トライデント

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1:糠床:2017/07/01(土) 00:02

"トライデント"。"彼ら"はその名で呼ばれている。一般的な現代歩兵の三名一分隊という、ごく少数の編制によって遂行される彼らの任務内容は、その正式名にも率直過ぎるほどに表されている。そしてそれは、常識的な現実とはかけ離れた、空想の物語と錯覚しそうな特異な物であった。

D imension
D isrupter
D eleting
EN forcement
T eam

3D.EN.T_次元破壊者抹消執行部隊。

多次元に渡る異世界_パラレルワールド_の存在を認知したとある一世界で発足したトライデントの任務は、異世界の崩壊と改変を防ぐ事である。その具体的手段とは……次元を渡り、異世界の混乱や事変へ介入しようとする者たちを抹殺する事。押し並べて科学の未発達な世界へ、無尽蔵の現代兵器とともに侵入、圧倒的な力で異世界の英雄にならんとする敵"ディスラプター"の根絶を、彼らは目指しているのである。 そして今、トライデントのとある部隊に新たな任務が下命される……。

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テーマは"なろう系主人公ハンター"。

2:糠床:2017/07/01(土) 00:32

切り取り線のつもりの「▼▲▼▲(略)▼▲▼▲」がずれてて非常にカッコ悪いことこの上ない。▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

コンテナの中、といっても通じそうな金属壁に囲まれた、殺風景な小さな部屋。その半分は備え付けの狭い二段ベッドであり、中には一段に一人ずつ、二人の兵士が籠っていた。いつでも戦場に飛び出せるような、戦闘装備に身を包んだまま。しかしベッドの中では、二人とも寛いでいる様子であった。
「もう三日だぜ。本当に出撃はあんのかよ。」
特に興味もなく、暇潰し程度に週刊誌のページを眺めていた上段の若い男性兵士が気だるげにぼやいた。
「"判定"は絶対だった。多分今日も。」
一方、無感情ながらも熱心に小説を読んでいた下段の女性兵士が素っ気なく返した。
「"評議会"が判定を論議する以上、何もない事はありえない。何もなければ世界の異常など認知はできない。」
「その"判定"とやらも、どんだけ信じていいもんかね?世界の異常ったって、何をもってそう判断してやがるんだ?それにその異常が何で俺達の世界にも危ねえのかすら……」
「口は災いの元。私達兵士にはそれを問う権利も必要性もない。ディスラプターを狩る、それ以上はいらない。」
「……チッ、具体的な目的もなしに戦争が出来るかよ。放っておいたって大丈夫なんじゃねえのか?」
女性兵士に話題を強引に切り上げられ、男性兵士は不機嫌そうに吐き捨てる。女性兵士はそれきり返事をせず、二人ともそれぞれ自分の時間に戻った。

3:糠床 hoge:2017/07/01(土) 21:32

トライデントの存在する世界で他次元世界が認知されているのは先述の通りであるが、それを受けて国際連合は各国の有識者と首脳陣による評議会を秘密裏に設立。他次元世界で発生した次元異常への対処方法が議論される仕組みが出来上がった。その決定に従い、軍事作戦の実働にあたるのがトライデントなのである。しかしこの"評議会"の決議とそれに至るまでの議論は、対外的には勿論のこと当のトライデント職員にさえ非公表であった。行動目的の明らかでない組織でありながらも、トライデントの職員は概ね任務に忠実であった。
というのも、ディスラプターの次元破壊行為の余波は確かに彼らの世界を蝕んでいたからだ。
『……臨時ニュースを申し上げます、たった今入りました情報によりますと、太平洋の海底岩盤に巨大な陥没が発生した可能性があるとの事です。現在、海面に大きな凹みが生じているとの……』
何の気なしに付けたラジオ、そこから流れるニュースに、男性兵士が呆れたように溜め息をついた。
「海底陥没したところで海面が凹むかよ……で、こんな常識破りなことが起きたってことはだ。」
「評議会の決議は早まりそうね。」

