隙を見せるわけにもいかない・・・・・)
これでも喰らいなさい化け物っ!!!!!
グォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は霊力を込めた無数の弾幕を容赦なく撃ち始める・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ギ……ギイイィィィィィィィ……!!!』
カシキの体が次々と霊夢の放つ弾幕によって打ち砕かれていく。単純な耐久力で言えば、悪夢の処刑者よりも劣り、あのキラークラウンと同等ぐらいしか無いためか、次第に無数の頭や手が砕け、消滅する中でのたうち回りながらも耳を刺すような超音波のような断末魔をあげ、霊夢の動きを封じようと足掻く。
くっ・・・・・!?往生際の悪いやつね・・・・・!
(霊夢は耳を押さえながら、高く飛んでなるべく悪足掻きの餌食にならないように避難するかのようにカシキ・ヒェリの最後の姿を見下ろしながら往生際の悪いやつねと呟く・・・・・
耐久力は低いクセして執念深さは末恐ろしいものを感じる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『アァァァァァァァァァッ……!!』
体の大半が崩れながらも、ジタバタと暴れまわり続け、再生を行おうとしており、更には自身を見下ろす霊夢を見て、ここが室内であり天井が限られている事を利用してカシキが砕けずに残っていた頭の一つが口を大きく開き、口内から四つの手を伸ばして霊夢を捕らえようとする。
しつこいっ!!!!!
ドッ・・・・・!
(霊夢は四つの手を伸ばしてくる相手に向けて、先ほどと同様に霊力を込めた弾幕を放って応戦する・・・・・
体の脆さとは裏腹に、ここまで往生際の悪い相手とはあまり戦いたくはない・・・・・
闇に住まう者達の執念深さを垣間見た気がする・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グゲゲ……ゲゲゲッ……』
霊夢の放った弾幕によって無数の腕を伸ばして頭部が消し飛ぶものの、光弾だけではダメージを与えて倒すことが出来るものの、決定打には至らずにまるで木の枝に花が咲くように無数に伸ばされた腕から新しい頭が生え、反撃として無数に伸ばされた腕の掌から紫色の光弾がほぼ全方位から霊夢に向けて放たれ、大爆発を巻き起こそうとする。
なっ・・・・・!?
ヒュォッ・・・・・!
この状態でまだ抵抗するの・・・・・!?どこまでしぶといのよっ・・・・・!
(霊夢は咄嗟の出来事に驚愕するものの、紙一重でなんとか攻撃を避けることに成功する・・・・・
しかし、もはや完全回復もできないのではないかと思うほどに追い詰めたところでまだこれだけの攻撃を出来るほどの生命力や攻撃力を残していたとは、迂闊だった・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『グ……ググググ………!!!』
霊夢が驚愕し、攻撃を止めた途端にカシキの体には再び幾つもの新しい頭や手が生え始め、元通りに再生し始める。生半可な攻撃では完全に倒すことは出来ない。彼を完全に葬るためには広範囲を浄化できるような技でないと倒せないのかもしれない。
あと少しだったのに・・・・・!
(この先、この異変の総大将であるイライザとの対峙も控えている中で、早い内にカシキ・ヒェリとの戦いを終わらせようと考えていたが、その生命力と再生力をあまく見くびっていた・・・・・
弾幕程度では霊力を込めても一時しのぎにしかならないという事実を叩きつけられる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『イヒヒヒヒヒヒ……キヒヒヒヒヒヒヒ……ケヒヒヒヒヒヒヒ……!!』
霊夢の目の前でカシキはみるみる内に元の姿へと戻って行く……霊夢が弾幕によって破壊した箇所は全て再生され、手を緩めれば再生し、通常弾幕程度では致命傷を与えることは出来ない。
その凄まじい生命力と再生力を用いることで不死身がごとき強さを見せたカシキは無数にある手を伸ばして霊夢を捕まえようとする。
こうなったら・・・・・
バッ・・・・・!
(霊夢は何を思ったのか、無造作に飛行を始める・・・・・
無闇やたらに攻撃をするよりも、頭脳戦に出た方が早いという賭けとも言える戦略に出る・・・・・
カシキ・ヒェリの手を誘導しながら、霊夢は猛スピードで飛行する・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ケタケタケタケタケタケタケタッ!!!』
霊夢が無造作に飛び始めると、無数の顔がカチカチと歯を鳴らし、ペタペタと無数の手を大きく広げてすり抜けなどが出来ないようにして笑いながら霊夢の後を追いかける。カシキにはあまり知能や知性がなく、本能的に動いているだけであるためか、特に勘繰るような様子は無い。
ほらほらこっちよお馬鹿さん!
(霊夢は鬼さんこちらと言わんばかりに両手を叩きながら飛行してカシキ・ヒェリを挑発する・・・・・
一件考えなしにただ策を練るための時間稼ぎにも見えるものの、霊夢はちゃんと考えた上でこの行動をとっている・・・・・
あとはカシキ・ヒェリの知能の低さに逆に頼るしかない・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ガチガチガチガチガチガチ』
カシキの無数の頭がガチガチと歯音をたてながら飛行する霊夢に向けて無数の手から紫色の光弾を放ちながら彼女を捕まえようと這い始める……殆ど言葉を発していない事から挑発が通じているのかどうかは不明だが、それでも相手に追いかけられると言う状況を作ることには成功する。
ほらほらこっちよこっち!!!!!
(霊夢は何故か壁の前で立ち止まってカシキ・ヒェリを挑発し続ける・・・・・
通常、カシキ・ヒェリのような化物を相手にこのような状況に陥れば、大抵の人間は諦めて無残に〇されるのが殆どだが、霊夢は敢えてカシキ・ヒェリを挑発する・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『オイツメタ…オイツメタ…オイツメタ……!!!』
ゲラゲラと笑いながら、壁の前で立ち止まった霊夢目掛けて無数の手の掌から紫色の光弾を集中的に放つ事で霊夢の事を消し飛ばそうとする。
案の定、カシキは高等幻魔でありながらも、それほど賢い幻魔ではないようで、霊夢の誘導を何も疑わずに追いかけ、挑発するままに攻撃を加えていく。
アンタ、本っっっ当に馬鹿ね?
ゴガガガガガガガガガ・・・・・!!!!!
(知能がさほど高くない相手だからこそ、霊夢は大体のタイミングを読むことができ、いとも簡単にカシキの攻撃を避けることに成功する・・・・・
カシキの放った光弾が壁に直撃し、そしてそのまま壁の瓦礫がカシキめがけて降り注ぐ・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ギイィィィィィィィィィィッ!!!』
カシキの放った魔弾が壁に激突すると大爆発を起こし、その破片が飛んで来ると、殆どダメージを受けてはいないものの、一時的にカシキの視界が封じられ、反撃のチャンスが生まれる。
これで終わらせてやるわ化け物・・・・・!
(霊夢はカシキの視界を封じることに成功すると、反撃準備に入る・・・・・
いくらカシキの知能が低いと言えど、そのままじっと大人しくその場に留まって攻撃を受けるということはまずない・・・・・
戦いを終わらせるなら、この一撃にかけるしかない・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『ギシュッ ギシャアアァァァァァッ!!!!』
カシキはおぞましい雄叫びをあげながら、自分の周囲全方位に向けて無数の腕を伸ばして視界を封じられていながらも攻撃を行おうとする。
カシキは霊夢の放つ光弾だけでは自分を倒しきることが出来ないと考えており、更に高威力のスペルカードがある事を知らないため、先程と同じように例え自分がどれだけの攻撃を受けたとしても自分の再生力と生命力でなら耐えきり、反撃する事が出来ると考えている。
霊符「夢想封印」
(この戦いに終止符を打つべく、霊夢は今度はスペルカードを用いての攻撃手段に出る・・・・・
しかし、それだけではなく続けて弾幕も相手に放つ・・・・・
先程のように復活の隙を与えずに、今度は完全に消しにかかる・・・・・)
カシキ・ヒェリ
『………!!!
カッ……ハ………!!?』
霊夢の放った虹色に輝く巨大な光弾がカシキに直撃すると、この攻撃にも充分耐え、反撃が出来ると思っていたカシキの体が急速に浄化され、邪気や悪意の塊であったカシキの体が瞬く間に崩れ去り、これまでの戦いは何だったのかと思えるほど呆気なくカシキが消滅していく……
更に、この空間そのものが強力な邪念と邪悪な魔力によって形成されている事もあり、周囲の天井や壁、床まで浄化し、現世の距離感に換算すると、何百階層もある悪夢の要塞の中、一気に上層階層まで向かえる通路が天井の向こうから誕生し、一気にショートカットする事が出来るようになった。
・・・・・これでやっと総大将のいる場所まで行けるってわけね・・・・・
(そう言うと、霊夢は迷うことなく、怯むことなく、イライザがいるであろう上層階へと向かい飛んでゆく・・・・・
これから先は、今までの戦いは何だったのかと思えるくらいの決戦が待ち構えているであろうことは確実・・・・・
悪夢に終止符を打てるのか、それとも悪夢に取り込まれてしまうのか・・・・・
全ては霊夢の手にかかっている・・・・・)
巨大な血の巨人
『ォォォォォォォォォォォ……』
上層階まで開かれた巨大な縦穴の中を最上階目掛けて飛ぶ霊夢の体を、道中の積層から滲み出すようにして現れた巨大な血の魔神が現れ、霊夢の体を握り潰そうと手を伸ばして来る。
血の巨人は全身が血液で出来ているかのように赤黒く、通常の目や鼻、口がある箇所には大穴が空いていて、その大穴を通る風のような唸り声をあげながら、四本ある腕を使って捕縛しようと考えている。
この巨人もまた、カシキや悪夢の処刑者、キラークラウンと同じ邪悪な魔力が感じられることからイライザ配下の高等幻魔の一体なのだと言うことがわかる。
・・・・・またなの・・・・・?
(やっとイライザとの対峙かと思われたその時、またしても現れたイライザの配下に、霊夢は疲労を見せ始める・・・・・
しかも、今度は血で形成された体を持つ巨人・・・・・
物理攻撃か効くかどうかが怪しい・・・・・)
《ガッ》
突然の新手の出現を前に驚き、疲労をして回避しなかった霊夢を顔の無い血の巨人が四本ある腕の一つで霊夢を掴み、そのまま握り潰そうと力を込め始める
血の巨人は優に体長が10m以上はあり、これまで倒してきたどの高等幻魔よりも明らかに大きく、その巨体故に単純なパワーもかなり高いものとなってしまっている。
・・・っ゙・・・・・!ぁああああぁぁあぁぁああああああああぁああああぁぁぁぁあああっ!!!!!
(やっとの思いでここまで敵を倒しながら進んできたのに、こうも簡単に捕まり、こうも簡単にダメージを受ける羽目になってしまうとは、自分が情けなくなってくる・・・・・
段々と意識も遠のき始めてくる・・・・・)
《ズオォォォォォォォォ……》
血の巨人は霊夢を捕えると、そのまま霊夢を自分の顔の方へ引き寄せ始める。すると、巨人の顔にある大穴……顔を貫かれたように大穴が開いているものの、向こう側の光景は見えず、何故か何処までも漆黒の空間が広がっているように見える。
更に、巨人のその大穴を見ていると、魂が引き込まれるような謎の引力が感じられる……この高等幻魔は例え相手が夢の世界に生身の体を持ち込もうと、その魂を引き抜いて喰らう力が備わっているのだろうか。
・・・・・ぅ・・・・・ぁ・・・・・
(体には力が入らず、意識も遠のき始めたそんな時に、最悪のタイミングで霊夢は魂が血の巨人に引き込まれるような感覚に陥る・・・・・
うつろな意識の霊夢にとっては、もはや今自分の魂が体に入っているままなのか、それとも体から離れているのかすらもわからなくなってくる・・・・・)
【制止した時間】
巫女?
「当代の巫女は随分と弱くなったものね……」
霊夢の魂を奪い去ろうとしていたところ、突如として周囲の空間が色を失い静止する中、霊夢を拘束する血の巨人の腕の上に、自分で切り揃えたショートヘアーの黒髪をして、霊夢に似た紅白の巫女服を着た巫女が座り、魂を奪い取られようとしている霊夢を見て落胆したように呟く。
・・・っ・・・・・!?あ、あんた誰よ・・・・・?
(霊夢は意識が途絶えそうになっていたところ、突然時間が制止し、目の前に自分に似た謎の巫女が現れることにさすがに驚いて、意識がグンと戻るように意識を取り戻し始める・・・・・
霊夢からすれば、見ていないで早く助けてもらいたいという気持ちでいっぱいだが、謎の巫女は何のために現れたのだろうか・・・・・)
巫女?
「………あー?もしかして私の事が見えているの?」
周囲が色を失い、時間が止まったような空間の中、自分に気付いて声をかけている事が余程珍しいのか、声をかけられた巫女はキョトンとした様子で霊夢を見て、まさか自分が見えているのかと問い返す。
見え・・・・・て・・・・・いるわよっ・・・・・!アンタこそ、私のこと見えてんの・・・・・!?
(時間は止まっていても尚、握り締められていることに変わりはなく、止まっていなく意識を保っている霊夢からすれば、自分に話しかけているくせして助けようともしない目の前の相手が腹立たしくて仕方が無い・・・・・
早く助けろと言わんばかりの眼力で訴える・・・・・)
巫女?
「……今まで私に気付いていなかった事から死の間際になってイタコの素質にも開花した……って訳?まあ、いいわ。今回は力を貸せそうだから貸してあげる。」
血の巨人の腕の上に座っていた巫女が霊夢のところまで歩き、霊夢と重なるようにして憑依すると、霊夢の体の奥底から霊力が沸き出し始め、両手を合掌するようにして合わせるようにして自身の周囲にある弾幕を打ち消す"霊撃"いわゆる弾幕ごっこにおけるボムの使用が可能になる。
・・・・・!?なんかいつもと体の感覚が違う・・・・・
(霊夢は相手が自分と容姿が似ているとはいえど、能力者であろうことは予想がつくが生きている人間だと思っていること、そして意識がまだ完全にハッキリとしていなかったこともあり、何が起きたのかが瞬時に理解出来ないが、体の感覚がいつもとはなんか違う、ということだけはなんとなくわかる・・・・・)
《ズズズズズズズズズズ……》
朦朧の巫女が霊夢の中に入り、一時的に新たな力を得ると灰色の世界が無くなり、その影響で霊夢を掴んでいる巨人が再び霊夢の魂を奪うために顔の大穴から吸魂を再開し始める。
これでも吸い込んでなさい・・・・・
ポォ・・・・・
(霊夢は顔のない巨人のその圧倒的な吸う力を逆に利用して、大穴に自然に吸い込まれるようにボムを放つ・・・・・
勿論避ける避けないは相手の自由だが、これだけの至近距離+相手の巨体+魂を吸おうとする力も相まって、恐らく避けることは困難だが、もしこれを避けられたとしても今の霊夢からすればさほど気にするほどのことでもない・・・・)
血の巨人
『オォォォォォォォォォォ……』
霊夢の霊力は幻魔や悪しき存在にとってかなりの効力を発揮するのか、貌の無い四腕の巨人が身体中から赤黒い煙を出しながら苦しみ始め、霊夢を壁に向けて投げ付けようとする。
本来ならば衝撃波のようにして周囲に展開するものを、避けられないであろう至近距離から霊力の塊として放った事で、より大きなダメージとなっている。
無想封印は言うなれば博麗の巫女の奥義なのだが、その威力が高い分、消耗が激しく、元凶のイライザの元に辿り着くまでは多用せず、他の技を放つ方が消費を抑えられるだろう。
どうやら効果ありのようね?ならば・・・・・
(霊夢は更なる追撃として、今度は隙を作らずに無数のボムを放ち始める・・・・・
霊夢からすれば血の巨人や今までの敵など正直相手にしていられない、早くイライザとの一騎打ちに持ち込みたいという気持ちでいっぱいなのだ・・・・・)
血の巨人
『』
血の巨人は霊夢の放つ霊力の塊を受け続ける事でその体積が削れていくが、霊力を集中して塊にしている事からその浄化範囲は局所的であり、浄化を逃れた巨人の部位から新たに血が吹き出し、吹き出した血が凝固することで損失箇所を補っていく。
血の巨人を始めとする幻魔は実体を意のままに操ることが出来る上に脳や心臓と言った重要な臓器や身体の核と言ったものを持たないが故に高い肉体の再構築能力を獲得するに至っており、通常の弾幕だけではやはり限界が来てしまう。
血の巨人は破壊を逃れた四本の腕を伸ばして再度霊夢を捕らえようとする……元凶であるイライザはまだまだ先に潜んでいるのだが、このままでは先に戦った悪夢の巨人や無数の手と頭を持つ異形との戦いと合わせて消耗しきり、イライザのもとへ辿り着くことすら叶わなくなってしまうだろう。
加えて、霊夢が朦朧の巫女の力で覚醒した影響から、先程放った夢想封印によって出来た上層階へ通じる大穴が塞がり始めていることを感知することが出来る。
血の巨人
『オ……オォォォォォォ……!!!』
血の巨人は霊夢の放つ霊力の塊を受け続ける事でその体積が削れていくが、霊力を集中して塊にしている事からその浄化範囲は局所的であり、浄化を逃れた巨人の部位から新たに血が吹き出し、吹き出した血が凝固することで損失箇所を補っていく。
血の巨人を始めとする幻魔は実体を意のままに操ることが出来る上に脳や心臓と言った重要な臓器や身体の核と言ったものを持たないが故に高い肉体の再構築能力を獲得するに至っており、通常の弾幕だけではやはり限界が来てしまう。
血の巨人は破壊を逃れた四本の腕を伸ばして再度霊夢を捕らえようとする……元凶であるイライザはまだまだ先に潜んでいるのだが、このままでは先に戦った悪夢の巨人や無数の手と頭を持つ異形との戦いと合わせて消耗しきり、イライザのもとへ辿り着くことすら叶わなくなってしまうだろう。
加えて、霊夢が朦朧の巫女の力で覚醒した影響から、先程放った夢想封印によって出来た上層階へ通じる大穴が塞がり始めていることを感知することが出来る。
・・・・・耐久力こそ高くはないけれど、液体の体っていうのは非常に厄介ね・・・・・
(さほど強くはないものの、それを補うかのような体の作りになっていることは明らか・・・・・
)
・・・・・耐久力こそ高くはないけれど、液体の体っていうのは非常に厄介ね・・・・・
(さほど強くはないものの、それを補うかのような体の作りになっていることは明らか・・・・・
博麗の巫女程度ならそこまで頑丈な作りの部下じゃなくても倒せると思ってのイライザの過信か、それともただ単にこういう部下が偶然揃っているだけなのか・・・・・
いずれにしても、こんな前座の敵にやられるわけにはいかない・・・・・)
【途中送信すみません!】
血の巨人
『オオオ…オォォォォォォォォ……!!』
体の再構築を繰り返しながらも巨人は四本の腕を伸ばして執拗に霊夢を捕らえようとする。このまま戦っていても部分的な攻撃だけでは勝つことは出来ない、ならば攻防一体の八方龍殺陣を展開する事で霊力の消耗を抑えつつ、攻撃しようとする巨人の力を逆手にとって反撃するのがいいのかもしれない。
【神技「八方龍殺陣」】
ドォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は、これがトドメだと言わんばかりに一気に勝負を畳み掛けにかかる・・・・・
耐久力がそこまで高くないのはわかっている、高いとするならば再生力・・・・・
ならば、その再生力も通用しないほどに猛攻撃をすればいい・・・・・)
血の巨人
『!!!?
オォォォォォォォォ………』
霊夢の展開した金色に輝き、天を貫くような光の結界によって塞がりつつあった天井が再び砕け、上層階までの道が出来ると同時に、霊夢を捕らえようとしていた血の巨人が、その結界に呑み込まれ、急速にその体が浄化され、無数の人間の怨嗟の声が混ざったようなおぞましい呻き声をあげながら消滅していく。
今度こそ、勝負あったようね・・・・・
(そう言うと、霊夢は上層階までの突き抜けた天井を睨みつけるようにして見つめながら、いよいよ始まる最終決戦に向けて覚悟を決める・・・・・
後戻りする気など毛頭ない、そんな気持ちが芽生えるくらいなら、博麗の巫女なんてやっていない・・・・・)
《コォォォォォォォォォォォォ……》
貫かれ、天高く伸びた漆黒の空間……
その奥からは遠くはなれているにも限らず、底無しの魔力、底無しの悪意がハッキリと感じられる……こんな気配を放つことが出来るのは、この幻魔達を統べる悪夢の女王、イライザしかいない……
決戦は近い、悪夢と恐怖の世界に蠢く幻魔を葬る一人の英雄の戦いが今、始まろうとしている……果たして霊夢は……幻想郷はイライザと言う脅威を打ち払うことが出来るのか……!
・・・・・
スウウゥゥ・・・・・
(霊夢は、突き抜けた漆黒の空間をゆっくりと最上階へ向けて飛び始める・・・・・
今、こうして敵と合間見えることのない瞬間でも尚、あちこちから視線を感じるような気がする・・・・・
この空間全てが霊夢に敵意をむき出しにしているかのように・・・・・)
【悪夢の要塞 最上階】
《ゴオォォォォォォォォ……》
数多の悪意の籠った視線や邪悪な波動の中を掻き分け、破壊して切り開いた天井の道を登り、遂にこの悪夢の要塞の最上階に辿り着くと、夥しい数の苦悶した人々が混ざりあって作られたようなおぞましく、巨大な門が見える。高さ10m、幅は8mもある巨大な門であり、この門の先から禍々しい悪意の波動がビリビリと感じられる……
・・・・・流石、趣味が悪いわね・・・・・
(その異様な造りの門を見れば、イライザの頭のおかしさを再認識する・・・・・
見ているだけで吐き気がしてくる上に、こっちまで頭がおかしくなりそうな気がしてきてならない・・・・・)
《ズッ》
あまりにもおぞましい形状の門を見て生理的嫌悪感を感じている霊夢の背後から音もなく、まるで周囲の闇の中から生み出されたかのように新たなる刺客にして、イライザを守る最後の障壁が錆び付いた鉈のようなものを二本手にしては霊夢の首を跳ね飛ばそうとする。
鬱陶しい・・・・・
ゴォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は音はなくとも本能的に気配かなにかを感じ取ったのか、鬱陶しいとただ一言呟けば、そのまま相手に弾幕を放つ・・・・・
正直、今の霊夢からすれば、この異変の総大将であるイライザ以外の敵は目障りな存在でしかない・・・・・)
《ゴオォォォォォォォォ……》
霊夢の放った弾幕が全て背後にいた怪物に直撃し、大爆発を巻き起こすものの、その弾幕を受けた存在はこれまでの幻魔と違い、あまりダメージを受けていないのか、直ぐに爆煙を切り裂き、その姿を露にする。
爆煙を切り裂き現れたのは、身体中に色々な動物や人間の皮膚を雑に繋ぎ合わせて形成されたケンタウロスのような造形をした異形の怪物が錆び付いた鉈を持っている。
見たところ目や鼻、口と言ったものは見られ無いため、どのようにして霊夢の位置を感知したのかは不明だが、この異形こそがイライザを守る最後の番兵と言える存在だ。
あの気色の悪い巨人で最後かと思ってたのだけれど、まさかまだ厄介なのがいたなんてね・・・・・
(霊夢は歪なケンタウロスを睨みつけながら、怒りを露にする・・・・・
ここにきて今までよりも耐久力の強い手下を使ってくるとは、やはりイライザも博麗の巫女と直接ぶつかるのは極力避けたい、ということなのだろうか・・・・・)
《ヒュオッ》
無数の剥がされた皮膚の集合体と言う、暴虐と苦痛の化身とも言える化物……この耐久力の高さが何なのかはまだわからないが、余程その耐久力に自信があるのか、これまでどれだけの血を吸ってきたのか、夥しい血錆が付いた鉈を振りかざし、霊夢に対しても真正面から飛翔して向かう。
通すわけには行かない来客に真正面から突っ込んでくるとか、頭大丈夫?
(絶対に負けるわけには行かない戦い、霊夢の言葉にも怒りの他に煽りが見え始める・・・・・
真正面から来られて避け無いわけがなく、霊夢は飛行して相手の攻撃を避ける・・・・・
攻撃はまぁ避けられるとして、問題はなるべく自身の力を消耗しすぎずに、相手の耐久力を打破して完全に倒しきるにはどうするか・・・・・)
皮膚の獣
『オォォォ……ォォォ…………』
【悔痛「夢幻の痛苦」】
霊夢が室内でありながらかなりの広さを誇るイライザの玉座前の門から飛び上がるようにして避けた事で皮膚の獣が振るった鉈が空を斬るが、回避した霊夢へ視線を移すと、ちょうど門の真正面に獣が立つような構図になる。
そこへ、無数の統一感がまるで無い雑多な皮膚のツギハギの下で無数の目玉がギョロギョロと蠢き、霊夢を見据えると、霊夢の全身にまるで全身を針で骨まで一気に突き刺されたかのような凄まじい激痛が襲い掛かる。
・・・っ゛!?!?!?あぁぁぁあああああああぁああっ!!!!!
