……もうどれくらい前のことになるだろうね、千年樹とこの樹が呼ばれるようになったのは……千年なんて言うけど千年なんてものじゃないよ、何万年何百万年の時をずっとここでこの樹は過ごしてきたのさ。おじいちゃんやおばあちゃんが子供の時よりずーっと前からね。
>>2/登場人物
登場人物
名前/千樹 樹竜(せんぎ きりゅう)
年齢/15歳
性別/男
説明/何に対してもやる気のない奴。運命なんて存在するわけない、信じることを諦めた少年。制服が好きなわけではないが制服から着替えることを好まない。めんどくさいらしい。
☆↑↓は幼馴染☆
名前/千神 千菜(ちがみ ちな)
年齢/15歳
性別/女
説明/何に対しても頑張り屋さん。千年樹の守人として先祖代々受け継がれてきた千年樹を守る仕事をしている。巫女姿でいることが多い。茶色の髪ストレート。
本名/千年樹(せんねんじゅ)
仮名/モリ(もり)
性別/??? 見た目は女。
年齢/???[千歳は余裕でこしてますw]
説明/モリと名乗る不思議な少女。どこからともなく現れふと気づけばいなくなっている。緑色のラインの入った麦わら帽子と白いワンピースが特徴的。千年樹の木の不思議な力を使える。真っ白な髪の毛をしている。
名前/神凪 黒消(かんなぎ こくしょう)
年齢/15歳
性別/男
説明/千年樹を消そうとしている。
千年樹=千神家・千樹家=神凪家からして邪魔。執事のような格好をしている。
……夏の太陽が容赦なく俺たちを照らしつける、子供は楽しそうに水遊び、大人は夏でも忙しそうに仕事やら子育てやら頑張っている、そんな中俺は…
「…お前はゲスだろ?」
「はぁっ⁉︎なんでそうなんだよ…。ただ家に帰ろうとしてる途中だろ?」
「…その驚きよう…あははははっ、樹竜ってすっげーいじめがいあるよなぁ尊敬するよ〜。」
「…黒消さんこそ俺をいじめる天才で、尊敬しますねぇ…」
俺をいつもいじったりしてくるこいつが親友の黒消、普通にしていればいい奴なのにしかも結構…いや、持てない顔してるわけでもないのに…全くもって勿体無い…。
「…お前今日も千年樹の仕事?」
「あぁ、なんか千菜が手伝って欲しいことがあるーって…。」
「千神さん可愛いよな〜、お前あんな子と幼馴染とかお前が羨ましいよ〜。」
「なんでそういう話するかなぁ、、」
「ま、千神さんといい関係になれるように頑張れよ。」
「うっせ。」
そんな感じでいつもの黒消の家と俺の家の分かれ道で黒消とは分かれた。
「じゃーなー樹竜〜、明日は学校休みだぞー!前みたいに学校くんなよー。」
「誰が行くかよ!アホ黒消!」
「ただいまぁ母ちゃん…ってゔわぁっ!」
「おかえり、樹竜。」
目の前には幼い頃からずっと見てきた顔、千菜の顔があった。
「いや、おかえりって…なんで俺の家にいんだよ!」
「樹竜、手伝うって言ったのにすぐ帰ってこなかった、だからここで待ってた。問題が?」
そう言って少し首をかしげる茶髪の巫女服少女、千年樹の守人そして俺の幼馴染でもある千菜。
「千菜、とりあえず俺も着替えてくるから、リビングでテレビでも見てて。」
「心得た。」
そう言って千菜はリビングへ向かった。そして俺は部屋で男用のお寺できるような服を着て千菜のところへ行くと千菜は寝ていた、スースー寝息をたてながら。
「手伝えって言ったの誰だよ…」
「起きろ〜、千菜〜〜?」
俺は千菜の身体を揺すった。そこで俺は気付いた、今まで全然意識してこなかった千菜の身体に。千菜の身体は細身、とても細かったご飯本当に食ってんのか、こいつ。と思うくらい細かった。俺が次に見たのは顔。黒消の言った通り千菜は可愛らしい顔をしていた、でもどちらかというと美人って言うより可愛い顔立ちそんな風に俺が千菜の顔を見つめていると千菜は空気を読んでいるのか読んでいないのか目を開いた、いや、半開きだ。
「んぅ〜〜っ!よく寝たぁ…あれ?なんで樹竜がいるの?おんなのこの寝込みを襲おうと…んぅう⁉︎」
俺は慌てて変なことを言おうとする千菜の口を手で塞いだ。
「バカジャネーノ⁉︎誰がお前の寝込みなんか襲うかよ!」
そう俺は怒鳴った、怒鳴ったのに千菜は俺に向かって優しく微笑んで
