MisanGA ~6人のアイドルの物語~

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1:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 16:06 ID:TRQ



素直になれないアマノジャクなお姫様と、

ムードメーカーな王子、
キュートで可愛い王子、
チャラいけど優しい王子、
クールでツンデレな王子、
アンニュイな天然王子。


この6人は、一夜にして沢山の人々を魅了した…。

”アイドルとして、人と人を繋いでいく笑顔を生み出していきたい”

強い思いが、アイドル界を大きく変える事となる。

「俺たちの絆は、何があっても繋がっ たまま。」

ミサンガに願いを込めた6人。
それが…。

   < MisanGA >

2:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 16:18 ID:TRQ


はじめまして。
空ラビと申します。

今回から始まる物語は、

沢山の人を笑顔にしていきたい。

そんな思いを持って、アイドルになった6人のお話です。

その6人のユニット名は、

   MisanGA( ミサンガ )。

MisanGAの、
アイドルとしてや、
1人の人間としての恋や友情。

それらを、しっかり書いていけたらなと思っています。

ぜひぜひ、感想はいつでもお待ちしていますのでっ♪
感想いただけると、嬉しくてはりきっちゃいます(笑)

それでは、次から物語は始まります。
お楽しみいただけたら嬉しいです。

3:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 16:30 ID:TRQ



都会の町の、大型モニター。

いつもと比べ物にならないほどの、通学・通勤中の人が、そのモニターをジッと見つめていた。

「僕らは…、まだ知らない…」

ある歌詞の1フレーズが聞こえてくるだけで、高鳴る歓声。

この曲こそ、昨夜沢山の人々を魅了しながらデビューを遂げた、

MisanGAのデビュー曲だ。

瞬く間にアイドル界に現れ、
瞬く間に全てのものを虜にしていったのだ…。

そんな、MisanGAへの歓声や、熱気に包まれた町中を行く車が一台。

その車に乗っていた彼らこそ…。

「あ、俺出てんじゃん。」
「いやいや、実月の方が大きくモニタ ー映ってたけどね?」
「どうでもいいから、黙ってよ。」
「 姫、正論ありがとうな。」
「その前に、葉起こすの手伝ってほし いな。びくともしてないよ…。」
「…ん、ねむいの、…。」


MisanGAだったのだ…。

4:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 17:30 ID:TRQ


No,1「アイドルMisanGA」

キキーッ、

「お前ら、学校着いたぞ。
 降りる準備しろよー!」

元ヤンの、真希奈(まきな)さん。
通称 マッキーの声が車内に響いた。

その声で、たった今まで寝ていた、日下部 葉(くさかべ よう)が起きたみたい。

「んーっ、マッキー、おはよ…」

「葉、おはようはさっき言ったよ?
 起きたら全部おはようになっちゃう なんて、面白いね。」

葉君の隣に座っていた、宮野 怜音(みやの れおん)が綺麗に笑いながら、そう言った。

私、白石 姫梨を入れた6人が、カバンを持つと、車の扉は開いた。

「いいか?アイドルとしての自覚を忘 れるな。
 学校が終わったら、全員ここに集ま れ。
 雑誌の取材、歌番組の収録…。
 結構なスケジュールだからな…、
 とりあえず、行ってらっしゃい!」

その声を合図に、私達は一人一人外へ出ていった。
待ち受けていたのは…、耳をつんざくほどの歓声。

全校のほとんどに向かい入れられているのだから、もちろん嬉しいけれど…

「きゃぁああ、紅様ぁああっ!」

中から聞こえたきたその声に、隣にいた如月 紅(きさらぎ こう)は、

「え、何かうるさい。何で、は?」

と、理由が分からないというような表情をして、私に不思議そうな顔を向けた。

…、この顔だけイケメンが幼馴染みって、ちょっと複雑。

なんて事を思ってしまう程、紅はカッコいい。いや、MisanGAの男子は、顔が整いすぎているほどだけど…。

5:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 20:14 ID:TRQ



私達は、半端ない歓声の前に立ち尽くしていた。

「これ…、通れないよね?」

私が絶句しながら、そう呟けば、

「通れる隙間もくそもねーわ。」

と、頭をがしがしとかきながら、乱暴にそう言ってのける紅。

しかし、MisanGAには、こんなので立ち尽くす事の無い人間が1人いるのだ。

私と紅の間からサッと歩いていく男子。

「…、どいてくれ。
 非常に邪魔なんだが。ファンでいて くれるのは…、嬉しいから、な?」

6:空ラビ◆mU:2016/01/08(金) 20:40 ID:TRQ


ここからは、彼の顔は見えない…、けど。

「きゃぁあああっ!」
「碧斗さまぁああっ!」
「通ってくださいー!」

……。

「碧斗君…、何技使ったの?」

私がつんつんっと、碧斗君の背中をつつくと、ゆっくり振り返って、

「あ“?計算尽くのアイドルスマイル をやったんだよ。」

イケメンとしかいえない顔を歪めながらそう言い捨てた。

や、やっぱり…。
進藤碧斗(しんどう あおと)は、こんな人間だ…。
優しくて思いやりのある、MisanGAの良いリーダーではあるんだけどね。

「ほら、お前ら行け。」

MisanGAの中で一番前にいた私と紅に、顎で指し示しながら「行け」といった碧斗君。

「りょーかい、あ、そうだ。」

紅が気の抜けたように返事を返してから、歩き出した私と紅。

平和に二人で話しながら靴箱まで行こうと考えてみるけど、相変わらず沢山の人に囲まれたまま。

7:空ラビ◆mU:2016/01/09(土) 10:41 ID:TRQ


「うっわ、これさ、もう俺。
 スーパースターじゃ「ない。」

紅が調子に乗りながらきらりと笑って、ウィンクしながら言った言葉を私はしらーっとした表情で、ずばっと遮った。

「えー。まじかよー、はー」

と言いながらぶーぶー言っている紅。
いや…、スーパースターっぽい扱いはされてるけどね…。

私が紅の大きい背中を見つめながら、普通に歩いていたその時…、

…嵐はやってくる。

「きゃぁあ、実月ちゃんが走ってきて るーっ、可愛いーっ!」

「姫ちゃんのところに向かってるのか なーっ?」

……、私はため息を「…はぁ」とついた。振り返った紅はそんな私を見て、

「どんまい」

と、イラつくような笑みで言ってきた紅の長い足を蹴る以外選択肢は無かった…よね?

「きゃぁ、実月ちゃーんっ」

「ふふっ、綺麗なお姉さん達、おはよ ぉーっ、姫ちゃんまでの道開けてく れないかなぁ…?」

その声に、ザッという誰かがどいた音。
ま、まずい…、嵐は真後ろだ…。
[私の判断] 走って逃げる…っ!!

ドドドドドッ、という効果音がつくくらいの走りを見せる私。
あっという間に紅を抜かして、靴箱まで一直線だ。

…あ、やばい、そーいえば…。

嵐の元凶、花田 実月(はなだ みつき)は、年下ながら足の速い男子…。

ふわり、彼の香りがした時…、
ぎゅっと、誰かに抱きつかれた。

「もうっ、姫ちゃん。逃げないでよ〜 っ?

 …まぁ、俺の速さから逃げれるわけ ねーけどなぁ…?

 ふふっ、姫ちゃんは可愛いなぁ…」

き…、きた、天使に見せかけての悪魔、みつ…!