(突然体中に襲いかかった生き地獄とも呼べるほどのとんでもない激痛に、霊夢は悲痛な叫び声をあげる・・・・・
一体どんな技を使ったのかはわからないが、一つ確かなことが言えるとするならば、今までの敵がさほど大したことがなかったということもあってか、霊夢も心のどこかで目の前の敵を見くびっていた、ということだろうか・・・・・)
皮膚の獣
『…………………。』
《スッ》
全身を蝕む凄まじい激痛により悶える霊夢の前にまで再び異形の怪物が迫り、手にした鉈を大きく振り上げてその首を跳ねようとする。
あらゆる防御を貫いて相手に激痛を与えることでスピードや小回りを封じることで確実に相手を仕留める……それがこの皮膚の獣の戦い方だ。しかも、先程の幻魔の中でも飛び抜けて頑丈な体をしている理由は"現世の生物の皮膚を引き剥がして身体中に貼り付け"衣服のようにする事で、例え実体を持った存在が訪れたとしても対処できるようにしてあり、言うなればイライザの狡猾な策略の化身とも言える存在だ。
だが、こんな絶対絶命のチャンスの中で、これまで黙っているだけだった霊夢と同化した朦朧の巫女が霊夢の脳内に声をかける。
朦朧の巫女
『これはかなり厄介な相手ね。
アイツが身に纏っているのは幻覚や悪夢じゃなくて、現世にいる本物の人間や動物の皮膚……同じ現世の実体を用いているのなら、その応用力や、適応力による防御力は貴女を上回っている。』
霊夢が凄まじい激痛に晒されている中でも、朦朧の巫女は冷静な分析を続けており、まず最初に皮膚の獣が持つ異様な耐久力の正体について語る。
・・・っ・・・・・はぁっ・・・・・はぁっ・・・・・
(霊夢は激痛の中でも、なんとか紙一重のギリギリの状態で皮膚の獣の襲撃を避け、そして朦朧の巫女の助言に関して「この状況で・・・・・そんなのどうすればいいのよっ・・・・・!」と、皮膚の獣と激痛の二つと戦わなきゃいけない中で、なんとか出来る後継が全然浮かばない・・・・・)
朦朧の巫女
『……落ち着きなさい。
アイツは外側を現世の生物の皮膚で鎧のようにしているのなら……内側にいる本体を直接叩いてしまえば倒せる筈よ。』
皮膚の獣は両手に持った鉈を振るい、無数の血のように浅黒い斬撃を複数、連続して放ち、激痛で動きが鈍くなっているであろう霊夢を仕留めようとする中、朦朧の巫女は冷静に分析し、外部からの攻撃が通じないと言うのなら、内側から攻撃してみてはどうかと言う。
それができたら苦労しないわよ・・・・・!
(霊夢は、動きが鈍くなっているからか、腕や足といった箇所に、なんとか攻撃を避けた際にできた切り傷が複数でき始めている・・・・・
それに、内側からの攻撃と言っても、それができるほどの隙を相手が見せてくれないのだ・・・・・)
朦朧の巫女
『まあ、その通りね。
倒す可能性のある策が浮かんでもそれを実行できなければ意味がない、当代の巫女の力を見せてもらうことにするわ。』
朦朧の巫女が憑依した事で霊夢が秘めた霊力が底上げされ、全ての攻撃や技の威力が普段の倍に膨れ上がっているのだが、その技については朦朧の巫女は知らないため、倒す可能性のある方法を教えるだけで、後は任せると告げる。
あの血の巨人を討ち滅ぼした時のように、少しばかり特異な技を使用する必要が出てくるだろう。
見せてもらうって言われても・・・・・
(助言こそありがたいものの、ハッキリ言ってここまでの激痛に襲われながら、攻撃を避け続け、相手をなんとか内部から攻撃し、見事倒し切るなんて芸当は、博麗の巫女と言えども簡単ではない・・・・・)
《ズッ》
皮膚の獣は朦朧の巫女と話している霊夢に対し、最初に現れた時と同じように、周囲の闇に一度溶け込んだ後、霊夢の直ぐ目の前で、鉈を大きく振り上げた状態で現れ、手にした鉈を霊夢の脳天目掛けて振り下ろし、攻撃しようとする。
ビシュッ・・・・・!
くっ・・・・・!
(霊夢は間一髪で攻撃を避けるものの、鉈が頬を掠り、傷口から血が出る・・・・・
このままでは、自身の体に鉈をぶち込まれてしまう未来もそう遠くないと過ぎってしまう・・・・・
少しでも距離を詰めた瞬間に攻撃される前に攻撃を放つしかない・・・・・)
皮膚の獣
『オォォォォォォォォ………』
【悔痛「夢幻の痛苦」】
鉈を避けられると、再びツギハギの接合部の下にある無数の目玉がギョロギョロと霊夢を見ては、再び全身に針が突き刺さったような鋭く激しい痛みが霊夢に襲い掛かる……
そして、その痛みで動きが鈍るであろうと考えたのか、皮膚の獣は手にした二本の鉈を交差させるようにして振り上げ、X状の斬撃を放ち、霊夢を切り刻もうとする。
っぐ・・・・・!?!?!?
(再び襲いかかる悪夢のような地獄の激・・・・・
唐突に襲いくるこの激痛を避ける術は現段階ではない為、避けようがないものの、なんとか抵抗する程度ならまだできる・・・・・
相手が放った残激に向けて弾幕を放ち、なんとか攻撃を相殺しようとする・・・・・)
皮膚の獣
『ゴオォォォ…ォォォ…ォォ……!!』
霊夢の放った弾幕が複数直撃することで相殺し、当初の狙いは成功するが、それを見た皮膚の獣は霊夢の放った弾幕が次々と直撃するが、まるでダメージを受けること無く、そのまま弾幕の雨の中、鉈を大きく振り上げた状態のまま、下半身にある四本もの毛皮の無い狼のような脚を用いて駆け寄って来る。
やっぱり、まったくダメージがないようね・・・・・
(とは言うものの、霊夢は再び弾幕で応戦する・・・・・
だが、今度は皮膚の獣が持っている鉈へめがけて放つ・・・・・
こうすることで相手の手から鉈が離れれば、まだ多少は戦いやすくなるかもしれない・・・・・)
皮膚の獣
『オォォォォ……』
まるで渓谷に吹き込む風のように不気味に響く唸り声をあげながら、霊夢の放った弾幕を避けることも防御する事もなく受け続け、傷の一つも付かずに霊夢の目の前まで移動すると、右手に持った鉈を大きく振り上げるが、そこへ霊夢が鉈に向けて光弾を放ったことで獣の手から鉈が弾き飛ばされる。
朦朧の巫女
『………今よ!』
獣は鉈を弾き飛ばされた事で代わりに左手に持った鉈を横薙ぎに振るうことで霊夢の体を切り裂こうとするが、朦朧の巫女は獣に生じた刹那の隙を見逃さず、獣の内部へ浄化の力を送り込むチャンスだと教える。
これで終わりよ・・・・・!!!!!
ドォッ・・・・・!!!!!
(霊夢は皮膚の獣の体に手を当て、体内へと力を流し込み始める・・・・・
正直、皮膚の獣の謎の攻撃で全身に激痛が走る中、全力の力を出し切れない・・・・・
これで倒せるかどうかは賭けだ・・・・・)
皮膚の獣
『……………!!!?
ゴギギギギッ……ギギギギィィィィ……!!』
獣は霊夢の攻撃はどれも自分には一切通じないと思っていたからなのか、回避も防御もせずに霊夢の接触を許し、左手に持った鉈を続けて振るい、霊夢の体を切り裂こうとするものの、霊夢が霊力を流し込み始めた事で皮膚の獣の内部に霊夢の浄化作用を持った霊力が流し込まれた事で獣は体内から虹色の光を放ちながら崩壊し始める。
だが、彼もまた高等幻魔であるからか、最後の悪足掻きとして左手に持った鉈を霊夢の首筋に向けて振るい、道連れにしようとする。
あんたも往生際が悪いわねっ・・・・・!!!!!
ゴッ・・・・・!!!!!
(霊夢は霊力を流し込みながら、片手で皮膚の獣が霊夢の首へとめがけて振り上げた鉈へと弾幕を放ち、先ほどのように鉈を相手から引き離そうとする・・・・・
皮膚の獣も皮膚の獣で往生際が悪ければ、霊夢も霊夢で往生際が悪いのは通じている・・・・・)
皮膚の獣
『ゴオォォォォ……ォォォォ………』
《ザアァァァァァァァァァァァ……》
霊夢と獣による根比べの結末は直ぐに訪れた。
今度は手にした鉈を手放す事はなく、強く握りしめたまま霊夢の首筋の寸前まで迫り、薄皮を切るが、そこで獣の本体である皮膚の鎧の下にあった無数の目玉によって形成された幻魔が完全に浄化され、手にした鉈もろとも跡形もなく崩れ去り消滅していく。
獣が消滅すると、獣によって剥ぎ取られた事で作られた皮膚の塊が床に落ちる……この鎧を作るためにいったいどれだけの命が奪われたのかはわからないが、少なくともこれで新たにあの獣によって命を奪われる犠牲者を無くす事は出来たのだろう……
・・・・・や、やった・・・・・わ・・・・・
へたっ・・・・・
(霊夢は皮膚の獣との戦いを終えると、かなりの力を消耗したのか、地面に座り込む・・・・・
そして、首筋を触ると、ほんの少しではあるが血が出ていた・・・・・
あと数ミリ深ければ、命はなかったかもしれない・・・・・)
【】
皮膚の獣と言った門番が消えた事で、霊夢とイライザを隔てるものはこの門のみとなった……巫女の直感からこの門そのものには鍵や罠は無いが、その先に待ち受けている存在はこれまで戦ってきた幻魔達とは比較にならない程の不吉な予感が感じられる……
例えるのならば、巫女になったばかりの霊夢が倒した犲狼を何千倍も歪め、果てしない魔力を与えたような……そんな嫌な力と雰囲気が感じられる。
朦朧の巫女
『……この姿になってから随分と経つけど……ここまで性根が曲がった力は始めてだわ……』
霊夢に力と貸している朦朧の巫女も、ここまで性根が曲がった存在は始めてだと思わず言葉を溢しており、この先に待ち受けるイライザがどれだけ強大かつ邪悪な存在なのかがわかる。
私だって初めてよ・・・・・少なくとも、今まで戦ってきた中では一番吐き気がするわ・・・・・
(そう言うと、よろよろとした足でゆっくりと立ち上がる・・・・・
今までの敵は、強敵と呼べるのもいればそうではないのもいたが、イライザは今までのそれらとはハッキリと何もかもが違う、簡単に言えば、関わってはいけないと本能で感じ取る感じだ・・・・・)
朦朧の巫女
『絶対に油断はしないように……もし一瞬でも気を抜けば……その瞬間御陀仏になる事を覚悟した方がいいでしょうね……』
イライザが待ち受けると思われる部屋へ通じる門の前に立つ霊夢へ、これまでに感じたことの無い程の強烈かつ邪悪な雰囲気と力から本能が入ってはいけない、挑んではいけないと警鐘を鳴らしている……
霊夢達の勝利条件は一つ。
イライザを悪夢の世界の表層にまで誘き出し、そこで同じく夢を操る力を持つドレミーの策によって打ち倒すと言うものであり、そう難しい問題ではないが……イライザがどのような力を、技を使ってくるのかは完全なる未知数となっている。
わかってるわよそんなこと・・・・・
(霊夢だって言われずとも、対峙する前からそんなことは十分わかっている・・・・・
問題は、皮膚の獣との戦いでかなり力を消耗してしまったことだ・・・・・
対するイライザは、恐らくは万全な状態で、戦いにおいて有利な状態でいるのだろう・・・・・)
朦朧の巫女
『その言葉……忘れないようにね……?』
朦朧の巫女は気を抜かずに警戒を続けるようにと念を押すように言うと、門が開き始める………
【幻想郷?】
門の先にはおぞましい化物の大群も、醜悪な異空間も無く、何処までも穏やかで暖かい太陽の光が照らす自然豊かな幻想郷が広がっている……
開いた筈の門も、先程まで居た薄暗い鉄の牢獄のような空間も消失し、全てが穏やかな幻想郷の光景となっている。しかも、鳥の囀りや、髪を撫でる優しい風、周囲の木々や草花の匂いが感じられる、イライザの襲来前の平穏な幻想郷がそこにはあった。
夢であれば匂いや感覚は存在しない、それが非常識な夢の常識だ。
果たしてこれは悪夢の続きなのか……?それともイライザが幻想郷の侵攻を諦めて霊夢を幻想郷へ追い出したのだろうか……?
・・・・・ここへきてこういう演出をしてくるあたり、本当に趣味が悪いわね・・・・・吐き気がするわ・・・・・
(これが本物の幻想郷かどうかが問題ではない、門が開けばそこに平和な幻想郷が広がっている、という演出をしてくるイライザの腐りきった性根が大問題なのだ・・・・・
命をかけて必死になって幻想郷を取り戻そうとしているという時に、こういう演出が一番精神的にかなりくる・・・・・)
魔理沙
「おーい!今日も遊びに来たぜ〜。
って、そんなしかめっ面をしてどうしたんだよ?」
その声も姿も、箒から降りるときに左手で箒を支えて軸にしていたり、少し八重歯が見えるように笑っている細かい仕草や癖に至る全ての言動が本物の魔理沙と同じであり、明るく声をかけ、霊夢の肩に乗せた魔理沙の手も優しい温もりが感じられる……
これが夢や幻であるのならば、明らかに幻術の域を超え、仮想現実を顕現させると言った途方もない力であると言えるだろう……
・・・・・
(霊夢は、目の前の現実と寸分の違いもない魔理沙に内心困惑しながらも、横を通り過ぎる・・・・・
もしこの魔理沙が本物だろうと偽物だろうと、今すべきことはイライザとの決着をつけることただ一つ・・・・・
魔理沙に構っていられるほどの余裕はない・・・・・)
魔理沙
「……?
おいおい、本当にどうしたんだよ?」
魔理沙は霊夢の肩に手を置いたまま、どうしたのかと問い掛ける。
その魔理沙の優しさは、あの恐怖と苦痛のみを行動原理として動いている幻魔によるものとは思えない程に穏やかで優しい世界になっている……
・・・・・
(霊夢は魔理沙にどうしたのかと問いかけられても、無言のまま手を払い除け、歩き続ける・・・・・
もし・・・・・もし今ここにいる魔理沙が本物であったとして、自分のこの対応によって友情に亀裂が入ったとしても、幻想郷を救う為には、これは仕方が無いことだと割り切るしかない・・・・・)
レミリア
「霊夢、遊びに来たわ。」
魔理沙
「おお、レミリアか。聞いてくれよ、今日の霊夢の様子が変なんだ。
何を聞いてもずーっとしかめっ面なんだ。」
霊夢に手を払い除けられると、本当にどうしたのかと思い、払われた手を抑えたまま霊夢を見る……そんな中、咲夜が日傘を持ち、レミリアを日光から守りながら神社に訪れると、何を聞いても何も応えずに黙っているままの霊夢の事を話す。
咲夜「恐らくは、またそこら辺に生えている変な草かきのこでも食べたんでしょう、気にすることはありません・・・・・」
(霊夢の様子がおかしいと言っても、いつも食べ物に困っていたりする霊夢のことだから、きっとまた空腹の極限状態に追い込まれて変な草かきのこでも食べたのだろうと推測をする・・・・・)
霊夢「・・・・・」
(いつもの日常ならごく普通の会話であり、霊夢も反論したりして会話に交じるものの、今のこの状況は打倒イライザを誓った霊夢からすれば、イライザの仕向けた現実に近い形の悪夢でしかない・・・・・)
レミリア
「フフフ、霊夢らしいわね。
毎日は駄目だけれど、たまになら紅魔館でご馳走してもいいわよ?」
魔理沙
「おお!それじゃあ今からでも紅魔館に遊びに行こうぜ!」
変な茸でも食べて体調が良くないと言う事を聞くと、霊夢の奇行を少し笑いつつ、館へ誘うと、それに便乗した魔理沙は一緒に館に行こうと言う。
・・・・・っ・・・・・
(イライザの仕掛けた悪夢だとしても、そのあまりにもリアルすぎる日常風景に、霊夢は本当は今までのことが夢で、今が現実なのではないだろうかという錯覚に陥りそうになり、頭を押さえ始める・・・・・
だとしたら、今のこの状況は現実だということになるが・・・・・)
【紅魔館】
魔理沙
「しっかし何時見ても紅魔館はデカいなぁ……本当に家なのか?」
霊夢の苦悩をよそに、魔理沙は霊夢の手を取ってレミリアと咲夜の案内のもと、紅魔館に辿り着く……館に到着するまでの間に通った光景も、幻想郷そのもままであり、豊かな自然や平和に暮らす動物や妖精達の姿も見えた……そして、館に到着すると、見上げるように大きく紅い紅魔館を眺め、思わずそんな言葉がもれる。
【悪夢の世界】
イライザ
「クスクスクス……幸せそうな夢を見ているわね?
貴方の求める世界、何でも叶う理想の世界。
人間も妖怪も、神でさえもその幸福な世界からは抜け出せない……抜け出そうと足掻く事さえ出来ない甘美な罠。」
霊夢が開いた門の先には高密度のイライザの夢幻術が展開されており、イライザの姿を視認する間も無く、深い眠りに誘われ、床に倒れた霊夢を見て、イライザはゆっくりと歩み寄って来る……
幻想郷に住む霊夢以外の全ての者を昏睡させ、認識すらさせずに夢の中でも夢へ誘う途方もなく強大な夢の力……それこそがイライザの持つ能力であり、悪夢の世界の支配者たる由縁でもある。
イライザ
「此処は夢の世界の底。
甘美な夢に包まれながら何の苦痛も無く逝くといいわ?」
この夢の世界から自らの意思で目覚めることは不可能……ドレミーによる救援も此処までは届くことはない……まさに詰みの状態に追い込まれた霊夢へトドメを刺すべくゆっくりと右手を翳す……
・・・・・私は騙されないわよ・・・・・
(魔理沙の呟きの後に、霊夢はボソッと呟く・・・・・
こんな平和な日常も、所詮はイライザが作り出したまやかしだ・・・・・
霊夢はわかっている、わざわざ攻めてきて部下が全員やられたぐらいで手を引くような相手ではないと・・・・・
博麗の巫女と言えども所詮は人間の小娘、眠らせてしまえばこっちのもの、あとはじわじわ追い詰めて〇すだけ・・・・・
どんなに今目の前にある光景が現実だとしても、悪夢であることに代わりはない、魂胆が見え見えだ・・・・・)
【イライザの玉座】
イライザ
「それじゃあ、さようなら。ちっぽけな人間さん?」
《ドガァッ》
イライザが翳した掌から紫色の衝撃波が放たれ、霊夢がいた場所の地面が大きく穿たれ、下階まで繋がる巨大な大穴を開け、例え大妖怪クラスでも直撃すればただでは済まない程の破壊力を示すが……
朦朧の巫女
「まったく……今世の巫女は随分と世話が焼ける……!」
イライザの放った衝撃波が霊夢の体を消し飛ばす寸前で朦朧の巫女が持つ神降ろしの力を用いて、自分自身を霊夢の肉体に降ろす事で霊夢の体を動かし、回避する事に成功し、眠ったまま消し去られると言うという最悪の事態を免れることが出来た……
【優しい夢幻の世界】
美鈴
「あ、今日は霊夢さんも一緒なんですね?
貴方達なら顔パスですね!どうぞお通り下さい。」
最初はこの世界の違和感を感じることが出来ていたものの、次第に霊夢の記憶から現世での出来事について薄れ始める……少しずつ悪夢の世界と現実の世界の境界が失われ始め、霊夢にとっての現実はこの優しい夢の世界へと塗り潰され始めてしまう……
このまま時間が経てば、この夢の世界こそが現実である事を信じてやまなくなり脱出すると言う考えすら思い付かなくなるなるだろう。
・・・・・私は・・・・・騙されな・・・・・
《あれ・・・・・?騙されるって・・・・・誰に・・・・・だっけ・・・・・》
(霊夢はずっと打倒イライザを誓ってここまで来ていたものの、ここまで来て、あと少しというところで自分が誰に何のために何を目的として戦おうとしていたのか、という記憶が欠如し始める・・・・・
この仮想現実に侵食され始めている・・・・・)
萃香
「おー、霊夢ぅ。
お前も来たのか〜?」
紅魔館に到着すると、既に酒を飲んでいた萃香が顔を真っ赤にしながら両手に酒瓶を持って霊夢の前へ霧状から実体に戻しながら現れる。良くないと見ると紅魔館の敷地内ではところどころで色々な人妖達がそれぞれ思い思いに宴会を開いて楽しそうに盛り上がっている。
博麗神社よりも広く、何度かパーティーを開いたこともあり、神社での宴会の時以上に大勢の人妖が集まっていてとても賑やかになっている。
朦朧の巫女(霊夢憑依)
「(今の私に出来るのはこの肉体の意識が戻るまでの時間を稼ぐこと……意識が戻らなかったり、私が倒されればそれで幻想郷が終わると考えてもいい。幸いにも既に思念体である私には夢を見させる事は出来ない……)」
イライザによる霊夢の体の消滅に対して霊夢の体へ憑依することで肉体を動かし、回避した後、イライザの様子を見ながら、現状を把握して自分が出来る事を理解する……思念体と言う曖昧かつ概念的な存在となった自分にはイライザによる眠りの力は効かない事がアドバンテージとなっているため、これを利用することでイライザにも対抗できるだろうと考えている。
悪夢の女王 イライザ
「クスクスクス……思わぬ邪魔が入ってしまったのだけれども、それが有利に働くことにはならないわよ?だって……此処は悪夢の中枢。
夢と希望が潰え、恐怖と絶望だけが全てを支配している世界だもの……」
イライザはゆっくりと両手を広げる……
すると、イライザの背中から生えた二枚の翼に付いた巨大な目玉がギョロギョロと朦朧の巫女を見据えると、イライザの背後の床から無数の不気味な暗紫色の触手が生え始め、触手の先端部分は蛭のような吸血口と無数の牙がズラリと並んでいるのが見える。
イライザの言う通り、この悪夢の中において、イライザは空間そのものを支配しているのと同義であり、その強さや実力は間違いなく無敵と呼ぶに相応しいものとなっているだろう……
萃香ねぇ・・・・・アンタもう酔ってんの?
(到着した時点で既にもうかなり酔っている萃香に少々呆れながらも、霊夢はこの世界がイライザの作り出した虚構であるということをすっかり忘れてしまい、一緒に宴会を楽しもうとする・・・・・
博麗の巫女と言えども、所詮は人間の力ではイライザには対抗できないのだろうか・・・・・)
萃香
「あはは〜、こんなのどうって事無いよ。
私達鬼は何時でもこんな感じだからさ〜。」
全種族の中でも最上位クラスの酒豪である鬼の萃香でさえ強い酒の匂いを纏いながら顔を真っ赤にしてフラフラしている事から、かなりの量の酒を飲んだのだと思われる。
少し離れたゴザの上では酔い潰れた文とはたて、そして椛の三人が倒れていて、更にその近くには無数の酒瓶と山積みになった酒樽が見える。
《可哀想に・・・・・酒に呑まれたのね・・・・・》
(来た時点で既にダウンしている文、はたて、椛の三人を見ては、酒に呑まれてしまったのだと悟り、この鬼はある意味本当の意味で鬼だと確信する・・・・・
妖怪すらもここまでにする酒が強いのか、酒にすら勝てる妖怪が強いのか・・・・・)
文
「れ、霊夢さ……助け………」
烏天狗もまた、酒に強く、人間の酒豪程度なら匂いを嗅いだだけで酔う程に強い酒を水のように飲める文やはたて達でさえも萃香には及ばず、酔い潰れる中で、霊夢に気付いた文がピクピクと体を震わせながらうつ伏せになったまま霊夢へ手を伸ばして助けを求めている。
鬼と酒の飲み比べをすると言う無茶な事でさえ、かつて妖怪の山を支配していた上司の萃香には頭が上がらずにいる事がわかる。
文、酒臭い
(助けを求めてくる文へ向けて、霊夢はただ一言、哀れんだ冷たい眼で見ながら酒臭いと言葉を返すだけすると、御馳走の方へと向かってゆく・・・・・
そもそも、酔い潰れている妖怪をどうにかすることなんて博麗の巫女にはできない、というか、博麗の巫女の役目ではない・・・・・
酔っぱらい妖怪の相手をするよりも、今は御馳走が最優先である・・・・・)
萃香
「お!まだまだ元気そうだね!もう少し飲もう!!」
文
「いやいやいやいやいや、もう無理、もう限界ですって!