「千菜は樹竜のことが好きですよ、」
「は?……はああああぁぁぁあああ⁉︎おまっ、お前……なにいってんだよ!」
怒鳴る俺、ずっと微笑んだままの千菜このまま時が止まってくれればいいのに、と思ってしまうくらい俺は嬉しかったんだ。
そして次の日……
めざまし時計の頭まで響くうるさい音、そして俺の上に馬乗りになってまたがっているのは幼馴染の千菜。
「樹竜!おきろ!起きてっ!遅刻するよっ!」
俺の頭に雷のような衝撃が走る、、俺の頭に落ちてきたのは千菜の拳だった。
「ってぇ、何すんだよ!千菜!」
「え、いや、あの…その…なかなか起きなかったから…つい。」
と言って昨日のように千菜 は微笑んだ。その笑顔のせいで俺が連想してしまったこと、『千菜は樹竜のことが好きですよ、』という言葉だ。
「おい、お前昨日どういうつもりであんなこと言ったんだよ、別に俺なんかじゃなくとももっといい適役いるだろうが。」
「あー、昨日のこと?あんまり覚えてないんだぁ〜、実は寝てからの記憶あんまりなくってぇ〜…」
少し頭をかきながら千菜は言った、俺の想定外の言葉を。
「…な、ななな、なら良いんだ。べべべ、別に動揺なんてしてねーよ⁉︎」
俺が全力で否定する中楽しそうに千菜は笑った、
「あはは、樹竜面白いね。」
「……んで、何に遅刻するってんだよ。」
「え、今日は千年祭りだよ!忘れたの⁉︎この村で15歳を迎えた私と樹竜が樹の精霊役をしないといけないの!わかる⁉︎」
千菜は俺の頬をムニムニと引っ張る。正直言っていたい。先程からこいつには痛い目にしか合わされてない。
「……千年祭りな。覚えてるとも。でも言い伝えどおりになんのは嫌だぜ?」
言い伝え、この樹の年が千歳になったときに行われる千年祭り。千年樹の神はその祭りで精霊役を演じた15歳の少女からは命を吸い取り力を使いこの村を豊かにする。そして15歳の少年からは少女を無くした悲しみの涙でこの樹を潤し、その後は神隠しにあい、この世から忘れられる。
「大丈夫。私がいるから。樹竜は絶対に守るよ。」
「おい、言い伝えどおりになれば先に死ぬのお前だからな。」
「あはは、私そんなにやわい女じゃないから!」
千菜はない胸を張るぺったんこまな板だ。この時の俺たちはそんな言い伝え気にもしなかった。
『きゃあああああぁぁぁっ!』
「⁉︎」「き、樹竜ぅ……⁉︎」
いきなり外から悲鳴が聞こえてきた。先ほどまで強気だった千菜もさすがに女の子だし、少し俺に近寄る。
「俺外見てくる。」
いつものやる気のない俺だとこんなことは言わないだろう。今の俺は好奇心で体が動いていた。
「ま、待ってよっ!置いていかないで……‼︎」
立ち上が俺の右手を千菜は掴んだ。
「あ、その……」
言葉には千菜が出せなかった言葉、だが、潤んだ千菜の瞳が俺に『一人にしないで。』と訴えてくる。
「仕方ねぇな、付いて来いよ。」
「ん……ありがと。」
俺たちは外へ出た。何があったのかは全くと言っていいほど把握できなかった。外は真っ赤だった……千年樹が燃えていたのだ。真っ赤に紅蓮の炎が樹を包み込んでゆく。千菜も俺と同じで把握できなかったらしい、だが一つだけ確実に分かること…俺たちみたいな子供でバカみたいなやつでも理解できる。
『早く火を消さないと。』隣の家のおばさんは水魔法を使い炎を消そうとしていた。だが一向に火は消えない…。俺は感じた。この炎は消せないと。
「千…年樹が……。」
なんて言って力が抜けるようにしてその場にしゃがみこむ千菜は震えていた。
「千菜!おい、大丈夫か?」
俺はできるだけ優しく出来るだけ安心できるような声のトーンで話しかける。千菜は涙を流しながら顔を上げてこう言ったんだ。
「樹竜ぅ……私…私…樹が燃えてるのに……何にもできないよっ…!」
千菜は水、風、炎、電気の魔法が使えない。魔法が限られているから。千菜の魔法は光。光魔法は使える人は少なく、使える人は重宝されてきた。だが、光魔法を使うものは闇魔法使いと直結している。光魔法使いが闇魔法使いに負けると光が抜け、闇を糧に動く闇人形になる。ある意味危険な存在ともされてきた。そんな中の一人が千菜。だが特定の魔法が使えないというデメリットもある。