4:糠床:2017/07/18(火) 18:13

『招集発令。招集発令。第三執行、ゲルダ・ガーフィールド壱士、並びにバーナード・ブライト壱士は至急ブリーフィングルームB138へ出頭せよ。繰り返す、ゲルダ・ガーフィールド壱士、並びに……』
「噂をすれば、だ。行こうぜゲルダ。ようやく太陽が拝める。」
「了解、バーナード。でも眩しいのは苦手。」
館内放送が、バーナードと呼ばれた男性兵士とゲルダと呼ばれた女性兵士を呼び出し、二人はベッドから弾かれるように飛び出せば装備を整えて部屋を後にする。部屋とそう変わらない殺風景な通路を駆ける二人。指定された"B138"号室の扉を開けば、その中にも一人の兵士がいた。机を挟んで向かい合わせられた三人がけのベンチ、扉から遠い側に座っていた兵士は装備こそ二人と同じながらも、二人と頭一つも違う巨漢であった。
「珍しく早いじゃないか。」
「たまには良いでしょう、ボス。」
「たまに、じゃない。いつもそうしろと言うのだ。誉めてないんだぞ。」
"ボス"と呼ばれた男は呆れたように首を振りつつ立ち上がれば、二人の真正面で向き合う位置まで歩いてきた。直立不動のゲルダの横で、何か要らぬ心配をしたのか身を強ばらせ一歩引くバーナード。しかし何も起きなかった。というより、"ボス"はバーナードが大人しくなるのを待っていたようであり、バーナードは慌ててゲルダ同様に気を付けの姿勢を取り。
「……よし。いいかガキども。難しい事は言わん。いつも通りの仕事をすればいい。今回の任務は第114次元に出現したディスラプターの排除。こいつだ。こいつを始末する。」
壁面のスクリーンに映し出されたのは、彼らがこれから向かう異世界とターゲットの情報。
「チェッ、また"おとぎ話"の世界ですかい。そろそろフライングカーとかフェーザーガンの使える世界に行きたいんですがね。」
「そのような次元は観測されていない。」
「わかってるよンなこたぁ……。しかしまぁ……。」
うんざりした様子のバーナードは資料を睨む。石壁の城塞と、甲冑姿の騎士や法衣の聖女が映されており、一見中世欧州のごとき風景である。

5:糠床:2017/07/21(金) 23:21

そんな風景の中に、場にそぐわない装いの人物が紛れ込んで映っていた。程なくして、その人物のみが拡大画像として切り出される。パーカーにジーンズ、スニーカーとごく一般的な現代人の青年……その両手に、アサルトライフルとロケットランチャーが握られているのを除けば、だが。
「こういうの流行りなんスか?ウチの班だけでも50件くらいは見ましたぜ。」
「ワンサイドゲーム、ね……。」
「まあ、奴らの趣味は知らないが……ともかくこのままイレギュラーな活動が続いては114次元は無事では済まんだろう。ニュースは聞いたと思うが、例によって、我々の世界にも皺寄せが来ている。一刻も早く始末せねばならん。」
「分かってますともボス。連中の英雄譚の犠牲なんざまっぴらごめんだ。で、どうやって始末を?」
「時間がない、移動中に追って説明する。」
"ボス"は言い終わるが早いか、すぐさま立ち上がってブリーフィングルームを後にし、バーナードとゲルダも慌てて後を追う。

6:糠床 文章量のムラ:2017/07/21(金) 23:56

次に向かうべき部屋までの道のりは長く、"ボス"は駆け足のまま作戦の説明を行っていた。
「潜伏中の情報部からの報告では、今から32時間後に大規模な戦闘を行う予定らしい。相手は114次元でもっとも巨大な帝政国家だそうだ。」
すると、何かを察したようにバーナードが疲れきった溜め息をつき、言葉を紡ぐ。
「ああ、その先は分かりますよ。いつもの奴でしょう。"圧政を打倒する神の使徒"、それとも"人ならざる叡智の伝導者"かな?自分だけズルして無敵モード、悪の帝国は滅ぼしてやる!正義の名の下に!っていうアレだ。いつもながら、いらんお節介だぜ全く。」
芝居がかった、柄にもなく生き生きとした様子を見せたのち、スイッチを切り替えたように毒づくバーナード。


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