……うッ!?」
完全に酔い潰れて朦朧としている状態にあるにも関わらず、まだ喋れるだけの余裕があると思った萃香は文の元へ歩き始める。
限界を超えて酒を飲み過ぎた結果、強い吐き気が込み上がって来てしまい、慌てて口を押さえているものの、そんなのはお構い無しと言わんばかりに酒瓶を手にした萃香が再び文に酒を進めていく様子が見える。
アリス
「………あら、巫女に……野魔法使い。
貴方達も招待されて来たの?」
魔理沙
「げ、温室魔法使い。」
アリス
「都会派魔法使いよ、田舎の魔法使いさん?」
思い切りアルハラを受けている文を他所に、ご馳走の近くに移動した霊夢の傍にアリスが近付き、二人に声をかける。
後に地底での異変の時にアリスは魔理沙と協力する事になるのだが、今ではつい数日前に起きた春冬異変の時の小さな対立が少し残っているのか、互いに皮肉を言い合っている。
あんた達、やりあうんなら外でやりなさいよ?せっかくの御馳走に何かあったらタダじゃおかないからね?
(酒豪鬼の生贄になる烏天狗をよそに、霊夢は魔理沙とアリスに戦うんなら外でやれと、せっかくの御馳走にもしものことがあったらタダじゃすませないと殺意のこもった眼差しで睨みつけながら忠告する・・・・・
食べ物の恨みが絡めば、今この場にいるメンバーの中ではダントツで霊夢が恐ろしいかもしれない・・・・・)
レミリア
「クスクス、博麗の巫女は随分と短期なのね?」
時折いがみ合う魔理沙とアリスを見て二人の喧嘩になりかねない口論よりも、食べ物の方が大切だと言うその様子を見て口許に手を当ててクスクスと思わず笑ってしまう。
ふぁんふぁひいあらほいはんへほおっへほへばひいほほ、へっはふほほひほうがはふはっひゃうへほ?
(訳:あんな言い争いなんて放っておけばいいのよ、せっかくの御馳走がなくなっちゃうでしょ?)
(魔理沙とアリスのしょうもないいがみ合いを止めようとしていては、せっかくの御馳走がすぐに無くなってしまうと危惧する霊夢は、もう既に口にパンパンに食べ物を詰めた状態で、その姿はまるでリスのようになっている・・・・・
食べ物が絡むと、霊夢は色々な意味で恐ろしい・・・・・)
魔理沙
「おいおい、そんなにがっつくと喉を詰まらせちまうぞ?」
魔理沙はご馳走をリスのように口の中一杯に詰め込んでは凄い勢いで食べ始めるのを見て、そんなに焦って食べると喉を詰まらせてしまうと言う。
【悪夢の要塞 イライザの間】
朦朧の巫女(霊夢に憑依)
「先ずは……動きを止めさせてもらうわ……!!」
【神代「天羽槌雄神之神衣」】
イライザ
「………………!!」
朦朧の巫女は両手を合わせ、自身の神降ろしの術を用いて霊夢の体に星の神さえも封じた天羽槌雄神の力を得ると、直ぐ様強固な神布の紐を生成してそれをイライザに向けて投げ、その体を拘束する事でイライザが攻撃を発動させる前にその動きを封じる。
【神代「天之手力男神之豪腕」】
朦朧の巫女(霊夢に憑依)
「(コイツに反撃はさせない……
動きを封じた上で……削り切る……!!!)」
《ドガガガガガガガガガガガガッ》
朦朧の巫女はイライザが支配している悪夢の世界の中において、全てがイライザの思い通りになるこの世界では神の力を用いたとしても拘束していられるのはほんの一瞬だけであると言うことを博麗の勘から知り、一気に決着を付けるために
イライザが拘束された状態のままであるものの、反撃のために伸ばした無数の巨大な蛭のような触手を一瞬で全て打ち砕いて距離を詰めると、朦朧の巫女は両腕に天照大神を岩戸から引きずり出した程の豪腕を誇る天之手力男神の力を用いてイライザが神布を引きちぎる前に目にも止まらぬ速さでイライザの全身を連打する事で少しでもダメージを与えようとする。
何の儀式や祈祷も無く自在に神の力を自分に宿すその様子はあの依姫を思わせるものだが、その切り替えの早さや発動の速さは依姫をも上回る……ただし、依姫に比べて数多の神を何時でも降ろせるわけではなく、一日に降ろせる神は四神までになっている。
イライザに向けて繰り出された朦朧の巫女の拳は一秒間で優に100を超える速度で繰り出されており、その一撃一撃が並みの妖怪であれば容易く仕留められる程の威力を有しており、その息もつかせぬ連撃によってイライザを壁際に追い詰めると、壁を破壊してそのまま突き進んで行く。
ゴックン・・・・・!
あのねぇ?御馳走が並んでいるんだからそんな自分で自分の首を絞めるようなヘマしたりしないわよ
(こんなにも美味しい御馳走が、滅多に食べれない御馳走が目の前に並び、制限なくいくらでも食べられるバイキングとも言えるこのチャンスをしっかりと活かして食べられる限り食べ尽くす、これを掲げていた・・・・・
が、「自分で自分の首を絞める」という自身が言った言葉に、一瞬頭のなかにノイズが走るような感覚に陥り、霊夢は片手で頭を押さえる・・・・・)
魔理沙
「あはは!お前は相変わらずだなぁ!よし、それなら今度私が料理を作ってやるよ!」
現世では霊夢の体に憑依した朦朧の巫女がイライザとの激闘を繰り広げている中、幸せな夢の世界にいる霊夢は微かな違和感を感じているものの、その正体には気付くにはまだ少しきっかけが……時間が必要となってしまうかもしれない。
常人であれば、完全にこの夢の中に取り込まれ、微かな違和感さえも感じる事が出来ないのだが、霊夢に眠る潜在意識がイライザの術に抗い始めているのかもしれない。
朦朧の巫女(霊夢に憑依)
「(………この程度なら……まだ"見える"。
油断している内に……この一撃で仕留める……!!)」
【神代「韋駄天神之駿足」】
→【神代「天之手力男神之豪腕」】
上下左右前後から再現無く押し寄せる悪夢の手を韋駄天神の速力を降ろす事で瞬間移動するようにして巧みに全て避けきり、天狗や吸血鬼でさえも目視が困難な速さで伸びる無数の手を避けてイライザの背後に回り込むと、先程神降ろしした天之手力男神の腕力の全てを込めて渾身の一撃を放つ……が。
イライザ
「クスクスクス……捕まえた。」
《ゴオォォォォォォォォォォォォッ》
朦朧の巫女が繰り出した拳はイライザの体を捉え、イライザの体を背後から貫く……だが、それを待っていたように不敵に微笑み、首の間接を無視して背後にいる朦朧の巫女の方へ振り返ると、イライザの背中から生えた二枚の翼にある魔力瞳が朦朧の巫女を凝視した次の瞬間、朦朧の巫女の体を貫くために放たれた紫色のレーザーが魔瞳から放たれる。
朦朧の巫女(霊夢に憑依)
「(……やっぱり私の攻撃……いえ、神々の攻撃でさえも通じていない……それに保有している魔力は底無しで魔力の枯渇や能力切れも見込めない……)」
朦朧の巫女(霊夢に憑依)
「(……となれば、私に出来るのはただ一つ……なるべく消耗を避けつつ、この本来の持ち主が戻って来るまで避け続けること。)」
悪夢の世界においてイライザの力は無限に増大し、その魔力の保有量は無限と言っても差し支えがないレベルになっている……加えて、悪夢の世界において、イライザが神々の干渉を妨げているからか、神降ろしをした時の本来の力を出しきれていない事から打ち勝つのは不可能だと理解する。
朦朧の巫女は霊夢との記憶は共有しておらず、ドレミーが霊夢に伝えていた指定場所までの誘導と言うことを知らない……
そ、そう・・・・・?なら、お願いしようかしら・・・・・
(なんだ今の妙な感覚は、と言いたくなるような感じたことのない謎の感覚・・・・・
ほんの一瞬の感覚ではあったものの、確かに感じ取れ、そして気のせいではないということがハッキリとわかる・・・・・
なにか大切なことを忘れてしまっているような気がする・・・・・)
魔理沙
「おっと、その代わりに今度はお前も作ってくれよな?」
楽しげに笑いながら、今回は自分が作るが、次は霊夢の肩をポンポンと軽く叩きながら、今度は霊夢も料理を作ってくれと言う。
魔法の森に長いこと住んでいる魔理沙は勿論、霊夢もまた自炊している事から、それなりに料理スキルがあると思い、提案している。
あんたこそ、怪しげなきのことか使ったりしないでしょうねぇ?
(妙な感覚ではあるものの、そこまで気にするようなことではないと判断したのか、霊夢は気を取り直して、魔理沙に怪しいきのこを使った料理とかならごめんだと予め言っておく・・・・・
こうでも言っておかないと、何を食わされるかわかったものではない)
魔理沙
「ん?お前ならカエンタケやタマゴテングタケぐらいペロッといけるだろ?」
両手を頭の後ろで組んでニシシと笑いながら、最強の毒茸と名高いカエンタケやヨーロッパではその被害や毒性から"死の帽子"とまで呼ばれているタマゴテングタケでさえも、霊夢なら簡単に食べ終えてしまうだろうと少しだけからかってみる。
【悪夢の要塞】
イライザ
「随分と頑張るようだけど……貴方へ直接攻撃する事が出来ないと思っているの?」
《ドッ》
朦朧の巫女(霊夢に憑依)
「………う……ぅ………ぐ………ぁ………!!?」
朦朧の巫女は
だが、イライザは眠らない相手……精神体や魂魄の状態である朦朧の巫女に対して、霊夢の肉体には一切触れることすらせずとも直接攻撃をする事が可能であることを告げる。
すると、その言葉が真実であることを裏付けるように、朦朧の巫女を構成する精神体の一部が消し飛び、更にはただ単純に消し飛ばすだけではなく消し飛ばした箇所から激痛を流し込むことで朦朧の巫女の俊敏性や意識の集中の邪魔をしていく……
イライザがその気になれば何時でも朦朧の巫女を消し去ることが出来る……だが、イライザは朦朧の巫女の心を折るためにわざと精神体消滅という必殺技を使わずに戦うことにしている……
イライザ
「クスクスクス……動きが止まっているわよ?」
《バチッ》
イライザ自身は微動だにしないまま、自分の背面にある壁から巨大な腕を生成してそれを拘束で朦朧の巫女へ叩き付ける事により、痛みで動きが鈍った朦朧の巫女の体を軽々と弾き飛ばし、先程の移動距離を引き戻すかのように移動する。
朦朧の巫女は辛うじて神気を両腕に纏わせたものを盾のようにしてイライザの魔手による打撃の直撃を防ぎ、受け身を取ることで霊夢の体へのダメージを最小限に抑える……
だが、一度失われた精神体の部位は回復や再生がしない……
イライザによって消し飛ばされた精神体の部位が鈍い痛みとなって朦朧の巫女の動きや判断を鈍らせ、力や技の発動の邪魔をし始める事になる。
ただでさえイライザには攻撃が通じないにも関わらず、回避や防御をするための意思さえ阻害し始める……それも、霊夢の体そのものを消したり攻撃するのではなく、その体を借りている朦朧の巫女を直接攻撃して回復不可能なダメージを与えると言う最悪の手段で……
アンタは私の胃袋が魔界かなにかだと勘違いでもしているの?
(極限状態になるとそこら辺に生えている雑草などを貪ることはよくあることだが、流石に毒きのこを食べて平然としていられるほど化け物じみた特殊な体の構造はしていない・・・・・
しかし、魔理沙ならいつか本気で料理にうっかり混ぜそうだとも考えられる・・・・・)
魔理沙
「ははは!冗談だよ冗談。
こう見えてそれなりに料理が出来るんだ私。」
魔法の森には色んな種類の茸があるが、その殆どが食用には出来ないのだが父親に勘当されて魔法の森に住むようになってから独り暮らしをしてきた自分はちゃんとした料理を作る事も出来ると言う。
果たして世間一般的に料理と呼べるものが出来上がるかどうかだけれどね?
(霊夢ならどんなきのこでも食べられるだろうと馬鹿にされたお返しか、 霊夢は魔理沙の作る料理が果たして世間一般的に料理と呼べるようなものが出来上がるかどうかの問題だと冗談交じりに言う・・・・・
極限状態に陥った場合は変な雑草でも食べられる霊夢の場合はそう思われても仕方が無い部分があるが・・・・・)
魔理沙
「なッ……!失礼な奴だな、それならお前はプロ並みに料理を作れるのか?」
ムッと頬を膨らませながら、自分が料理をまともに作れないと小馬鹿にしたような霊夢に対し、それなら霊夢は上手に料理を作れるのかと言い返しつつ、テーブルの上に置かれていた白ワインを手に取る。
作れるか作れないか以前に、そもそもアンタの料理はプロ並みなの?
(魔理沙の問いかけに答えるより先に、そもそも魔理沙が自分で今言ったように、魔理沙の料理はプロ並みなのかどうかを苦笑いしながら逆に問いかける・・・・・
そもそも今までの会話の中にやばいきのこが出てきていることから、料理は作れたとしてもちゃんとしているものなのかどうかは確信できない・・・・・)
魔理沙
「私は魔法使いだぞ?魔法使いは器用じゃないとなれない。料理なんて朝飯前だ!」
巫女?
「…………………。」
意気揚々と料理も得意だと応える魔理沙の後ろ、紅魔館の館内にある数少ない窓越しに静かに霊夢を見下ろしている人物が見える。その人物はリボンを付けておらず、腰まで伸びた長い髪を持った大人になった霊夢のような顔をしている。
この人物についてはこれまで出会った事が無いにも関わらず、霊夢は何処かで会ったことがあるような妙な既視感が感じられる……その既視感は大人になった自分のような顔立ちをしているところ以外からも来ているように感じられる。
そりゃあそうよ、料理をしないと朝ごはんは食べられないんだか・・・・・?ねぇ、魔理沙・・・・・あそこにいるのは誰かしら・・・・・?
(霊夢は魔理沙の料理なんて朝飯前だという言葉に大して言葉を返す途中で少し沈黙し、そのまま魔理沙に謎の巫女のような人物について聞いてみる・・・・・
自分にも似ている気がするものの、普通に考えれば別人だと真っ先に思うだろう・・・・・)
【悪夢の要塞】
イライザ
「クスクスクス……私に勝てないと言うのはもう貴方自身が一番よくわかっている筈よ?」
イライザは次々と朦朧の巫女の精神体を削り取り、消失させていく……
既に朦朧の巫女の精神体の三分の二が削り取られており、神降ろしの力でさえも満足に発揮できなくなってしまっており、ただでさえ大きかった力の差が更に大きく、確固たるものとなっており、イライザはまるで無傷のまま、朦朧の巫女が繰り出す神拳を無傷で受けきり、神速で移動しようと、移動した先の空間を巨大な口や手に変化させることで常に先読みを行い、手段を一つ一つ潰していく……
もはやこの力の差は覆らない。
幾度も幻想郷を救って来た巫女であっても、イライザが支配する悪夢の世界の中ではその力は大きく制限され、消耗の激しくなる朦朧の巫女とは対称的に無限に力が増幅されていくイライザを前に戦うと言う舞台にすら立てなくなりつつある……
朦朧の巫女
「私が倒されれば……貴方はこの体を喰らい尽くして幻想郷の支配を確実なものとするでしょう……私が消えるのは構わない……だけど……この体の持ち主だけは……幻想郷だけは何があっても奪わせない……!」
朦朧の巫女
「この体の持ち主は幻想郷最後の希望……その灯火をお前なんかに奪わせてなるものか……!滅びるのはお前の方だ、歪な悪夢の中でしか存在を確立できない醜悪な魔女……!!!」
精神体が削られる度にその体には、霊夢が味わった皮膚の獣が放つ苦痛の波動とは比にならないレベルの苦痛が刻まれるのだが、それにも決して折れることも、諦めることもなく、弱音の一つも吐かず、それどころかイライザを挑発するような言葉を口にし、少しでも霊夢が覚醒するまでの時間を稼いでいる……
イライザ
「そう?それは"信頼"?"希望"?
残念だけど……それは私には理解できない感情だわ。」
【兇夢「ポノス・ブラキオラス」】
イライザには信頼や希望と言った感情を理解することが出来ない……朦朧の巫女の奮闘や、戦う理由について理解することが出来ず、朦朧の巫女自身も自分に勝つのではなく、霊夢の意識が戻ることを考えているのだと推測すると、自身の右腕を無数の牙を備えた禍々しい肉塊のような腕に変化させ、霊夢が目を覚ます前に霊夢の肉体もろとも朦朧の巫女を喰らい尽くす事を決める……
イライザは精神体や魂魄、思念体と言った実体の存在しないモノをも破壊し、滅ぼす力を持っている。このイライザの攻撃を直撃してしまえば霊夢も朦朧の巫女もまとめて滅ぼされてしまう事になるだろう……
・・・・・っ・・・・・
(まただ・・・・・さっきと同じように、頭の中にノイズが走る・・・・・
いつもなら、普段のこういう集いならば、こんな妙なことはないし、このノイズの原因が何かしらあるはずだ・・・・・
まるでこのノイズが、自分を呼びかけているようなこの妙な感覚は何なのだろうか・・・・・
なにか大事なことを忘れてしまっている気がするし、それを早く思い出さなければ大変なことになるような気がする・・・・・)
魔理沙
「………?
おい、どうしたんだよ?」
館内から覗いている人物は窓の奥へ消える中、頭を抱えて苦しんでいる霊夢を見ていた魔理沙が霊夢に安否を気遣って言う。
・・・・・ねぇ、魔理沙・・・・・私、ここへ来る前、どうしていた・・・・・?
(記憶が乱れる・・・・・
よくよく考えてみれば、紅魔館へとやってくる前の記憶がない・・・・・
そして、さっきから頭の中に度々走るノイズのような感覚・・・・・
これが、今の自分のこの妙な感覚の正体に繋がる気がしたのは、人間の本能か、それとも・・・・・)
魔理沙
「ん?何時も通り神社で掃き掃除をしていただろ?その前は知らないな。寝てたんじゃないか?」
魔理沙は突然何を言っているんだと不審そうに首を傾げながら、ここに来るまでの事について応える……
魔理沙
「なあ、具合が悪いんなら永遠亭にまで行くか?」
魔理沙としては本当に心配しているからか、手にした白ワインを飲む事無くテーブルに置くと、体調が悪いようなら永遠亭にまで運ぼうかと提案してみる。
いや、大丈夫よ・・・・・
(ここでこうして、記憶を振り返り続ければ、正しい記憶が蘇るかもしれない・・・・・
いつもなら普通にあるはずの記憶が、曖昧どころかすっぽりと抜け落ちてしまっているということは、そこに至るまでに何かしらがあったはず・・・・・
じゃあ、その何かしらとは何なのか・・・・・)
魔理沙
「そうか?それならいいんだ。
さ、お前は何を飲む?私が持ってきてやるよ。」
霊夢の様子に違和感を抱いてはいるものの、その事について言及することはなく、すぐに何事も無かったように普段の様子に戻ると、何か飲み物はいるかと問いかける。
それはまるで、優しい時の流れによって、霊夢が気付きかけた夢の世界であると言う確証を微睡みの深奥へ再び誘うかのように……
いえ、今はいいわ・・・・・
(ここで考えるのをやめたら、こうして違和感に気づけなくなってしまう、そんな気がした霊夢は飲み物を断る・・・・・
思考を止めるな、考えろ、思い出せと自冬に言い聞かせるが、やはり肝心な部分が記憶の中から抜け落ちてしまっている・・・・・
何かきっかけがあれば話は別なのだが・・・・・)
魔理沙
「具合が悪くなったら何時でも言うんだぞ?」
飲物を断る霊夢を見て、ますます心配そうに顔をしかめながらも再びテーブルに置いた白ワインを手に取ると、今度は一息にそれを飲み、テーブルの上に置かれた肉団子を器用に箸を使って取り、一口食べる。
先程視界の端に映った館内にいた人物の存在について霊夢が覚えていれば、その人物を介してこの違和感の正体がわかるかもしれない。
・・・・・ねぇ、魔理沙・・・・・一つ聞いてもいい・・・・・?
(いつも一緒に一番行動を共にする魔理沙になら、一番心を許して何でも聞ける・・・・・
霊夢は、魔理沙が何か知っていればと思い、魔理沙に一つ聞いてもいいかどうか問う・・・・・
今までのが自分の思い過ごしだと結論づけるには無理がありすぎるから、ここで聞かなければならないという気がした・・・・・)
魔理沙
「おお、今度はどうしたんだ?私にわかる事なら答えられるかもしれないな。」
肉団子を噛んだ後に飲み込むと、白ワインは入っていたグラスへ、近くの酒瓶を手に取り、今度は日本酒をワイングラスに注ぎながら霊夢の問いかけに対して、自分にわかる事なら応えられると言う。
・・・・・さっき、私に似た巫女みたいな人がいたんだけど、誰だかわかる・・・・・?
(もしかしたら自分の勘違いや、記憶違いという可能性もあるが、無関係とも思えないことから、霊夢は魔理沙に一か八かさっきの謎の人物を知っているかどうかを聞いてみる・・・・・
果たして、魔理沙は知っているのだろうか・・・・・)
魔理沙
「ん?お前に似た巫女?早苗……じゃないか?」
日本酒を注いだワイングラスを手にしたまま少し考えてみるものの、霊夢に似た=巫女服と言うことから早苗が連想されるものの、霊夢の言い方からして早苗ではなさそうだと思いつつもそう応えてみる。魔理沙は本当に知らないように見える。
いいえ、だとしたらこんなこと聞かないわ・・・・・
(確かに早苗は一番当てはまる人物かもしれないが、もし早苗だったとしたら、すぐにわかるのでわざわざ魔理沙に聞いたりはしない・・・・・
そして「見た目は私に似ていたわ、格好だけじゃなく、雰囲気とか・・・・・」と、付け足す)
魔理沙
「うーん?何かの見間違いじゃないのか?それな奴はいなかったと思うぞ?」
その謎の人物について魔理沙は知らない……
その人物の存在はこの世界において本来は存在しないイレギュラーな存在であるように思える。
いない・・・・・?そんなはずは・・・・・
(霊夢は確かに見た、自分自身に似た謎の巫女服の人物を・・・・・
証明することは出来ないし、今の自分の奇妙な状態からして、自分でも本当に見たのか少し不安になりそうになるが、それでもその人物は確かにいた・・・・・
魔理沙が気づかなかっただけなのか、それとも自分にしか見えなかったのか・・・・・)
魔理沙
「ま、今はこのパーティーを楽しもうぜ!」
魔理沙は霊夢の言っている事の意味がわからないといった様子で手にしたワイングラスを傾け、酒を飲み始める。すると、再び霊夢の脳に記憶を掻き消すようにして霞がかかり始めてしまう……
もし、このまま動くこと無くこの場に留まっていれば今度こそ霊夢から現世への記憶や、ようやく気付き始めたこの違和感さえも永遠に失われてしまうことになるだろう……
・・・・・ごめん魔理沙、すぐ戻るから、ご馳走残しておきなさいよ・・・・・?
ダッ・・・・・!
(霊夢は、すぐに戻るからご馳走は残しておくようにと告げると、急いでその場から走り出して紅魔館から出る・・・・・
霊夢の魔理沙に言った言葉は、今いるこの世界がイライザの用意した偽りの現実であると本能的にわかってのことか、それとも・・・・・
すぐ戻るから、という言葉は異変を解決したらすぐにまたいつもの日常に戻るから、という意味合いにも感じ取れる・・・・・
そして、霊夢は紅魔館へ来る前に自分がいた場所、博麗神社に向かっていた・・・・・
もしかしたら、紅魔館へ来る前の自分の記憶がハッキリと蘇るかもしれない、そんな僅かな希望を胸に・・・・・)
魔理沙
「………………。
……ああ、約束だぞ?」
魔理沙は優しく微笑みながら霊夢を見送る……
霊夢を見送る時の魔理沙からは、不思議と何の違和感も感じられない……それはまるで、イライザの支配下に置かれながらも本物の魔理沙が霊夢なら現状を打破してくれると言うことを信じ、望みを託しているかのように……
【→悪夢の世界 博麗神社】
《サアァァァァァァァァァ……》
悪夢を克服しつつある、神社に戻った霊夢ならばある感覚に気付くことが出来るだろう。最初に霊夢が訪れた時とは違う……
本堂の中に誰かがいるような……そんな気配のようなものが感じられる。
それは邪気や悪意と言ったものは無く、館内から感じられたあの懐かしいような感覚……気配であり、敵意や害意と言ったものが加えられることはないだろう。
・・・・・誰か、いるの・・・・・?
(感じた謎の違和感に、ゆっくりと本堂へと入る・・・・・
不思議と敵意のようなものは感じなく、寧ろどこか安心感さえ感じるような、そんな妙な感覚を・・・・・
もし誰かいるとするならば、紅魔館で見たあの謎の巫女のような人物だろうか、それとも・・・・・)
霊夢に似た巫女?
「………ようやく気付いたわね。」
本堂の戸を開けると、その中では霊夢に似た顔立ちをしているものの、霊夢を20歳前半にまで成長させ、頭には特徴的な髪留めやリボン等を一切付けていない、腰まで伸びた黒髪をした巫女が静かに座っており、霊夢を見て優しく微笑みながら漸く気付いたかと言う。
・・・・・あなたは誰なの?博麗の巫女・・・・・?
