高層ビルや巨大な複合商業施設が立ち並ぶこの国の首都、イザナシティ。
かつての首都である東京とその近隣にあった県が統合し出来たこの街は工業と商業が特に盛んで、交通の便もいい都会的な街であります。
ですが程よく緑や自然も残されており、都会な街を少し抜ければ綺麗な自然を望むことができます。
また、伝統工芸などの文化も形を変え、我々の暮らしと共に受け継がれております。
この街を例えるならば、ユートピア―理想郷でしょうか。
さあ皆さんもこのユートピア、イザナシティで暮らしてみませんか?
(イザナシティ市長・高天原 勇夫)
通学路に貼られているポスターは目が痛くなるような配色でこの街がいかに素晴らしいかが書かれていた。
「ユートピアって言うほどいい街かなあ...。」
と私、浪越月乃は通学路の坂から街を見下ろした。
私の通う高校はわりとマンモス校でこの街一番の規模の高校である。そしてその校舎は街を一望出来るような高台に建てられていた。
この街の住民の殆どはこの街をユートピアだと思ってるからここが住みやすい街であることには間違いないのだろうけど、それでもこの街を理想郷と言うのはなんだかおこがましい感じがするのだ。
「ま、私が何か言ったところで何も変わらないんだけどさ。」
と私は三つ編みを揺らしながら坂を降り始めた。