周りには天使に見せかけているけど…、いつも甘い声で、耳元でそっと呟くの。
悪魔の台詞を…、ね…。

「じゃあ、行こっかぁ。

 ひーめちゃんっ、逃げないでね?」

ぎゅっと、腰を抱かれた状態で歩き出す実月。
ここで逃げようとでもするのは、絶対にやばい行為だ…。

「はははっ、…、ははっ、やばい、
 笑いがおさまんね…、はははっ、」

「紅…、笑っちゃだーめ…。
 ふふ…、笑うしかないか…、ふふ」

後ろから、紅のうるさい笑い声と、おしとやかに笑う葉の声。

睨みたいけれど、隣の天使…、いや悪魔に捕まえられているから…、当然無理なわけで。

中学部の靴箱と高等部の靴箱は分かれている…、けど。

私は中3。悪魔は、中2….。
最後まで、きっちり同じルートだったとさ。…、ちっ。

8:空ラビ◆mU:2016/01/09(土) 11:47 ID:TRQ



階段を上る最中も、後ろからぞろぞろ、横からぞろぞろ。

「きゃぁーっ、MisanGAの年下メン バーだっ」

「年上メンバーは、高等部にいけば  見られるんだよね!」

ちらほら聞こえる声。
私は、今紅と実月に挟まれる形で歩いている。

さりげなく、私を守ってくれているのが分かるから…優しい。

さっきの誰かさんの話通り、
年上の高等部メンバー、
怜音君、葉君、碧斗君の3人は、途中で離れて違う校舎に行く。

私達の通うこの学校、

新城学園は、中学部、高等部があって、校舎が別々になっている。

自ら関わりにいかない場合、中学部と高等部にあまり関わりはないけれど、同じ敷地内にいるのは確かだ。

中学部、高等部があるくらいだから、敷地は結構大きい。

もちろん人数も多く、周りにいるファンの人達の人数も相当だ…。

「うっわ、姫げんなりし過ぎ。
 でも、これ明日から確実に無くなる から安心しろ。」

紅の言った言葉に、理解など出来るわけがない。
実月でさえも、はてなマークを浮かべているくらいなんだから。

「紅何言ってんの、MisanGAは昨日 デビューしたばかりだよ?
 それに、実力だってつけてきてるか ら、人気が落ちるのも困る…」

私は身長の高い紅を睨み付けるようにして、そう言った。

それにも関わらず、紅は、ははっ、と余裕そうに笑って、

「今日、楽しみにしてな?
 はい、着きましたよーっと。
 実月は、2年の教室いってら。」

気づけば教室についていて、紅はドアを乱暴にがらっと開けると、そこに入っていった。

中から聞こえる歓声…、うるさい。

実月をちらっと見ると、天使の“ような“微笑みをしていて、

「ひーめちゃんっ、また後でねっ」

そう、甘い声で言ったあと、私の頬に自分の唇をあてて、スキップしながら颯爽と消えていった。

周りから聞こえる、

「ひゅーっ、いちゃついてるーっ」

の声にいらつきつつ、頬をさすりながら教室へと入っていく私であったとさ。

9:空ラビ◆mU:2016/01/09(土) 12:32 ID:TRQ


いつも通り教室に入って、自分の席にどさっと座る。
いつも通りではないけど…、周りがね。

「姫梨ちゃんも、紅くんも芸能人以上 に可愛くて、かっこよかったけど… 本当に芸能人になるとはね…」

そんな声が聞こえて、さっき以上にアイドルである事を実感する。

1月5日、あるライブ会場から、生中継がテレビに繋がった。

それは、紛れもなくMisanGAのデビューだったのだ…。

そして今日、1月6日…。
一応芸能人である私達は、普通に登校してきたせいで、散々な目にあったと…そーいう事です。

さてさて、教室をぐるりと見回すと…、前の席で男子に話しかけられ、普通の男子オーラを出しながら話している紅。

そして…、

「あ、ひめじゃん、おはー」

「ゆうひーぃっ!」

これまでの何の変わりもなく私に接してくれる、大好きな親友、

朝比奈 夕日(あさひな ゆうひ)

朝日か、夕日かわかんないけど、良い人なのは分かるからそれでおっけ。

夕日は、世に言うギャル。
顔立ちは整ってるのに、メイクで台無しの美人さん。

初めて話した時は、一匹狼みたいだった私に、

「あれー、生きてるー?」

と、普通に話しかけてきた夕日。

ちなみに、一匹狼でも何でもなくて、「話しかけて良いのかな」…っという、弱虫ちゃんだっただけですが。

10:空ラビ◆mU:2016/01/09(土) 12:46 ID:TRQ



「ゆうひーぃ」

私はそう叫んで席をがたっと立ち、夕日にしゅばっと抱きついた。

「わーぁ、ゆうひだぁーっ!」

そう言いながら、ぎゅぅうと抱きついていると、

「姫うるせぇっ、学校でもうるさいと かやめろよっ」

という紅の声に、夕日は「え?」と言って、教室中はシーンとする。

私も紅もよく意味は分からないままだけど、とりあえず私は夕日に抱きついたまま反論。

「いやいや、いつもうるさいって怒ら れてるのは紅じゃんっ!
 朝だってさ、全然起きないし。」

その声に、「もしかして…」というどむめきが起こる。
そんな声も露知らず、

「だからって、あの起こし方は無いだ ろー、もっと女子らしく起こせ。」

「起きない相手に、思いっきり乗っか って何が悪いのっ?」

ちょっとした口論。
紅とのこれは、意外と楽しんだよね、何故か。

そしてそして、夕日がある疑問をぶつける事で、どよめきの真相が分かった。

「2人ってー、一緒に住んでるの?」

私より少し身長の高い夕日が、首をかしげながらそう聞いた。

あ、あれ、言ってなかったっけ。

私と紅は顔を見合わせ、

「うん。」

と、声をハモらせながらそう言った。
それに驚くクラスメイト達。

「どうして?付き合ってるの〜?」

その声には、2人で

「ない。」

と言ったけどね。

11:空ラビ◆mU:2016/01/09(土) 13:34 ID:TRQ



ざわざわ、がやがや更にうるささを増す教室内。

私は夕日に、
紅は男子達に、質問攻めにあっていた。

「え、何で一緒に住んでんのー?」

「いいな、姫梨ちゃんと住めるとか、 超幸せ者だな紅はっ!」

とかとかいっぱいいっぱいなのです。

私は夕日に聞かれた事を、ずっと抱きついたまま答えていた。

「まぁ、MisanGAメンバー全員で住 んでるから。」

私の返事に、「へーぇ」とかるーく返す夕日。
おいおい、聞いてきたわりにドライだな。

「じゃあさ、普通に夜までレッスンし てたりとかー?」

夕日は、自ら質問しているというのに、まるでめんどくさそうにそう聞いてきた。
っていうか夕日さん、私の頭の上にスマホ置いて操作すんのやめてけろ。

でもでも、夕日大好き人間の私はめげずに答える。

「そういうわけです。
 酷いときは、日付変わっても踊って たりしてたからね。
 それはもう鍛えられて「~♪」

私の語りが始まりかけたというのに、放送が始まりを告げている。

静かになる教室。
それより私の話を聞いてくれ、とか言わないけれども。

「皆さん、おはようございます。
 今朝は、始業式があるので、体育館 に各クラス移動してください。」

「~♪」と、終わりを告げられ、皆ゆっくりと体育館に行く準備を始める。

自然過ぎて皆気づいてないけど、
あの声碧斗君だから…、
生徒会副会長様、碧斗君だから…

大事な事は2回言う、これ当たり前だからね?