(紅魔館で見た時からずっと気になってたことを単刀直入に聞く・・・・・
無関係とは思えないほどに自分と近しい何かを感じるが、相手が博麗の巫女なのかどうかはわからない・・・・・
そもそも、今の代の博麗の巫女は自分だ、他にいるはずがない・・・・・)
霊夢に似た巫女
「……その呼び方をされるのは随分と懐かしいわね……
そう、私も貴方と同じ博麗の巫女……いえ、そう呼ばれていた者……よ。」
本堂の中で正座をした女は自分が博麗の巫女であると応える。
霊夢は歴代の巫女についての話はされていなかったものの、彼女が本当に博麗の巫女であるのならば、彼女から感じられる懐かしいような感覚にも説明がつく。
だが……その霊夢と瓜二つとも言えるように似た顔立ちは前任の博麗の巫女……ひいては博麗の血筋と言うだけでは説明しきれないような感覚もある。
霊夢に似た巫女
「貴方が此所に来た理由は知っている……いえ、待っていたと言うのが正しいわね。」
巫女は霊夢が此所に訪れる事も全て知っており、その上でこの場所に居るのだとも応える……その真意は定かではないものの、今のところ敵対する意思は無いように見える。
まるで私がこのタイミングでここへ戻ってくることを予め知っていたかのような口ぶりね・・・・・
(かつて博麗の巫女と呼ばれていたという謎の人物は、予めこうなる未来を知っていたかのような口ぶりで話していることに違和感を持ち、ファンタジーなどでよくあるようなタイムトラベラーなのではという疑いを持ち始める・・・・・
もしそうであったとしても、妖怪や妖精などがいるこの幻想郷においては、それもあまり驚くようなことではないかもしれないが・・・・・)
霊夢に似た巫女
「勿論……貴方が博麗の巫女であるのならは必ず気付いてここに来るとわかっていたわ……」
未来から来訪したかのように、全てを知っているような言動を取り、リボンや髪留めと言った特徴的な装飾は無く、シンプルな巫女服であるものの、非常に似た容姿をしたその巫女はゆっくりと立ち上がると、軽く指を鳴らし、自分の後ろにある映像を投影する。
その映像の中では、霊夢がたった一人で、禍々しい無数の棘を備えた触腕や、おぞましい魔蟲の大群等をあらゆる場所から生み出し操る魔女……イライザと戦っている光景が写し出されている。
・・・っ・・・・・!これ・・・・・は・・・・・
(突如として映し出される映像に、困惑を隠せずに戸惑う・・・・・
そして、同時にさっきから頭の中に走るノイズのような違和感の原因はこれだと直感で確信する・・・・・
何故今の今まで記憶から抜けていたのか、自分でもわからない・・・・・)
霊夢に似た巫女
「……これで完全に思い出した?
あの魔女……イライザは恐ろしく強力な夢幻術の使い手……
現を夢に、夢を現に変える程の力を持っている……本来なら違和感すら覚えること無くこの世界に取り込まれ、意識を失った肉体も破壊されることで脱出不可能になる技だったのよ……?」
後ろに展開した映像について巫女は振り返って確認はしていないものの、霊夢の表情を見て、戸惑いながらも違和感の原因を突き止め、理解した霊夢へ、巫女はイライザの使う夢幻術や、それを用いた必殺技の仕組みについて霊夢へ教えていく。
・・・・・これでようやく、目が覚めたわ・・・・・なるほど、あの性悪魔女、このまま私を夢の中に取り込んだまま消し去るつもりなのね・・・・・気がついてよかったわ・・・・・
(恐らく、違和感を感じることが出来たのは博麗の巫女であるかどうかが関係しているかはわからないが、奇跡だったのだろう・・・・・
もしあのまま気づかずにいれば、違和感のないあの偽りの日常に取り込まれて亡き者にされていたと思うとゾッとする・・・・・)
霊夢に似た巫女
「……ここからは貴方が決めるといいわ。」
巫女は指を鳴らすと、背後に投影された映像が消え、霊夢と向かい合ったまま、二つある道のどちらを進むのか……その選択を霊夢に迫る。
霊夢に似た巫女
「イライザは恐ろしく強く、邪悪な存在……
夢の世界の中では無敵と言ってもいい程の力を持っている……
勝機は無いに等しい……貴方が望むのなら、この夢の世界で何の苦痛も恐怖もなく一生を終えることも出来る。」
様々な神の力を宿しながらも、悪夢の世界では無限に力が増幅され、圧倒的な力を行使できる強大な力を持ったイライザと対決することを選ぶか、それともこの微睡みの世界で幸せなまま終わりを迎える……この二つのどちらの道を歩むのかと問う……
霊夢に似た巫女
「辛く苦しい現実に戻って絶望と戦うか……
この苦痛の無い微睡みの中で終わる……
どちらを選んでも私は責めたりはしない。」
痛みを伴ってこそ、平和は掴み取れる・・・・・
(今までも、この先も、きっと今回のような異変が起きることも多々あるだろう・・・・・
これからも自分は幻想郷を守らなければならない使命がある、こんな偽りの世界でのうのうと過ごすつもりは毛頭ない・・・・・
霊夢は、イライザとの決戦を選んだ・・・・・)
霊夢に似た巫女
「……それじゃ、この世界から貴方を出す事にするわ……」
巫女は今度は合掌するようにして両手を合わせる。
すると、周囲の空間が大きな渦のように歪み始め、金色に輝く光の渦が形成されていく……これを通れば再び元の肉体へ戻ることが出来るだろう……
霊夢に似た巫女
「…………ごめんなさい。」
だが、巫女の表情は嬉しいような、悲しいような……複雑な表情をしており、霊夢に対して一言謝る……何に対しての謝罪なのか……悪意も害意も無く、この巫女に何かされたような事は無いため、その真意はわからない。
何謝っているのよ?私なら大丈夫、任せなさい・・・・・
スゥッ・・・・・
(霊夢は、相手に謝られたのを「こんな命にかかわる大事を霊夢一人に任せてしまってごめんなさい」という意味合いだと受け取って、上記の言葉を返す・・・・・
それに、この状況で謝られても、状況が変わるわけでもない・・・・・
霊夢は光の渦を通って元の世界へと戻ってゆく・・・・・)
霊夢に似た巫女
「……本当なら……貴方達には何も背負わせたくはなかった……何も背負わずに貴方達には生きてほしかった……私の不始末のせいで……後の世界に生まれた貴方達に"奴ら"との戦いを……博麗の宿命を背負わせてしまった事を……謝るわ………」
巫女は光の渦を通って元の肉体にまで戻っていく霊夢に対してその真意について語る……
その言葉はイライザと対峙する、もう一人の巫女と似た考えであり、歴代の巫女達は……初代から先代まで、そのほぼ全員が後世の者達は自分達のように元悪との宿命を背負う事無く自由に生きていて欲しいと言うささやかな願いを持っていた……
だからこそ、後世に悪を残さぬよう、その命を燃やして戦い続けていたのだが……自分が理想とした幻想郷が成立し、元悪を討ってから千年以上も経ったにも関わらず、世界はまだ悪に脅かされ続けている……
その事実に対して巫女は、始まりの巫女である自分の不始末のせいで後世にまでこの宿命を背負わせてしまったと負い目を感じている……
・・・・・っ!
(イライザと対峙している状態の霊夢の体に、霊夢の意識が戻ってくる・・・・・
やはり、体のあちこちに激痛が走る・・・・・しかし、このままやられてばかりでもいられない・・・・・
霊夢は、イライザの方を睨みつける・・・・・)
イライザ
「クスクス……へぇ……?
また中身が変わったようね?」
意識の戻った霊夢の前でイライザは口許に手を当ててクスクスと不敵に微笑みながら、朦朧の巫女から霊夢へと意識が切り替わった事にいち早く察知したイライザはそれを指摘する……
朦朧の巫女
『……随分と……長かったわね……?』
霊夢へと戻った影響で、これまで霊夢の体を守っていた神々の力が失われ始めてしまう……更に、これまで霊夢の代わりに戦っていた朦朧の巫女の精神体もその大半がイライザによって抉り取られ、消滅させられており、もはや加勢する事は出来ないだろう……
・・・・・えぇ、今戻ったわ・・・・・
(霊夢のこの言葉は、自分が戻ってきたことに気づいたイライザと、随分と長かったと言葉をかけてくる朦朧の巫女の二人に向けての言葉にも聞こえる・・・・・
そして「もうアンタの好き勝手にはさせないわよ?覚悟なさい・・・・・」と、イライザに宣戦布告とも取れるような言葉を放つ・・・・・)
イライザ
「クスクスクスクスクスクス……
ただの人間ごときが何を出来ると言うのかしら?
奇跡は二度も起こらないわよ?
さあ………"おやすみなさい"。」
【悪夢「魔蝕昏倒の囁き」】
イライザは微笑みながら、自身の言葉に魔力を乗せて霊夢
どのような手段を用いて自分の夢幻術を突破して来たのかは知らない……だが、先程の神降ろしの巫女はもう死に体であり、もうまともに機能する事はないと考え、この昏倒術によって今度こそ完全に霊夢を無力化させられると考えている……
【微睡みの世界】
レミリア
「霊夢……もう頑張らなくてもいいのよ?」
魔理沙
「アイツには勝てない……もう諦めたほうがいい。」
紫
「勝ち目の無い戦いをしなくてもいい……大人しく死を受け入れる方が楽になれるのよ?」
イライザの見せる悪夢は、先程までの微睡みの世界とは違い、霊夢の知る人物達の姿と声を借りて霊夢の戦意と闘志を削り取ろうと言葉を並べていく……もっとも……本物の三人であれば、まず言わないであろう言葉ばかりであるため、夢の精度そのものは大きく劣っているように見えるが、強い信念が無ければこの微睡みを突破する事は出来ないだろう……
・・・・・アンタ、この程度の下らない技で私が屈するとでも思ってるの・・・・・?
(姿も声も、本物と何一つとして変わらないほどに精巧な悪夢・・・・・
イライザの見せる悪夢は、確かに寸分の狂いもなく人物の特徴を捉え、再現するところが厄介なところだ・・・・・
しかし、霊夢から言わせれば・・・・・)
似ても似つかない粗末な偽物ね・・・・・
イライザ
「クスクス……!
私の夢幻術は防げない……」
《ギュオッ》
イライザは自身の周囲に無数の目の無い大蛇とも、巨大な蚯蚓とも形容可能な異形の存在を生やし、それを一斉にイライザの夢幻術によって偽りの光景を見せられている霊夢に向けて襲い掛からせる……
一瞬でも動揺して動きが鈍ってしまえば瞬く間にイライザによって喰らい尽くされてしまうだろう……
学習したらどうかしら・・・・・?
(霊夢は偽りの光景などものともせずにイライザに接近してゆく・・・・・
お前だけは絶対に許さない、必ず仕留めてやると言わんばかりの、獲物を視界に捉えた猛獣のような目つきで睨むその様子は、時代や人物こそ違えど過去にヴァルターを葬り去った博麗の血筋そのものであることに間違いない・・・・・)
イライザ
「…………!!!」
《ゾワッ》
イライザは霊夢の放った鬼気迫る雰囲気を感じ取ると、誕生してから始めて感じた悪寒を感じ、少し後退りする……
だが、霊夢の五感にはイライザの見せる偽りの情景で塗り潰されているため、彼女に向けて襲い掛かる肉蛇に対処する事は出来ないとイライザは考えている。
魔理沙(夢幻)
『もう戦わなくてもいいんだぞ霊夢……』
レミリア(夢幻)
『そうよ、もう苦しまなくてもいい、戦わなくてもいい……諦めてもいいのよ?』
霊夢の眼前にはイライザの姿も、迫り来る肉蛇の音も姿も無く、あるのは戦うことを諦めるように語りかけ続ける霊夢の身近な者達の姿と声しかしない……夢幻達は霊夢に精神的な動揺や、戦意喪失させるための言葉を投げ掛け続けている。
・・・・・偽りだらけな上に暴れ回っても敵にしか被害が出ない空間だと、容赦しないで済むからいいわね・・・・・
ドダダダダダダダダダダダッ!!!!!
(霊夢は、イライザの見せてくる夢幻をまったく気にせずに、寧ろ偽りだからこそ容赦しないで済むとまで言い放ち、さらにはそのまま弾幕を放ちながら夢幻で覆い隠されて見えないはずのイライザの方向へと、確実に歩みを進めてゆく・・・・・
博麗の巫女が本気を出せば、悪夢なんかよりもよっぽど恐ろしいのかもしれない・・・・・)
イライザ
「……へえ?範囲攻撃を仕掛けて来るのね?
この程度の威力なら防ぐまでも無いのだけれど……それでは面白くない……彼女が正気に戻す前に……拭えぬ罪を背負わせてあげる。」
イライザの伸ばした肉蛇を霊夢が無差別に放った弾幕を前に撃ち抜かれて消滅していくものの、神の力を宿した攻撃を受けてもダメージを受けなかったイライザには何の脅威にもなっておらず、防御も回避もせずにその弾幕を受けながらも策略を練る……
そしてイライザは霊夢を目覚めさせる前に彼女への追い討ちをかけようと、自身の前に、最初に幻想郷に住む人妖から奪った精神を壁のようにして展開することで霊夢の手でそれを破壊させようとする。
この精神の壁そのものは何の防御力も無く、容易に破壊することが出来るのだが、これが破壊された場合、精神の壁を構築している数多くの人妖の精神も消滅し、例えイライザを倒せたとしても、幻想郷にいる多くの人妖が廃人となってしまうだろう……
っ・・・・・!!!!!
バッ・・・・・!
ダダダダダダッ!!!!!
(霊夢はイライザの卑怯な行動に、咄嗟に精神の壁の前に出て自分の弾幕を自分で受ける・・・・・
相手は悪夢を操る以前に、そもそもの戦闘力や悪知恵も含めて規格外の存在・・・・・
迂闊に攻撃ができないという点では本当に厄介な相手だ・・・・・)
イライザ
「クスクス……貴方達って本当に理解に苦しむわ。
その哀れさに免じて正気に戻してあげる。」
《パチンッ》
霊夢の放った弾幕を霊夢自身が盾となって防ぎ、自滅するのを見て、ますます楽しそうに笑い、嘲るように言葉を告げると、イライザは指を鳴らし、霊夢を包んでいた夢幻を解く……
だが、絶望的な現状は変わらない……いや、寧ろ徐々に悪化しつつある……
ここは悪夢の世界……世界の全てがイライザに味方する中、霊夢はたった一人……もう味方はいない、助けてくれる人も居ない……その絶望的な現実を突き付けることで直接霊夢の心を折ろうとする……
イライザ
「他人なんてどうだっていいじゃないの?他人が生きようと死のうと自分には興味無い、関係無い。自分さえ良ければそれでいいじゃない。わざわざ他人にために命を賭けるその理由がわからないわ。」
イライザは人間がわからない。
人間の持つ感情がわからない……特に、今の霊夢のように幻想郷を背負ってたった一人イライザと対峙し、自分の保身よりも世界を選ぶ霊夢の意思や覚悟がわからずにいる。
イライザやヴァルターには誰かを想う感情も、なにかを守りたいと言う感情も存在しない……何処まで行っても自分の保身と利益の事しか考えられない……
・・・・・でもアンタは、見下している人間にはわかるものがわからないんだから、これほど惨めなことはないわね・・・・・
(自分の弾幕を受けることで幻想郷に住まう者達の精神を守った霊夢は、哀れだと評価するイライザにむけて、アンタはその哀れんでいる人間以下だと反論する・・・・・
そして「ほんといいわよね、自分が覇権を握れる世界なら、どんなに対戦相手に恐れを抱いていようが、自分のご都合主義で進められるんだもの・・・・・」と、イライザは卑怯者なだけではなく、臆病者でもあると遠回しに言う・・・・・)
イライザ
「クスクス……何を言っているのかしらぁ?
私は別に貴方達人間に興味があるわけじゃない……ただ滑稽な言動ばかり取る貴方達を嘲笑しているだけよ?」
【弄魂「弄ばれし精神と思念」】
イライザはゆっくりと両手を広げると、それに呼応するように、幻想郷の住人達の精神が具現化した薄い膜のような壁を無数の刃に変え、それを霊夢に向けて放ち、霊夢の体をズタズタに引き裂こうとする……
この刃はその気になれば簡単に破壊や防御も出来る……だが、それをしてしまえば、霊夢が守る筈だった大勢の人妖の精神は永遠に破壊されることになってしまうだろう……
その気になればイライザは素の力だけでも霊夢を葬れるだけの実力差がありながら、まるでジワジワと獲物をなぶるかのように、霊夢が反撃できないような状況を変え始めている……
イライザ
「ここまで実体の持つ者と対峙し続けるのは、あの不死王(ヴァルター)以来かしらね?貴方は彼と同じぐらいこの私を楽しませてくれるかしら?」
イライザはかつて、レミリアとフランの父親である、かのヴァルターとも戦った事があるようで、霊夢もヴァルターと同じぐらい自分を楽しませてくれるのかと問いかける……
ザシュッ・・・・・!ザシュッ・・・・・!
・・・っ・・・・・!
(霊夢は防御したり攻撃したりすることなく・・・・・いや、しないのではなく、できないのだ・・・・・
そんな圧倒的不利な状況の中、霊夢は腕や足、頬といったなるべく急所を避けながらも切り傷を作ってしまう・・・・・
そして、ヴァルターと同じように楽しませてくれるか否かという質問に対して「アンタも十分知ってると思うけど、地位というものを一番気にする不平等の代表格のような生き物の私達人間は、全ての人間に共通する唯一のこととして、弱いということがあるわ・・・・・それは博麗の巫女だって同じよ、力があるだけで、中身はただの人間の小娘・・・・・何一つとして特別なんかじゃありゃしない・・・・・でもね、そんな弱いものを虐めることでしか快感を得られないアンタは、その弱い者以下だってことを自覚しているかしら・・・・・?」と、長々と煽り始める・・・・・)
イライザ
「クスクス……負け惜しみにしては随分とみっともわね?
そのみっともなさが更に歪むとどうなるのかを見せてもらおうかしら。」
イライザは砕けた硝子片のような幻想郷の住人達の精神の結晶を自由自在に操り、霊夢の体を切り裂きながら言葉を続けていく。
すると、そんな中でも霊夢の脳内にあの桃色の球の声が蘇る。
その声は霊夢にイライザを"倒す"のではなく"誘導する"と言うものであり、これが絶望に染まった現状を打破できる唯一の策なのかもしれない。
《・・・・・誘導・・・・・この悪魔を上手く誘導できるかどうかは別として・・・・・やるしかないわね・・・・・》
(体中、切り傷だらけになり、霊夢の巫女服の紅くない部分まで真紅の鮮血で染め上げられたゆく・・・・・
貧血になってきているのか、頭がボーッとしてきた挙句、視界がぼやける・・・・・
だが、倒すのではなく、誘導するのであれば、まだ何とかできるかもしれない・・・・・
やるしかない・・・・・)
イライザ
「クスクス……悪夢を通じて貴方の人生を覗かせてもらったのだけれど……貴方の人生も随分とちっぽけで、みすぼらしいわね?本当につまらなくて退屈な人生だわ。」
イライザは自身の夢幻術を通じて霊夢の過去や記憶を読み取る事で、反撃できないように特定の範囲の者の精神を的確に呼び寄せたり、理想の世界を再現したりと言う事が出来るのだと判明する。
この言葉は裏を返せば先程の霊夢の戦意を削るために見せていた幻達は、本物のレミリアや魔理沙達の事に殆ど興味がなく、その内面や深い部分まで再現しようと言う意志が無かったと言うように、霊夢だけでなく、幻想郷で霊夢を認めてくれている者、信じてくれている者達の事さえも馬鹿にしている事になる……
イライザは霊夢だけでなく、幻想郷にいる全ての者をちっぽけな取るに足らない存在なのだと語る。
・・・・・アンタのクソみたいな意見なんて私の人生には微塵も関係ないわ・・・・・
(イライザからすれば霊夢のすべての反論がただの人間の小娘の戯言にしか過ぎないのと同じように、霊夢からすればイライザの意見はただの化け物の哀れな戯言にしか過ぎない・・・・・
しかし、それは霊夢のみについてイライザが言っていた場合のみに限る・・・・・
他の仲間達について馬鹿にされた霊夢は、怒りの炎を静かに燃やし始める・・・・・)
イライザ
「クスクス……哀れ、その下らない理想を抱いて微睡みの中、果てていれば良かったものを……目を覚ましたばかりに悪夢よりも恐ろしい現実を見なければならなくなっただなんて悲惨じゃない?」
イライザは霊夢の言葉を意にも介さずに微睡みの中から抜けてしまった霊夢の判断を詰るように言葉を並べていく……そして、イライザは霊夢が誘導を狙っている事に気付いていないのか、そろそろ決着を付けようと、幻想郷の住人達の精神を刃に変えたものを天井全体を埋め尽くすようにして広げ、室内全域、何処に隠れようと、避けきれない程の圧倒的な数の刃で霊夢を切り刻もうとする。
この部屋から脱出する事が出来なれば死を意味するが、先程までの朦朧の巫女とイライザの戦いの影響か、部屋の一角に大穴が空いており、そこから外へ出られるようになっている。
現実も悪夢に蝕まれているのであれば、その悪夢から覚ます・・・・・それが私の役目よ・・・・・
(人間の強さというものは、決して適わないであろう相手にも怯まずに立ち向かうことでもある・・・・・
どれだけ悲惨な現実が待っていようと、目を背けないことに意味がある・・・・・
そして、霊夢は部屋の一角の大穴に気がつくと
「少なくとも、戦闘能力が高いくせしてたった一人の人間にここまでするほど、臆病者のアンタよりかはマシな人生を歩んでいるわよ・・・・・」
と言い、部屋から脱出する・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……私はね?他のヴァイスリゾームの連中と違って貴方達を心の底から愛しているのよ?だって……貴方達人間ほど壊しがいのある存在なんていないのだもの。」
《ザアァァァァァァァァァァァァァァッ》
霊夢が大穴から脱出する間際にイライザはなぜ霊夢を敢えてここまで仕留めずに生かしておいているのか、その理由……そして自分が抱く人間に歪んだ愛情や愛着について語ると、天井を覆うようにして広がっていた無数の精神の刃が嵐の雨粒のように降り注ぐ……
天井から豪雨のように降り続ける精神の刃の雨の中でもイライザは平然としており、ゆっくりと右手を霊夢が脱出した大穴に向けて翳し、自身の右腕を無数の口が付いた巨大な触手に変え、部屋の外へ逃れた霊夢に追撃しようとする。
っ・・・!!!!!ああぁぁぁぁあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああああああっ!!!!!
(霊夢は無数の精神の刃によって体中を切り刻まれながら、悲鳴を上げる・・・・・
ただ単に切り傷で済めば、体に深々と刺さる刃もあり、逃げ場はどこにもない・・・・・
霊夢は、イライザの追撃に対応することも出来ない・・・・・)
イライザ
「」
部屋全体に向けられた精神の刃による嵐に対して部屋の外へ逃れる事で回避した霊夢だったものの、霊夢を追うようにして飛来した精神の刃の一群に切り裂かれていく中、イライザが伸ばした、無数の口が付いた触腕へと変異した右腕が断末魔をあげる霊夢を喰らおうとする。
既にその大半が再生し終えてしまっているものの、霊夢が脱出した部屋の外はカシキ・ヒェリ(悪意の手)を滅ぼした時に出来た下層へ繋がる大穴がまだ残っている。これを利用して下層へ逃げることが出来れば、この要塞から脱出するための距離を大きくショートカットする事が出来る。
イライザ
「クスクスクス……いい断末魔ね?
けれど……まだ恐怖と絶望が足りないわ。」
部屋全体に向けられた精神の刃による嵐に対して部屋の外へ逃れる事で回避した霊夢だったものの、霊夢を追うようにして飛来した精神の刃の一群に切り裂かれていく中、イライザが伸ばした、無数の口が付いた触腕へと変異した右腕が断末魔をあげる霊夢を喰らおうとする。
既にその大半が再生し終えてしまっているものの、霊夢が脱出した部屋の外はカシキ・ヒェリ(悪意の手)を滅ぼした時に出来た下層へ繋がる大穴がまだ残っている。これを利用して下層へ逃げることが出来れば、この要塞から脱出するための距離を大きくショートカットする事が出来るだろう。
・・・・・っ・・・・・
(触腕と化したイライザの右腕に追いつかれてそのまま捕食される前に、霊夢は何とかして大穴から下層へと逃げることに成功する・・・・・
しかし、それは結果的であり、正しく言えば、逃げたというよりかは朦朧とする意識の中、落ちていった、と言うのが正しいだろう・・・・・)
イライザ
「あら、どこへ行こうと言うのかしら?
