表現主義の寓話 エチュード 

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1:枕上 白痴:2017/04/04(火) 17:34

 緑と虹の草原である。花びらに、ちょうちょうが止まった。
 花は言った。
「ちょうちょうさん、ようこそおいでませ。好きなだけ蜜を吸って行っていいのですよ」
 ちょうちょうは喜んだ。
 それを見て、誰にも見えない放射能が愚弄するように言った……誰にも聞こえない声で。
「馬鹿め。この草原はすでに俺様に一面が汚染されているんだぜ?」
 一秒後、そこは荒れ地だった。

2:枕上 白痴:2017/04/04(火) 17:47

          1
 ナマズは地震を起こすと言われている。
 ナマズからしてみれば、それは全く生理的なものなので、
 息をするのがやめられないように、
 意識をすれば地震を起こさなくてすむ、というような
 性質のものではないのだった。
          2
 やがてナマズ・ネットワークというシステムが研究者によって
 開発された。
 ナマズの体にとりつけた装置によって、
 ナマズが地震を起こしそうになると、それがすぐにわかるのである。
          3
 やがて浮遊装置が開発された。
 それを使うと、なんだって、ぷかぷかと宙に浮かせることができるのである。
 それによって、人も物も、国中の全てが宙に浮いた(宙に浮くと、移動が
 楽になったりする)
 よって、地震が起こっても、もはや関係がないのだった。もはや誰も揺れる地面に
 立っていないのだから。
          4
 浮遊装置の具合が悪いらしく、ある日、全てのものが地上に降り立った。
 人々はそのまま倒れた……立つための筋肉が、衰えていたのである。
 その時、ほこりかぶった古い研究室で、ナマズ・ネットワークが警報を鳴らした。

3:枕上 白痴:2017/04/04(火) 18:04

 ゴールデンホールデンという妖精ほど、巧妙な泥棒はいない。
 ゴールデンホールデンは、魔法を使って、物の内側から盗って行くいくのである。
 すると表面的には何も変わっていないので、盗られた側は、ほとんどの場合そのことに
 気づかないのだ。
 パンの内側、将棋盤の内側、ドアの、パソコンの、お金の、頭の……。
 人々は気づかぬうちにスカスカの生活を送るようになっている。


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