12:空◆mU:2016/01/09(土) 16:17 ID:TRQ



私は夕日から離れて、んーっと背伸びをした。
ずっと抱きついてたからね、疲れるんだよね。

学級委員長の栞ちゃんが皆を並ばせた。頼りになるよ、栞ちゃん。

紅の周りには、相変わらず男子がわらわらといて、ずっと話している。
紅は優しいから、あまり人を無視したりすることが出来ないもんね。

まぁ、今のは普通に楽しんでるんだけど。紅。

私達は、体育館へと歩き出した。
ちなみに始業式の日は、今日は中学部も、高等部も集まるので、大きな総合体育館へと向かう。

中学部校舎と、高等部校舎の間にあるのが、総合体育館。
行く途中に、渡り廊下があって凄く寒いので、とりあえず夕日にくっついてみる。

「うっわ、ひめ冷たっ、ほらカイロ。
 私は、いつも寒さに耐えておしゃれ 楽しんでる人間だから、大丈夫ー」

そう言って、私に温まったカイロを渡して、私にぎゅっと握らせた。

夕日は慣れてるって言うけど、少し震えてる。こうやって、人の為にするところ、大好き。

私は、夕日にぎゅうっと抱きついて、

「夕日専用電子レンジーっ」

とか意味のわからない事を言って、夕日を笑わせながら、総合体育館へと着いた。

もう高等部は着いていて、流石だって思ったの。
栞ちゃんのおかげで、中3全6クラスの中では一番だったけどね。

いつもの場所に着いて出席番号順に座った。

13:空◆mU:2016/01/09(土) 16:34 ID:TRQ



私は白石だから、如月の紅とは少し近い。話せる距離ではないのが残念。

私は、隣に座った須藤栞(すどう しおり)ちゃんと、喋っていた。
学級委員長の、黒髪ボブの女の子。
おしとやかで、
「女子力高すぎませんか貴方」
な子。女子らしい女子。

「ふふふ、姫ちゃん見てたよ。
 テレビ見てたら、急に生中継繋がっ て、あっという間に6人が出てきて
 驚いちゃった。」

綺麗な声で、ふふふ、と笑いながら言った栞ちゃんを見て、
こんな女子になりたいなって、素直に思ったの。

「見ててくれてたんだ、嬉しいっ。
 一応ね、1年半くらい前からずっと レッスンしてきてるんだ。
 だから…、6人でデビュー出来て、 凄い嬉しいっ!」
 
ただ、私の言いたい事を言ってみた。
自信満々にそういえば、栞ちゃんは一瞬目を見開いて、
また、おしとやかに笑ってから、

「姫ちゃん、あの5人の事大好きなん だね。
 可愛くて、いいね。」

大好きなんだね、って言われて、これまでなら違うって返していた。

だけど…、言葉が詰まった。
デビューしてから、5人への感謝の気持ちが強くなったと思う。

「うん…、大好きだよ。」

そう、うつ向きながら言えば、栞ちゃんは、

「これからもずっと、応援してるから ね。
 大好きな気持ち、忘れちゃだめだよ ーっ?」

私の手をぎゅっと握りながら優しくそう言って、「そろそろ始まるよ。」
と、伝えてくれた。

14:空ラビ◆mU:2016/01/09(土) 18:54 ID:TRQ



一番前の壇上に、教頭先生が出てきて、始業式の始まりを告げた。

ほぼ寝てるような状態だけど、姿勢だけ無駄に良くしてるから、先生には怒られない。

後から内容聞かれたら、確実に答えられないのは間違いないけど。

「えー、続いて、進藤副生徒会長より お話があります。」

高等部生徒会の、議長の声が聞こえた。
進藤…、副、生徒会長…あっ!

「碧斗くんっ!」

結構大きめの声でそう言ってしまい、周りからはクスクス笑われちゃったけど、完璧に起きれたから大丈夫。

「ふふ、しーっ」

隣の栞ちゃん、人差し指を顔の前に持ってきて、小さな声で、そういった。

やっぱり綺麗…、大和撫子っ!

そんな事を思いつつ、前を向くと、壇上に碧斗君が上がり終わったところだった。

碧斗君は、ゆっくりとお辞儀をすると、前を静かに見据えて、

「皆さん、明けましておめでとうござ います。」

低く、落ち着いた声が響き、全校も
「明けましておめでとうございます」と、丁寧に返していた。

私も言ったけれど、年変わる瞬間もすぐ近くにいたんだから、言う気失せるよーっ

「今年が、皆さんにとって良い年にな る事、祈っております。

 私の話にはなってしまいますが、
 今年の1月5日、私を含めた、本校 の生徒6人が…、芸能人になりまし た。」

その声に、

「きゃぁあああっ!」

と、歓声があがる。

あ、あれ、それ私もだよね…、
何故今言う…?

はてなマークを浮かべまくっている私に、更にはてなマークを浮かべる事になる出来事が。

「MisanGA、というアイドルグルー プとして…、

碧斗君がそう言いながら、その言葉は途中で止まった…途端、

「きゃぁあああぁあっ!」
「男子メンバー揃ったぁああっ!」

な、何と…、
紅も、実月も、怜音君も、葉君も出てきて… 、私以外全員揃っているという…。

周りから、

“お前も前出てけよ“

“全員揃ったところ見たいよ“

という圧力をかけられておろおろしていると、碧斗君が私の方を見て、
「フッ」っと笑った。

それから、さっきまでの言葉を紡ぎ出した。

「MisanGAというアイドルグループ として、ここにいる4人と…

 MisanGAのお姫様と、デビューし たんです。」

その言葉に沸き上がる歓声。
壇上にいたはずの怜音君が、いつの間にか降りてきていて、

「姫ちゃんおいで…?」

そう言って、私の左手を取ると、駆け足で壇上へと向かっていった。

頭の中は混乱ばかりだけど、彼らがそこにいるなら…、安心出来ちゃうの。

私達が壇上へとかけ上がると、
4人は私にアイコンタクトを取りながら微笑んで、

そして、碧斗君はこう言ったんだ…。

「いまここに来た、白石姫梨は俺達の …、MisanGAの姫。
 
 これから、こいつが何か傷付くよう な事をしたら、誰だって容赦しない
 。
 朝も、帰りも、こいつの通りやすい 道を開けろ。
 
 いいか、ルールやマナーの守れる人 間…、それでこそ、
 MisanGAのファンです。」

もう口調が敬語でも何でも無くなってしまっていたけど、
碧斗君は、ズルい人だよ…

最後だけ、敬語になって、
綺麗に微笑むんだから…。

これで、聞かない人なんて、絶対にいない。

私は、5人の方を向いて、

「…ありがとうっ!」

と、大きな声で、言った。

そうしたら…、

「姫だからだよ。」

「実月が守りたいから〜っ!」

「ん…、姫のためだから…」

「僕らの姫ちゃんだからね?」

「フッ…、そういう事だ。」

その声に、私は皆に抱きついた。
途端に、沸き上がる歓声と拍手。

こんなに…、人の暖かみに触れてしまうと、幸せ過ぎて…。

罰が、当たっちゃわないかなぁ…。


ー 私達のそんな場面を見ていたある人が1人。

「…ふふ、良いグループじゃないの。
 スーパースターになるわ…。」

この人と出会うのは、まだまだ後のお話…、だよ?

