私、高野真櫻だよっ!マオって呼ばれてるんだ!ある日、アートコンクールに出品したら大賞をゲット!だけど、学校にも友達にも先生にも言ってなくて。わたしのアート日記、始まるっ!
2:まい◆8Q:2017/07/27(木) 22:20 高野 真櫻
美術が好きな小学6年生。
自分では普通のつもりだが普通ではない。
秘密しか抱えていない?
荻窪 翼
真櫻の幼なじみ。
勉強、運動どちらも出来る。
イタズラ好きな真櫻のお世話係。
歌井 ひなた
真櫻の親友。
声が綺麗で、合宿コンクールでひなたのいるチームは必ず勝つほど。
1.私はハッポースチロール
私は、本当に謎に出会う運命なんだろうなって思う。
だってさ、事件によく逢うのよ。
私の頭と事件の頭がゴッツンコ!
これをポスターに描いてみたのよ。
結構力作でさ、これにならないように。みたいに描いたの。
夏休み後、私のポスターが全国へ行ったって。
どういうことっ?
私が買った画用紙って、羽が生えてたってことっ?
ゾ〜クゾクゾク。
あの画用紙、怖〜い。
でもそれは、数々の審査を通ったってことらしい。
ああ、そういうこと。
早く言ってくれたら、恥ずかしくなかったのにさ。
プンプン。
あ、私、高野真櫻だよっ!
みんなには、腐ったハッポースチロールってよく言われる。
意味は分からないけど、バカにされてることは分かってる。
頭いいでしょ、へっへ〜ん。
「マオ。だから翼君に言われるのよ。腐ったハッポースチロールって」
ムッ。
ママまで何てこと言うんだっ!
私がそんなにハッポースチロールに見えるのか〜!
私がそんなにゴミに見えるのかーっ!
「マオ、マンガばっかり見て。勉強したらどうなのよ、勉強。翼君は頭いいのに、どうしてマオはバカなの」
ムッムッムッ!
ママ、黙って聞いてれば、失礼な言葉並べてるじゃない。
ケンカ売ってるのっ?
でも、わたし売ったことも買ったことも、ないんだよね〜。
ケンカって、売るもの?
買うもの?
値段付けられるのかな?
日本語って、フシギ〜。
「ママ、翼君がほしかったわ〜。カッコいいしねえ。頭いいし。運動も出来るのよね。いい子よ〜」
ママにだけよくしてるだけだよっ。
私には、怒ってばっかり。
イライラしちゃう、もう!
でも、ママってよく言うのよ。
翼君がいい、翼君がいいって。
私じゃイヤなら、いいよ!
「翼君のママもマオがいいって言うものだから。交換したいわ〜」
さすがの私も、これにはキレたっ!
ママをにらみながら立ち上がる。
「ろくなこと考えないマオより、翼君の方が絶対いいわ」
「ちょっと。ママッ!何でそんなこと言うのよっ!」
「だってそうなんだもの」
キーッ!
もういいよ。
私だってママ、いらないもんっ!
2.人生初の体験!?
私は、旅行バッグとコロコロ転がすやつに、マンガたっぷり。
パジャマにお洋服。
ヘアゴムに、ばあばの形見。
ありとあらゆる物を詰めてっ!
ママがためてたヘソクリをもらい。
こっそり私は家出っ!
重い、重いぃ。
「あ、マオ。重い荷物持ってどうしたんだ」
コイツが、ムカつく幼なじみ。
荻窪翼。
原因はお前だーっ!
「翼には関係ないでしょっ。ほっときなさいよ」
私は、翼を無視して電車の駅へっ!
カッコいい男の子なら(マンガの世界)、私を追いかけてくれるのに。
翼、手を振るだけ。
余計ムカつくーっ!
「お嬢ちゃん、ひとりで旅行かい?」
駅で座っていたおじいさんと目が合った。
このおじいさん、普通じゃない。
怠けた(すぎた)おじいさんみたい。
「ちょっと親戚の家へ」
「すごいねぇ」
思ってないくせに、そんなこと言うんじゃない。
本当に感じたことを言うんだっ!
私がちょっとにらむと、おじいさんはビクッっとして、もう話しかけてこなかった。
あら。
おじいさん、何か、すみません。
みんな通るのかな?
家出の道。
出来るだけもう通りたくないな。
うん。
3.家出仲間
電車に乗って、マンガを読む。
私の夢は、ズバリ!
マンガ家なのです!
絵をいっぱいいっぱい描くんだ!
そうだ。
家出した子の絵を描こう。
ママに会ったら、つき出してやるんだ。この子かわいそうでしょって。
そう言えば私、どこで降りよう。
私、どこへ行こう。
親戚の家が一番いいから、ママが苦手な叔母さん家へ行ってみよう。
絶対楽しいぞ!
ウキウキ、ランラン、ルンルンルン!
確か、降りる駅は、里賀。
「マオ!そんな荷物持ってどこへ行くの!?」
この子は、クラスのめんどくさい学級委員長、大堀沙矢子。
慣れなれしく、マオって呼んでくるのよねぇ。
呼び捨てで。
「大堀さんこそ、大きな荷物持ってどうしたの」
もしかして、家出?
ちょっと答えを楽しみにしていると、大堀さんはため息をついた。
「お母さんとケンカしたの。私、家に帰りたくない」
あら、家出じゃない。
ちょっとクスッっと笑ってしまうと、大堀さんは怒った。
そりゃ、イヤだよねぇ。
私なんかに笑われちゃあ。
「マオはどうしてなのよ」
「家出。親戚の家行くの」
大堀さんも、クスッっと笑った。
何か、いい気分じゃないね。
でもさ。
大堀さんがイヤだったなら、私に笑わないでほしいな。
「同じ家出ね。私も親戚の家行こう」
大堀さんのことは知らないけど、親戚の家行くなら、私も親戚の家に決定。
ところで私、どこで降りるんだっけ?
「次は、籠尾ー、籠尾ー」
駅マップを見ると、里賀は過ぎている。大堀さんの、バカァ!
4.第二の人生?
何とか里賀に着いた。
大堀さんは、籠尾に降りたんだ。
内心焦ったよ、ホント。
でも、籠尾で降りて、里賀に戻る。
時間ロスだったね、ふんっ!
麦わら帽子を手に、叔母さん家へ向かう。
夏休みってことあって、やっぱり暑いなあ。
ドアフォンを押すと、叔母さんが優しい顔で出てくれた。
「どうしたのマオちゃん。連絡なしで私の家に来て」
私は、叔母さんに、今まであったことを伝えた。
電車降り遅れ事件もね。
「マオちゃん、大変だったわね〜。どうぞどうぞ、上がってちょうだい」
叔母さんに手を引かれて、叔母さんの家に上がった。
あ〜、いい匂い。
蚊取り線香もあって…!
なんて和なのっ!
「お願いなんですけど、私のこと言わないでください。ママやみんなに。私を、羽折にしてください」
羽折って言うのは、叔母さんの名字。
もう、いっそのことここに住んじゃおうかしら。
すごく楽しそうだわ、ランっ!
「マオちゃん、乗ったわ。家ではマオちゃん。外ではミオちゃんでどう?」
「うん、私、羽折ミオになる!」
別の生活だけど、これでいいんだっ!