此処は私の腹の中……何処にも逃げ場なんて無いわよ?」
【貪夢「凄絶なる凶夢」】
《メキメキメキメキメキッ》
《ドガガガガガガガガガガガガガガッ》
イライザは霊夢が再生途中の穴から下層へ落ちていくのを見て、イライザは周囲にある空間を脈動するおぞましい肉塊としてその身に纏い、夥しい数の口が存在する醜悪な巨大蛙のような姿の半身を得る。
そして、霊夢を追いかけるべく、床や壁、天井の悉くを圧倒的な質量を生かして破壊しながら、下層へ落ちていく霊夢を追い始める……
・・・・・
(終わりの訪れというのは、こういうことを言うのだろうか・・・・・
精神の破片が突き刺さったままの霊夢は、半開きの目と朦朧とする意識の中、抵抗する力もなく迫り来る悪夢の化身イライザの追撃に襲われるがままの状態となってしまう・・・・・
博麗の巫女も所詮は人間、限界というものがある・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……子鼠のように逃げ回っても無駄だと言うことがわかったでしょう?」
イライザは巨大な肉塊蛙のような魔物と半身を融合させた箇所の無数に存在する鋭い牙を備えた口を大きく開ける……すると、その口内には何重にも鋭利な牙が生えた口が存在しており、壁や天井を圧壊し続けながら落下する勢いに任せ、霊夢を喰らおうとする。
魔理沙?
『……む………霊夢!!』
まるで底無しであるかのように下層へ自由落下する中、霊夢の体に突き刺さった精神の刃から魔理沙の声が聞こえて来る……イライザにとっては単なる攻撃手段、牽制の一手法に過ぎないと見下していたが故に、魔理沙の精神が霊夢へ語りかけると言うことは予想できなかったと思われる。
《・・・・・魔理・・・・・沙・・・・・?》
(魔理沙の呼びかけに、霊夢はようやく少し意識を取り戻し、心の中で問いかける・・・・・
声を出すことすらもう難しいほどに、人体へのダメージが大きすぎる・・・・・
そして、霊夢は魔理沙の声をとうとう死が近くなってきたがゆえの幻聴だろうかと思えてくる・・・・・)
魔理沙
『やっと聞こえたか……どうなっているのかはわからないが、ヤバいって事だけはわかる。何か勝算はあるのか?』
巨大な肉塊のような半身を得たイライザは霊夢が通り抜けて落下することが出来る床の穴を強引に抉じ開けながら下層へ向かっているため、時間のロスが生じているものの、着実に距離を詰めており、みるみる内に霊夢に向かって来ている……
このまま自然落下に身を委ねているだけでは追い付かれてしまうだろう。本日何度目かになる絶体絶命の状況の中、霊夢の体に刺さった精神の刃の断片を介して魔理沙の声は霊夢に何か勝算はあるのかと問いかける。
《・・・・・アイツを誘導するようにとは言われているわ・・・・・でも・・・・・万が一にも、今の私に勝ち目はないでしょうね・・・・・》
(このままでは確実に追いつかれ、そしてなぶり殺しにされるのはまず間違いないだろう・・・・・
今のままでは自分には万が一にも勝ち目はないということに、霊夢は気がついていた・・・・・
それでも、もしここで命を落としたとしても、頼まれたことである誘導することを成し遂げることが出来たなら、自分の役目は終わりだとも思っている・・・・・)
魔理沙
『……誘導、すればいいんだな?
よし、それなら私の力を貸してやる。』
ここは歪められた悪夢の世界……
だが、同時に意思や精神の強さが反映される夢の世界でもあるため、それをいち早く理解していた魔理沙が自分の力も貸してやると言うと、霊夢に刺さっていた精神の刃の破片が抜け、八卦炉へと変化して霊夢の手元へ移動してくる。
現に、悪夢の処刑者を葬る際に、甲冑や剣が現れたり、異様なまでにあっさりと上層へ通じる大穴を開けることが出来たりと、多少なら霊夢でも干渉する事が出来ている事が判明している。
・・・っ・・・!ありがとう、おかげで痛みでも目が覚めたわ・・・・・
(精神の刃が抜けたことで、その際の痛みでハッキリと目が覚める・・・・・
そして、魔理沙の精神の刃が変化した八卦炉を右手に持ち、再びイライザとの対峙を決意する・・・・・
人間二人だけで悪夢の女王に挑むのなんて、到底勝ち目がないことではあるが、霊夢からしてみれば100人力も同然・・・・・)
イライザ
「クスクスクスクスクス……
さあ……これで終わりね?」
イライザの半身である、目や鼻がなく、身体中に無数の口を備えた巨大な蛙のような形の肉塊が、体表に開いた無数の口とは別の、メインである巨大な口を大きく開き、霊夢を呑み込もうとする。
開かれた口内には先述した通り、口の中に口があり、それが幾層にも連なった異様な構造になっており、呑み込まれてしまったら最期、無数の鋭利なナイフのような牙で瞬く間に噛み砕かれ、その魂もろとも貪り喰われてしまうだろう……
・・・・・マスタースパーク・・・・・
(ここまで追い詰めた上で、もう反撃はできないだろうと、ここですべてを終わらせるつもりの油断しきったイライザにミニ八卦炉を向けて、マスタースパークを至近距離で放つ・・・・・
敢えて至近距離まで引き寄せることで、致命傷には至らずとも絶対に避けることも出来ない一撃を放つ・・・・・)
イライザ
「………………!!?」
霊夢が魔理沙の力を借りて放ったマスタースパークが、大口を開けたイライザの半身の口内に直撃すると、大爆発が巻き起こり、巨大な肉塊の所々が吹き飛び、ダメージを受けて撤退するための時間稼ぎに成功する。
既に血の巨人と戦っていたエリアを抜け、カシキと戦っていた階層まで見え始めており、残り30m程落下すれば後は道なりに移動するだけでも脱出する事が出来るだろう。
やっと・・・・・アイツに一石を投じることが出来たわ・・・・・
(魔理沙の力を借りて、やっとイライザへの一石を投じることが出来た・・・・・
脱出まではもう近いが、あれを受けてもイライザはまだ追ってくるだろう・・・・・
ここからは、時間との戦いになるだろう・・・・・)
イライザ
「…………クスクスクス……
面白い……面白いわぁ……まさか悪夢の支配者であるこの私に……夢の力を使ってくるだなんてね……?」
《メキメキメキメキメキ……》
マスタースパークによって巨大な肉塊蛙の半分近くが消し飛んだ……だが、肝心のイライザ本体にはダメージすら一切通っていない……悪夢を支配するイライザを始めとした幻魔達には夢の住人の力は通じない……それを証明すると、イライザは消し飛ばされた肉塊の再生を始めながら、イライザの背中から生えた二枚の翼が霊夢に向かって伸ばされる。
イライザの翼腕には鋭利な赤い爪が備わっており、それによって落下中の霊夢を空中で切り裂こうとする……
あと10mで下に着くものの、先程と同じようなマスタースパークではイライザ本体にはダメージを与えることが出来ないため、伸ばされたイライザの翼腕を迎撃する術は無い……
・・・っ・・・!!!!!
(霊夢は必死になって脱出口まで急ぎ始める・・・・・
ここで捕まってしまえば、今までの苦労も水の泡となってしまう・・・・・
敵が支配権を握る世界では、どんなに力を持っていようと博麗の巫女も無力同然にまで至るということを改めて思い知らされる・・・・・)
魔理沙
『しかし厄介だな……
どういう原理かはわからないが、私の力の大半が奪われている状態じゃ、今の火力で撃てるのは後一回だけだ。』
イライザの伸ばした翼腕が霊夢のコンマ数秒前にいた場所の床と天井を大きく引き裂き、霊夢の服の端をも裂く中で、先程撃ったマスタースパーク(イライザ本体には通じないが、悪夢の産物を破壊可能な威力)を撃てるのはあと一度だけだと教える。
・・・・・魔理沙・・・・・その残り一回、本当に力が微塵も残らないほど、全部の力貸してくれる・・・・・?
(イライザの翼腕が迫り来る中、精神体の魔理沙に残りのあと一回を微塵も力が残らないほどに力を貸してくれるかと聞く・・・・・
改めて悟った、コイツはヤバイ、本当に死ぬ気でかからないとどうにもこうにもならない・・・・・
残りの一撃でなんとか脱出するしか方法は無い・・・・・
魔理沙
「………何か考えがあるんだな?」
今持ちうる限りの力の全てを貸してほしいと言う霊夢の言葉を聞いて、自分の力を用いてこの状況を打開する策があるのだと思い、何か考えがあっての事なのかと問いかける。
一方、イライザは肉塊の再生を終えたどころか、その体積が更に二回りも肥大化し、下層に辿り着いた霊夢達を押し潰そうと迫る。
・・・・・少しの間でも、あの化け物の動きを止められれば、あとはアイツを誘導したまま脱出するだけ・・・・・そうすればもうアイツは終わりよ・・・・・
(霊夢が頼まれたことは戦うことではなく、イライザのことを誘導すること・・・・・
誘導した上で脱出してしまえばもうこっちのものだ・・・・・
つまりは、少しの間動きを止められれば、その間に脱出に成功し、そうすればイライザは追ってくる、そうなれば自然と誘導は完了するだろうと霊夢は思っている・・・・・)
魔理沙
「ははは、何だ策と呼べるほどのものじゃないな。
だけど、お前らしいっちゃお前らしいな!
よし、ありったけの力を貸してやるよ!
その代わり……高くつくぞ?」
魔理沙の顔は見えないものの、霊夢の策とも呼べない考えを聞いて笑っているように感じたその次の瞬間、イライザの半身たる巨大な肉塊が巨大な口を開けて避けることも逃れることもせずに立ち止まっていた霊夢達を呑み込む……
安心なさい・・・・・十分承知よ・・・・・!!!!!
グォッ・・・・・!
(呑み込まれたと同時に、これ以上の至近距離もなければ、この距離からの攻撃を放てるチャンスはもう二度と訪れないであろうと思い、霊夢は魔理沙の力を借りた全身全霊の、全力のマスタースパークを放つ・・・・・
イライザ本体にダメージはなくとも、イライザはまず再生に時間を使うだろう・・・・・
その時を利用して脱出をするしかない・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……この私が何度も同じ手に引っ掛かると思う?」
《ヒュオッ》
霊夢の放ったマスタースパークがイライザの巨大な肉塊を呑み込み、イライザもろとも跡形もなく消滅する……と思いきや、次の瞬間にイライザは霊夢の背後に現れ、背中に生えた二本の翼腕の爪を用いて霊夢の体を切り刻もうとする……ここはイライザの支配空間……つまり、何処にでもイライザは瞬時に移動することが出来ると言うことを示している。
そんな絶体絶命の状況の中、消えた筈の霊夢の体に朦朧の巫女が降ろしていた神々の力の残滓が再び蘇り始める。
・・・っ・・・・・!
(霊夢は自身の体に何かが宿るような感覚を感じると、ダメかもしれないが一か八かでイライザの攻撃を避けたところ、頬をかすっただけで何とか済む・・・・・
これが正真正銘、最後のチャンスというものだろうか・・・・・)
イライザ
「あら?その力は……
……まあ、いいわ。どの道貴方の進む先は悪夢の中であるのに変わりは無い。」
イライザの振るり降ろした翼腕を霊夢が間一髪で回避するのを見て、先程の別人格の巫女の力を無意識に使い始めた霊夢を見て驚くものの、振り下ろした翼腕が激突し、爪が突き刺さった床を介して周囲の空間に干渉し、霊夢が避けた先の床に無数の牙を備えた口が瞬時に形成され、霊夢を足元から喰らおうとする。
口だけは達者な化物ね・・・・・
ダダダダダダダダダダダッ!!!!!
(霊夢は形成された口へと負けじと瞬時に弾幕を放ちながら応戦する・・・・・
ここは確かにイライザの支配する空間、例えるなら人間とアリのようなもの、それくらいの差がある・・・・・
しかし、力を得たアリは、時に人間にも対抗することが出来る・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……そう言う貴方は口も力も弱いわね?」
霊夢の挑発を聞いても、その言葉を逆手に取った言葉で挑発し返すと、床から引き抜いた右翼の爪を霊夢に向けて振るい、霊夢が攻撃した事で補食する事が阻まれ、ダメージを受けている巨大な口もろとも切り裂こうとする。
敵対するイライザは、言うなれば津波のようなものだ。
その津波を前に、蟻どころか、象や恐竜ですら成す術もなく呑み込まれ、弄ばれ、滅ぼされてしまう……抵抗や対抗をしようと言う事そのものが意味を成さない超常の存在、それがイライザを始めとする巨悪達(ヴァイスリゾーム)だ。
もっとも……その津波には明確に生命を貪ろうとする邪悪な意志が宿っているのだが……
ザシュッ・・・・・!
ぐっ・・・・・!
(イライザは悪夢そのもの、夢、及び悪夢というものは概念でもあり、物理攻撃が効かないことは霊夢自身も百も承知の上だ・・・・・
だが、霊夢もただでは転ばない・・・・・
悪夢はイライザの右翼の爪に肩を切り裂かれるが、絶えず攻撃を続ける・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……さっき貴方は夢の住人の力を使ったみたいだけど……さっきの一撃で全て使いきり、今その身に宿している神々の力もそう長く維持することは出来ないのでしょう?」
イライザは一つずつ霊夢の力や策を潰して回っている……
霊夢の右翼を切り裂いた際に爪に付着した血を舐めながら霊夢の状況を見抜き、その力はもう限界を迎え始めており、力を使えなくなればもう逃げることさえ出来なくなると言うところまでイライザは把握している。
イライザ
「踊りなさい?その命が尽きるまで……この悪夢の世界で……!!」
霊夢の放った弾幕によって巨大な口が破壊されるものの、今度は霊夢の体を包み込もうとするかのように、周囲の床から幻魔カシキのものと酷似した無数の手と仮面のような頭が生え始め、全方位から霊夢を呑み込もうとする。
・・・・・っ!!!!!
ズッ・・・・・
(肩を切り裂かれたことで動きが鈍り、反応が遅れる・・・・・
イライザのスピードに、対応しなければいけないということはわかっているのに、思うように動けない・・・・・
霊夢はイライザの思惑通り、呑み込まれてしまう・・・・・)
イライザ
「あら?もうお仕舞いなのかしら?
クスクスクス、思ったよりも呆気なかったわね?」
無限に増殖を繰り返す悪夢の手と、骨肉を噛み砕き喰い千切る悪夢の頭に呑み込まれたのを見て、イライザは妖艶かつ不敵な笑みを浮かべながら、少し力を上げただけで容易く滅びたと思われる霊夢を見て小馬鹿にする。
・・・・・
(いくら博麗の巫女といえども、手負いであり全力も出せない状態・・・・・
しかも、イライザにとって有利すぎる戦場での戦いときたものだ・・・・・
普通に考えて勝てるわけがない・・・・・)
《ブチブチブチッ》
《バキッ ゴキッ 》
霊夢を呑み込んだ廉価版の悪意の手(カシキ・ヒェリ)の塊は不気味に蠢きながら、何かを擂り潰したり砕いたり、引き千切るような音をたて、時折その塊の中から血が流れているのが見える。
霊夢の中にはまだ神々の力が残っており、あと少しで悪夢の要塞の外へ逃れる事が出来るのだが、それを成すことなく悪夢に呑み込まれてしまうのだろうか……
・・・・・
(死というものはこういうものなのか、と全身で感じる・・・・・
自分が捕食されてゆく様子を、ただただ抵抗もせずに・・・・・いや、できずに眺めるしかできないというのは、もはや悔しさを通り越して、受け入れることしか出来ないという感情が勝ってしまう・・・・・)
《ブチブチブチッ》
霊夢の実体……これは厳密には肉体を伴ったものではないのだが、その体が無数の悪意の手と頭によって貪られていくと、次第に霊夢の体も削り取られ、消滅していく……魂をも貪るその力が霊夢を完全に消滅させるのも時間の問題だ。
戦いとは常に非常かつ理不尽なもの。
その現実を前に……死や敗北を認めた者に勝利は訪れる程、命のやり取りは甘いものではない。このまま行けば幻想郷の崩壊は免れない……
イライザ
「クスクスクス……博麗の血筋と言うのも案外たいした事が無いわね?
千年以上前に"原初の悪意(マレヴォレンス)"を封印したと言うのも真実ではなさそうね?」
イライザは悪の源泉たる存在を口にする……
千年以上も昔に現世に現れ、その圧倒的な力によって数多の神々を滅ぼし、全世界の支配に王手をかけ、後のヴァイスリゾーム結成のきっかけともなった"原初の悪意(マレヴォレンス)"を封印した英雄の血筋……博麗の血も、時の流れにによる劣化には抗えないのだろう。
この霊夢程度の力しか無いと言うならば、もはや何も警戒する必要はない、ヴァルターが敗れたのも何かの偶然と奇跡が重なっただけであり、今となってはその偶然も奇跡も起こりはしないとイライザは勝利を確信し、不敵な笑みを浮かべながらゆっくりと両腕を広げて天を仰ぎ見る……
ボゴォオッ・・・・・!
(突如として、イライザの体内を、鋭利な刃物が細胞や内蔵を切り裂きながら焼き尽くしてゆくような感覚が全身に駆け巡ってゆく・・・・・
そして、イライザの体内に留まり切れずに、体外へと飛び出そうとしている・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……へぇ?まだ楽しませてくれるのかしら?」
イライザは人間のような姿をしてはいるものの、その正体は悪夢の化身であり、通常の生命体のような細胞や内臓と言うものはおろか、痛覚すら存在しないものの、霊夢の方から感じられる違和感から彼女の方へ振り返る。
ぐぐぐっ・・・・・!
ボォンッ・・・・・!
・・・・・
(霊夢はイライザの体内から抜け出すものの、体中のあちこちの骨が砕けており、霊夢の口からは吐血の跡のように血が垂れている・・・・・
どう見ても、ここから逆転できるようには見えなければ、思えない・・・・・)
イライザ
「何度立ち上がっても、その度に勝機が無いと言うことを知るだけよ?」
霊夢の体を呑み込み、全方位から噛み付いていた悪意の手と頭から成る塊から抜け出した霊夢を見てイライザは首を横に振り、呆れたように言葉を紡ぐ。
イライザ
「いいわ……それなら、きっぱりと希望を捨てることが出来るように、どうしようもない絶望を……至高の悪夢を見せてあげる。」
《ザアァァァァァァァァァァァァァァァァァ…》
イライザはゆっくりと両腕を広げると、先程と同様に、幻想郷の住人達の精神から作り出された無数の刃を自分の背後の空間を埋め尽くすように大量に呼び寄せ、それらを津波のようにして押し寄せようとし始める……
この技が放たれれば、防御や相殺を試みれば具現化された精神が破壊されることで、例え勝利したとしても幻想郷の住人達の中で精神崩壊して廃人となる者が多数生まれてしまう……かと言って受けてしまえば、度重なる戦闘によって蓄積されたダメージと合わさり、耐えきることは出来ないと思われる……
まさに、どう足掻いても絶望的な状況となってしまっている……
だが、イライザは霊夢の能力について知らない……何故なら、霊夢はこれまで、真の意味で能力を使用した事が無かったからだ。
・・・・・至高の悪夢、ねぇ・・・・・そっくりそのままその言葉、返してあげるわ・・・・・
(どこまでもイライザはクズ野郎だ・・・・・
万人の命を平気で己の好きなように弄んで、利用して、道具にする・・・・・
霊夢の顔には影がかかり、イライザの言った言葉をそっくりそのまま返すと言う・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……ばいばーい。」
イライザは不敵に微笑んだまま、横に広げた両手を霊夢に向けて伸ばし、自身の背後に展開していた無数の精神の刃から成る津波によって通路そのものを埋め尽くして逃げ場を奪うようにして霊夢を呑み込もうとする……
幻想郷の住人達の身を案じている事から防御不可、相殺不可、加えて通路を埋めて押し寄せる津波のようになっている事から回避も困難……まさに"詰み"と言う状況であり、何の策もなく呑み込まれてしまえば当然、命は助からないだろう……
・・・・・
【夢想天生】
(最後の最後、この技に賭けるしかない・・・・・
霊夢はありとあらゆるものから浮き、イライザの技が命中することがなくなる・・・・・
当たる寸前で、まるでそこだけ時が止まったかのように精神の刃の動きが止まると、霊夢はそのまま無数の精神の刃を結界を張って守り始める・・・・・
そして、イライザへは今までの行動の跳ね返りとも言わんばかりに、無数の弾幕が迫り来る・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……
……………!!?」
押し寄せる無数の凶刃、もはや王手をかけたと思っていたものの、霊夢に向けられた
自分の攻撃は、あの朦朧の巫女との戦いでも見せたように、実体の無い存在にもダメージを与えることが出来るため、体を霊体に変えたところで逃れることは出来ない筈であるにも関わらず、霊夢へ向けられた精神の刃はその全てが、霊夢の体をすり抜けていく。
更に、霊夢の貼る結界の内側に封じられた精神の刃に対する操作が出来なくなり、再度利用する事が出来なくなり、驚愕のあまり隙が生じたところへ霊夢の放った色とりどりの弾幕が次々と着弾し、眩い純白の光が暗く閉ざされた悪夢の要塞全体を包み込んで行く……
・・・・・イライザ・・・・・アンタさっき、私に至高の悪夢がどうたらこうたら言ってたわね・・・・・
(霊夢は弾幕が着弾して徐々に光に包まれて見えなくなってゆくイライザに対して、ゆっくりと歩きながら距離を詰めてゆき上記を言う・・・・・
ただ光に包まれて見えなくなっているだけであり、消滅したわけではない・・・・・
ここからが勝負だ、今の状態で、形勢逆転をしなければならない・・・・・)
イライザ
「……クスクスクス……何をしたのかは知らないけれど……勝ち誇るにはまだ早いんじゃない?」
純白の光の中からイライザが飛び出し、翼腕が伸ばし、スペルの発動後を狙った不意討ちを仕掛けようとする。
体の随所が霊夢の放った特大の虹色光弾を受けて消滅したものの、致命傷にはなっておらず、消滅した箇所からは血の代わりに不気味な紫色のヘドロのようなものが流れ、そのヘドロがイライザの傷口を埋めて肉体の再生を始めている……
イライザに致命傷を与えることは出来なかったものの、周囲は階層を丸ごと浄化した事で最下層までの道が出来ており誘導もより容易なものとなっている。
・・・・・勝ち誇ってなんかいないわ、アンタじゃあるまいし・・・・・
スゥッ・・・・・
(イライザの不意打ちの攻撃すらも、霊夢をすり抜けるかのように当たらずに不発で終わる・・・・・
そして、霊夢は敢えて戦闘ではなく、誘導することを優先し、猛スピードで最下層まで落ちてゆくように飛び始める・・・・・
落下の速度と霊夢の飛行のスピードが合わさって、とてつもないスピードとなっている・・・・・)
イライザ
「………なるほどね。
魂をも引き裂き、心を喰らう私の攻撃が一切通じていない……
これはなかなか厄介な力だわ。」
イライザは振るった翼腕が空振りし、霊夢の後方にあった建物の壁が引き裂かれるのを見て、少し思考を巡らせ、対抗策を練り始めると、即座に打開策を思い付く。
イライザ
「けれど、そうして守れるのは自分だけなのでしょう?」
《スッ》
イライザは先程展開された精神の刃が封じられた結界に向けて右手を翳し、その掌におぞましい魔力を集束させて結界もろとも幻想郷の住人達の精神を消し飛ばすそうとする。
敵は狡猾かつ悪辣なイライザだ……
その思考速度は非常に速く、霊夢の誘導にはまだ気付いていない筈だが、あと少しで悪夢の要塞から出られると言うところで次なる王手をかけようとする……
やっぱりねぇ・・・・・アンタ、本当に救いようがないクズだわ・・・・・
ガッ・・・・・!
(イライザは悪知恵が異常なまでによく働く・・・・・きっと戦いの中でいずれかのタイミングで、精神の刃を人質のように取るだろう・・・・・
霊夢はその展開を常に考えながら戦っていたのか、イライザが消し飛ばそうとした瞬間に結界を移動させると同時にイライザの目の前に目にも止まらぬ速さで移動し、そのまま首を掴む・・・・・
霊夢の眼は獲物を捉えた猛獣の如く、情けも容赦もない眼をしていた・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……本当に私の思い通りに動いてくれるわね?」
イライザは自分の首を掴む霊夢を見て、そのまま幻想郷の住人達を見捨てて逃亡すれば霊夢一人だけでも助かったものを、結界を転移させた上で自分に接近して首を掴んだ様子を見て、口角を更に吊り上げ、耳元まで大きく口を曲げて笑いながら霊夢の行動は全て予想通りだと言うと、イライザの口から蠍の尾のような異様な舌を出し、その毒針で自分の首を掴む霊夢の手を刺そうとする。
イライザは人に近い姿をしているが、イライザは人間じゃないどころか、既存の生物ですらない……イライザの配下の幻魔達と同様に、その体はいかようにでも変化させる事が出来ると言う厄介な性質を持っている……
あら、手伝ってくれるのね?
(そう言うと、霊夢は毒針を避けてイライザの舌を掴み、再び弾幕を放つ・・・・・
それも、さっき放った時にイライザの体の一部を消し飛ばしたのと同じものを、零距離で頭部へと放つ・・・・・
霊夢はイライザの考えるであろうことを先読みして戦いを続ける・・・・・
さて、次はどんな卑怯な手を使ってくるか・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……相手に直接触れるのは得策ではないわよ?