            No,1 終

15:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 10:26 ID:TRQ


No,2「人として、アイドルとして」


「えっ、もうマッキー来る!?」

「来るっつってただろーが、
 姫遅すぎだろ、急げっ!!」

ただいま、6時間目が終わり帰りの準備中。
今日は、1日学校が終わってから仕事があるので、マッキーが車で迎えに来てくれます…が、

「よしっ、終わった!
 さぁ、行こうっ、紅!」

「お前のせいで俺遅れてんだよ、
 上から言うなぁあああっ!」

私の準備にしっかり待ってくれた紅は、すっごい叫んでます。
紅が優しいのが悪いよね?

「あっ、皆ばいばーいっ」

「ばいばーい」

私が教室の皆に、手を降って挨拶をすると紅は私の肩をぐいっと引っ張って、
「呑気にしてんな、行くぞっ!」

と言い、今度は私の腕を引っ張って廊下を駆けていく。
ちょ、紅速い速いっ、そして怖いっ!
あ、私が怒らせたのか、なるほどっ。

私達は、ただ無言でドドドドと廊下を駆けていくだけ。

ちぇっ、紅つまんなーいっ、

「面白いわけねーだろ。」

紅は私の思っていた事を読み取るようにして、そう言った。
あ、あれ、紅もしかして…、

「エスパー「じゃないっ!」

紅は呆れたというように、はぁ、とため息をついていた。

遮らなくても良いじゃんね〜、
あ、靴箱着いた。

私は、紅に捕まれていた左腕をぶんぶんと振った。こうすると、いつも紅は手を離してくれるの。

紅はいつも通り、というか、ぽいっと離してくれた。

16:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 10:55 ID:TRQ


私が靴を慌ててはいている間も、紅はずっと待ってくれていた。

時間はぎりぎり約束の5分前、ここから場所までは、全力で走れば何とか5
分で着ける…、と思う。

私が靴をはきおわって、カバンを持ったのを確認すると、紅は

「走るぞっ」

と言って、走り出してしまった。
よっしゃ、私も走るかっ!



「…、お疲れ様。
 姫ちゃんも、紅も、仕事前だってい うのに疲れちゃったね。」

私達は急いで車に乗ると、どれだけのスピードで走ってきたのか。

…2分で着いていたというね。

怜音君が綺麗な微笑みと飲み物を渡してくれて、何とか復活した私と紅。

「おっしゃ、行くぞっ!」

マッキーのその声で、車は動き出した…。

17:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 11:33 ID:TRQ



車が動き出してから10分がたった。
目的地までは、1時間ちょっとかかる。

私達は、
音楽番組の収録があって、
その間に雑誌の取材が2件、
雑誌の撮影が3件に、
MisanGAハウスに戻ってからもレッスンが待ってる。

中々ハードではあるけど…、大好きな仲間がいるから、頑張れる気がするの。

不意に、後ろからとんとんっと、肩を優しく叩かれた。

「ん?」と言いながらふりかえると、それはふわりと笑っている葉君だった。

「ひめ…、はい、どーぞっ」

葉君は、私の大好きなチョコを一粒、私にくれた。私の一番好きな、苺チョコ…。

「はいっ、元気チャージ…だよっ?」

そう言って、またふわりと笑う葉君の前髪もふわふわしていて、触りたいなーっなんて、変な事をかんがえていた。

「葉君ありがとうっ!」

私がそう言えば、満足そうにきゅっと口角をあげた葉君。

私の「ありがとう」で、紅や実月もチョコに気付き、葉君に「チョコくれ」と言い出したっていうね…。

18:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 11:58 ID:TRQ



感想や、アドバイス、
書いてくださると嬉しいですっ♪

19:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 16:20 ID:TRQ



「ねぇ、紅ー!」

車に乗ってから50分がたち、あと12,3分で目的地に着くであろう時。

私はある疑問を聞くために、紅の名前を呼んだ。

「…ん?なに?」

紅はウォークマンで音楽を聞いていて、音楽を止めて右のイヤホンをそっと取り、私の方に顔を向けてそう言った。

「あっ、音楽聞いてたのにごめんね」

私が手を軽く合わせて謝れば、

「ん、全然大丈夫。どうした?」

そう言って、ふにゃりと笑った。
あ、この笑顔好きだな…。

「あのさ、紅が昨日やってたバク転っ て練習したら私でも出来るようにな る?
やっぱり、難しいよね…」

昨日やってた、といえば、デビューライブの時。

1人ひとり、ソロパートがある際に、後の5人はバックダンスパート。

後ろで、ソロを引き立てるために踊るの。
その時に紅は、一度バク転をしていた。MisanGAの男子は、全員バク転をする事くらい容易い。

…だけど、ダンスの合間に助走も付けず取り入れられたのは…、紅の努力と才能。

そんな紅の凄い技に挑戦してみたい…、だけど、とても難しいんだろう。

「そんな事ねーよ。
 確かに、男と女の差ってあるから体 力的には難しいのかもしれないけど これまで姫は鍛えてきてんだから。

 今度、教えてやるから。な?」

私の「難しいんでしょ?」という質問に、真面目に答えてくれた紅。
いつものふざけた、おどけた紅では無くて、真剣な顔…。

「あ、ありがと…。」

私がそう言えば、
紅は優しく私の頭をポンポンと叩いて、またイヤホンをすると音楽を聞き始めた。


おかしい、私の心が、おかしい。
胸がきゅうってなる、何でかな…。

新しく芽生え始めたこの気持ちに気づくことの無いまま、目的地へと車は刻一刻と近づいていった…。

20:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 18:23 ID:TRQ



目的地に着き、車を降りる。
デビューライブ以外では、初仕事っていう事になるんだ…。

「お前ら、気引き締めて行くぞ?」

マッキーの威圧的な声に、
それぞれ頷いたり返事を返した。

スタジオに入る入り口の所で私達は立ち止まった。
昨日デビューしたばかりの私達にも熱狂的なファンがおり、うちわをもって入り口に待っていたのだ。

「…気持ちは嬉しいけどね、
 一人一人には応えられないねー…」

実月が困ったように笑って、静かにそう言った。
…いくら気持ちは嬉しくても、全員に平等に応えられなくては、アイドルとはいえない。

「…仕方ない、裏口から行こうか。」

先頭にいた碧戸君が、私達の方をちらっと見てから、颯爽と逆方向へ歩いていった。

流石リーダー。
冷静な判断が出来るから羨ましいね。


____

「MisanGAです、よろしくお願いし ます!」
衣装に着替えて、ヘアスタイルもしてもらって、歌番組の収録。

MCは、大御所芸人の田代(たしろ)さんと、大物女優の綾嶺(あやね)さん。
緊張するけれど、ただただ頑張らなくては…っ!