叔母さんはにっこり笑った。
学校も、新しくここで通えばいいものね。
テレビをポチッっと付けると、ニュースがやっていた。
「速報です。東京都に住んでいる高野真櫻ちゃんが行方不明だそうです」
ゲッ!
私のことっ!
5.行方不明の高野真櫻
このままだと、学校の子にバレちゃうよね、高野真櫻ってこと。
叔母さんと話し合った結果、私は伸ばしていた腰くらいまでの髪の毛を、元美容師の叔母さんに切ってもらいっ!
視力を落とすことにして、メガネをかけるっ!
するともう別人だぁ!
「いい?マオちゃん。あなたは、羽折美櫻なの。いいわね?」
叔母さんに聞かれて、うなずく。
風邪の子ということで、マスクしながらメガネ屋へっ。
夏だから、髪の毛が縛れないし、マスクしてるから暑いのよ。
ミオの生活、いつまで続くんだろ。
でも、よく考えたら、メガネ買っちゃえば、マスクはいらないの。
ずっとミオでいいけど。
でも、全校出校日に、ポスターとか、作文とか提出しちゃった。
1日マオになっても、いいかも。
それで私は、メガネをかけて家に帰ったの。
在庫をそのまま買ったんだっ!
テレビを付けると、まだ私のことが流れてるっ!
「高野真櫻ちゃんのお母さんです」
キャスターが言い、画面がお母さんに切り替わる。
フラッシュをバシャバシャ浴びてる。
「マオとは、ちょっとケンカをしてしまいました。マオの幼なじみの子のことで。そして、全然マオが部屋出てこなかったものですから、部屋をノックしました。返事がなかったので、寝ているのかと思いまして。私はとりあえず部屋に入りませんでした」
ふん、もうその頃には、私はいませんよーだ。
叔母さんもとなりで観ていて、これからどうしようか検討するの。
「時間が経っても経っても来ないので、謝ろうかと思い、部屋をノックしました。返事はなく、心配で部屋を開けました。そうしたら、マオはいませんでした。家中どこを探してもいませんでしたから、警察へ連絡しました」
ふーん。
もうちょっと、娘の心配したらどうなのよ、ねえ。
今はね、叔母さん家で幸せに暮らしてるのよ(暮らそうとしてるのよ)。
「次は、真櫻ちゃんの幼なじみ、翼君に聞いてみました」
翼も出るのぉ。
めんどくさいなぁ、この番組。
1巻の題名は、
『マオの内緒アート日記 1
消えた画家の日記』
6.転校だっ!
すると、次は翼がバシャバシャフラッシュ浴びてる。
翼って、こういうの好きなのかな。
好きなんだったら、私に感謝しなさいよねっ!
「俺が家の前を通ったら、マオが重たそうな荷物を持っていました。どこへ行くんだと聞いたら、翼には関係ないと言われました。マオは、駅の方へ行きました」
ゲッ!
そこまで言ったら、特定されるじゃないかーっ!
そしてキャスターは、「駅へ行ってみました」と言って、駅が映る。
ドクンドクン。
「重たそうな荷物を持った、高野真櫻ちゃんを見た方いらっしゃいますか?駅員さんに聞いてみます」
すると、次は駅員さんにフラッシュがバシャバシャ!
どれだけ私のニュースやるのよ。
「重たい荷物を持っていらっしゃったお客様は、おふたりいらっしゃいましたので。何とも言えません」
駅員さん、ナイスよ!
このまま、追いかけてくるのを止めてちょうだいっ!
キャスターは振り返った。
「大きな荷物を持った、高野真櫻ちゃんを見かけた方は、こちらまでご連絡をお願いします」
ここで、私気付いたのよ。
大堀さんがいてくれたおかげで、駅員さんで途絶えたんだなって。
大堀さんも、私が乗った駅から乗ったんだね。
バカなんて思って、ごめんなさい。
「マオちゃん。とりあえず、ここの近くの、盆江野小学校へ行きなさい」
ボンエノ小学校。
私、友達出来るかな?
怖くて出来ないかもしれん。
だってさ、友達にバレたら終わりだもんね。
ってほど、軽いことじゃないんだけども。
7.突然女神様っ!
夏休み最終日、8月31日。
みんなが焦る日かもだけど、私はダラダラ、ダ〜ラダラッ!
この前の小学校の宿題なんて持ってきてないし、意味ないもんね。
叔母さんが、羽折美櫻で、盆江野小学校の入学許可を得てくれて、明日から盆江野生、かぁ。
「最近引っ越してきた、羽折美櫻って言います。よろしくお願いします」
近所のみんなにあいさつに回る。
この辺りは、すっごく田舎で、お年寄りがちょっと多い。
だから、小学校の人数もちょっと少ないんだって。
今ごろ、ひなたちゃんはどうしてるのかな。
ひなたちゃんっていうのは、私の親友だよっ!
元の小学校のね。
歌井ひなたって言うんだけど、歌がものすごく上手いの。
感心よっ!
「家の子、盆江野小学校の子なのよ。ミオちゃんと同じ6年生。仲良くしてあげてね」
へ〜。
ここの子も6年生なんだ!
「では、よろしくお願い致します」
あ〜、明日が楽しみっ!
だけど…本当に仲良く出来るかな。
私、どんどん自信なくなってくる。
わーん。
「ミオちゃん。ちょっとっ!」
叔母さんが私の手を引いて、家に帰った。
どうしたの、叔母さん。
そんなに慌てて。
慌てるのは、宿題に追い込まれた子だけでいいのよ。
「大堀さん、家に帰ったんだって。だけど、マオちゃんのことは言わなかった。かばったのよ」
わーん!
感動!
本当に、女神様っ!
バカなんかじゃない、神秘的っ!
「戻るなら、流れに乗って、大堀さんと同じように戻れるけど、本当にいいの?」
「はい」
叔母さんはにっこり笑って、家事に戻った。
「明スイ」や「1%の叶わない恋」も読みました。
この作品も新しいジャンルで面白いですね。
頑張って下さい。楽しみにしています
初めまして!
ありがとうございます!
この言葉が励みになります。
これからも、マオをよろしくお願いします!
まい先生、こっちも読んだよ‼
これからどうなっちゃうの?ドキドキハラハラだよ!
薫先生も目を通してくれたの!?
ありがとうございます〜!
マオねぇ、どうなっちゃうのか。
では、どうぞ。
8.画家デビュー?
翌日、私はニュースを付けた。
朝ごはんのトーストをかじって、ニュースの内容を見る。
『スクープ!行方不明の高野真櫻ちゃん、画家決定!』
へっ?
「今日、画家デビューした高野真櫻ちゃんですが、見つかったら本格的に画家活動をしていく方針です」
え〜!
わたし画家になれるのぉっ!?
ずっと夢だった画家。
帰ってもいいかな?
帰りたい。
正式的に画家になりたいぃ!
「マオちゃん、こうするのよ。まず、テレビに書いてある電話番号にかけるでしょ?それから、私はマオですって言うの。送るのは叔母さんがやるから、それで活動したら?」
うん!
送るのはどうにかしたらいいし、場所も多分バレずに済む!
