Pixivで書き始めた小説をこっちにも流用します
ただしこっちは失踪する可能性が非常に高いので読むのであればPIXIVのほうをおすすめします
→http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6841060
ジャンルはSFチックな気がします(適当)
1.リコール
春も過ぎ、気温が上昇し、もうそろそろ半袖でもいいんじゃないかと思い始めた6月初めの頃。
その日は午前中から雨が降っていた。
今日はバイトもないから学校帰りにリズムゲームでもやって帰ろうかな。
そう思いながら私は小学校の頃からの友人、山本愛理沙と自転車で走っていた。
学校からゲームセンターに向かう道は狭い裏道が多く、時々車が通るので少し危ない。
住宅街のようになっているから特に子どもなんかが危ないだろう。ここ近辺の親御さんにはきっちりと教育しておいてもらいたい。
大体7割くらいのところまで来ただろうか、私は奇妙な感覚――しかしながら生きているとたまにある感覚に襲われた。
「なんか、今と全く同じ状況でここを愛理沙と走ってた気がする。」
前とほぼ同じ状況を走っていたのだろうか。いや、この道を愛理沙と2人だけで走るのは初めてのはず。
「それって、いわゆるデジャブ?デジャビュ?ってやつ?」
デジャヴ。日本語では既視感ともいうのかな。一度も見たこのがないものをすでに一度見た気がする、というようなものである。
「まぁ、気のせいだろうし特に問題もないから早くゲーセンいこう!」
そういいながらペダルを強く踏み、加速しようとしたとき。
「うわっと!」
私は滑ってバランスを崩した。どうにか転びはしなかったが大きく右に動いてしまった。
「あっぶない…」
そう呟いて前を見たとき。
「えっ」
すでに前方わずか2、3メートル先に、全長は10mほどあるだろうか、重さは10t近くあるだろうか。鉄やらアルミやらの金属の大きな塊が減速しきれずに目前まで迫ってくる。
そうして私は何も見えない真っ暗闇に閉じ込められた。
2.目覚め
真っ暗闇。
何もない。
立っているのか、寝ているのか、浮いているのか、わからない。感覚がない。
「聞こえますか、お嬢さん。」
不意に知らない男の声がする。
「聞こえます、あなたは誰ですか。」
なぜだかはわからないが、私はひどく冷静でいた。
「君は死ぬはずだった。」
「死ぬはずだったってことは私はまだ生きているってことですよね。」
「そのとおり。僕が助けた。」
「なぜ助けたのですか。」
状況がさっぱりわからない。どういうことなのか。あの状況でどうやって私を助けたのか。私は生きているのか、ここはどこなのか。さっぱりわからない。
「まあまあ、順を追って説明するよ。まず僕の名前はどうでもいい。これは後の説明でわかることさ。僕はいわゆる超能力者だ。特殊能力者のほうがいい気がするけどね。」
何を言っているんだこいつは。
「超能力?」
「そう、自分の目の前で人が死ぬと時間を巻き戻す能力さ。しかしこれが厄介でね。自分で制御するのがどれくらい前まで巻き戻るのかしか制御できないんだ。」
つまり私が死ぬあの時、彼は時を戻して私を助けたというのだろうか。
「そしてもう一つ、これは呪いのようなものだろう。自分の目の前で人が死ぬという状況がかなり起きやすい呪いなんだ。これは時間を戻す能力…僕はリコールと呼んでいる、それを持つものが受ける呪い、いわば副作用だ。」
なぜこいつはその能力の話を私にするのだろうか。恩を売りたいつもりなのか?
「それを私に伝えてどうしようというのですか?感謝はしてますし、お礼もしたいとは思いますけどそこまで恩を押し売られると逆に迷惑です。」
「この呪いは死ぬまで絶対に解けないらしい。生涯付きまとう呪いだ。しかしそれが嫌だからと自殺するのも嫌だ、僕だって生きていたいからね。しかしついに解放される時が来たようだ。」
解放される…?
「それってつまり、あなたは死んだと?」
私を助けるために死んだのか?
「そういうことです、そしてさらにこの呪い厄介なことに、リコールを使って人を助けるときに自分が死んでしまうと、助けた対象に呪いが移ってしまうんだ。」
…は?
「じゃあ、今その呪いが私に!?」
「リコールと一緒にね。」
なんてこった。そんな厄介な。
「そうして最後に、この呪いが移るときに、その呪いを受けていた人は存在が抹消される。いわば僕はなかったことになるね。」
「そんな…!?」
「あぁ、忘れていた、リコールの能力はその人を助けることを諦めれば能力を発動させないこともできるんだ。その場合、人を目の前で見殺しにすることになるけどね。」
彼は自分の存在が消えてしまってでも私を助けたというのか。
「なぜ自分の存在を犠牲に私を…!?」
「なんていうか、疲れたんだ。人を助けるのも、見殺しにするのも。だからいい機会だった。誰かに能力と呪いを映したかったんだ。最低野郎だろ?そうこう話しているうちに時間が来てしまったよ、僕の存在もこれまでだ。次に気が付いた時には君はさっきの道で友達と一緒さ。リコール使いとしての人生を応援しているよ。」
「まっ…話は終わってない!!」
そう言い終わる前に私は意識が飛んだ。
3.ファーストリコール
意識は戻った。
私は考えることができる。
しかしまだ視界が戻らない。
なぜ私がこんな目にあっているんだ。
死ななきゃ解けない呪いと時を巻き戻す能力...リコールだって?