「おー、昨日のデビュー見とったで、 デビューとは思えんかったなぁ、ず っと練習とかしとったんか?」

田代さんが愛嬌のあるにこにこ笑顔で、気さくにそう話しかけてきてくれた。

「ありがとうございます。
 そうですね、1年半ほど前から6人 で練習してきましたので。
 これからも精進していきたいと思っ ています。」

碧斗君が、リーダーとしてハッキリとそう答えた。自慢の、リーダー。

「ふふ、頑張ってね。応援してるわ。
 姫梨ちゃんも、女子1人だけで大丈 夫かしら…?」

綾嶺さんが、ぷるぷるの唇をきゅっと引き上げて、妖しげに美しく笑って、そう私に目線をやりながら言った。

「は、はいっ!
 みんな、えっと、5人がサポートし てくれてるんで、えっと、
 が、頑張りますですっ!!」

…あ、しま、しまった、盛大に噛みすぎ…た。
そう思う前に、すでにスタジオ内には爆笑の渦が起きていた。
スタッフさんも、カメラさんも、照明さんも、皆みんな笑ってて…

顔がカァッと赤くなっていくのが分かった。

「姫ちゃん、ありがとう。
 皆おかげで緊張解けたよね?」

それをフォローするかのように、怜音君が優しく皆に問いかけた。

それに、皆が

「あぁ。」
「緊張飛んでったし。」
「姫ちゃん、ありがとうっ!」
「…うんっ」

そう答えてくれて…、嬉しくて、嬉しくて。

「何や、このグループはこんな可愛い 癒し天使ちゃんがおったんか。
お前ら男子幸せやなぁ。」

「姫ちゃん、可愛いわね。
 今度一緒にお食事行きましょうか。
 ふふ、気に入ったわ。」

顔を綻ばせてそんな事を言う田代さんに、姫ちゃん呼びに変わった綾嶺さん。

皆に感謝しながら、収録は始まりを告げた…。

21:空ラビ◆mU:2016/01/10(日) 21:30 ID:TRQ



「紅君は、一番運動神経が良いと聞い たんやけど、やっぱりそう?」

「そうですね…、昔からサッカーとか 、バスケとか、野球…、沢山スポー ツ関係は習ってきてるので。」

収録は進み、今は色々な質問に答えていっている。
紅に話が振られ、アイドルスマイルで答えていっていた。

「へーぇ、スポーツの英才教育っちゅ うんかな?紅君がそういうの頑張っ てる時、幼馴染みの姫ちゃんはどー やった?」

田代さんから私に話を振られ、昔を思い出しながら…、

「紅がそういう試合がある時は、いつ も応援しに行ってましたよ。
 大きい声で応援すれば、絶対に買っ て帰ってきてくれてて。」

懐かしむように、笑顔で私がそう言えば、綾嶺さんは「ふふっ」と笑って、

「まるで、彼氏と彼女みたいじゃない の。
 どちらかが、モテていたりした?」

その質問に、隣にいる私と紅は顔を見合わせて、

「紅モテまくりでしたね。」
「姫モテまくりでしたよ。」

タイミング合わせようとしたわけでもなく、綺麗にハモってしまうのが私達。

「ふ、はははっ!
 そーか、そうかぁ、どっちもモテて たんやな?
 よく告白とかされとったん?」

その田代さんの笑いながらの質問に、紅が私に“俺から話すな“という、アイコンタクトを取って、紅が話し始めた。

「姫は、中1の時が告白されまくって て…。
 でも、姫はそんなのにも気づかない 鈍感だし、恋とか興味ないっていっ て、いつも男子に
 『苺チョコ1000兆円分買ってきた  ら、OKするよ。』
  とか言って、男子泣かせてました  ね。」

その紅の言葉に、皆が肩を震わせて笑い始めた。

「あらあら、姫ちゃんったら破天荒ね 。苺チョコ好きなのは、可愛らしい はね?」

「苺チョコは本当好きなんですよっ
 今日も来る時、葉君が苺チョコくれ て…、


____

「はい!カットです!
 休憩後、曲撮影します!」

あれからも話は続き、他のメンバーにもどんどん話が振られていった。

私達は、カットがかかってから、急いで雑誌の取材場所へ向かう。
休憩の少しの時間ですら、休憩出来ないからね…。

22:空ラビ◆mU:2016/01/11(月) 10:36 ID:TRQ



私達は、それぞれ飲み物を一口含むと、すぐに取材場所へと駆けていった。

既にライターさんは来ていて挨拶をしてから椅子に座り、1社ずつ質問に答えていく。

中には、

Q.好きなタイプは?

などの質問もあったけど、

A.苺チョコ1000兆円分くれる人。

と、返しておいた。
凄く笑われたけどね。苺チョコ好きなんだもん。いいでしょっ?

雑誌取材は40分程で終わり、曲撮影の前にヘアメイクを整えてもらうため、メイク室へと駆け込む。

それぞれ少し整えてもらったら、また走っていく撮影の場所までいく。

中々ハードではあるけど、これまで、ッスンを積んできているから、どうってことない。

「MisanGAさん入りまーす!」

スタッフさんの声が響き、

「お願いします!」

私達もまた、声を合わせて挨拶した。
ステージ中央にいくと、碧斗君のいつものアイコンタクトに、皆頷く。

23:空ラビ◆mU:2016/01/11(月) 10:53 ID:TRQ



それから、私達はいつも通り円を描くようにして立った。

私達の、ルーティーン。

「レッド」

紅がメンバーカラーを言い、拳を前につき出した。
その腕には…、「ミサンガ」
紅のミサンガは、レッド。

私達が、1つという証。
1つの絆を、表している。

「オレンジ」
実月の、少し高めの甘い声が響いた。
オレンジの、ミサンガ。

「イエロー」
怜音君の、優しげな美しい声と共に、
イエローのミサンガが見えた。

「ライムグリーン」
葉君の、とろけそうな甘い声に、
ライムグリーンのミサンガ。

「スカイブルー」
碧斗君の、低めのかっこいい声に、
スカイブルーの、ミサンガがつきだされる。

…、私の番。

「ホワイト」
私も、右腕をきゅっと前に出し、
自分のメンバーカラー、すなわち、ミサンガの色を言う。


そして…、私達を拳にしていた手を広げ、手を重ねた。

碧斗君の、

「MisanGAカラーは?」

という、いつもの声に、私達は…、

「Rainbowカラーッ!」

自信満々に、そう答える。

私達は6色だ。虹ほどの、たくさんの色ではない。だけど、

ファンの人達、マネージャー、共演者の方、スタッフさん達皆、家族も…。

皆合わせて、MisanGA。
皆に支えてもらっているから。

その皆の色を合わせたら…、綺麗な虹になると思うの。
沢山の色の集まる虹。

私達のデビュー曲も、

『Rainbow Color』

皆に届け、虹色の思い…!

24:空ラビ◆mU:2016/01/11(月) 13:08 ID:TRQ



「僕らは、まだ知らない。
 世界に、輝く光がある事を。」

葉君のソロパートからはじまる曲。

MisanGAの中で、一番歌が上手な葉君からにしよう、という事で決まったんだった。

私達は、後ろでダンスを踊る。

まだ、見えない虹を求める。
一人ひとりの輝ける光まで…。

「どれだけの、悲しみを。
 背負えば見つかるのだろう…?」

紅が儚くも…、悲しい歌詞を、
丁寧に歌い上げる。

「どれだけの、愛情を。
 プレゼントしていけばいい…?」

実月の、甘い声が響きわたる。
ダンスは、激しくなっていく…。

「君になら、君だけになら。
 何色もの、思いを。」

「届くまで、叫ぶから。
 虹の橋かかる場所へ。」

続けて、怜音君と碧斗君のソロパート。
次は…、私。

「どんなColorだって良いんだ。
 空を見上げて、声に出せば…!」


 

25:空ラビ◆mU:2016/01/11(月) 14:49 ID:TRQ



「無限に輝く、君の笑顔。
 Rainbow Colorに、光る。

 どんなColorだって良いよ?
 君のColor見せてほしい。
 僕色に染まってくれる…?