「叔母さん、ありがとう。私、電話かけるね!」
受話器を握りしめて、おそるおそる電話をかけた。
「もしもし。朝のニュース見ました。高野真櫻です。画家活動させていただいてもいいですか」
「ま、真櫻ちゃんっ?どこにいるの?どうしてかけてきたの?」
「あなたにお答えする必要はないと思います」
私はきっぱり断った。
どうせ、画家デビューってだけでニュースになるのに、そこまで言ったら特定されちゃう。
「真櫻ちゃん、本当に?」
「はい」
「分かりました。では、電話番号を教えてください」
こいつぅっ!
私がかけてるとこ、特定しようとしてるでしょ。
あんたなんかの手柄にしないんだからね、大人のやることも分かるのよ。
フンッ。
「☆★○-●◎◇◆-□■△▲です」
私は、叔母さんの電話番号を教えた。
今日から学校なんだから、かけてこないでよね。
「失礼します」
おおっと。
わたしが切ったら特定される?
そう思って、相手が切るのを待った。
ようやく切れると、ため息。
画家で嬉しいんだけど、ねぇ…。
9.無愛想だけど?
スッっと息を吸い込み、みんなを見回す。
「初めまして。羽折美櫻です。元気が取り柄です。よろしくお願いします」
みんなが拍手してくれて、担任の先生の守口先生を見る。
私の席は、パッっと見無愛想な女の子のとなりだった。
うまくいけるといいなぁ〜。
「私、羽折美櫻。よろしく」
女の子に笑いかけると、その子はちょっとお辞儀した。
礼儀正しいのかな、この子。
でも、そんなのを覆すことをボソッっとつぶやいた。
「そんなの知ってるわよ。さっき自己紹介してたでしょ。私の外見で聞いてないとか決めつけないで」
ヒッ。
そんなつもりじゃなかったのに。
私がシュンとうなだれていると、後ろの女の子が教えてくれた。
「あの子、江ノ島真理。美櫻ちゃんが来ることを誰よりも楽しみにしてたんだよ。ちょっと緊張してるだけだから気にしないであげて」
へえっ!
真理ちゃん、ありがとう!
待っててくれたんだ。
嬉しい〜。
「ちなみに、私は尾原いずみ。ミオちゃんって呼ぶね!」
「うんっ!いずみちゃんって呼ぶね」
な〜んだ。
真理ちゃんいい子じゃん。
私、ここ来て良かったな〜。
あるひとつのことを除いてだけど。
10.変えたいこと
始業式が体育館であって、みんなに着いて行って広いホールへ行った。
ホールの奥へ行くと、体育館がある。
紛らわしいよね、ちょっと。
「ミオちゃん、ここが体育館だよ」
ちょっと狭かった廊下から抜けて、開けた体育館に出た。
盆江野小学校の体育館、狭い。
この前は、結構広かったけど。
いずみちゃんの後ろに座り、始業式が始まった。
自己紹介があるみたいだけど、高野真櫻って言わないようにしなきゃ。
私は、羽折美櫻。
気付けば、校長先生の話だった。
「今日から転校してきた子がいます。自己紹介お願いします」
ドックン。
私は立ち上がり、クラスで自己紹介したみたいに自己紹介した。
「初めまして。私は羽折美櫻です。ミオって呼んでください。よろしくお願いします」
お辞儀すると、みんな拍手してくれた。よく見たら、真理ちゃんも拍手してくれてる。
私と目があった瞬間、すぐにそらされちゃったけど。
耳が赤い。
「座ってください」
校長先生が笑ったので、良かったんだとホッっとする。
始業式が終わり、教室に帰る。
「ミオちゃん緊張しなかったの?」
「しない。私、こういうのすごく慣れてるから」
って言うのもウソ。
私、ずっとこういうの苦手だったの。
でも、マオとミオは違う。
人柄も変えたいし、人を変えたい。
だから、出来るだけ何もかもを変えるんだ。
「ミオちゃんカッコいい。私も、ミオちゃんみたいになれたらいいのに」
「私なんてバカだし、取り柄なんて全然ないよ」
いずみちゃんはそう言うけど、本当。
元気が取り柄ってのはあるけど、自慢は出来ない。
もっとカッコいい取り柄、ほしいな。
あ、学力は上げるつもりよ。
あんまり下でも上でもなかったから、もうこのまま貫くのは無理。
上げてかないと、将来に響くの。
画家だったらいいかもだけど。
国語は結構高いの。
でも、算数が出来ないから低くて、結局真ん中くらいになっちゃう。
これは絶対、変えたいなっ。
11.美術女いずみ
教室に戻って、みんなが宿題を提出している時、私は教科書に名前を書き込んでいた。
盆江野小学校は、ポスターを今日出していた。
遅くない?
出すコンクールが違うのかも。
「ミオちゃん、いずみは盆江野小の美術女だよ!」
いずみちゃんと仲が良いらしい陽香ちゃんが教えてくれた。
へ〜、上手いんだ。
絶対私負けない。
美術だけは、絶対抜かれないんだからね!
いずみちゃんにも譲らない。
「私、すごく美術好きなの。結構前、画家デビューしたの。今年は高野真櫻ちゃんよね」
マオ、私の名前。
私の名前にビクンとしたのを、陽香ちゃんは見逃してなかった。
「高野真櫻ちゃんのこと知ってるの?ミオちゃん」
「うん。友達なの。マオちゃんに絵、もらったことあるから見せるね」
いずみちゃんも、私のこと知ってるんだ。
陽香ちゃんも。
「楽しみ!高野真櫻ちゃんと、勝負してみたいな〜」
いずみちゃん、私だから、勝負しようね、また今度。
秘密は教えられないよ。
いずみちゃんが、ポスターを広げて見せた。
「本当は、交通安全ポスター描いたんだけど、高野真櫻ちゃんのこと聞いてから、ちょっと高野真櫻ちゃんを真似して描かせてもらったの。家庭の日」
それは、昔の私そっくりの子が、お母さんそっくりの人と翼そっくりの人と仲良く話している風景。
懐かしい。
翼のお母さんの帰りが遅いとき、よくこうしてたな。
「高野真櫻ちゃん、早く家に戻らないかな。今のままじゃイヤだなぁ」
私がマオに戻ってほしいの?
ミオでいてほしくないよね。
でも…私の人生はミオだから。
12.外での叔母さん
やっとみんなが宿題を出し終わって、リュックを背負って帰る。
今日は、守口先生からもらったいろんなものに名前書くの。
ちょっとめんどくさいけど、仕方ないよね、もう。
「ミオちゃん、手伝おうか?」
いずみちゃんが何度も言ってくれたけど、こんなにめんどくさいことさせられないもんね。
「ん、いいよ」
リュックにたくさん詰め込んで家に帰る。
表札が羽折で、ちょっと違和感。
「ただいま〜」
すぐメガネを取って、目をほぐす。
痛かったな、目。
叔母さんがリュックの中に詰め込んである荷物を見て驚いた。
「担任の先生はいい人だった?そんな荷物どうしたの?友達はできた?これからやっていける?」
「守口先生っていってね、いい先生だと思うよ。名前書くのをもらったの。友達はできたよ。いずみちゃんって子とか。これから楽しみ!」
叔母さんはホッっとして椅子に座った。きっと、ずっと心配してくれてたのかな。
ありがとう、叔母さん。
「じゃあ、名前を書きましょう。早く済ませた方がいいわ」
叔母さんも手伝ってくれて、全部に名前を書いた。
実は、叔母さんって書道習ってたらしいから、すっごく字が上手いの。
私の下手さが身に染みるっ!