ふざけないでいただきたい。視界が戻った時には部屋の天井がいいな。
姉さんの優しい声とコーヒーの香り、そして焼きたてのトーストの香り。
あぁ、そろそろ起きないと遅刻しちゃうかな。
「月姫奈?どうしたの?ぼーっとしちゃって。」
次に戻ってきたのは聴覚だ。
それも、愛理沙の。
そうして視界も戻ってきた。
目の前に広がるのはいつもゲームセンターに向かう道
「マジかぁ…」
最悪なことに夢ではなかったようだ。
いや待てよ?もしかしたら私はぼーっとしていて妄想していただけかもしれない。
呪いも能力もなくただの妄想なんだ。
「どうしたの月姫奈?大丈夫?熱中症?」
確かに熱くなってきたからね。熱中症はあり得るかもしれない。
「いいや、大丈夫だよ。気にするほどじゃない。」
実際にそれ以外特に体調不良があるわけでもないしね。
「ならよかったよ。早くゲームセンターに行こう。」
そういい愛理沙は先に走って行ってしまった。私も後に続き走り出した。
ゲームセンターについた。やはりここは賑やかでいい。道中も特に何も人が死ぬとか死にかけるとかは特に何もなかったしやはり妄想だったんだ。
私がいつもプレイしているリズムゲームもプレイできたし、愛理沙は格闘ゲームでもしているんじゃないかな。
そろそろ帰って家でゲームがしたい。私は愛理沙のもとへ向かった。
やはり格闘ゲームをプレイしていた。
「愛理沙、私そろそろ帰ろうかと思うんだけど愛理沙はどうする?」
愛理沙はプレイ中に話しかけても怒らないタイプだから少し広い椅子の隣に軽く腰掛けつつ聞いた。
「あー、どうしよう、私も帰ろうかな。」
何やらすごそうなコンボを決めながら返してくる。
もしかして愛理沙って相当強いんじゃないか?
相手は…溜めコマンドメインのキャラか。2作品目では猛威を振るったキャラだ。プレイヤーは女性でなんとなく疲れている気がする。目の下にクマを作り少し朦朧とした目をしている。こんな状態では愛理沙に瞬殺されるに決まっている。
「あ、帰る前にすこしお手洗い行ってくるから待っててくれる?っと、勝った。」
話しながらウルトを決めてフィニッシュ。無駄がない鮮やかなコンボだ。
「わかった、待ってるよ。」
まだクレジットが残っているが愛理沙は手洗いへと向かった。
数分たってから愛理沙からメールが入った。内容は、おなかが痛くなったからもうしばらく待ってほしいとのことだ。
暇になったし、新たなゲームがしたくなって私は愛理沙がプレイしていたものとは別の格闘ゲームにコインを入れた。どれほど戦えるかわからないがアーケード限定のEasyモード固定らしいから練習にはなるだろう。
20分ほどプレイしていただろうか。なんとなく愛理沙がプレイしていたゲームをちらっと見たらさっき愛理沙と対戦していた女性が席を立とうとしていた。携帯を見ながら少し口角が上がって明るい顔をしている。
なにか面白いものでも見ているのだろうか。
さらにしばらくたった後愛理沙が戻ってきた。
「ごめんね、お待たせ。」
「お待たせって…1時間近く待ったよ。大丈夫なの?」
明らかに時間があきすぎていた。
「うーん、わかんない。けど大丈夫だと思うよ。また痛くなったら今度は病院行くし。」
「ならいいけど。じゃあ帰ろうか。」
そういい私は駐輪場に向かった。
自転車に乗り、私たちは帰路につく。
帰り道はゲームセンターを出てすぐ踏切を渡る必要がある。ここの踏切が駅がすぐ近いから開くまでにかなり時間がかかる。
電車が近づいてくる音が聞こえる。この速さはこの駅には止まらない電車だろう。これが通り過ぎれば踏切は開くだろう。
ちらと近づいてくる電車を見る。ホームのほうから走ってくるようだった。そろそろ通過しそうだ。私は前を向いた。
直後、ホームのほうから女性の叫び声が上がった。そして多くの叫び声が続いて聞こえた。ホームのほうを向くと真横で電車が踏切を通過した。
と、同時に赤黒い液体のようなものが視界の端で飛び散り、生暖かくやわらかいものが飛び散ってくる。
そうして叫び声の理由を理解するには時間を要するようになった。
私は理解するのに数十秒かかった。赤黒い液体のようなもの。血。生暖かくやわらかいもの。肉片。かなりのスピードでかなりの質量のものが人体に直撃する。結果こうなる。
人が死んだのだ。私の脳はそう理解した。理解した直後、周囲は青い光に包まれた。
青い光は私の周りを回転しているように点滅している。
まぶしくて目が開けていられなくたった。私は目を強く瞑った。
光が収まった。これはあの時…謎の声の空間から戻ってきたときとおんなじ感覚だ。
最初に聴覚が戻ってくる。とても大きな、いろいろな音が混ざった雑音のような音だ。慣れてないと耳と頭が痛くなる音。そして視覚が戻ってくる。目の前には愛理沙がプレイしていたゲームがある。
携帯を確認した。時間はゲームセンターを後にする40分ほど前だろうか。
まさかとは思うが、これがリコールなのか…?