 ほら、I Love you…」

サビになってからは、笑顔で踊り、皆で歌う。

最後に、

怜音君が投げキッスした事で、
女性スタッフの瞳は、ハートになっていた。

決めは皆で中央に揃って、
それぞれポーズをする。

私はポーズというより、実月に抱き締められてる…けどね。

「はい、カットッ!
 MisanGAさん、撮影終了です!」

26:空ラビ◆mU:2016/01/11(月) 16:59 ID:TRQ


「ありがとうございましたー!」

お辞儀をして、やっと一息。
MisanGAの楽屋に戻ってから、それぞれ楽な形になる。

ソロパートも難なくこなせて、ダンスパートも回転のキレが甘かっただけで、あとは良かったと思う。

汗もかいて、みんなタオルに顔を沈めてみたり、首から下げてみたり。
ハードだけど、終わったあとは凄く気持ちがいいの。

後から思って、

「あ、怜音君のあれ、アドリブ?」

怜音君は、汗は宝石のように輝かせながらスポーツドリンクを飲み終わり、
ふぅ、とため息をつくと、

「あれって…、最後の事かな?」

踊り終わった後だから、少し余裕の無さそうに笑いながら、私に問いかけた。

「そうそう、投げキッス。」

私が首を回しながら、横目に怜音君を見て、そう言った。

すると、怜音君はキラッキラの笑顔で、

「女の子達に、キス…してあげたいな って、思ってね。」

まるで、
「貴方はどこのホストですか。」
と問いかけてほしいのか、とツッコミたくなるほどの発言。

私は薄く苦笑いをしながら、

「怜音君、そのチャラさが無ければ完 璧なのにね。」

と言えば、
向こうでコンタクトを外し、いつもの黒ぶちメガネをかけた碧斗君が、

「怜音のその性格は変わらないからな 。中学の時も、いつも女子に囲まれ てた。」

まるで、呆れているかのように微笑みながらそう言う碧斗君だったけど、
二人が親友で、お互い信頼しているのを、私は知ってる。

「碧斗は逆にいつも女の子を泣かせて て。
 どうしたらあれだけの毒舌を吐けち ゃうの。」

二人の柔らかな言い合いに、微笑ましく思う私なのであった。なんてね?

27:空ラビ◆mU:2016/01/11(月) 22:13 ID:TRQ



私達は少し休憩し、皆で雑談をしてから、あと1つ残る仕事へと向かった。


________

「実月くん、葉くんの方寄ってくれる
 かなー?」
「はいっ」

雑誌の撮影。
私達の特集が組まれるから、それの撮影…、そして…、

「それにしても凄いなぁ。
 デビューした次の日に、表紙撮影だ なんて、最速だよ。」

カメラマンさんが、ハハッと笑いながらそう言う。
私達は、アイドル界…、いや、芸能界の中で最速で、表紙デビューを飾った。

カメラの光、眩しいなぁ…、なんて呑気な事を思いながら、練習しまくった微笑みを見せる。

素で笑えるくらいのアイドルになりたいなぁ…。

28:空ラビ◆mU:2016/01/13(水) 17:24 ID:TRQ



「MisanGAさん、終わりです!」

その声を聞き、ようやく仕事が終わった。
今は7時24分。3時間以上、仕事をしていた事になる。

「ふわぁ…、も、…無理、おやすみ、 …」

「葉、寝るならせめて車の中でね。
 ほら、行こう。」

怜音君が、葉君を優しく支えながら、起こそうとしている。

「怜音も大変だな、俺なんて姫にちょ っかいかけるのが仕事「じゃない」

紅が後ろから、そんなうるさい事を言っていたので即座に遮りツッコむ。

紅は、まるで“面白くねーな。“とでも言うように目を細めてくる。

それを…、私は…、完璧にスルーしてやった。

「ちょ、待て待て。
 華麗にスルーはひどくね?」

「ひどくないっ、正当防衛っ!」

「何か意味ちげーし!馬鹿?」

「はーぁ?学年の下から数えた方が早 すぎる紅に言われたくないっ」

「でも、俺の方が運動神経良いし?
 体育は1位で…「ちょっと待って」

29:空ラビ◆mU:2016/01/15(金) 19:34 ID:TRQ



低レベルな口論がヒートアップしてきたところで止めたのは実月。

私と紅の間に割り込んで、腕をクロスさせ、バツの形にしている。

「実月ごめんなさい…。」

いつもそう。
年下の実月が止めてくれる。
一応私達年上なんだけどなぁ、なんて思うけど実月に止めてもらうまで終わらない、とは思っちゃう。

私達が声を揃えて謝れば、実月は満足そうに、にっこり笑って、

「いいよっ、姫ちゃんが実月のほっぺ にチューしてくれたら許すーっ」

そう言って、笑いながら私の方に頬を寄せてくる実月。

いや、うん。か、可愛いけどね…?

さ、ささ、流石にね、無理だよね、恥ずかしさで死ねるよね、うん。

「えーっ、恥ずかしいからむり…「実 月やめとけ、姫なんかにされたら蕁 麻疹走るぞ。」

私が断ろうとした時、紅がいつもより低い声で、冷たくそう呟いた。
…、言われた内容より、紅の素っ気ない態度が気になったの。

「ね、ねぇ、紅。何かあった…?」

私と実月が紅の元に駆け寄ると、紅は少し顔を隠してから、「…はぁ」とため息をついて、

「何でもない、ごめんな、心配かけて 。」

いつもよりぎこちなく笑う紅に、
私は、ただ笑うしか出来なかった。

30:空ラビ◆mU:2016/01/15(金) 19:41 ID:TRQ


紅side

姫は、幼馴染み。
生まれた時から一緒で家族みたいな存在。


……、ずっと変わらないと思ってた。

___あの日、姫は大切な人をなくした。
姫は…、最初は悲しみ過ぎて、絶望し過ぎて涙も出なかった。
涙も出ないかわり、死んだように生きていた。

日にちがたって実感してきた姫は、
気づいたら頬に涙が伝っている程に、涙を流した。

俺は…、ただ、ただ側にいるしか出来なかった。

幼馴染みだから、
家族だから、側にいる。

…本当は、違ったのにな。


ずっと、ずっと、姫だけだった。
姫だけを女子として…、

    好きなんだ。

嫉妬なんて、柄じゃない。

今度は姫を支えられる俺になって、
姫の隣に…、姫の特別になりたい。


           紅side 終

31:空ラビ◆mU:2016/01/16(土) 15:55 ID:TRQ



___MisanGAハウス

「今日の仕事はこんだけで終わりだな 。
 デビュー翌日に疲れただろ?
 今日はもうよく休め…、

 とか言わないからな?
 
 デビューしてからどんだけ練習を積 んで実力をつけれるかが人気になる か不人気になるかの分かれ道。」
 
私達の住む家、
通称「MisanGAハウス」に着いたのは、午後8:30を少し過ぎた頃。

リビングに着いてから、マッキーが意地悪に笑いながらも、真剣に私達にそう言った。
真面目に言うマッキーの目を、ソファに座ったまま、ジッと見つめる。

私達の、マネージャーとして、
私達の、人気アイドルへの階段をかけ上がる道しるべとして。

マッキーは、これまでもずっと私達の為に動いてくれてきた。

マッキーだって、凄く凄く疲れている。この家の家事だって、彼女がしてくれている。

私達は、マッキーの言葉に深く頷いた。

「練習も積みながら、体調管理にも気 をつけないといけないのが大変なと ころだな。
 
 食事に関してはアタシに任せろ。
 無理だけはするなよ、自分のできる 限りで頑張ってほしい。

 …絶対、てっぺん取んぞ?」

にやり、その言葉の似合う笑いを見せたマッキーは、心優しい頼れるマネージャー。

私達は、沢山の人に支えられて今を生きている。

1人の人間としても、アイドルとしても。

MisanGAのメンバーがいて、マッキーがいて、ファンの皆がいて、友達がいて…、たくさん、たくさん味方がいる。

それに…、お母さん、お父さんも…。

いつだって、見守ってくれてるよね…?