「すみませーん。いずみでーす。ミオちゃんいらっしゃいますかー?」
いずみちゃんっ?
私は、叔母さんにちょっとお願いして玄関に走った。
「ミオちゃん、大変でしょ?手伝いに来たよ!」
「いいってばいいってば。叔母さんが手伝ってくれてるし、」
「あら〜、ありがとね〜!もうそろそろ終わるからいいよ。良ければ、遊んでおいで」
叔母さんが突っ込んでくる。
家に上げちゃダメかもだしね。
いずみちゃんは、「遊ぼ〜」って笑ってくれたから、遊ぶことにした。
「私、荷物持ってくるから、そしたらもう一回来るね」
いずみちゃんが帰って、叔母さんが私の手を握る。
「マオちゃん、叔母さんは、外ではお母さん。叔母さんって言わない」
「はい、ごめんなさい」
叔母さんは、私にカワイイカバンを渡してくれて、私は家を出た。
13.翼あらわる!
いずみちゃんととなりに立って歩く。
行きたいところがあるんだって。
私としか行けないところ。
陽香ちゃんもいないし、相当だと思っていたら、駅だった。
「真櫻ちゃんが描いた作品を観るの。通ってた学校へ行くから」
いずみちゃん…私、バレる。
だって、だって…。
ずっと長い付き合いの人ばっかり。
髪の毛切ったって、眼鏡かけてたってバレるに違いない。
翼とかにはバレないかもだけど。
だってね、学校で私じゃない人に「マオ」って呼ぶのよ。
ひどいよねえ。
「いずみちゃん。マオちゃんが、私のことを間違えて羽折だから、ハオミって呼んでて。みんなハオミって言ってるから、ハオミって呼んで」
いずみちゃんは、騙されずにオーケーしてくれた。
違和感あるな〜。
ウソに、ミオに、ハオミ。
電車に乗ったすぐから、いずみちゃんは「ハオミちゃん」って呼んでくれてさ。
私って悪いヤツって思ったよ。
「確かここ。ハオミちゃん、ねっ」
「うん。ここで間違いない」
ああ、私の家に近づいてく。
小学校へ行くんだ、小学校へ。
すると、後ろで肩をポンポン叩かれたんだ。
翼に。
「お前ってどこのヤツ?」
「ちょっとあなた、女の子に言い方悪くない?初対面なのに」
いずみちゃんが、翼から私をかばうようにグイと前に出た。
すると翼は苦笑。
「お前には言ってねえ。コイツ。初対面じゃねえだろ」
え…?
耳元でこっそり言われた。
「お前マオだろ。バレバレ。世間に出されたくなかったら、眼鏡外して俺ん家来い」
いずみちゃんに手首を引っ張られて、通っていた小学校へ行く。
久しぶりだな、ここの道。
「あの子嫌な子だったね。女の子に失礼な」
「うんん。ハオミって知ってたけど、なんか名前をマオって言ってて」
「え…?」
いずみちゃんがゆっくりこちらを向く。ここで言うか。
隠し通すか。
やっぱり___。
「私、マオちゃんと顔似てるの。とっさのことで混乱したみたい」
「ふーん」
いずみちゃんは、面白くなさそうに校門をくぐった。
14.マオ室!?
職員室を訪ねる。
あ、担任の先生の悠先生じゃん。
指輪してるってことは、結婚したんだねっ!
おめでとう!
「マオさんっ!?」
こっちでもマオ…。
職員室の先生は、ドッっと私たちを囲んだ。
いずみちゃんが前に出る。
「この子、マオちゃんじゃないです。マオちゃんの友達の、ハオミちゃん。ちょっと顔が似てるだけです」
すると、先生たちは「なーんだ」と言いながら椅子に座った。
悠先生にわけを話して、図工室に案内してもらう。
…本当に懐かしいな〜。
思わず涙が出そう。
「いちにのさんはいっ!」
「一球魂一生捧げる」
あ、野球部の声だ。
ここの小学校オリジナルの掛け声。
ちょっとダサいかもだけど。
「すごく元気なんですねえ」
いずみちゃんがつぶやく。
悠先生は、誇らしげにグラウンドを指差した。
「ここの様子を、マオさんは描いてたの。その作品も見せるから」
私が描いた絵、か〜。
図工室に着くと、いずみちゃんも私もすごく驚いた。
正しく言い直すと、図工室じゃなくてマオ室かも。
私の作品の、ありとあらゆる絵が壁いっぱい…天井にも貼ってある。
「マオさんの絵を展示したの。見本になるし、本校の誇り。それに、早く戻ってほしい願いの表しよ。マオさん、ここに来てほしいわ」
悠先生は、肩を下ろして言った。
私、マオ、ここにいるよ。
気付かないだろうけど。
「ハオミさん、マオさんの友達なんでしょ?話せる機会があれば話してね。悠先生って言ってちょうだい」
私はにっこり笑い返した。
悠先生のこと、みんな葉山先生って呼んでたけど、私だけ悠先生だった。
ちゃんと覚えててくれてたんだ。
私は、悠先生が担任をしてくださったことを、改めて誇りに思った。
15.好きっ?
小学校を出ると、いずみちゃんは感嘆な息を漏らした。
「マオちゃんすごすぎ。私じゃ抜かせないよ」
「うんん。きっといずみちゃんの方が上手いって」
いずみちゃんはブンブン首を横に振りながら笑った。
ぼやかしてるのかな、泣いてるの。
私気付いたのに。
いずみちゃんが、私の絵を見て涙を浮かべたの。
しっかり見てたから。
きっとミオでもない、ハオミでもない。マオである私に届いたよ。
「マオ」
「またあの男」
いずみちゃんが涙をぬぐう。
翼が歩み寄ってきた。
そして、私の頬を思いっきり叩いた。
「アンタねぇ、いい加減にしなさいよね!ハオミちゃんがかわいそうよ!」
「お前は関係ない」
「あるっ!」
私はいずみちゃんの前に立つ。
絶対に関係ある。
翼の方が無関係でしょ!
思いっきりにらみながら吐き捨てた。
「マオちゃんって子が好きなら告白したら!?」
「じゃあ止まれよ」
はっ!?
急に何を…。
翼はガッシリと肩を掴むと、一気に私を抱き抱えて翼の家へ連れていかれた。
「ハオミちゃんっ!」
「いずみちゃん!」
翼は、ゆっくりドアを閉め、カギをかった。
そして、こちらをにらむ。
「マオ。ハオミじゃないお前が好き。恋愛じゃないよ。幼なじみの」
翼は、まっすぐな瞳で見つめてきた。
16.お互い頑張れ!
バカじゃないの、翼。
私は、思いっきり払い除けた。
「幼なじみじゃないでしょ。私はマオちゃんの友達のハオミ!」
「マオだって言わなきゃ世間に出してやる。どう?」
翼はジットリ見てきて、ニヤニヤ笑う。もぉーう!
そういうやり方なくない!?
「お前はマオ?」
「う…ん」
私は、眼鏡を外して、マオの時の笑顔を見せた。
すると、翼はニッっと笑って、髪の毛をクシャッっとした。
「ハオミ、頑張れよ!」
認めてくれてる!?