その相手が見知った生命体じゃないのなら尚更ね?」
霊夢が掴んだイライザの舌であったものの、その舌には肉眼ではほぼ確認することの出来ない微細な棘が生えており、それを握ってしまった事で霊夢の掌に無数の毒液が注入され始め、霊夢の手を介して魂そのものに激痛を走らせ、動きを封じようとする。
その激痛はあの皮膚の獣のものに近く、毒を介することで魂そのものダメージを与えようとする……また、あの威力の技を宣言無しで連発する事は難しく、加えてイライザ自身も同じ技は通じないように、再生する時に自身の身体の硬度を上げて弾幕が直撃しても顔の一部が吹き飛ぶだけに被害を抑えてしまう。
切り札とは使い道を誤れば、それだけ敵を強化することになる……迂闊な選択は自らの首を絞めることを意味してしまう……
・・・・・っ・・・・・
(霊夢は魂に走る激痛に少々表情を歪めるが、反応らしい反応はそれだけであり、そして霊夢はイライザに告げる・・・・・
「アンタは私の掌の上で踊らされたのよ、イライザ・・・・・」
霊夢はこの瞬間を待っていたと言わんばかりに見下すような笑みを浮かべたまま、イライザを掴んだままそう告げる・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……それは楽しみだわ。
必死で命をかけて色々な枷を背負って戦う貴方に対して私は踊り遊ぶだけ。そう、貴方の命の灯火が消えるまでのね?」
イライザは口から伸ばした蠍の尾のような舌を蜥蜴の尻尾のように自切すると、自分を見下す霊夢に対して、首を掴む霊夢に対して姿勢や立ち位置等の物理的に霊夢を見下す他に、言葉遊びをするように霊夢の言葉に対して比喩で返す。
すると、イライザを掴む霊夢の手から徐々に感触が失われ、その視界もボヤけ始めてしまう……単純に激痛を与えるだけでなく、注入したイライザの一部……毒そのものにも強い幻覚が含まれており、このまま行けば、やがては全身に幻毒が回り、イライザに対抗する事さえ出来なくなってしまうだろう……
毒が注入された時点で……いや、イライザの舌を握った時点でイライザの勝利は確定してしまった……タイムリミットは幻毒により意識の昏倒が起こるまで。
ぐらん・・・・・
・・・・・
(みるみるうちに視界がぼやけ、イライザの姿が歪んで見え始める・・・・・
こんな奴に、こんな下らない攻撃で敗北するなんて冗談じゃない・・・・・
そう思っていても、体に力が入らなくなってくる・・・・・)
イライザ
「どうしたのかしら?何処か具合でも悪いの?」
《ヒュッ》
イライザは悪意に満ちた笑みを浮かべながら、自身の体を少し捻り、裏拳を放つように左翼の翼腕を横へ薙ぎ払うように振るう事で視界がぼやけ、意識が朦朧とし始める霊夢の体を弾き飛ばそうとする。
・・・・・がっ・・・・・
スッ・・・・・
(霊夢はイライザの攻撃を受けてしまい、弾き飛ばされるものの、まだ抵抗しようとしているのかイライザへと向けて右手を翳す・・・・・
夢想天生状態でもここまで苦戦することになる相手なのは、イライザという存在が夢の世界だと無敵の状態・・・・・いわば、夢の一部のような存在でもあるからだろうか・・・・・
そこにあっても実態がないのと同じでは、あまり意味を成さない・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……私の思った通り、その無敵効果も長くは続かないようね?」
イライザは今の薙ぎ払いがすり抜けずに直撃し、吹き飛んだのを見て、もう夢想天生の効果が失われていると核心すると、今度は翼に付いた目玉から淡い紫色に光る槍状の魔力弾を放ち、弱った霊夢にトドメを刺そうとする。
ビッ・・・・・!
・・・・・
(イライザの非情で冷徹な攻撃が、霊夢の心臓部分を貫く・・・・・
博麗の巫女ともいえど、どんなに覚醒しようとその覚醒には時間制限がある・・・・・
所詮限界を超えることは一時しのぎでしかない、ということだ・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……踊れなくなったのなら……退場するしか無いわね?」
イライザは霊夢の体を魔槍で貫くのを目視すると、今度は確実に相手の体を捉え、仕留めたと確信すると、自身の口元に手を当てながら悪意に満ちた冷徹な笑みを浮かべ、嘲笑う……
既に霊夢の攻撃により空いた大穴はその大半が埋もれてしまっており、逃げるにはあまりにも時間がかかり過ぎた……それに加え、例えこの状況を切り抜けられたとしても、既に霊夢の体内にはイライザの毒が入り込んでいるため、それを介して干渉することで如何様にもイライザは有利に立ち回れてしまう……
絶望を乗り越えた先にあるのは……また別の絶望……
終わること無き無限の螺旋、それこそが絶望をもたらす悪夢の女王、イライザの正体だ。
スッ・・・・・
(イライザの勝利が確定したその時、イライザの攻撃が貫通した霊夢の姿がまるで幻覚だったかのように消える・・・・・)
哀れね・・・・・夢の中でなら自分をどんな風に強く作り上げられるんだもの・・・・・
(イライザの背後から、聞こえるはずのない声が聞こえてくる・・・・・
それは、紛れもなく始末したはずの、あの巫女の声・・・・・
いくら夢の中であろうと、もう聞こえてくるはずのないあの声が・・・・・)
イライザ
「………クスクスクスクス、その夢の中でも私に勝てないのは誰かしらね?」
イライザは自身の放った魔光槍が不発した事がわかると、同じような展開ばかりの現状に対して飽きが生じ始め、この戦いを強制的に自分の勝利で終えるための舞台に作り替えることを決定する。
イライザ
「でも……いい加減この戦いにも飽きて来たわ。
そろそろ本当に終わらせましょうか。」
【貪夢「幻魔の箱庭」】
《メリメリメリメリメリ……》
イライザはゆっくりと両腕と翼を広げると、イライザから紫色の波動が放たれ、それに照らされた壁や天井、床が肉々しいモノへと変質し、更にそこから無数の触手や、それで捕らえた獲物を貪るための鋭利な牙を備えた口が開き始める……
今度はこの悪夢の空間そのものがイライザの一部。
何処へ逃げようと、何処へ逃れようと、決してイライザの術中からは逃れられない。空間そのものが敵となる以上、これまでのような幻影での誤魔化しは通用しない……
・・・・・醜いわね・・・・・
(とうとう空間そのものとなって牙をむくイライザの姿を見れば、霊夢は醜いと一言ぶつける・・・・・
そして「どうやら、本当に無敵になったつもりのようね・・・・・」と、物理攻撃も意味をなさなければ、どう考えても詰みとしか考えられないこの状況で、落ち着いている・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……さあ……私と言う悪夢を前にどれだけ足掻けるのか……見せて頂戴?」
《ゴオッ》
イライザは不敵に微笑むと、イライザの背後の壁から巨大な口が現れ、イライザを呑み込む事でイライザの姿さえ完全に消えてしまう……もはや誘導は完全に失敗したと言わざるを得ない状態になってしまった。
そんな中、周囲の天井、床、壁とありとあらゆる方向から夥しい数の無数の触手が霊夢に向けて伸ばされ、先ずはその機動力を奪おうとする。
ガシッ・・・・・
・・・・・
(霊夢は特に逃げもせず抵抗もせず、イライザの触手に捕らわれる・・・・・
霊夢は何か策があるのを隠しているのか、依然として落ち着いた状態を保っている・・・・・
しかし、状況は今までの中でも最悪とも言える・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……どうして私が触手を多用するのか……その理由がわかるかしら?」
周囲の空間そのものを自身の手足として使い、霊夢の手足を巻き取ると、霊夢の近くの触手の一本に口が作られ、その口からイライザの問いかけが聞こえてくる……
イライザ
「薙ぐ、払う、叩く、潰す、巻き取る……色々な用途に使えるのもそうだけれど……一番の理由は"苦痛と恥辱を与えられる"からよ。」
イライザは淡々と自分が触手を多用する理由について語り始める……イライザはかなりのサディストだ。相手が苦痛に歪む様子を見るのが大好きで、そのためならいかなる手段も厭わない……即座に相手の命を奪うのではなく、ジワジワと相手に苦痛と恥辱を与えた末にその全てを弄ぶ……
イライザ
「さあ……服を剥いで大衆の夢に投影してあげましょうか?
媚毒で脳を焼く快楽を与えてあげましょうか?
男達の精神体に実体を与えて陵辱してあげましょうか?
どれも楽しそうね?リクエストとかがあれば聞いてあげるわよ?
クスクスクスクスクス……クスクスクスクスクス」
イライザは相手の尊厳そのものを踏みにじる行為を好む性格をしており、もはや反撃の手も打てず、例え打ったとしても空間そのものを掌握した自分にはいかなる攻撃も通じず、容易く抑え込めると考えている。
【???】
ドレミー
「イライザは悪夢の世界を介して
夢を使えば誰でも何にでもなれる……それを悪用し、他者の精神に干渉し、夢の世界だけでなく、現実世界をも牛耳ろうとしています。」
イライザと霊夢が死闘を繰り広げている最中、夢の支配者ドレミーと、"ある人物"が夢の世界の片隅にて、会談を開いている……夢の支配者であるドレミーだが、悪夢そのものを支配するイライザに干渉する事が出来ない……
小さな悪夢であればそれを食べることで消滅させることが出来るのだが、イライザはあまりにも力が強すぎる……周囲の夢にまで侵食し、自分の一部とする力を持ったイライザに対して攻めあぐねていたところ、イライザの方から大きく動いた事と、霊夢にイライザの夢幻術が効かなかった事でその停滞に終わりを告げてくれた。
ドレミー
「そうなれば……夢と現の狭間にある夢幻世界……貴方の世界にも手を伸ばしてくるでしょう……悪夢を現実のものとして現れ、直接現世を支配できるように……」
イライザの狙いは夢の世界と現の世界の双方を支配すること。
そのために、イライザは夢を介して現の世界に足掛かりを作った上で実体を持って現世に現れるために必要な夢幻世界への侵攻も狙っているのだと伝える。
イライザ単体であれば、キラークラウンのように実体を持って現世に顕現する事が出来るのだが、イライザの配下の幻魔達はそれが出来ない……かと言ってイライザとキラークラウンだけでは広大な現の世界の全てを支配するにはあまりにも手が足りない。
そこで悪夢の存在を現実の存在とするための道として夢と現の境界である夢幻世界への侵攻を狙うのは至極当然の事なのだろう。そして……ドレミーが助力を求めたのは他でもない夢幻世界の住人であり、幻想郷に住まう者……
幽香
「………貴方の言うことが本当なら……なかなか面白い事をしてくるわね。」
大妖怪にして、夢幻世界と幻想郷の狭間にある夢幻館の当主……風見幽香。
交渉が上手く進めば……夢の世界でも実体を持って動くことが出来るイライザに対抗する切り札となれるが……
霊夢が悪夢の要塞の外にまで誘導する事が出来なければ、幽香の接近に気付いたイライザは即座に悪夢の深奥へ逃げ込み、誰にも手出しすることが出来なくなってしまう。
それに……最大の問題として、幽香が素直に協力してくれるか……その確証が何処にも無い……幽香にとって幻想郷が滅びようと、夢の支配者がどうなろうと、自分にさえ関わって来なければ干渉するつもりない。
そんな彼女が、わざわざ危険を冒してまで協力してくれるのか……
・・・・・アンタはどうやら私が屈服するとでも思っているみたいだけれど、アンタ何もわかっていないわね・・・・・?アンタみたいな夢の世界の奥底でひっそりと現実に怯えて生きているような小物とは違うのよ?
(イライザは夢の世界の支配者・・・・・
しかし、夢は現実とは違う・・・・・
イライザの能力ならば夢を現実に変えることも可能だろうが、夢を現実へと作り替えたところで、所詮はまやかしに過ぎない・・・・・
そして、夢という虚構の世界で好き勝手やっているイライザは、臆病者の小物だと霊夢は言う・・・・・
人間の強さというものは、どんなに夢であってもらいたい現実にも立ち向かう部分にあると霊夢は思う・・・・・)
イライザ
「クスクスクス……そんなに怯えなくてもいいわよ?
貴方を殺しはしないわ……永遠に朽ちることも壊れる事も出来ないようにこの悪夢の世界で飼ってあげる。」
イライザは自身の邪な衝動と欲望を満たすことを何よりも優先すべき事であると考え、それを少しでも満たすために行動してきた。
そんな中で実体を持ってこの悪夢の世界に訪れる者はかなり稀有であり、ただの夢の住人や精神体であれば、触れても感触は無いし、面白味に欠けるが、相手は実体であり夢の存在とは明らかに違うし、その反応もより楽しいものになるだろう。
イライザ
「精神なんて何度でも治せる。
何度壊れても終わりなんて来させない……
実体の無いこの悪夢の世界を貴方の悲鳴と喘声で満たして頂戴?」
霊夢の四肢を拘束する触手の他に、霊夢の前に粘性の高い液体を滴らせる一本の触手が迫り、霊夢の尊厳を踏みにじろうとする……
イライザの言葉が正しければ……この悪夢の世界で、老いることも死ぬことも出来ずに、それこそ永遠に弄ばれ続けることになってしまうだろう……
・・・・・このクズ・・・・・
(諦めるつもりは無い・・・・・だが、現状を打破することも出来ない・・・・・
霊夢は、イライザを睨みつけながら、ただ罵倒することしか出来ない・・・・・
自分に腹が立つほどの無力というのは、こういうことなのか・・・・・)
イライザ
『さあ……沢山よがらせてあげ……』
《ザシュッ》
夢月
「……まったく、かつてこの私を倒した博麗の巫女がこの程度の奴を相手に翻弄されているだなんて悲劇的ね。」
イライザの操る触手が霊夢の体に触れようとした次の瞬間、不気味な紫色の肉塊に覆われたこの空間を引き裂くようにして吹き込んだ青白い光が現れると霊夢に迫る触手と、四肢を拘束していた触手が全て切り裂かれる。
そして得体の知れない触手の粘液が霊夢にかからないように、青いメイド服を着た金色の髪をした女……夢月が霊夢をお姫様抱っこするようにして抱えて避ける。
だが、夢月からはイライザにも並びうる強い闇の魔力を感じる……
・・・・・アンタ、本物・・・・・?
(イライザの見せる悪夢は、現実のものと変わらないほどのリアルさを持つ・・・・・
イライザのことだ、誰かが助けに駆けつけたと自身を傷つけてまで希望を持たせた後にまた絶望にたたき落とすという手法を使ってくることも簡単に想像できる・・・・・
相手の種族も含めて、状況が状況だからか本物なのか偽物なのか判別ができない・・・・・)
夢月
「さあ?悪夢の世界でその言葉は意味を成さないからね。
全てが幻であり、全てが現であるとも言える……
姉さん!!」
幻月
「よくわかんないけど、"アイツ"や夢月に任されたからね、やってやるわ!!」
霊夢の言葉に対して、深い意味を持っていそうではあるものの、曖昧な言葉を返すと、自分達に向かって伸びて来る触手を見て、姉の名前を呼ぶと、二人と触手の間に純白の翼を持った天使のような姿をした悪魔……幻月が現れる。
幻月もまた、一度博麗の巫女に敗れた闇の存在であるのだが、そんな彼女が今度はその血筋である霊夢を助けるべく、右手を翳し、迫り来る触手もろとも周囲の空間を侵食して生まれた分厚い肉の壁を消滅させる純白の極大光線を解き放ち、夢想天生に匹敵する大穴を開けて見せる。
・・・・・一応、信じていいみたいね・・・・・
(抱き抱えられたまま、二人は助けに来てくれたのだろうということを確信すると、霊夢はひとまずホッとする・・・・・
が、霊夢の声が若干かすれるような声になっており、しかも息も若干荒くなっている・・・・・
戦いによる疲労だろうか・・・・・)
夢月
「信じる?私達は悪魔。
悪魔を信じるだなんて巫女も随分と変わったのね?」
夢月は巧みにバラバラに引き裂かれて吹き飛ばされて来る肉片に跳び移り、そのまま幻月が開けた外へ繋がる大穴に向かって進んでいく。
自分達は悪魔であり、他種族とは決して相入れる事の無い存在であるにも関わらず、自分に対して信じると言う言葉を遣った事へ少し不思議に感じてしまう。
・・・・・真の悪魔っていうのは、誰かを助けたりはしないのよ・・・・・まさにアイツがその真の悪魔よ・・・・・
(霊夢は、巫女も随分と変わったと言う夢月に、真の悪魔というのはどういうものなのか、イライザこそが真の悪魔だということを告げる・・・・・
イライザは捕らえた獲物を時と場合によっては生かす、だがそれは慈悲からくるものではなく、獲物を弄んで自身が優越感に浸るためであり、決して優しさなどは元より微塵も持ち合わせてなどいない・・・・・)
イライザ
『目障りな小魔ごときが……この私の楽しみを奪うだなんて許さない……!!!』
《メキメキメキメキメキッ》
イライザによる空間操作がより強くなり、周囲の肉壁からおぞましい数の手と触手……今度は捕らえた相手で楽しむのではなく、明確に捕まえた相手を殺害するために、無数の手はその全てがナイフのような爪を持ち、伸ばされた触手はまるで茨のようにもなっている。
幻月
「あははは!
確かに……あんなにわかりやすい悪者はそうそういないもんね?」
押し寄せてくる無数の手と触手の全てを幻月は両手から放つ極大光線で薙ぎ払い、光線を潜り抜けて迫ってきたモノを、霊夢を抱えているため両手が塞がっている筈の夢月が切り裂いて吹き飛ばし、高速で出口である大穴の先に向かって進んでいく……
イライザ(毒干渉)
『戻りなさい……このまま私の手から逃れようと言うのなら……貴方の中に流し込んだ私の毒を介して貴方の体を内側から破壊する……!!!』
《ビキビキビキビキビキッ》
夢月と幻月の二人の出現によっていよいよ余裕が無くなって来たからなのか、博麗の巫女で弄ぶ事が余程楽しみだったからなのか、霊夢の体内へ流し込まれたイライザの一部……毒液を介して霊夢の体内の血管を通じて体の内側から霊夢の実体を崩壊させようとしている。
イライザの影響力は悪夢の世界の中であればこそであり、一度この悪夢の世界から脱出する事が出来れば、もうイライザからの干渉は直接干渉のみになり、毒液も効力を失うのだが、このまま行けば脱出する前に霊夢の体が破壊されてしまうだろう……
・・・っ・・・・・!!!!!あぁぁああああああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!
(霊夢はとてつもない激痛に、思わず悲鳴を上げる・・・・・
自身の体が明確に崩壊し始めているのがわかる・・・・・
これが他の人物ではなく、自分の体で起きていること、というのがせめてもの救いか・・・・・)
イライザ(毒干渉)
『抵抗は無意味よ?逃がしはしない……脱出するより前に貴方の体を崩壊させる。そして……ここでの死は貴方の魂の死を意味する……死が怖いのなら、私の元へ戻りなさい?』
イライザは霊夢の体内にある毒液による干渉を続け、あの皮膚の獣との戦いの時をも遥かに越える激しい痛みに苛まれている中、イライザは自分の手元へ戻るように言葉を囁いていく……
イライザは魂や精神と言った実体の無いものを直接破壊することが出来る……このまま行けば脱出するよりも先に霊夢の絶命は免れないだろう……
はぁっ・・・・・!はぁっ・・・・・!
(霊夢の呼吸が徐々に乱れ始める・・・・・
本格的な命の危険というものは、こういうものなのかと激痛の中感じ始める・・・・・
しかし、霊夢も幻想郷を守るためにイライザと戦いに来た身、それに、ここでイライザの言うとおりにすれば、助けに来てくれた夢月と幻月を裏切ることになってしまう・・・・・)
イライザ(毒干渉)
『……そう、戻らないのなら……苦痛の中で果てるがいいわ……!!』
霊夢が取り込んでしまった毒液が霊夢の身体中に広がる血管を介して全身の細胞を破壊し始め、徐々にその体を激痛と共に蝕んでいく……もはやイライザは霊夢で弄ぶことをやめ、本格的に霊夢を始末することを考えていく。
がっ・・・・・!ぼっ・・・・・
(霊夢は体を震わせながら、目を見開いて吐血する・・・・・
どんなに目が渇こうと瞬きすらできず、呼吸すらできないほどの苦しみ・・・・・
博麗の巫女が鮮血に染まってゆく・・・・・)
夢月
「……どうするの?姉さん。」
幻月
「私達には対応のしようがない……ま、これにやられるようなら、その程度だったって事になるだけよ。」
苦しむ霊夢を見ても、夢月と幻月の二人は自分達には対応する事が出来ないことから、ただ自分達の役割を全うするために継続して出口に向かって進んで行く…
ぶらん・・・・・
・・・・・
(霊夢の手が力なくだらんと下がる・・・・・
言葉では表すことが出来ないほどの激痛に耐えただけでも、まだ健闘した方だろうか・・・・・
霊夢はさっきまでの苦痛による叫びから一転して、急に静かになる・・・・・)
夢月
「……あれ?動かなくなった?」
幻月
「ほんと?それじゃもういらないかな?」
霊夢の体から力が抜け、静かになったのを見て、思わず二人は顔を見合わせる。
迫るイライザの無数の腕を器用に必要最低限の動きだけで避け出口まで残り100mをきったところまで進むことが出来たのだが、本当に霊夢が死亡したのであれば、何の躊躇いもなく霊夢を捨てるだろう……
・・・・・
オオォォォオオオオ・・・・・
(霊夢の体が突然、白いオーラのようなものに包まれ始める・・・・・
それは力尽きたと思われる霊夢の再起の可能性か・・・・・
はたまた、魂の終焉か・・・・・)
夢月
「うわ!なにこれ……?」
幻月
「白い羽根を持つ私が言うのも可笑しいかもだけど……このオーラは私達にとってはあまりありがたいものじゃないわ。」
イライザ
『(たかがオーラ程度でどうこうできるものじゃない事は相手が知っているし、あの巫女の実力は既に測りおえておえてある……どの道あの二人の悪魔さえ潰せばなし崩し的に全滅させることが出来る!!!)』
霊夢を抱えていた夢月は突然、霊夢が白いオーラを纏い始めたのを見て驚き、イライザは霊夢の異常に対して警戒を抱くものの、それを意にも介さず夢月達もろとも霊夢を呑み込もうと三人が進む方向から無数のデスワーム状の触手を伸ばして正面から三人へ攻撃を仕掛けようとする。
バシュンッ・・・・・!
ボトッ・・・・・ボトッ・・・・・
(イライザの伸ばしてきた触手が、夢月も幻月も何も攻撃をしていないのに何かに突然切断され、ボトボトと落ちてゆく・・・・・
夢月と幻月の二人が何もしていないとなれば、残るは博麗の巫女ただ一人しかいないが、博麗の巫女はさっき確実にイライザの毒液によって事尽きたはず・・・・・
何か見えない力が働いているとでもいうのか、それとも・・・・・)
イライザ
『(!!?
あの2人乗り攻撃じゃない……となるとあの巫女の攻撃……?
……まあ、いいわ。まだ生きているというのなら、今度は確実に毒で仕留めてあげる……!!)』
夢月と幻月の2人が攻撃した様子は無かった事から霊夢によって切り裂かれたとわかると、イライザは先ほど霊夢を追い詰めたように、再度霊夢の体内に注入された毒液を霊夢の全身の細胞を蝕み、内部から破壊するように浸透させようとする。
できるといいわね・・・・・
(いつの間にか、イライザの背後に霊夢はいた・・・・・
時を止めたとかではなく、本当にいつの間にか背後にいた・・・・・
イライザの思惑などすべて見切っているといわんばかりに、霊夢はできるといいわね、と呟く・・・・・)
夢月
「あれ?脱出するんじゃないの?」
イライザは悪夢の空間そのものと同化しているため、背後と言うものが存在しないため、結果的に脱出口とは反対にある無数の触手と爪手が蠢く場所に向かうことになってしまう……
霊夢の体内に流し込まれた毒液が霊夢の全身を破壊するのが先か、悪夢の空間を満たすように蠢く夥しい数の魔手に引き裂かれるのが先か……
夢月と幻月は少し止まって霊夢に何か策があるのかとも考えるが、脱出用の穴は縮小を開始しており、あまり悠長にはしていられない。
イライザ
『愚かな愚かな人の子。
私の手の中へ戻ろうというのなら、その死を持って私は赦してあげるわ。』
《グアッ》
霊夢が夢月の腕から出て悪夢の深奥(こちら)へ来るのを見て、イライザは霊夢の体を蝕んでいる毒の侵食を一時的に止め、その代わりとして自身と同一化した夥しい数の魔手と触手を霊夢の全方位から掴みかからせようと伸ばす……
夢月と幻月は黙って霊夢の様子を見ているが、このままイライザに時間稼ぎをされてしまえば、自分達でさえも脱出出来ないように空間そのものを組み替えられてしまう関係上、わざわざ危険を覚悟してまで霊夢を助けに行くことはしないだろう……
脱出不可能になるまで、残り3分……
勿論脱出するわよ・・・・・ただ、まだ時間がある今の内に、コイツをできるだけ追い詰める必要があるわ・・・・・
(夢月の問いかけに対し、霊夢は勿論脱出はするが、その前にはまず目の前にいるこの悪魔をできるだけ追い詰めてからだと言い切る・・・・・
つまり、ここですべてを終わらせるわけではなくとも、脱出後にイライザを倒しやすくできるように今のこの限られた時間の中でしておく必要があると霊夢は言う・・・・・)
幻月
「へぇ?言うじゃん。
それじゃ、お手並み拝見といかせてもらおうかな?」
イライザ
『クスクスクスクス……さっきまで手も足も出なかったのに今なら勝てるとでも思っているのかしら?どうやって身体の崩壊を止めているのかは知らないけれど……あまり図には乗らないことね。』
《ザアァァァァァァァァァァァァァァァァッ》
回避する素振りさえ見せない霊夢に向けて無数の茨のような触手と鉤爪を備えた手があらゆる方向から霊夢に迫り、まるで彼女を圧砕するようにして一ヶ所へ押し寄せて行く……
何故か、霊夢の体を蝕んでいたイライザの毒による侵食が止まっており、更に霊夢の体に影響を及ぼさず、それどころか回復さえしているものの、その理由は謎に包まれている……
もし脱出が厳しいと思ったら、アンタ達だけでも先に逃げなさいよ?
