「あなたのいない世界なんて、何の意味もない」
はじめまして。
この掲示板では初めて小説を書かせていただきます、りんくさんと申します。
ちなみにこの名前における「さん」は普通に敬称ですので、呼ぶときは省略していただいても構いません。
この物語、ジャンルは一応ファンタジー恋愛ものとなるように考えております。
ファンタジー……と言いましても、ガッツリ魔法バトル系ではありません。どちらかと言いますと日常系かもしれません。
拙い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。
なお、私は基本的にスマホで書き込みを行っていますので、段落はじめの1字あけが反映されません。ご了承ください。
ちなみに内容のヒントまでに私の好きなものを申し上げますと、人間のドロドロした心理や魔女狩りなどの暗い歴史が好きです。
よろしくお願いします。
────昔むかしのお話です。
その国はとても豊かでした。
発達した魔法文明、優しい国王、豊かな自然、笑顔の国民。
何一つ過不足の無い、完璧な……そして中庸でつまらない国でした。
そんな中に「災禍の魔女」は産まれたのです。
彼女の親は平凡……いえ、それより少し貧しいくらいでしょうか。生活は少し苦しくとも、愛に満ちたあたたかな家族でした。
しかし彼女は平凡ではありませんでした。
人智を軽く凌駕するほどの魔力、難しい学問であってもすぐに習得するそのセンス、見目こそ絶世の美女ではなかったのですが、どこか人を惹きつけるカリスマ。
誰もが彼女を「天才」と呼びました。
その噂は学園まで届き、ぜひとも彼女に入学してほしいと便りが届いたのです。
入学金や授業料は国が負担する、とも。
両親は泣いて喜びました。
────やっとこの子が、活躍できる舞台に立てる。
優しい両親の期待を一身に背負い、彼女は入学を決意しました。
学園の教師達は、彼女を大いに歓迎しました。
しかし学園は元より貴族が通うものです。プライドだけが高い貴族の子供達からは、才能も実力もある彼女は次第に疎まれていきました。
陰口や無視、わざとぶつかられるなどはあたりまえ。実習でのペアワークでは、彼女は大抵教師とやることとなり、それで成績が上がるとよりいっそう周りからは孤立してしまいました。
いつしか彼女は氷のように冷たい無表情となっていきました。
長かった髪はむりやり切られ、当初着ていた女子用の制服も破かれてしまいました。
代わりに用意されたのは男子用の制服。それは皮肉にも髪が短くなった彼女によく似合っていました。
その日だって、いつもと変わらない日だったのです。
たまたま中庭に行ってみただけでした。
そうしたら、花畑の真ん中にある大きな樹の下で、誰かが座って……いや、眠っていたのです。
ほんの少し赤みがかった長い銀髪は、緩い三つ編みとなってまとめられていて、前髪は伸ばしっぱなしで、適当に流されています。
顔は端正で、身体の線は細く女性的でした。
彼女は寒くないのだろうか? と考え、自身が着ている制服の上着をその眠っている人物にかけてあげました。
すると、目を覚ましたのか、眠っていた人物は彼女の腕を突然掴んだのです。
柔らかくも骨の主張がある、男性の手。
突然のことに驚き、バランスを崩す彼女を彼は支えてあげました。
そして優しいテノールが、福音のように響いたのです。
「君……、サイファ=ローレンスかい?」
────童話「災禍の魔女の物語」より抜粋────
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※*以下はあとがきや用語集などです
童話は架空のものです。実際には存在しません。