私は、嬉しい気持ちで翼に笑いかけた。サッカー少年のコイツ。
なかなかの腕前なんだよね。
「翼もサッカーファイト!」
私は、翼の家を、ブスッっとした顔で出てきた。
バレないようにね。
いずみちゃんは、心配げな顔で駆け寄ってきた。
「大丈夫だったっ?」
「うん、まあ。もう帰ろ」
いずみちゃんの手を引きながら電車へ向かう。
ふと、頭をマオがよぎった。
いずれは話さなくてはならない私の物語。
絶対話さなきゃ、だよね。
私は、暗くなり始めた空を見上げた。
17.今日も調査
翌日の朝。
世間にマオが無事であることが流れ、ニュースで取り上げられた。
土曜日だったから、いずみちゃんたちに会わなくて済むけどさ。
ため息をつきつつ、お茶を飲む。
すぐ気付かれそう〜。
「真櫻先生には、内緒の仕事部屋でのアート活動ということで、活動していくとのことです」
真櫻先生だって〜!
私の名前の後に先生ついてる〜!
つい舞い上がる。
すると、叔母さんがトーストを乗せたお盆を持ってリビングに来た。
「ついに取り上げられたわね。担当の人は、上原さんって方らしいわ」
絵を描くのに担当いる?
ほら、例えばだけど、ピカソとかみたいな、自由に描くことは無理なの!?
「すみませーん」
ビクンとする。
この、ちょっと高い声。
昨日から何度聞いたことか。
玄関に出ると、予想通りいずみちゃんがいる。
「朝からごめん、ミオちゃん。マオちゃん活動するんだね。ちょっと調べたいことがあるの。付き合ってくれないかなって」
私のことを調べられるの?
そう考えると、ドクドクと早く脈打つんだよぉっ!
いつバレるかってゾ〜クゾク!
「いいよ。ちょっと待って」
急いで準備して、いずみちゃんと美術館へ行く。
わたしが出した絵が飾ってあるんだって。
叔母さんは、渋々オーケーしてくれた。ごめんね。
こんなことばっかり言って。
住まわせてもらってるのに。
「マオちゃんがとった賞ね、去年私がとったの。同じ活動すると思うな」
「いずみちゃんすごいね」
首をブンブン横に振るいずみちゃん。
いずみちゃんがすごくなかったら、世の中の全てがすごくないよ!
そう思いつつ、電車に乗って、『海王美術館』へ。
結構有名らしいけど、聞いたことないな〜。
「ここよ。来てっ」
私は、思いっきり手を引かれて美術館へ入った。
18.似顔絵と占い
海王美術館のすぐそこに、『高野真櫻アートコンクール優勝作品』というのが飾られている。
いずみちゃんは、絵をジーッっと見つめながらメモをとる。
こんなことされたらヤバイ!
「いずみちゃん、ちょっと向こう見てきていい?」
焦りながら聞くと、疑り深い目でジロジロ見てきた。
「ミオちゃんの仲良しの子でしょ?マオちゃんって。なのに見ないの?」
痛いところをつかれて、ウッっとうめきそうになる。
確かに見た方がいいかも。
でも、ここまできて引き下がれない。
考えていると、いずみちゃんはメモに集中し始めた。
「ちょっと、向こうに変わったのあるから見たいな〜なんて」
いずみちゃんは「いってら」とつぶやいた瞬間、メモをビリッっと破く。
当分終わらないな。
別で時間潰しとこ。
その辺をブラブラ歩いていると、変わった絵描きさんがいた。
『似顔絵1分10円で描きます』。
やってみようかな。
お金を10円出して、絵描きさんに手渡す。
「お願いします」
絵描きさんはにっこり笑って、ゆっくり手を動かして似顔絵を描く。
特徴をしっかりとらえてくれたらいいんだけど。
「出来ました。ありがとうございました!」
もらったのは、あんまり私っぽくない似顔絵(?)
10円くらいだし、まあいいや。
似顔絵を抱えて、描いてもらったところの近くにあるお店を見る。
美術館ってお店あるんだ。
「いらっしゃいませ。似顔絵の特徴を占います」
おおっ、占い!?
私、占いって大好き。
未来が見えるもん。
すぐに占ってもらった。
100円で。
「あなたは、美術の能力を持っています。高野先生に似ている。親戚かな」
高野先生…。
また先生ついてる。
それに、私が私に似てるって…。
「きっと未来は画家ですね」
うーん、多分今それかな。
未来も続けられるみたいでホッっとしつつ、他にもお店がないか探した。
んだけど、なかった。
特別なのかな。
私は、ゆっくりいずみちゃんのいるところへ戻った。
19.アート活動のスケジュール
いずみちゃんはまだメモをとっていて、真剣だった。
ゆっくり近寄る。
「あの、いずみちゃん。どう?」
「マオちゃんの絵は繊細。私も真似したいから書いてるの」
メモしていることは、私を探ることではなくて、絵を探ること。
ホッ。
っとなんてしてられない。
美術だけは誰にも負けたくないのに、私は学校の美術どうしたらいいの!?
いずみちゃんに負けたくない。
でも、同じタッチの仕方だとバレちゃう!
美術楽しめなくなってきたー!
「終〜わり。私は帰れるよ」
私も、早くその場を離れたかったので、すぐ駅へ向かった。
いずみちゃんは、メモを見ながらニヤニヤしている。
「きっと、美術の成績もっと上がる」
私の参考になったんだ。
良かった。
いずみちゃんはメモをしまって、スケジュール張を出した。
「明日、高畑さんからスケジュールもらえる〜」
「何の?」
いずみちゃんはスケジュール張を開いて見せてくれた。
9月分のスケジュールが書かれている。アート活動の。
「ちょっと貸して」
見ると、いろいろな仕事があった。
『ヴァイオリニスト』の絵。
自らの絵。
海王コンクールなど。
私もこれが出来るんだ〜。
「ヴァイオリニストって知ってる?児童文庫の小説の。それの絵、私だよ。アート活動での名前は、まだ内緒」
へ〜。
わたしは何て名前にしよう。
マオ、ミオ、ハオミって。
名前いっぱいあるし。
めんどくさいことになっちゃった。
「電車きた」
いずみちゃんが指差した電車に乗って、カンカン照りの真夏日。
涼しい時間を過ごした。
20.私のスケジュール!
家に帰ると、叔母さんがカワイイスケジュール張を持っていた。
それに、アート活動のスケジュールの紙も。
「FAXで届いたわ。スケジュール張買ってって言われたから、カワイイの買ったけど、いい?」
「ありがとう、叔母さん!」
新品のスケジュール張を握って、9月のスケジュールを書き込む。
ええっと、いずみちゃんもあった!
『海王コンクール』!
『女優の似顔絵コンクール』!
このふたつしかない。
いずみちゃんは多いのに。
ちょっとしょんぼり。
すると、叔母さんが肩に手を置く。
「初めだけよ。きっとマオちゃんならすぐ儲かるわ。いずみちゃんは、忙しいようで、あんまり名前知らないでしょう?でもね、マオちゃんと同じ賞をとったノンノンは?」
ノンノン先生も!?
ノンノン先生と言えば、アート界の女王と言われている。
いずみちゃんは、ごめんなさいだけど知らなかった。
でも、ノンノン先生は最強。
「マオちゃんも、ノンノンみたいになれるわよ」
なれるといいけどね。
まだ初めだもん、ねっ!