ダッ・・・・・!
(霊夢はもし脱出が厳しいと判断したら、夢月と幻月の二人だけでも先に逃げるように予め伝えておく・・・・・
そして、そう言い残すと霊夢はイライザの攻撃を、あらゆる僅かな隙間から、しかし表情一つ変えることなく、むしろ余裕と言わんばかりに、もしくはイライザの攻撃を既に見切った上で行動しているかのように、猛スピードでイライザへと迫り来る・・・・・
つい先程も霊夢は一度覚醒したが、その時とはまた違ってイライザの攻撃に対する対応力が格段と上がりつつある・・・・・
今の霊夢を簡単に言い表すならば、絶対に獲物を仕留めるまでは止まることのない狩人、といったところだろうか・・・・・)
イライザ
『………!!?』
イライザ
『(動きが明らかに違う……私の攻撃は確実に最初よりも速く、数も多くなっているのに当たらない……!?)』
イライザの伸ばす夥しい数の茨と腕を巧みに掻い潜り進む霊夢の様子を見てイライザは驚愕する。それはまるで何度も倒される(コンティニュー)を繰り返す事でより強くなっていくような……
そんな感覚をイライザは覚え、周囲の肉塊のような悪夢の空間から茨のような触手や無数の腕に加え、新たに目の無い巨大な肉塊の蛙のような化物を生み出し、霊夢を呑み込もうとする。
だが、イライザは無限とも言える悪夢の世界と完全に融合しているため、その実体は何処にも存在していないため、何処を攻撃しても弱点にもダメージにもならないと思われる。
ぐちゃぁっ!!!!!
(霊夢は蛙のような化け物を避けることもなく呑み込まれるも、そのまま化け物の喉元を突き破ってイライザへと向かってくる・・・・・
霊夢自身も、イライザには攻撃が通用しないことなど今までの戦いの中で百も承知、ならば本来の目的であるイライザの誘導・・・・・いや、無理矢理にでも首根っこ掴んで連れて行くのみ・・・・・
霊夢は、イライザの真ん前、激突寸前で止まって見開いた目でイライザを見つめる・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……本当に逃げ足だけは優れていると言っても差し支えがないわね?』
《ギョロギョロギョロギョロギョロ》
通路の最奥に到着すると、そこは広間のようになっており、霊夢が入ってきた瞬間、夥しい数の子 血走った赤黒い目玉が見開き、一斉に霊夢を見ると、目から血管のような微細な触手が大量に霊夢目掛けて伸ばされる。
それはもはや弾幕と呼べるような代物ではなく、任官の体が通り抜けられるような隙間が一切無い、赤い壁のようになっており、空間そのものと同化した事で得た圧倒的な物量による波状攻撃を行おうとする。
邪魔よ・・・・・
グォアッ!!!!!
(霊夢は全身に白いオーラを纏った状態で、右手にオーラを集中させ始め、そのまま壁のようなものへと拳を全力でぶつける・・・・・
拳をぶつけるまでの過程で、触手は霊夢のオーラに弾かれるように、どんなに迫ってきても霊夢が通った空間のみ道のようにオーラの残像が見える・・・・・
そして、霊夢が拳をぶつけると、赤い壁はそのままオーラに耐えきれなくなったかのように徐々に跡形もなく崩れ始める・・・・・)
イライザ
『!!』
無数の血管状の触手から成るまともな隙間の無い逃げ場を奪う壁のような密度の弾幕と霊夢が放った白いオーラがぶつかると、ボロボロに崩れ、それ見たイライザは、まさか悪夢の体現者たる自分の力が夢に干渉する力を持っていない筈の霊夢に消されている事に驚く。
イライザ
『面白い……本当に面白いわ、貴方……!!』
《メキメキメキメキメキ……》
霊夢の周囲の悪夢の空間、広場の更に奥、霊夢から30m先にて、肉塊の壁からイライザの上半身が現れると悪意に満ちた笑みを浮かべながら、ゆっくりと両腕を広げる……
すると、それに呼応するようにイライザの周囲にある肉塊から三本指の巨大な腕が六本、イライザの周りから生える。
操作する数を六本に絞ることで、オーラによる消滅までの猶予を高めると同時に攻撃の威力と速度を引き上げる事で霊夢に対抗する事を考えている。
イライザは時間を稼ぐだけでいい。
長くこの場に霊夢を留めておくだけで霊夢は外に出ることも、外から脱出させる事も出来ない隔絶された悪夢の空間に閉じ込める出来るだろう……
アンタ、中身だけじゃなく見た目も本当に気持ち悪いわね・・・・・
(霊夢はイライザのさらなる変貌を見て、本当に気持ちが悪いと呟く・・・・・
しかも、霊夢は依然としてかかってこいと言わんばかりの表情を見せている・・・・・
無論、霊夢はイライザのなるべく時間稼ぎをしてここに留ませておくという計画なんて見通している・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……そんなに褒めても何も出ないわよ?』
肉塊から生えたイライザの半身は最初と同じ人間と遜色無い……強いて言うのならば死人のような肌色をしている以外は変わらない姿をしているものの、半身は周囲の肉壁と完全に同化している。
そんな中でもイライザはイライザの周りを取り囲むようにして生えた六本の三本指の巨腕を霊夢に向けて伸ばし、掴みかかろうとする……
伸ばされた巨腕は間接や骨と言うものが存在しないのか、まるで宙をのたうち回る大蛇のように先読みが困難な不規則な動きをしながら迫る。
イライザの策を見抜いたところで対処できなければ意味はなく、その対処方法も今となっては存在し得ないと言ってもいいだろう……相手が博麗霊夢でなければ。
今のうちに言っておいてやるわ、消滅したらもう罵倒も聞けないでしょ?
ダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!!
(霊夢はどの段階で、どのタイミングでどれくらい先までイライザの行動パターンを読んでいるのか、イライザが巨腕を霊夢へと伸ばしたその時にはもう既に、いつの間にかイライザの目の前に移動していた上に、イライザが霊夢の接近に対応する前に拳にオーラを纏い、イライザが自身特有の物理攻撃が通用しないことや即座に対応してダメージを受けないということ、それらが通用しないほどの目にも止まらぬスピードでイライザの全身へと、人間で言うならば立て続けに巨大な鉄球を複数落とされたような威力のパンチを絶え間なく撃ち込む・・・・・
イライザが攻撃に対応する前に次の一撃を打ち込み、ダメージを受ける前に(受けるかどうかはまだ霊夢にもわからないが)また次の一撃を撃ち込む・・・・・
恐らくは、接近から攻撃、そして攻撃が終了するまではイライザがその状況に気づくことすらも難しいと思われるほどの、言わば本当の意味での目にも止まらぬ速さで霊夢は動いている・・・・・
そして、次にイライザが霊夢に気づいた時は、通用しないはずの霊夢の物理攻撃が全てのパンチの威力を一斉に全身に叩き込まれる時だろう・・・・・)
イライザ
『あら、私は一度も罵倒したつもりなんてないわよ?
だって……玩具を相手に本気で怒る阿呆なんていないでしょう?』
《ドプッ》
イライザ
『それに……貴方も学習をしないのね?』
《ヒュオッ》
速度も威力も単なるブラフに過ぎない。
イライザの狙いは相手が物理攻撃を仕掛けて来た際にその攻撃を受け、相手の動きを止めること……
鉄球をどれだけ叩き付けようと大海が吹き飛ぶことが無いように……
霊夢の繰り出した拳がイライザに腹部に突き刺さるが、それはまるでダメージにはならず、繰り出した霊夢の腕がイライザの体内にて止められ、動きを封じられた状態で、イライザは自身もろとも周囲に生えた巨腕を持って霊夢をバラバラに引き裂こうとする。
そもそも、イライザには実体と言うものは存在せず、こうして敢えて姿を見せたのも、霊夢の攻撃を誘発し、その動きを止めるためのものだ……悪夢そのものであるイライザにはどれだけの攻撃を繰り出そうと、何処からでも"本体"を生み出すことが出来る……勝機は限り無く低く、これまで夢に干渉する事が出来る夢月や幻月でさえ倒しきれずに撤退を選んだ程の相手だ……
唯一の脱出口が閉じるまで残り3分……
残念だったわね、人間は学習する生き物なのよ・・・・・?
バシィッ・・・・・!
(イライザの攻撃は、先ほど壁が霊夢のオーラによって崩れたのと同じように、イライザの巨腕を弾き飛ばす・・・・・
霊夢だってイライザに物理攻撃が通用しないことは知っている、だが、だからこそ近づいたのだ・・・・・
近づくことでやっとできる攻撃もある・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……人間は変わらないわ。
昔からずっと愚かで、脆くて……弄び甲斐がある。』
《メキメキメキメキメキ……》
イライザは六方向から迫る巨腕が全て弾き飛ばされると、今度はイライザが口を大きく開け、口内に何重にも無数のナイフのような牙を剥き出しにして霊夢を呑み込もうとする。
ほぼ零距離にある事から、その距離の近さを活かして霊夢を貪り喰らおうとするのだが、イライザの肌が死人のような肌色から、少し紫色に変色し始めており、単に喰らおうとするだけでなく、もう一つ何かを考えている。
その口閉じてくれない?臭くてかなわないわ・・・・・
(霊夢はイライザの大きく開かれた口が近づくのを見れば、口が臭いから閉じろと罵倒する・・・・・
このままじゃ十中八九食われるが、霊夢も無策で呑み込まれる訳では無い・・・・・
残り時間はわずか、イライザに少しでもダメージを与えてここから脱出するために、霊夢はタイミングを伺っている・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……易い挑発ね?』
《バグンッ》
イライザの開いた巨大な口が霊夢を呑み込むべく喰らいつく……
先程の攻撃で片腕をイライザの液状化した胴体に捕まえられた霊夢には回避する術は無い……
唯一の脱出口が閉じるまで残り1分……
《・・・・・さて、残り時間もそう長くはなさそうね・・・・・早くしないと・・・・・》
(イライザの体内、まさしく悪夢の中とも呼べるような空間・・・・・
いや、悪夢というよりかは、状況的には地獄とも呼べるだろうか・・・・・
霊夢は何か策があるのか、早くしなければと心の中で呟く・・・・・)
イライザ(分裂体)
『クスクスクスクス……時間を稼ぐまでも無かったかしら?』
《バリバリバリバリバリ……》
イライザの開いた巨大な口が霊夢を呑み込むと、バリバリと音を立てながら租借し始めると、霊夢を補食しているイライザは喋れなくなっている事から、隣にて新しいイライザの半身が現れる……
新たに出現したイライザは右手を口許に当てて微笑みながら時間を稼ぐまでもなく霊夢を仕留めたと呟く。
イライザの本体が二体に増えたように見えるが、悪夢そのものであるイライザにとって、自分の体の複製など容易い……イライザを滅ぼすためにはこの悪夢の世界そのものを消滅させる必要があるのだが、それだけの力を持った者はそうそう存在しない……
だからこそ、夢月や幻月と言う単純な戦闘力で勝る存在がいながら、これまでイライザが悪事の限りを尽くせて来たのだろう。
・・・・・
(咀嚼音の中に霊夢は消えてゆく・・・・・
当たり前だが、イライザのような化け物に捕食されたら、一溜りもない・・・・・
そう、博麗の巫女じゃなければ・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……唯一の脱出口はもう閉じた。たとえ生き残っていたり、回避できていたとしても、もう逃げられないわよ?』
イライザの視線の先では幻月が開けた脱出用の大穴が完全に閉じきり、例えこれで霊夢が生き残っていようと、タイムオーバー……つまり、もう逆転の目は残されていない……
悪夢の支配するこの世界で奇跡は起こらない……
ただただ非情なまでの必然のみがここにある……
夢月
「あーあ、完全に閉じちゃったね、姉さん。」
幻月
「人間って本当に愚かだと思うわ、あのまま逃げていればよかったのに。」
イライザの策謀により、悪夢の世界から逃れる唯一の脱出口が閉じてしまうのを見て、結局霊夢が脱出することが出来なかったと言うことを呆れながら二人は呟く。
再度幻月が攻撃すれば悪夢の世界の壁を破壊できるかもしれないが……相手はイライザだ。幻月の放った攻撃を誘導して霊夢にぶつけて潰し合わせると言うことをしてくるだろう。
迂闊に手助けしようと手を伸ばせば、それをイライザに利用されるし、かと言って自分達の危険を冒してまで助けに向かおう理由も意味も見出だしていない……ここでやられるようなら、どの道、この先の戦いで生き残ることは出来ないのだから……
その時・・・・・
スウウゥゥゥゥゥウウ・・・・・
(イライザの体が、霊夢がまとっていたものと同じと思われるオーラに包まれ始める・・・・・
霊夢を捕食したことにより霊夢の戦闘力が上乗せされた、ということか・・・・・
それとも・・・・・)
イライザ
『(…………!
これは……!?)』
イライザは自分の性質が"悪夢"である事から、例え対象を吸収したとしても、それを発動して完全に制御下に置くためには自分と同じ属性へと変換しなければならない……それをしなければ思わぬ暴発を起こしたり、放った技の影響や残滓で自分の首を絞めることになるからだ。
だからこそ、吸収した力を使用していないにも関わらず、オーラが現れたのを見て二体のイライザは驚愕する。
ズズズズズズズズズ・・・・・!
(イライザを包み込むオーラの勢いが徐々に強まってゆく・・・・・
それどころか、むしろイライザの体のみに留まらずにこの空間の四方八方へと広がりながら、オーラが徐々に勢いに加速をつけてゆく・・・・・)
イライザ
『(………触れてもダメージが無い……となると、浄化や攻撃系統ではない。となると、さしずめ私の能力の緩和による空間掌握を阻もうとしている訳ね?)』
紫色に変色したイライザが警戒し、敢えて動きを止めている中、死人のような肌色をしたイライザは代わりに周囲の肉壁から無数の腕を伸ばして白いオーラに触れるが、弾かれる訳でも消えるわけでも無い…
触れたものに干渉する力であるのならば、空間そのものがイライザの一部となったこの場においてその効果は直ぐに現れるのだが、待っていても何も起こらないどころか、こちらから触れに行っても何も起こらないことでただのこけおどしであると断定する。
イライザ
『(クスクスクスクス、私(悪夢)を包み込もうとしているようだけれど、悪夢とは元々内面に存在していたもの。内側から全てを侵食して悪夢で塗り潰してあげる)』
二体のイライザは同じタイミングで悪意に満ちた笑みを浮かべると、二体のイライザがそれぞれ触れたエネルギー体を蝕み、吸収する黒い波動……可視化された悪意を解き放つ事で周囲に広がる白いオーラを黒で塗り潰そうとし始める。
ズズズズッ・・・・・!
(霊夢の白いオーラが、イライザの黒い波動に呑み込まれ始める・・・・・
やはり、イライザの予想通り、ただのこけおどし、もしくは悪あがきだったか・・・・・
所詮、人間の力なんて小さなものだ、それがたとえ博麗の巫女であろうとも・・・・・)
夢月
「姉さんはあの巫女がイライザに勝てると思う?
私は無理だと思う……魔力的に見ても種族的に見てもイライザに優っている要素があるとは思えない。」
幻月
「……それはわからないわ、単なる身体的な強さだけが全てじゃない。
だって、此処は夢の世界。意思や想いの強さが現世以上に大きな影響を引き起こすのだから。」
イライザの放った醜悪な悪意の波動が霊夢の白いオーラを内側から蝕み、染め上げていく中、悪夢の要塞の外に脱出した夢月と幻月の二人が霊夢とイライザの戦いの結末について考察している。
夢月は純粋な戦闘力で考えた結果、勝ち目が無いと思っているのに対して幻月は夢の世界と言うこの世界の性質や、人間の未知数の可能性を考えた結果、結末を推測することが難しいと考えている……
ズオォォォォォォォォォッ・・・・・!!!!!
(イライザに呑み込まれていた霊夢の白いオーラが、再びイライザの波動を猛スピードで包み込み始める・・・・・
しかも、今度は今まで以上にイライザの波動よりも力が強くなり始めており、どんどん包み込んでゆく・・・・・
いよいよ、形勢逆転及び最終決戦の幕開けだ・・・・・)
イライザ
『(…………!!?)』
自分が支配するこの悪夢の世界では全てが自分の思い通りになると思い、事実これまでその通りになって来ていたのだが、今回の霊夢が展開した白いオーラに自身の放つどす黒い悪意のオーラが押されている事に困惑を覚えている。
二体のイライザ達は肉壁から突き出るようにして生えた上半身のみであはあるものの、予想外の出来事を前に思わず次の手を講じるまでに大きなラグが発生してしまう。
霊夢の実体は確かに紫色の皮膚色をしたイライザが喰らったばかりであり、霊夢の魂や精神体は完全に滅びた筈であるため、イライザ達の混乱はより強くなっている。
イライザ(紫体)
『目障りな濃霧ね……』
そんな中、困惑しながらも、幾分かの冷静さを取り戻した紫色の体色をしたイライザが背中から生えた翼腕を用いて白いオーラそのものを切り裂き消滅させようとする。
イライザは神降ろしの巫女との戦いの時にも見せたように、実体の無い存在にも干渉し、消滅させる事が可能な特殊能力を持っているため、白いオーラの正体が何にせよ、実体の有無に関わらず切り裂き消滅させる事が出来るだろうと考えている。
グォォォオオオオオッ!!!!!
(イライザが白いオーラを切り裂こうとすると、切り裂こうとしたイライザの体を徐々に包み込み始め、紫体のイライザを消滅させ始める・・・・・
そして、霊夢はイライザの体を突き破るかのように無傷で白いオーラを纏いながら登場する・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……なかなか面白い性質の技ね?
それも……おおよそ白からは連想しにくい外道の力……いえ、私達に近い力を感じられるわね?』
紫体のイライザが消滅し、もう片方のイライザの体を突き破り、咆哮をあげながら再び現れた霊夢に対して、肉々しい天井を覆うようにして巨大なイライザの目が現れる。
現れた巨大なイライザの目から、あの他者を見下し、小馬鹿にするイライザの特徴的な笑い声と共に、今の霊夢の力は自分達に近い邪悪な性質の力を感じられると言う……
現に今の霊夢は、おおよそこれまで異変解決の際に使ってきた力や技からあまりにもかけ離れたものであり、霊夢自身、イライザを通じて博麗の巫女から悪の存在へと変質し始めているのかもしれない……
あらそう?それはとても心外だわ・・・・・
グォオッ・・・・・!
(咆哮だとおもっていたのは、実は咆哮ではなくオーラの勢いによって生じた突風の勢いによって生まれる風の音だった・・・・・
イライザの言う通り、確かにこの力は悪に近いものがあるかもしれない、霊夢自身絶体絶命の状態からここまで這い上がれたのも不思議でしかなく、この力が何なのかは正直わからない・・・・・
だが、今するべきことは一つ・・・・・)
もう終わりよ、イライザ・・・・・
グググッ・・・・・
(霊夢は自分の能力を使って、イライザをお得意の悪夢という存在そのものから分離させ始める・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……』
天井を覆うようにして出現した巨大なイライザの目は霊夢が向かって来るのを見て、不敵な笑みを溢しながら、目を大きく見開くと、尖端が鋭利に尖った無数の血管のような管を伸ばし、それで霊夢の体を刺し貫こうとする。
イライザ
『この私を悪夢から引き剥がすつもり?
だけど……貴方の触れているものが本体なのかしらね?』
更に、霊夢の向かう先にあるイライザは、本体なのかどうかと問い、その攻撃や行動は不発に終わるだろうと声をかける。
イライザの言葉も当然であり、無限に等しい悪夢の世界において、イライザの本体を正確に見つけ出して切り離すなど、砂漠に落ちた硝子……大海の塵を見付けるよりも遥かに難しい。
気配で探ろうにも、空間そのものがイライザの魔力で満たされており感知することは不可能……広範囲に能力を向けたとしても無限に等しい悪夢の世界全てに行き渡らせるなど強力な力を持った神であっても困難なものであり、とても人間の霊夢一人ではどうにも出来ない事であると断定している。
言ったでしょ?終わりだって・・・・・
(イライザの攻撃は霊夢の体を貫くことなく、霊夢はイライザに対して終わりと言ったはずだと告げる・・・・・
「アンタは自分以外の存在なんてちっぽけな下等生物にしか見えないのだろうけれど、夢を見る者が存在しなければ悪夢は生まれないのよ・・・・・?」
霊夢はイライザを見ながら、所詮イライザは夢を見る誰かがいてこそ存在できる偽りであるということを暗に告げる・・・・・)
イライザ
『………クスクスクスクス、また避けるつもり?』
イライザ
『(私の本体がある位置は感知や予知を誰にも出来ない。たかだか人間一匹ごとき私の居場所がわかる筈も無い。例え一時的に攻撃が届かなくなろうとも、攻撃が当たらない以上、私の優位性が揺らぐことは永遠に無い。次にこの能力が切れた時が終わりの時よ?)』
これまでの戦闘から、霊夢の夢想天生には時間制限があると言うことを知っていたため、伸ばした管がすり抜け、避けられるものの、最初ほど驚きはせず、継続して管を伸ばし続けることで霊夢の行動範囲を限定してその行動を先読みしやすくしようとする。
霊夢の能力維持が限界を迎えた時にそのまま跡形もなく消し飛ばせるように、巨大な目玉の瞳に魔力を集束させ、その隙を伺う。
幻想郷の住人達の精神を具現化した精神の刃は霊夢が結界で干渉できないようにしていて、霊夢の体内に流し込んだ筈の毒液も何故か効力を失っているものの、悪夢と同化しているイライザにはどれだけの攻撃や技も届かない……本体の位置を掴むことなど出来る筈がないと断言している。
《考えろ・・・・・考えるのよ、私・・・・・イライザの本体は絶対にどこかに存在する・・・・・思考を止めるな、考えろ・・・・・》
(霊夢は限られた時間の中、残り少ない中でイライザの本体を感覚を研ぎ澄ませて見つけ出そうとする・・・・・
本体が近くにいるのか、それとも今戦っているイライザをどこか遠くから操作しているのかはわからないが、憶測ではあるが言える事は一つある・・・・・
本体があるということは、その本体がある場所には一際力が強く集中しているのではなかろうか、と・・・・・)
霊夢に似た巫女
『なーにウジウジ考えてんのよ?
アンタの感じたものが正解でしょ?
それは今回も変わらない、何時もの勘が教えてくれる。』
もはや打つ手はない、どれだけ攻撃しようと、相手は無限に等しい悪夢の世界と同化しているため、力の無駄な浪費で終わってしまう……無限の力があったとしても、イライザを完全に討ち滅ぼすのは不可能だ……
だが……これまで霊夢は敵について深く考える必要はなかった。
巫女の勘が答えを教えてくれる……少し勘を研ぎ澄ませれば、イライザの本体が何処に潜んでいるのかも見抜ける。
そして……霊夢の"浮く"力を用いて悪夢の底に潜むイライザを地上まで引き摺り出してやればいい。イライザの力が悪夢によるものならば、悪夢から引き剥がせば実質的に無効化させる事も出来るだろう。
その事を、霊夢の背に現れた巫女が教えてくれる……
イライザの見せた悪夢から出してくれた存在……
何処かで会った事があるような……不思議な感覚を覚えるその巫女の導きがどのような結果を生むのかはやってみなくてはわからない。
・・・・・
(霊夢は確信した・・・・・そう、全てはそこまで深く考える必要は無い・・・・・
自分に似た謎の巫女と思われる人物の言う通り、少し勘を研ぎ澄ませれば本体がどこにあるかわかるはず・・・・・
霊夢は、瞳を開けると、イライザを見て怪しげな笑みを浮かべる・・・・・)
《コオォォォォォォォォ》
霊夢の視線の先にある見開かれた巨大な目玉のその先……
幾層にも重なった肉壁と肉塊の向こうにイライザの本体がいると言うことを勘が教えてくれる。
理論や理屈じゃない、超感知や未来予知でも無い……
第六感をも超えた博麗の巫女としての勘がハッキリとイライザの本体を把握することが出来ている。
そこよっ・・・・・!!!!!