不意に窓の外を見上げる。
…星が輝く空の向こうから、きっと見てくれるはず…。

No,2 終

32:ゆもん♪:2016/01/17(日) 13:39 ID:biU

いつも楽しみに見ています!
頑張ってください!

33:空ラビ◆mU:2016/01/17(日) 19:28 ID:TRQ


>>32

嬉しいです、ありがとーございますっ
頑張りますねっ、♪

34:空ラビ◆mU:2016/01/17(日) 21:16 ID:TRQ


No,3『アイドルオーラ』

「明日も学校あるし、今日は終わろう 。」

レッスン室にこだまする怜音君の声。
先程まで全力で踊って、レッスンしていた。
私は女だからというのもあるけれど、皆はまだ余裕があって羨ましい。

時刻は10:20。
レッスンを終えた私達の額には、汗が輝いている。

いつも通り順番にお風呂に入って、宿題も終わらせないといけない。

やっぱりアイドルは過酷なものだと、嫌でも思い知らされる、けど。
やっぱり、笑顔にしたい人達がいるから…ね。
 
「あっれ、碧斗君は〜?」
「マッキーと話してるよ。
 確か、CMか何かにMisanGAで出る とか、そういう話だったかな。」

MisanGAは順調に仕事が貰えているようで、明日も明後日もスケジュールはパンパン。

「…嬉しいね。」

私が小さく微笑みながら呟けば、

「だな。」

返事を返しながら、笑う紅。

「あ、姫ちゃんお風呂最初に入ってき ていいよ。
 僕たち男は、適当に入れば良いだけ だしさ」。

怜音君がきらきら笑いながらそう言ってくれたので、

「うん、お言葉に甘えちゃうー!」

遠慮もしないでお言葉に甘えるのが私なのです。



 

35:空ラビ◆mU:2016/01/19(火) 19:28 ID:TRQ


「ふー、温まったぁ。」

長風呂なんてしている時間のない私は、急いで汗を流すように全身を洗い、頭も素早く丁寧に洗った。
少し湯船につかってから、目にも止まらぬ速さで全身を拭き、お風呂から出る。

バスタオルをぐるぐる巻きにしてから、化粧水やクリームを塗り保湿保湿。

『アイドルになんだから、身だしなく らいきちんとしろよ?
 ほら、ドラッグストア行くぞ。』

と、デビュー1ヵ月前にマッキーに連行され、女子力UPしてしまった私。
これを紅に見られた時は、

『…、女子力のある姫なんて姫じゃね ーよ、お前は誰だっ!?』

とか真剣な顔で言われたっけ。

思い出して、ふふっ、と笑いながらクリームをしまう。よし、バスタオル外してパジャマ着ようか、な…

ガラッ

「あっ」

「きゃっ、!」

………、

私はバスタオルをギリギリ外していなかったくらいだけど、確実に背中にタオルは無かった。

今脱衣所の扉を開けてしまったのは、

「…紅…、」

「本当ごめんって!見てないから、何 も見てないから!」

慌てながら目線だけ外し、精一杯謝る紅を横目に、

「…、出てけ、出てけ馬鹿紅っ!!」

「すんませんでしたぁああ、っ!


…、紅以外だったら、ここまで怒ることはなかったと思うの。

何でかな、紅に見られるのは…、

恥ずかしくて、胸が熱くて…。



「…苺チョコ持って謝りにいこ。
 姫も、女子…だから嫌だったよな」

「紅に謝りに行かなくちゃ。
 …今度、オムライス作ってあげよう かな。」


___動き始める“想い“。

36:空ラビ◆mU:2016/01/19(火) 19:47 ID:TRQ


__姫の部屋

「ほんとっに、すんませんでしたっ!
 お詫びの苺チョコです、ほんと反省 してます、ジャンピングスライディ ング土下座します、
 途中バク転や側転も加えた新たな土 下座を、「しなくていいからっ」

お風呂から出てきて部屋に戻ってから、コンコンとノックする音。

紅だったら気まずいけど、紅はノックもせずズカズカ入ってくるし…、違うよね。

そう思ってドアを開けた瞬間、見えたのはしっかりお辞儀をして苺チョコを差し出す紅。

…、髪なんて濡れたままだから、自分がお風呂に入ってから急いで来てくれたって、丸わかり…。

「は、何でっ!?
 俺悪い事したんだから、なんならバ ンジージャンプの綱無しでもしてく るし、「それ死ぬからねっ!?」

…素直になれない私は、自ら謝る事が…出来ない。
でも、おかしい。

これまでは、友達には普通に素直に謝れていた。
…、心が、とくん、と動いた気がした。


___それから、紅が謝ってきて、私は渋々許した…、ふりをした。
とっくの昔に許しているのに、馬鹿な私はそれが言えないの。

37:空ラビ◆mU:2016/01/19(火) 21:14 ID:TRQ


それから2人で宿題をして…、しょうもない話もして…、眠くなるまで話をしていた。

ただの幼馴染み…、
そう、幼馴染みと話すと楽しい…から
ずっと一緒にいたいって思うの。
紅となら、いつまでもお話していられそう。

…なんて、口が裂けても言えないけれど。

「それでさ、実月が急に碧斗君に抱き ついて…、あ、もう11時だ。」

紅の面白い話に耳を傾けながら、居心地の良い空気に安心していると、不意に紅が時計を見て驚いている。

「…時間過ぎんの早い…、な。」

…私と、同じ事考えてたんだ…。
…、なんで、こんな事で喜んでるの私…。

「…、じゃあもう寝よっか。
 宿題も終わったしねっ!」

私が笑顔の裏に思いを隠そうとしながらそう言えば、

「だな、部屋戻って寝ねーとだ。
 …、おやすみ。」

と、ゆっくり立ちながらふにゃりと笑って…、扉の前にたつ紅。

「また、明日な。」

扉を開けてそのまま出ていく紅。

…ガチャン


「…意味、分かんないよ…。」

意味がわからない。

何で、紅の事ばかり考えてるのか、
意味分かんない…。

モヤモヤを抱えたまま眠りについた、夜…。

38:空ラビ◆mU:2016/01/21(木) 19:00 ID:TRQ


怜音side

「怜音、姫起こしてきて。
 碧斗がめんどい輩起こしてきてくれ てっからよ。」

朝日のさしこむリビングに響くマッキーの声。
朝からしっかり早起きをして、前に姫ちゃんにプレゼントしてもらったエプロンを付けて朝ごはん作ってくれている。

「分かった、姫ちゃん起こしてくるね 。」

めんどい輩…、とは、

紅、実月、葉の朝弱い組。
紅と実月は起きるのが苦手なだけだけど…、葉は…、人格が変わりすぎる…。
(…おっと、葉の人格の変わり様はいつかの番外編で。)

マッキーに言われた通り、姫ちゃんを起こしに廊下を歩く。

[Himeri]