急に出来たりしないもんね。
それよりも、前の学校に出したポスターだけど、よくコンクール出してくれたな〜。
そのおかげで、よくここまでこれた。
ちょっとニヤニヤしながら、スケジュール張にペンを走らせた。
21.海王コンクールへ
スケジュールに間に合うように、海王コンクールに出す作品を描く。
お題はないから、風景を描くの。
『私の家の庭』ってところかな。
でも、ちょっと変えるよ。
いずみちゃんが家来たらバレる!
「叔母さん、バケツ取って〜」
慌ただしく動き回る叔母さん。
床の間にかけてある絵をちょっと真似する。
立つと崩れたくないから、全部叔母さん任せ。
ごめんなさい。
私、自分のことしか考えてなくて。
でも、家のお金は私が稼ぐ。
一生懸命描いた。
今日から活動頑張るぞ!
「マオちゃんどうぞ」
バケツをくれて、筆をバケツに浸す。
絵の具が、バケツにたまった水にじわじわ浸透する。
美術ってこういうところいいよね。
つくづく思う。
「マオちゃんお茶飲む?」
「お願い!」
叔母さんにまたもお願いする。
でも忘れて、しっかり絵に集中!
お茶を運んできてくれて、ズズッっとすする。
うまい!
私は筆を握って、絵の具をたっぷりつけた。
そして、ゆっくり葉っぱに筆を近付ける。
タッチした瞬間、私はふふっと嬉しくなった。
(つづく)
あとがき
初めまして!
『マオの内緒アート日記』いかがでしたか?
数々の名前を持つマオちゃん。
もはや、なんと呼べばいいのか…。
怪しげないずみちゃんも、大切な私のキャラクターです。
注目してあげてくださいね。
皆さんは、美術得意ですか?
私は、テストは無理です。
ですが、授業はそこそこ出来ます。
Aなどはよく取れます!←自慢
でも、テストは平均点取れない。
恥ずかしい限りです。
美術に限らず、エピソードありましたら教えてくださいね。
最後になりましたが、お礼。
ここまで呼んでくださったあなた!
本当に本当にありがとう。
すごく嬉しいです。
これからも、ご支援お願いします。
読んでいない皆さんも、途中からでも大丈夫です。
目を通してみてください。
では、次回会いましょう!
マオちゃんと成長したい岬
☆次回予告☆
ついに海王コンクール!
ノンノン先生もいずみちゃんも出す!?
マオちゃんの結果は、いかに…!
★マオのアート日記裏話★
マオ>やっほ〜!
いずみ>ミオちゃんテンション高っ!
マオ>えへへ〜
いずみ>それにしても、あの男の子何なのよ!
陽香>あの男の子?
いずみ>あっ、陽香ちゃんは行ってないから知らないよね
マオ>ちょっと私に話しかけてきたの。初対面なのに
いずみ>失礼なこと言ってさ
陽香>ミオちゃんタイプとか?
いずみ>ある〜
マオ>ないからっ!
陽香>本当?
マオ>もうこの話終わりぃっ!
陽香>もう
いずみ>ま、いっか
ミオ>バイバ〜イ!
以前にも協力していただいたのですが、ユニコーンです。
読書板に『マオの内緒アート日記』を載せてもよろしいでしょうか?お返事お待ちしています。
ぜひぜひ!
よろしければ、こちらも読んでくださったら嬉しいです!
>>33
いつもご協力ありがとうございます。
頑張ってください。
いえいえ。
こちらこそ紹介もかねてありがとうございます。
トリップ変えました。
『マオの内緒アート日記 2
コンクールは事件祭!?』
主な登場人物
高野 真櫻
美術が好きな小学6年生。
ミオとハオミという異名を持つ。
画家デビューした。
尾原 いずみ
去年画家デビューした。
マオの同級生。
江ノ島 真理
マオのとなりの席。
地味だけど楽しみは人一倍。
1.今日も美術!
今日も筆を握る。
そして、真っ白で綺麗な画用紙に、黄色の絵の具がたっぷり着いた筆を。
ボチョッ
バケツに筆を寝かせる。
これで絵は終わり!
たった一本の黄色の線。
作品はこれだけ。
名前に、『真櫻』と記入。
私の名前は高野真櫻。
って、言えたらいいんだけど。
ここでは羽折美櫻。
実家の方ではハオミ。
詳しくは、『消えた画家の日記』を読んでね!
先日、画家デビューしたのです!
大好きな美術と元気が取・り・柄。
すると、私の絵を見た叔母さんが悲鳴を上げた。
褒めてくれるのかと思ったら!
「何この作品。もったいないわ」
「これ、私の人生を表してるの。ずっとまっすぐ突き進んでた」
叔母さんは、それでも首を横に振る。
確かにもったいないと言われてもおかしくないよね。
たった一本の線だもん。
「書き直します」
画用紙を風の当たるところに干し、テレビを付ける。
ちょうど美術番組がやっていた。
いずみちゃんも観てるかな?
いずみちゃんは、私より先に画家デビューした子。
盆江野小学校では、美術女って呼ばれてるとか。
「コンクールに出せる作品以外、書いても意味ないわ」
うーん、そうだけど…。
名前変えました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2.山王コンクールに出品!
翌日学校へ行くと、ある話題で持ちきりだった。
「やっぱりいずみんの絵、すごい!」
声を上げたのは、笹山さん。
いずみんって呼び方、カワイイ!
となりで陽香ちゃんがつぶやく。
「さすがだね、いずみちゃん。海王コンクール?にも出すけど、山王コンクールにも出したってよ」
何そのコンクール。
私も出したかった〜。
もしかして、スケジュール張に描いてあった?
…いやいや、海王コンクールしか。
担当の人が、ひとつにしてくれたのだろうか。
わざわざそんなことしなくていいのにさ、もう。
「結果は、来週出るらしいよ」
だいたい結果読めてるだろうね。
いずみちゃん、私の絵とか研究してたしね。
いつも一緒の陽香ちゃんまで笑いながら言うんだし、優秀賞かも。
「ねえねえ、いずみん。私の似顔絵描いてちょーだい!」
笹山さんが言うと、辺りは急ににぎやかになった。
「私も〜」「可愛くね!」「部屋に額縁入れて飾るから〜」。
そこまで!?
私も言われるくらい頑張ろ。
とりあえず席につき、絵を描き始めた。
3.気まずい空気
すると、いずみちゃんは周りを囲っていた子たちを退けて、私の絵を見る。
囲っていた子たちも、私の絵を。
みんなたちまちのうちに目を奪われていった。
「ちょっとちょっと。いずみんと同じぐらい上手いじゃん!」
「美術女上回るんじゃない?」
「ありがとう〜」
笹山さんと飯塚さんが囲ってくれて、いずみちゃんと陽香ちゃんも見てくれた。
次期には、女の子みんなが私の絵に見いっていた。
「鉛筆のタッチが上手いね。薄いところ、濃いところ。消しゴムの使い方も綺麗」
いずみちゃんが言った瞬間、男の子までもが私の机を囲う。
は、恥ずかしい。
正直、絵を観られるのは、心を観られたみたいで恥ずかしい。
「羽折うめぇ!」
「いずみより上手いんじゃね!?」
「美術女じゃん!」
みんなが私を褒めてくれて、ひとり悲しそうな顔の子、いずみちゃん。
自分は美術女って言われるくらい得意で、好きで画家なのに。
本当は画家だけど、まだ知らない私に座を取られるとか。
「いずみ頑張れよ〜!」
「おいおい!」
いずみちゃんは、ギュッっと服のすそを握って、下を向く。
陽香ちゃんが、いずみちゃんをかばいながら前に出る。
「いずみちゃんがかわいそうよ!」
「確かに…ごめん、いずみん」
もう、この空気なんなのよ〜!