ぼちゅっ・・・・・!
ずぶずぶずぶぶっ・・・・・!
(霊夢は、見開かれた巨大な目玉の表面を突き破り、本体を守るようにして立ちはだかる気持ちの悪い肉壁と肉塊を猛スピードで突破してゆくと、そのまま奥の方に潜んでいるイライザの本体を視界に捉える・・・・・
もう、イライザにはどこにも逃げ場はない・・・・・)
イライザ
『!!?
私が見えていると言うの……!?』
本来ならば何人にも感知できる筈の無い自分の居場所を正確に把握した上で肉塊の中を突っ込んで一直線に向かってくる霊夢を見て、イライザはまるで水中を漂うクラゲのように肉壁の中を移動して霊夢の追跡から逃れようとする。
依然としてイライザの気配や魔力は感知できていないものの、霊夢の勘はイライザが移動している事や、その移動先についても教えてくれている。
ガシッ・・・・・
どこ行くのよ・・・・・?アンタ、まだ逃げられるとでも思っているの・・・・・?
(霊夢は的確にイライザの移動場所を把握し、逃げられないように足を掴む・・・・・
夢、もといこの悪夢の世界に果てはない・・・・・無限にどこまでも広がっている、正に夢ならではのなせる世界・・・・・
だが、本体をとっ捕まえさえすれば、あとはただイライザへ終焉への引導を渡すだけだ・・・・・
霊夢の目は、確実にイライザを消し去るハンターともいうような目をしていた・・・・・)
イライザ
『!!?!?』
イライザ
『………ク……クスクスクスクス……!
私を掴まえただけで勝てるとでも思っているのかしら?
私は実体無き幻魔の女王。姿形なんて幾らでも変えられるのよ……!!』
《メキメキメキメキメキッ》
イライザは冷や汗を流しながらもまだ笑い続け、体が徐々に5mもの巨大な体へと巨大化すると同時に、自身の身体中から無数の腕を生やし、背中から生えた翼腕も二枚から四枚へ増え、変貌し始める。
それはあの悪夢の処刑者のように急速に自身の姿を変化させている。
イライザに接触する事が出来たはいいものの、このままでは無限に悪夢から力を得ることの出来るイライザを前に、最初と同じように全ての攻撃を無効化され、逆に追い詰められ、全て無駄になってしまうだろう……
傷だらけの一人の狼(霊夢)の対峙する相手は山の如く巨大な娥……
全てにおいて不利なこの状況を打破する事が出来なければ、このチャンスを活かしきることは出来ない……
でしょうね、この世界はアンタの思い通りになる世界、私に勝ち目なんてもとよりありゃあしないのは百も承知の上よ・・・・・
(霊夢はイライザが変身する際も尚その手を離さずに、何としてでも捕らえたまま絶対に逃さないようにしている・・・・・
イライザは悪夢の女王、そして、自身の作り上げた世界とも言えるこの悪夢の世界でならば、全てはイライザの思い通りとなる・・・・・
そう、この世界でなら・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……よぉくわかっているじゃない?
でも後悔してももう遅い、誰の手も届かぬ悪夢の中で永遠の恐怖を与えてあげるわ。』
イライザの身体中から生えた大小様々な夥しい数の手が霊夢の手足や服を掴み、更に二本の腕が霊夢の首に向かい、その首を締めて意識を奪おうと襲い掛かる……
イライザの力は自分が直接戦わなければならないとわかると、空間変化や空間操作から自己の強化へと力を回し始めた事で刻一刻とその力が増して行っている。
今この状態で反撃してもイライザには一切ダメージを与えることは出来ないが、逆にそれを逆手に取ることでこの悪夢の外へ吹き飛ばすことなら可能だと思われる。
・・・・・永遠の恐怖、ねぇ・・・・・その言葉、アンタにそっくりそのまま返してあげるわ・・・・・
(霊夢はどんなものにも縛られない・・・・・たとえそれが、永遠の悪夢にもなりうる世界であろうと・・・・・
霊夢は一度イライザの繰り出した手に捕まるも、あっという間にすり抜けるようにして抜け出す・・・・・
そして「さぁ、覚悟はできた・・・・・?」と、イライザに一言告げる・・・・・)
《ザアァァァァァァァァァァァ……》
霊夢がすり抜けると言うのなら、その空間そのものを埋め尽くしてすり抜けた先にも手が存在するようにしておけば回避しようが無くなるだろうと判断したイライザはすり抜けた霊夢の周辺まで無数の手を伸ばして完全に埋め尽くそうとする。
霊夢にはあまり時間も余裕もない、下手にイライザに時間を与えてしまえば、全ての策が無駄にされてしまう恐れもある……迅速にイライザを排斥しなければ、再びイライザは体勢を整えてしまうだろう。
例えば……純粋に霊夢が追い付けない速度で逃げ出したり、無数に本体を分裂させてバラバラの方向へ逃れたりと、イライザが冷静さを取り戻してしまえば打ってくるであろう、対抗策の無い手段はそれこそ無数に存在している。
それらを打たせないようにするためには、冷静さを失っている今のうちに手を打つしかない。
イライザ・・・・・残り30秒、30秒でアンタとの決着をつけてやるわ・・・・・
(霊夢は、先程と比べると断然有利とも言えるが、それでもやはりまだイライザの方が圧倒的に有利だ・・・・・
そんな中、霊夢はイライザとの勝負をあと30秒でカタをつけると言い出す・・・・・
勝利の女神が微笑むのは博麗の巫女霊夢か・・・・・
それとも、悪夢の女王・イライザか・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……随分と大きく出たわね?
それなら……三十秒と言わず五秒で終わらせてあげるわ……!!』
【夢幻「微睡みの悪夢」】
《ゴオォォォォォォォォォォォォ……》
イライザは背中から生えた双翼に生えた眼を大きく見開いて霊夢を見ると、霊夢の意識を奪い去って無力化しようとする。
目が合わずとも、此方から凝視するだけで対象を強制的に昏睡させる事が出来る理不尽きわまりない力なのだが、これが通じずとも、周囲の空間は既にイライザがクモの巣のように張り巡らせた無数の手で覆うことで術の発動限界を迎えた瞬間に捉えようとする。
アンタも随分と大きく出るじゃない・・・・・?
(霊夢は、先程イライザの本体へとたどり着いた時と同様、無数の手の僅かな隙間を掻い潜り、イライザの目の前まで移動する・・・・・
今の霊夢は、何ものにも縛られない・・・・・たとえそれがイライザの特殊能力であろうと、今の霊夢には通じない・・・・・
唯一今の霊夢を縛り付けるものは、この悪夢の世界とイライザの執念・・・・・)
イライザ
『………仕方がない……まさかたかだか一介の人間ごときにこの術を使わされることになるなんて屈辱だわ……だけど、人間ごときに舐められるのはもっと屈辱。』
イライザは霊夢に夢幻術が通じず、伸ばした手を避けられ、眼前にまで移動したのを見て、もはや打つ手は一つしかないと忌々しそうに呟く……ここで霊夢が渾身の一撃を繰り出していればイライザは切り札を使う隙もなく倒すことが出来ていただろう……だが、霊夢自身の尊大な物言いからもわかるように、何処か相手を見下し過小評価してしまったが故にそれをしなかった事がイライザに逆転の手を打つ隙を与えてしまう。
霊夢は忘れていた。
かつてこの幻想郷に二度現れた不死王の切り札を……
存在そのものを貪り喰らう夥しい数の亡者を召喚する暗黒禁術"タナトス"を……
イライザ
『いいわ……その存在そのものを永劫に消滅させてあげる……!』
【暗黒禁術「ヒュプノス」】
《ズオォォォォォォォォォォォォォォ……》
イライザは霊夢が自分の前に移動したものの、攻撃を繰り出して来ないことを利用して、切り札である暗黒禁術を発動させると、大きく広げた翼と両手から万物を塗り潰す漆黒の闇を周囲一帯を包み込むようにして広げ、瞬く間にイライザの周囲が墨のような闇に包まれていく……
この世の理から逸脱した異質なエネルギー……
"暗黒魔力"を用いた外道の術。この力によって召喚された闇は周囲一帯の空間そのものを塗り潰し、無条件に全てを消失させる……
この漆黒の闇に塗り潰された中には、悪夢でさえ存在する事が出来ず、伸ばしたイライザの無数の手や、悪夢の肉壁すらも急速に朽ち果てて消滅する……ある種、霊夢の夢想天生をとことん悪意で歪めたような効果となっている……
・・・っ!!!!!
(霊夢はイライザの懇親の一撃・・・・・それも、今まで展開していた自身の攻撃すらも自ら消滅させるほどの強硬手段に、一瞬動きが止まる・・・・・
そして、その一瞬こそが命取り・・・・・
霊夢自身は自惚れていたわけではない・・・・・
だが、イライザを少しずつ追い詰め始めていたことで、どこか油断が生じていたのだろう・・・・・)
イライザ
『クスクスクスクス……形勢逆転……いえ、最初から貴方に勝ち目なんて無かったのよ?』
《ズアァァァァァァァァァァ……》
イライザは右腕を大きく霊夢に向けて振り下ろすと、それに連動するように漆黒の闇の塊が霊夢の頭上から悪夢の世界をも呑み込み、消滅させながら迫る……
大振りになっているため、隙は大きいが、それを補ってありあまる規模と威力を有しており、この闇に触れてしまえば今の霊夢でも存在を削り取られ消滅してしまう事を、霊夢の勘は教えている……
最初から大きな力の差があり、底無しの悪意を持つ相手に対して一時的に優勢になった事で相手に対する決定打を打つチャンスを無駄にする霊夢の戦いかたはあまりにも甘かったとしか言えないだろう……
ようやく見えた勝ち筋を……様々な奇跡が重なって生まれたチャンスを……霊夢は無駄にしてしまった……
・・・・・それはどうかしらね?
ゴォッ!!!!!
(イライザが最初から霊夢には勝ち目なんてなかったという言葉を告げたその時、霊夢は冷や汗を流しながらもニヤリと笑みを浮かべながら上記を告げる・・・・・
霊夢の頭上から迫り来る闇と同様に、イライザの頭上から・・・・・いや、悪夢の世界そのものをすべて呑み込まんとするほどの威力を見せつけながら謎の白い光が広がってゆく・・・・・
そう、霊夢はこの時を待っていた・・・・・)
イライザ
『…………!!
……何をしたのかは知らないけれど……この闇は全てを呑み込み等しく滅する。善も悪も、生も死も、魔も神も……!!』
イライザの展開した漆黒の闇へ霊夢の放つ光が降り注ぐものの、その光でさえも闇を照らし出す事は出来ず、大きな影となってしまっている……
そんな中でイライザの振り下ろした漆黒の闇は既に眼前にまで迫っており、そのまま霊夢を呑み込もうとする……
全てにおいて打つ手が遅すぎる。
常にイライザに先手を取られ、優位性を奪われ続けている中では多少のイレギュラー程度では戦況を覆すことは出来ない……それは霊夢が昏睡状態に陥った時に代わりに霊夢の体を動かして様々な神の力をその身に宿し、戦っていた神降ろしの巫女が体現してしまっていた。
そして………絶望は重なる。
これまで数多の幻魔との戦い、そしてイライザとの長期戦による影響で霊夢の体からは体力も霊力も大きく消耗し、一時的な強化もタイムリミットを迎え、霊夢の体に注入されていた毒液が再び霊夢の体を内側から蝕み始めてしまう……
っ!!!!!
(あまかった・・・・・もっと早い内にケリをつけるべきだった・・・・・
イライザの有利な状況は依然として変わりなく、霊夢はどんどん追い詰められる・・・・・
人間の限界というものを、ここまで来て思い知らされる・・・・・)
《ズズズズズズズズ……》
霊夢の甘さがイライザに反撃する隙を与え、切り札を誘発してしまった結果、イライザが振り下ろした右腕に伴い霊夢の頭上から迫った闇の塊がその体を呑み込む……
一切の情けも容赦も無く理不尽なまでの絶望をもたらし、悪夢さえも存在する事が出来ない漆黒の闇に包まれた以上、生存する事は絶望的だろう……
・・・・・
《私・・・・・ここで死ぬの・・・・・?こんな最悪の場所で・・・・・最悪な形で・・・・・》
(薄れゆく意識の中、悪夢の世界の一部すらも呑み込み消滅させるほどの威力を誇る闇の中、霊夢はこんなところで自分はこのまま死ぬのかと嘆く・・・・・
しかし、イライザに反撃できるチャンスを逃してしまったのも揺るぎない事実・・・・・)
【「虹霊撃」】
《バチィッ》
全てを蝕み無へ塗り潰す漆黒の闇が霊夢の体を包み込み、その存在そのものを虚空の彼方へと消し去ろうとした次の瞬間、無意識に霊夢の体が動き、両手を合わせ、周囲に虹色に神々しい閃光が広がる。
虹色の光は、先程の霊夢の白い光を呑み込んだ漆黒の闇をも照らし出し、イライザの切り札である暗黒禁術そのものを浄化し消滅させる……
霊夢の意識は残ってはいるものの、その力は明らかに霊夢のものではなく、より強大な光の力となっている……その証拠に通常の霊夢も霊撃そのものは使えるものの、これほどの威力では出来ない……
イライザ
『………!!?』
霊夢の放った虹色の光はまるで太陽に強く輝き、再度漆黒の闇を発動させようとしたイライザの集束させた暗黒魔力そのものを瞬く間に浄化し、更には周囲に広げていた無数の腕も、虹色の光に照らされた途端に力を失い、灰のようにボロボロと崩れて消えていく……
イライザ
『(光さえ呑む冥府の闇が払われた……!?
そんな馬鹿な事が……これはまるで………いえ、アイツはもう存在しない、原初之悪意(マレヴォレンス)様に滅ぼされた筈……!!)』
言うなれば神さえ浄化する穢れ無き純光とも呼べるこの光をイライザは知っていた。イライザはかつて今と同じ状況になり、この力を行使する者を見たことがある……
だが、その行使者は自分達の主であるマレヴォレンスによって葬られた筈であるため、今こうして自分の前にいる筈など無い……
霊夢?
『……どうしてアンタらは奪う?
それだけの力があるのなら、奪わなくとも自分達だけで欲しいものが手に入る。どうして何時までも無意味で無差別な略奪と殺戮を繰り返す?』
霊夢の口からは次々と言葉が出てくる……
それは全て霊夢の言葉でありながら、霊夢の言葉ではない……
漆黒の闇を剥がされ、丸腰状態になったイライザに対して油断や満身をせず、常にその一挙手一投足を見逃さずに警戒しながらも、その戦う理由を問いかけている……
相手が明らかな悪であろうとも、思考停止的に無条件に滅ぼそうとするのではなく、話し合いにより、その心情や価値観を理解しよう、歩み寄ろうと言う姿勢が見えており、その姿は数々の異変を解決してきた霊夢にも通じる……
イライザ
『クスクスクスクス……何を言うかと思えば……楽しいからに決まっているでしょう?
他者を奪い、踏みにじる。奪ったモノに価値はない、奪い取ったら直ぐに捨てているわ。私にとっての幸福……それは奪い続け、壊し続ける行為そのものよ!』
歩み寄ろうとした霊夢に対してイライザの返した言葉……それは霊夢の行為そのものを踏みにじるようなものであるが、その言葉に虚偽は無い……
イライザにとって他者とは自分が弄ぶために存在する玩具に過ぎず、その苦痛も恐怖も全ては自分の悪意を満たすための事なのだろう。
生まれついて強者であったイライザには他者への同情や共感と言うものが欠如し、それ故に支配や従属以外での関係を結ぶことが出来なかったと言う、哀れな存在……
《・・・・・私・・・・・生きているの・・・・・?》
(霊夢は依然として意識が朦朧と、視界がぼんやりとしたままではあるが、辛うじて目の前の後継が見えている・・・・・
わずかに感じる感覚としては、何者かが自分の体に入り込んでいるような、不思議な感覚・・・・・
霊夢自身は、自分が今生きている、ということを認識するのもやっとの状態だった・・・・・)
神降ろしの巫女
『無茶ばかりするなぁ、当代の巫女は……
ま、私も人の事は言えないか……』
霊夢の意識とは別に動き、話す肉体に宿った者とは別の存在……イライザに眠らされていた時に霊夢を助け、その後も霊夢がイライザの魔の手から逃していた神降ろしの巫女の声が聞こえてくる……
《・・・・・ほんと、異変ばかりで困っちゃうわ・・・・・》
(霊夢は、聞こえてくる声に対して、心の声で返答する・・・・・
だが、異変ばかり起きても、やはり幻想郷は自分の居場所でもあり、同時に守らなければならない場所でもある・・・・・
だからこそ、今ここでイライザは完全に消し去らなければならない・・・・・)
神降ろしの巫女
『……貴方に憑依してそんなに時間も経っていないけどさ、不思議に思っていることがあるんだよね……貴方は悪は無条件で滅ぼすの?
立場が違えば自分が悪になるかもしれないと言うのに?』
ふと、霊夢の視界が切り替わり、霊夢の放っていた光やオーラと同じ真っ白い何もない空間に移動すると、あの血の巨人の腕の座っていた巫女……神降ろしの巫女が右腕を失った状態であるもののその姿を見せる。
神降ろしの巫女
『そもそも"悪"とは何なのか貴方は本当にわかっているの?』
その巫女は"悪は滅ぼす"と言うある意味単純な思考を語る霊夢に対して、自分が相手と同じ種族、立場、環境で生まれ育っても今と同じことが言えるのかと問いかける……
イライザは同情の余地も無い極悪人である事は先程の問答からもわかるが……ある種、思考停止的かつ盲目的に戦おうとする霊夢に対して、譲れぬもの、信念があるのかどうかを問いかける。
自分の心に芯の無いものは弱く、危うい……
それを危惧した事で神降ろしの巫女はイライザに消されずに残った残滓を介して問いかけている。
《・・・・・確かに、悪というだけで滅ぼすという考えは正義に偏りすぎているとは思うわ・・・・・もしかしたら話し合えば分かり合えるかもしれない、理解できるかもしれない、そう思うことも大事だとは思う・・・・・
けれど、根っこが腐りきった悪、誰かの全てを踏みにじるのが生き甲斐のどうしようもない悪は分かり合えない、理解出来ない、そもそも話が通じない・・・・・
悪というよりかは、この世の全てのものが存続していくにあたって大きな障害となる存在してはいけない害そのもの、ってところかしらね・・・・・》
(霊夢は、神降ろしの巫女の言う通り、悪というだけで滅ぼすという考えは逆に自分が悪になりうる可能性を秘めているということを理解している・・・・・
だが、目の前にいるのはもはや悪を超えて害であると霊夢は返す・・・・・
全てのもの、生き物であろうとなかろうと全てに害となる存在、それがイライザ・・・・・)
神降ろしの巫女
『……その考え方は少し危険。
相手が呼吸するだけで周囲の命を奪う存在だったら?
存在するだけで周囲を不幸する存在だったら?
外道の世界で生まれ落ちた光を知らない存在だったら?
善悪を知らない無垢な存在だったら?
貴方はそれら全てを滅ぼして回るの?』
神降ろしの巫女
『貴方のその考えの先にあるのは無人の荒野。
共存から最も遠い排他の世界。
見方が変われば、立場が変われば容易く揺らいでしまう価値観であるとも言えるわ。』
神降ろしの巫女は霊夢の"存在悪"に関する考えに対して、その考えでは常識の外にいる存在は全て滅さなければならなくなってしまうと言う……
かくいう妖怪や神も人々の恐れ(畏れ)が無ければその存在を維持することは出来ない。人間でさえ自然を破壊し、無自覚に世界を蝕んで生きている。
考え方や種族は違えど、妖怪や神は全てイライザに等しい存在であるとも言えるし、かつてのレミリア達のように意図的に他者への害を及ぼす事もあるだろう。
それらに対して存在そのものが危険だと言ったり、周囲への害を考えて悪と断定してしまえば、その先にあるのは人も妖も神も居ない、誰も存在出来ない世界になってしまうだろうと指摘する……
《・・・・・アンタの言い分にあれが当てはまるの?今目の前にいるのは、アンタのような考えの持ち主の言い分も込みで何もかも見越してでも誰かの命を奪って数多の悲劇を生み出すことを生き甲斐とした悪魔、アンタの言い分だとそれらは全て明確な純粋な悪意というものを知らない場合の相手にのみ通用するものだけれど、コイツの場合は違う・・・・・
明確に、故意に悪意を持って全てを踏み躙る最凶の悪魔、明確な悪を滅ぼすのとこのまま多くの命が犠牲になるの、アンタならどっちを選ぶの・・・・・?》
(神降ろしの巫女の問いかけに対し、逆に霊夢は神降ろしの巫女だったら明確な悪を滅ぼすのと多くの命を犠牲にするのどちらを選ぶのかと問いかける・・・・・
神降ろしの巫女の考え方だと、純粋な悪意というものを知らない相手にのみ当てはまる考えだとも霊夢は言う・・・・・)
神降ろしの巫女
『何も相手を滅ぼすのを否定している訳じゃない……
だから貴方の問いに対する私の答えは"滅ぼす"
私が言いたいのは善悪と言う限られた範囲だけで物事を考えるんじゃなくて、相手と言う存在の目的や存在を理解した上でその本質を読み、戦う。
貴方の言葉では他に害を成すものは無差別に滅ぼすように感じられる。』
神降ろしの巫女
『私は相手を滅ぼす間際まで……妥協点を探り続ける。
互いが互いに妥協点を見付け、互いの存在出来る領域を侵さないようにする共存の道を探し続けてきた。
それに対して貴方は他者を滅ぼす事、敵を打ち負かす事だけを望んでいるように見えた……』
巫女は霊夢の考えや、これまでのイライザを見下すような言動を取ったり、挑発を重ねて相手を追い込み反撃の隙を与えたりと、その言動から霊夢は異変の解決や幻想郷の守護ではなく、単なる破壊や殺戮を好む通り魔的な性格であり、正義や使命はそれを美化するための装飾であるようにしか感じられないと応える。
それに対して神降ろしの巫女は相手との戦いの中で妥協点を探して語りかけつつ、油断も慢心もしない、妥協点を探ろうとしても理解し合えない、共存する道はなく、相手もそれを望まないと言うのであれば殲滅する。
霊夢の姿勢や態度について神降ろしの巫女は問いかけ続けている。
イライザ
『御託を並べるつもりなんてないわよ?
何よりも強く、老いて弱まることも、醜く朽ちる事も無い私こそ世界の支配者に相応しい。強い者は何をしても許される。その邪魔をするのなら貴方もゼノンも滅ぼしてやるわ!!』
【幻魔「禍災の爪剣」】
霊夢(初代憑依)
『……………………。』
【「神威」】
イライザは両腕を広げ、自身の周囲の周囲の悪夢の空間から槍か剣のように巨大かつ鋭利な爪を生やした無数の巨大な腕を出現させ、それを霊夢に向けて伸ばすものの、霊夢はその爪撃の軌道を読み取り、微かな隙間に体を捩じ込み、弾丸以上の速さで向かって来る巨腕を避け、そのまま神気を纏ったままイライザに向かって衝突し、イライザを弾き飛ばしていく。
イライザ
『ぐ……ッ……!!』
イライザ
『(明らかに動きが変わった……?また別の奴を憑依させたようだけれど……さっきの奴と同じようにその精神体そのものを破壊してやれば………)』
《ドゴオォォォォッ》
イライザは弾き飛ばされつつ、弾き飛ばされた先にあった悪夢の肉壁に入り込み、そのまま後方に下がる事で術の発動までの時間を稼ごうとするものの、霊夢はまるで悪夢の肉塊を何の障壁ともせずに突っ込み、神気
纏ったままイライザの元まで移動すると、イライザが回避や防御をするよりも速くイライザの腹部を拳で撃ち抜き、更に奥まで殴り飛ばす。
先程までどれだけ攻撃しても無傷であったイライザが明確にダメージを受けているどころか、イライザの自慢の術や能力をまともに使う暇さえ与えずに攻撃を重ねていく。
この"神威"と称された技は自身の体に神すら浄化できる程の強力な神力を纏い、自身の身体能力を極限にまで高め、光に匹敵する速さで攻撃と移動を行う事で対象にまともな反撃すらさせずに追い詰める技となっているけど
だが、初代巫女の操る力は今の霊夢の肉体にはあまりにも過剰な力であるため、少しずつ霊夢の肉体には強い負担がかかってしまっている……
《今、アイツが言ったのが聞こえなかったの・・・・・?力を持つ者ならば何をしても許される、アイツは今そう言ったのよ・・・・・?》
(イライザは、純粋な悪意の持ち主・・・・・
今こうしてイライザを滅ぼす滅ぼさないの話し合いをしている内に万が一自分がやられてしまったら、世界は間違いなく破滅へと向かうだろう・・・・・
そうなってしまえば、もっと多くの犠牲が出てしまう・・・・・
大きくなりすぎた悪というものは、もはや災害なのだ・・・・・
自然災害とは違う、明確な悪意のもと行われる人災なのだ・・・・・)