「千菜……泣くなよ。俺……千年樹登ってくる。」
「何言ってるの!あんな炎の中どうやって……」
俺には大した才能も知識もない、もちろん信じられるものも。そんな俺に一つだけ浮かんだ俺なりの名案だ。
「千菜、お前の魔力貸せ。炎のまだきていないあそこまでお前と俺の魔力使って行くんだよ。俺なら風魔法使えるだろ?」
「俺才能も知識もないけど、信じられるものもないと思ってたけどな、今…千菜、お前なら信じてもいいと思った。」
千菜はおれの手を握り、
「私……頑張る!」
と笑顔で言った。
『あ、千樹さん!千神さん!どこ行くの!』
おばさんが呼び止める。とりあえずおれにも消化活動をしてほしいのだろう。この樹は俺たちの居場所を示し、俺たちの守り神だ。それが今燃えて無くなってしまおうとしている。
「ごめん、おばさん!」
俺は才能も知識もないからいい言い訳も思いつかず逃げた。俺の幼馴染の手を引いて、樹に真っ直ぐ一直線に…。
「千菜!手を握れ!」
「う、うんっ!」
俺はその握りしめた手を、いや、俺と千菜は握りしめあったその手を離しはしなかった。
「ゔぉりゃあああああぁっ!」
俺はいつもの倍以上の魔力を使って自分たちの体を浮かせた。一刻も早く樹の上にたどり着くために。
「樹竜!誰かいるっ!」
「え?」
俺は千菜が指でさした場所を見た。そこにいたのはこんなところにいるはずのない俺の親友だった。
「なっ、黒消⁉︎」
「やぁ、き、りゅ、う、君♪」
どこかいつもと雰囲気、表情が違う気がした。ついでに口調も。
「ねぇ、樹竜……なんで神凪さんがいるの⁉︎」
「しらねぇよ!」
俺がそんなこんなで樹の太い太い幹の上に降り立った。
「お前なんでこんなところにいるんだよ!」
俺が怒鳴りつけると黒消は笑顔でこう言った。
「忌々しいこの樹を闇の炎で消すためさ。」
「黒……消…おまっ、お前、まさか…」
「そのまさかだよ♪僕あんまり口には出したくなかったんだけどね、闇の魔法を使うんだよね。」
俺はとっさに自分の後ろに千菜を隠した。黒消に不意を突かれればほぼ100%千菜はその攻撃を避けれないと考えたのだ。
「おっと、僕親友だよ〜?そんなに警戒しなくても〜〜」
「お前がこんな時にこんなところにいてこんなことを言うからだろ!」
「おやおや、まぁかる〜〜くご説明いたしますとね、僕はこの樹が大っ嫌いなんだよね〜〜♪だから燃やしたんだ♪♪」
黒消…は俺の親友、そんなことするはずがないとかいうのがアニメや漫画での台詞なんだろうけど……俺はそれは本当だと思った。親友だからこそ分かること、嘘をこいつはつけない。簡単に言うと嘘をつく時に絶対に右手で頭をかくからだ。
「お前、何考えてるんだよ!ふざけんなよ!お前一人の意見でこんなことするなんて間違ってるに決まってんだろ!」
「おやおや、随分とお怒りなようで。」
そう言って黒消はほくそ笑んだ、くす、と静かに。
『…千年祭り15になった少女は…命を吸われ少年は神隠し〜、この土地〜を癒すために命を捧げるその二人、邪魔するも〜のは死のせーかいを見ました。』
どこからともなく聞こえてきた歌はだんだん俺たちに近づいてきていつのまにか俺たちの後ろから声がしていた。
『二人の邪魔するもの…死の世界を見ました。』
後ろを振り向くと白銀の髪に緑色のラインの入った麦わら帽子と白いワンピースの少女が目に映った。
『私をいじめないで。傷つけないで。』
そう言うと少女の周りの枝と幹が光り始めた。その時俺は見た。少女のえがおを。
「お嬢さん何をするつもりで……⁉︎」
途端に黒消を千年樹のツタが巻き付く。
『君は親友、裏切った。君は私を傷つけた。罪、重い。』
そう言うと少女は色白な腕を上げ空中で開いた手を握った。その動作に反応するかのようにツタが黒消をきつく締め付け、黒消のうめき声が聞こえてきた。
「ゔ、お嬢さん……いい加減にしな…さい。」
そこまで言うと黒消は気絶した。
「お前……誰だよ。」
白いワンピースの少女に問いかける。少女は笑顔で振り向き
「モリって言うの。もう火は消えたよ。早く下に戻って…あ、この黒消とか言う人も連れて行って。邪魔だから。じゃあね。」
そう言うと俺たちに大きな風が吹き付けた。