4.美術に対する思い
すると、いずみちゃんは立ち上がって私の手首を掴んだ。
「ちょっと来てくれる?」
答えを言う前に、いずみちゃんは教室を出て、屋上へ向かった。
階段を歩く足取りが重たい。
ちょっと怪しいと思われてるかもしれないし、何を言われるか!
屋上のドアを開けると、風がビューッっと吹いた。
「ねえ、ミオちゃんってさ、美術がただ好きなだけ?コンクール出したりしてない?」
いずみちゃんに両肩を掴まれて、自由に動けなくなる。
私はコクコクとうなずき、いずみちゃんは手を離した。
「私さ、ずっと前から美術女って呼ばれてて、学年を越えて有名だったの。だけどミオちゃんが来て、私の座を取られた気がする」
「私は、いずみちゃんの方が美術女だと思うけどね」
いずみちゃんは私を見つめる。
こんなことを言うのもなんだけど。
息を吸って、私も見つめる。
「私は美術が大好きで、マオちゃんが大好き。マオちゃんの絵が、好き。私もあんな絵を描きたい。だから、らくがきで描いてるだけ。いずみちゃんみたいな、美術に対する情熱はないからさ。美術女じゃないよ」
強く、はっきり言った。
私は私の絵が好き。
本当の私の絵が描きたい。
それを、上手く名前を当てはめたつもりだけど…。
いずみちゃんはにっこり笑った。
「マオちゃんの絵上手いもんね。ミオちゃんに座を取られてなくて嬉しい」
いずみちゃんは屋上を出て、階段を駆け降りた。
そのまま教室へ向かう。
情熱がないとか言ったけど、誰にも負けない情熱、あると思うな〜。
風が吹く屋上で、ちょっと思った。
5.いずみちゃんのトラブル
教室に帰ると、真っ先に陽香ちゃんが飛ぶように走ってきた。
「いずみちゃん大丈夫だったっ!?」
「もちろん。やっぱり美術女はいずみちゃんってことで」
陽香ちゃんはほっとした表情をして、微笑んだ。
私も内心ほっとしてる。
だって、バレたかと思って怖かったんだもん。
すると、陽香ちゃんはゆっくり口を開いて話し始めた。
「いずみちゃんね、一度美術女の座を取られたことがあるの。ミオちゃんみたいに美術がすごく上手い子が転校してきてね」
そうだったんだ。
じゃあ、ちょっとトラウマなのかも。
そのまま陽香ちゃんは続ける。
「その子は、まどかって子なんだけど、知ってる?いずみちゃんの一年前に画家デビューした子」
その子なら、知ってる。
夏休みの課題ポスターで画家デビューした私だけど、いずみちゃんもまどかさんも同じデビューの仕方。
ふたりとも、このコンクールに出してデビューしたんだ。
「まどかが私と仲良くなって、自然にいずみちゃんも一応仲良くなったんだけど、いつになっても親しくならなくて。美術女がまどかだったの」
取られたんだ、美術女の座。
陽香ちゃんはちょっと笑って、いずみちゃんの元へ駆け寄った。
もう、まどかさんの話は終わり。
私もふたりの元へ駆け寄った。
「何話してたの〜?ミオちゃん!陽香ちゃんが教えてくれない」
「え〜、内緒」
そうつぶやくと、いずみちゃんが私を思いっきりにらみつけてきた。
すっ、すごい迫力。
ちょっと怖くて後ずさりする。
「質問、いいかな?ミオちゃんって、どうして私たちといるの?」
「え…?その…席が近くて…話しかけて…くれた…から?」
陽香ちゃんは、いずみちゃんと私の顔を交互に見ている。
思わずゴクリとつばを呑み込む。
「だよね〜。私たちがいなかったらどうしてたと思う?」
「いずみちゃん、こうして私たちといるから、そんなこと分かんないよ。いいじゃんそんなの」
陽香ちゃんがかばってくれたけど、いずみちゃんは無視。
目にも止めていなかった。
「ねえ、聞いてるんだけど!」
教室はシーンとなる。
いずみちゃんはそんなこと気にしない。私は、怖くて目をつむった。
「いずみちゃん…!」
陽香ちゃんが叫び、周りの子たちがどうしたの?と聞いてくる。
いずみちゃんは全てを話し、仲間をたくさん付けていた。
「羽折さん悪くないって!いずみちゃんひっどーい」
私の味方をしてくれてる子もいる…。
何でこんなことしてるの…?
私は困り果て、しゃがみこんだ。
6.陽香ちゃんの怒声
「大丈夫!?羽折さん…。ちょっと、いずみちゃん謝りなよ!」
「やっ、やめてっ!」
陽香ちゃんがいずみちゃんの後ろから出てきて、思いっきりいずみちゃんの頭を叩いた。
「みんなバカすぎる!いずみちゃんなんてもっともっとバカっ!内緒何でダメなの?私、いずみちゃんにウソつかれたり、内緒なんていっぱいじゃん!どうしていずみちゃんが言えるの!?」
陽香ちゃん…。
私はその場にいられなくなり、私の味方の子の間を通って教室を出た。
どうして、内緒がこんなに大きく発展するの?
意味分かんないよっ!
いろんな教室の前を走り抜け、上靴のまま外へ。
「羽折さぁーーーーんっ!」
クラスメイトの誰かの声が聞こえるけど、振り向かずに走り続けた。
今さら、誰かと会う気もなかった。
そのまま家へ走る。
「あれっ?マオちゃん?って、どうしたの!上靴のままじゃない!」
叔母さんは、私の部屋に入ってきて、背中をさすってくれた。
私に、バチが当たったんだ。
逃げてきたんだから。
ずっと自分から逃げてる。
お母さんたちからも、逃げて…。
「どうしたの?荷物は?何で上靴のままなの?何で泣いてるの?」
「…」
何も言えない。
だけど、叔母さんに一言言えることがあった。
「今までありがとう。逃げてきたときも、保護してくれて。こんなことになるなんて思ってなかったっ!」
お金を持って、上靴のまま駅へ走り抜けた。
内緒にしただけなのに…!
いずみちゃんの…バカっ!
7.私の決心
電車に乗って、家へ帰る。
私の、本当の家に。
もう、こっちで過ごそう。
向こうに行ったのが悪かったんだ。
そもそも、家出してきたから。
うんん、違う。
家であったことが悪いんだ。
お母さんが…。
「君、中学生?上靴のままだけど、どうしたの」
車掌さんに声をかけられたけど、気にしないでいいとだけ伝えた。
ただただうつむく。
何度か、叔母さんの家にもお母さんかや電話がきた。
私が来ていないかって。
もうかかってこなくなったけどね。
あきらめられたのかな。
捨てられたのかな?