の、ハートにかかれた名前を見つめながら、ドアを__コンコンとノック。

「…姫ちゃん、入るよ?」

……、まだ寝ているんだね。

__ガチャッ。

扉を開ければ、無防備に眠る姫ちゃんの姿。
ピンクのベッドに潜る姫ちゃんは…、
あまりに可愛すぎて…。

「…、起きて、姫ちゃん。」

なんて言いながら近づく。
本当は、起こしたくなんてないよ。

そっと、姫ちゃんのふわふわした前髪に触れてみる。
栗色の、綺麗な髪…。

「…、起きて、起きて姫ちゃん。
 早く起きないと、遅刻しちゃうよ?
 ……、起きないなら…。」

そこまで言って、口をつぐむ。
…いや、冗談なんだからね。

「起きないと…、
 キス、しちゃうよ…?」

前髪をふわりふわり撫でながらそう静かに呟けば、姫ちゃんの頬に…。

…一筋の涙が流れていた。

「どうしたの?…」

その声を遮るように、姫ちゃんは僕の手首を引っ張って握った。

かと思えば…、

「やめて、
 …しないで、こ、う…。
 こう…、ずっと私の…、隣…。」

綺麗に涙を溢しながら、呟いた姫ちゃん。

紅…、姫ちゃんが求めているのは、

 紅なんだね…?

僕はそっと姫ちゃんの持つ手首を離し、後ろに引く。

…、この思いは、ただ迷惑なのかな。
迷惑…、かもしれないけれど。

「…ごめんね、姫ちゃん。
 僕、好きになっちゃったんだよ。」

…君のこと。




 

39:空ラビ◆mU:2016/01/22(金) 18:11 ID:TRQ


怜音side

…本当は気づいてたんだよ。
いつも姫ちゃんの目線の先には、紅がいた。
それと同様、紅の目線の先にも…、
姫ちゃんがいる。

目線だけじゃない、お互いの心も、だね。

2人が幼馴染みで、親友だと初めて知った時は凄く驚いたんだ。

一見ヤンキーにも見えるルックスの紅と、息を飲むほど可愛くて、まるでお人形のような姫ちゃん。

2人が何で親友なのか、最初は疑問でしかなくて。
だけど…、2人を知っていく内に分かったんだよ。

2人が出会ったのは、”運命”だったんだと。


可愛い外見とは裏腹に、
ツンデレで、素直じゃなくて適当で、
でも…、誰より思いやりの溢れる姫ちゃんに僕が恋したのも、

きっと…、定めなんだね。


これまでの僕は、女の子からの
「好き」という思いを、軽く考えていた。

自分でいうのも可笑しいけれど、親のルックスは完璧、ロシアのクォーターでもある僕のルックスは、整いすぎるほどに整っている。

だから、きっと。
女の子達は皆、この顔しか見ていないんだろ?
そうとしか、思っていなかった。

「王子様みたいな怜音君」
のレッテルを張られて、僕はその設定を守るだけ。

「好き」
と言われれば、その分の
「好き」
を返してあげた。

相手が望む事全てに従って、いつもいつもニコニコしていた。

そんな完璧を貫く僕に、振り向かない女の子なんていない。

いつしか、そんな曲がった考えを持ち始めた僕。

…本当に、そう信じていた。

なのに、姫ちゃんは少しも振り向いては____くれない。


姫ちゃんから見た僕にも、
「優しい人」
の無意識のレッテルが張られている。

でもね、ごめん。
もう一度、先に謝りたいことがあるんだ。

「…僕、欲しいものは全部欲しいんだ 。
 引いてあげないよ…?」


ゆっくり姫ちゃんの部屋を出て…、
僕の口角の端をゆっくりと持ち上げ、妖しく笑う…、僕。

40:空ラビ◆mU:2016/01/22(金) 21:45 ID:TRQ


姫梨side

「…もうっ!なんで…!?
 怜音君…何で起こしてくれなかった のっ!…うまっ、!
 あっ、マッキー今日も美味しいよ」

朝ごはんのフレンチトーストをモグモグ口一杯に頬張りながら、怜音君、マッキー両方に話しかける私。
お行儀悪くても仕方ない…よね?

だって、だってさ!
ひどいよね、怜音君起こしてくれなかったのに笑ってんだよっ!?
何さ、慌ててる私がそんなに可笑しいのか?

「そうか、なら良かったわ。」

と、満足そうにニンマリ笑うマッキーは、腰まで届きそうな長い黒髪をぎゅっとたくしあげて、ポニーテールでがっしり結んでいる。

「姫ちゃん、リスみたい。
 モゴモゴしてて可愛いーっ」

と、横からにゅっと出された人差し指は私の頬をつつく。
天使の微笑みを見せる実月…、いや、こいつは悪魔なんだ、目覚まそう。

「いや、可愛いんじゃなくてな、
 行儀悪いっていうと思う「紅は黙ってね。」

紅がいつも通りおちゃらけながらそう言い出すのを、いつも通り阻止する私。
何も変わってない…よね?

「…ちっ、…あ"?」

…、寝起き悪すぎ葉君も降臨してしまった。
葉君はソファに座って、ふぅ、とため息をつくと、

「…美味しそ、いただきまーす。」

そういって口いっぱいにもぐもぐしはじめる。

…変わりようがひどいけど、まぁ良いよね、個性個性。
 

41:空ラビ◆mU:2016/01/22(金) 21:59 ID:TRQ



「…とかとかあってね、
 もう本当に朝から疲れたぁ…」

ただいまお昼の時間です。
あれから無事学校へ着き、平和な1日を過ごして、あまりに平凡なのでそこは省略。

「まじでー?
 怜音先輩とか、しっかりおこしてく れそうなのにねー?」

と、女子力溢れる手作り弁当を食べながら、長い睫毛をばちばちさせてそう言う夕日。

私はマッキーの作ってくれるお弁当の中の卵焼きを、ごっくん、と飲み込むと、

「いっつもは怜音君起こしてくれるの にねっ!?
 今日だけさ、
 『あまりに姫ちゃんが可愛くて…、  僕起こす気無くなったんだ。』
 って、きらきら笑顔で言ってくる  んだよっ!!
 神々しい王子様オーラだせば良いと 思ってんじゃねぇよぉぉ!」

私が机をばんばん叩きながら、うるさいくらいに大きな声でそういい続ける。

「うるっさいよ、姫。」

と言われてもめげないです。
そういう性格なんだよ、うん。

とか何とか言い訳したりして遊んで、お弁当タイムは終わりを告げたとさ。
 

42: 空 ◆mU:2016/01/25(月) 16:08 ID:TRQ



「おいどけ、今から俺が光輝く時間だ 。」

ただいま5時間目が始まりを告げたばかりです、冒頭の言葉は紅野郎。

5時間目は体育なので、体育がズバ抜けて得意すぎる紅にとって、唯一の光輝く時なんだって、

「勉強は何1つ出来ないもんね…、
 可哀想「おいこら、聞こえてんぞ」

そういって軽く私の額をデコピンして、あっかんべーをする紅。

「MisanGAの幼馴染みコンビがいち ゃついてる…!」

「やばい、絵になる写メとろ」

「紅くんかっこいー…」

はい、いらいら募る今日この頃だわ、紅のどこがかっこいいの、それ聞いてこいつ調子乗ってるよ絶対!

私は女子たちにアイドルスマイルで手を振る紅を見上げつつ睨んでおいた。


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