作者の七海ですっ!
荒らし、悪口等はやめてください。
感想、コメント等受け付けますっ!
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あの日のことをキミは、覚えていますか??
あたしは覚えています。
薄れていく記憶、忘れてしまいそうな面影、仕草、声。
10年前のあの夏のことをあたしはきっと忘れないでしょう。
*キミと見た景色*
「ママ、パパー!」
「どうした?菜乃。」
「疲れたー!」
当時5歳のあたし、柴崎菜乃葉。
「疲れたって言われたっておばぁちゃん家すぐそこだよ??」
そう言いながら笑顔で手招きするお母さんが可愛くてすぐにママー!と笑顔で手を握る。
「はい、着いたぁー。」
そう言うとお父さんがインターホンを鳴らす。
開いた扉から笑顔の顔を除かせるあたしのおばぁちゃん。
「あらぁー、いらっしゃい」
「ばぁー!」
「菜乃ちゃん、今日はね、近所の花火大会があるんだよ。」
花火大会。
「いきたーい!」
「いいよ、じゃあ、まずはおめかししようねぇ。」
「菜乃ちゃん可愛いよ。」
おばぁちゃんが、浴衣を着付けてくれた。
「菜乃って感じの浴衣だね。」
お母さんの笑顔。
菜乃の浴衣は白地にピンクの桜。
名前は『菜の花』なのに『桜』なんて変かな??
「よし、じゃあ行こうか!」
「うんっ!」
あたし達は花火大会が行われる浜辺に向かった。
夜空にうち上がる無数の花。
花火をボーと見ていると気配がしなくなり周りを見渡す。
「あれ?ママ、パパ?ばぁ、じぃ?」
みんな居ない。はぐれたんだ。
普通の女の子だったら泣き出すだろう場面。
「・・・ま、いーや」
あたしは開き直った。
そして浜辺を歩く。
ここの浜辺は人が少ない。
手を繋いで幸せそうに笑い合うカップル、友達と楽しそうに笑い合う人。
そんな人達を見ていると見ているのが辛くなって走ってその場を離れた。
「ママ、パパ。どこー?」
泣かないように日々努力をした結果絶対に泣かない女の子になってしまったあたし。
「ふーんふんふーん♪」
鼻唄を歌う。
・・・この時から、強がってばかりだった。
「・・・こんな夜中に一人?」
ふと後ろから声がする。
恐る恐る振り返ると同い年くらいの男の子。
「うん、ママ達とはぐれたんだぁー」
笑って言うと男の子が言った。
「そーなの?泣かないの?」
「泣かないよ?」
男の子は驚いていた。
「どーして?」
「ママみたいくいつも笑顔でいたいんだぁー。」
「・・・そっか。」
この時、ニコリと微笑む男の子にドキっとしたのは気のせいだ、きっと。
「お名前は??」
「りゅーすけ、神崎竜佑!」
『神崎竜佑』くん
「菜乃っ!柴崎菜乃葉!」
「ヨロシクね。」
「うんっ!」
あたし達は笑いあった後座って二人で色々話した。
学校、友達のこと、家族のこと。
お互いのこと。
「菜乃ー!!」
「・・・ママぁー」
ちょっと残念だった。
だって竜佑くんとお別れだもん。
「菜乃葉ちゃんのママ?」
「うん、竜佑くんゴメンね、またね」
そう言うと竜佑くんは浜の目の前の家に入っていった。
・・・あたしのためにいてくれたのかな?
この時は浮かれてたけど今になって自惚れだと気付く。
あの日からあたしは、毎年花火大会に行った。
バイバイしたあと悲しくて、会いたくて。
言葉にできない気持ちでいっぱいだった。
・・・けどその気持ちが何なのかは幼くて分からなかった。
ドドドーンっ
真っ暗な空に色とりどりの花が咲く。
・・・何度も何度見た景色。
「竜佑くん・・・」
あなたは今、誰とこの空を見ていますか?
あたしは毎年一人で見ています。
中3の夏、竜佑くんに恋してる自分に気付いた。
キミと見た景色を背景に。
*似ている背中*
放課後
「なーの♪」
あたしを見て、にこりと微笑むツインテールの女の子。
河上佐奈、あたしの親友。
「どしたのー??」
「功之助くん」
「が?」
「かっこいいのっ!!」
相模功之助くん。
サッカー部のキャプテン。
「・・・あぁ、そう。」
「ちょっと!反応悪いっ!!」
「だって興味ないもーん!」
「・・・竜佑くん???」
「!!!!!」
竜佑くんの名前を聞き、動揺するあたし。
「ははっ、本当に大好きだねー??」
「・・・うるさい」
竜佑くんかぁー、どんなになってんのかなー?
「竜佑くんってさ、どこ住みなの?」
「九州のド田舎だよ。」
「家わかるの?」
コクリと頷く。
「じゃあ行きなよっ!」
「行ったよ、行ったけどね、」
「けど???」
「無くなってた。」
そう、小学6年の夏には取り壊されていたんだ。
「・・・泣けるね」
「え、うん」
「佐奈が、竜佑くんの居場所探し手伝うよ。」
「ありがとぉーー!」
佐奈は部活へ行った。
ちなみに佐奈はサッカー部のマネージャー。
佐奈も部活へ行ってしまい暇だからなんとなくバレー部の練習を見ていた。
いいな、バレー楽しそう。
なんて考えていると、
「りゅうすけっ!」
・・・りゅうすけ???
バレー部の隣で活動しているバスケ部の方から聞こえた声だった。
キョロキョロと探していると
「・・・柴崎??」
「あ、西影くん」
同じクラスの西影逞くんが声を掛けてきた。
「何してんの??」
「ねぇ、さっきりゅうすけって呼ばれてた人って・・・??」
「あ、山内??」
・・・山内
すると西影くんが大声で叫んだ。
「おーい!山内!!」
「ちょっと、何呼んでんの?!」
「え、呼ばなくていいの?」
「当たり前じゃん!!」
最悪、人違いだっての!
「お、逞何?」
「コイツ、俺と同じクラスの柴崎菜乃葉。」
・・・この場はどうすればいいのか?
「あ、俺は山内りゅうすけ」
「し、柴崎菜乃葉です。」
西影くんは、コソコソとその場を離れた。
「・・・柴崎さん、何?」
「いや、あの、人違いしちゃって」
「人違い??」
「そうそう、バカみたいな話で話せば長くなるんだけどね。」
「え、聞きたい」
山内くんは、クスクスと笑いながら言った。
すると監督が叫んだ。
「りゅーすけ!」
「あ、はいっ!ヤベ、いくわ!じゃーな!」
山内くんは走っていった。
背中を見ていると
・・・あ、あの背中竜佑くん。
なんて思うバカなあたし。
そんなことないか。
そしてその場を離れた。