そんなことを考えていると、もういつもの駅に着いた。
「降りなくちゃ」
電車から降りて、家への道を歩く。
家の表札に『高野』と書かれている。
家に帰ってこられた…。
ドアをガチャッっと開ける。
「お母さんっ!」
ちょうど玄関のすぐそこの廊下の掃除をしていたお母さんに呼びかける。
お母さんは、一瞬目を疑うようにして見てきた。
「マオなの…?マオよね」
「そう。マオ」
『盆江野』そう書かれたジャージを見て、きっとお母さんは、叔母さんの家に行ったんだと察したんだと思う。
「とりあえず、リビング来て」
優しく包み込むように握ってくれた。
お母さんの温もり。
すごく温かい。
リビングのソファーに腰かける。
「マオ、叔母さんにお世話になったのよね。お礼言った?」
「もちろん」
お母さんは、ちょっとホッっとした顔をして、私の隣に座った。
そして、一枚の新聞を広げた。
「ここに書かれているのは、画家デビューした高野真櫻、行方不明事件。いつか見つかったら捨てようと思って」
その新聞をビリッっと破り、ゴミ箱に思いっきり捨てたお母さん。
この日を夢見てた、のかな?
「ごめんね、マオ。お母さんが、翼くんって言ったから。ごめんね…」
「ごめんなさい、お母さん」
私は涙をティッシュで押さえた。
ずっと我慢していたものが。
全て出た感じ。
マオとミオを違う人に。
ずっとやりたかったことを変えてきた今までの生活。
こんなに辛いことはない。
「マオはどうしたいの?叔母さんのところに戻りたいなら、戻ってもいいんだよ。もう、マオの好きなようにしなさい」
「私は…」
ピンポーン
お母さんが席を立つ。
きっと、隣のおばさんだろう。
おしゃべりが長くなるよね。
久しぶりに部屋へ行こう。
階段へ足を傾けると。
「おい、マオ」
「翼?タイミングいいね」
あの、ハッポースチロール呼びしてきた翼…なはずだけど。
変わったよね、翼。
がっしりしてて、男の子って感じがする。
「やっぱり、お前ってハッポースチロールだよな。弱い。逃げてばっか」
逃げてばっか。
その言葉に、強く打たれた。
私、どうするのか決めた。
もう迷わない。
「私、盆江野に戻る。謝って、仲直りして、お礼伝えれたら、帰ってくる」
お母さんは、目に涙をためてうなずいた。
翼もニカッっと笑う。
いずみちゃんと、絶対仲直りする。
もし、イヤなことを言われても。
「じゃあマオ、おこづかい」
お母さんの手に握られていたのは、私にしては多めのおこづかい。
だけど、これで頑張れってことだ。
「翼!またね!」
翼は手を上げて、家を出ていく。
お母さんの車で叔母さんの家へ。
私には、迷いの『ま』の字も存在していなかった。
8.支えてくれる人
叔母さんの家には、いくつかの靴が散らばっていた。
中には、いずみちゃんと陽香ちゃんの靴もあった。
「すみません、ちょっと」
お母さんが叔母さんを呼ぶ。
まだ泣いている私の代わりに、お母さんが私の意思を伝えてくれた。
「了解しました。まだ、ミオちゃんのままでいこうかしらね」
「ミオ?」
「私のふたつ目の名前。羽折ミオ」
お母さんは笑って帰っていった。
一番私を支えてくれる人。
どうせ、私のことなんてって思ってたけど、お母さんだったんだ。
「ミオちゃん!」
居間に入ると、すぐに陽香ちゃんが声を上げる。
いずみちゃんはこちらを見てくれないけど、来てくれたんだ。
「ごめんなさい、みんな!」
私は、まずペコリと謝った。
陽香ちゃんは「いいんだよ」と体をまっすぐに直した。
「私が身勝手な行動を取ったから、こんなことが起こっちゃって」
私は、何度も何度も謝った。
いずみちゃんが振り向いてくれるまで。
9.いずみちゃんの気持ち
陽香ちゃんは「ミオちゃんが謝ることないよ」と背中をさする。
…確かに、私はそんな必要ないのかもしれないよね。
だけど、いずみちゃんが振り返ってくれなきゃ…!
「いずみちゃん!もう一度、話してくれない?私、仲直りしたいの!」
お願い、いずみちゃん。
私の気持ち、届いて!
やがて、いずみちゃんと陽香ちゃんの他に来ていた手塚さんと七原さんが口を開いた。
「私思うんだけど、いずみちゃんもめんどくさいって言うか、グチグチ言い過ぎだと思う」
「それもあるけど、羽折さんもしつこくない?いずみちゃん嫌がってるのに取り入ろうとしてさ」
七原さん、そう思うの…?
しつこくしてたなんて…。
いずみちゃんも、手塚さんの言葉に口を紡ぐ。
「気にしなくていいの。羽折さんは何にも悪くないんだから」
手塚さん…。
本当に私は何にも悪くないの?
いずみちゃんが、家に来た理由って、やっぱり…!
「もうよく分かんないよ!ミオちゃんはとりあえず離れて!一緒にいるとイライラするのよ」
いずみちゃん…っ!
何でそんなこと言うの?
ついに、私は涙を流してしまった。
みんなの前で。
「イライラするとか、本人の前で言うの、最低だよ!」
手塚さんがいずみちゃんに怒る。
こんなままじゃ、ダメだけど。
でも、今は何もできない…。
「悪いけど、帰ってくれる?」
これでいいんだ。
いずみちゃんはすぐに荷物をまとめて家を飛び出す。
それを七原さんは追いかけた。
陽香ちゃんと手塚さんは「いずみちゃんと気まずいよね。明日、学校で待ってるからね」と言う。
私のこと、そんな風に思ってくれる友達がいるんだ…!
翌日の朝。
重たい足取りでランドセルを背負って学校へ向かった。
上靴を持って、新しい靴で。
いつも履いてた靴は、学校だから。
「あ、羽折さん!」
手塚さんだ!
陽香ちゃんもいる。
思ってた通り、いずみちゃんと七原さんはいなかったけど。
10.友達!
陽香ちゃんと手塚さんと教室に行くと、クラスの子たちが遠い目で見てきた。
ちょっと、いずらい。
その中心にいたのはいずみちゃん。
もしかして、嫌がらせ?
「気にしなくていいの。いずみちゃんなんて、自分が一番だったら何でもいいんだから」
手塚さんがそっと耳打ちする。
その性格、大変…。
そう思っていると、江ノ島さんがズンズン歩いてきて叫んだ。
「羽折さんのバカッ!どれだけ真理を心配させたと思ってるの!」
クラスがシンとなる。
江ノ島さんはハッっとして、口元を押さえて教室から出ていった。
「ちょっと待って、江ノ島さん!」
ここから先は屋上だ!
屋上に着くと、江ノ島さんが体操座りをして顔をうつ伏せていた。
「羽折さんが飛び出したから、真理が一番初めに追いかけたの。だけど、羽折さんの家知らないし、足遅いから見失ったの。心配かけすぎよ…!」
「追いかけてくれて、ありがとう」
江ノ島さんはハンカチを目元に当てながらつぶやいた。
「羽折さんと仲良くなりたいの…」
「私も、江ノ島さんと友達になりたいよ!こんな子いないもん!」
江ノ島さんは、にっこり笑って屋上を出ていった。
良かった、こんな子が盆江野小学校にいてくれて。
もちろん、陽香ちゃんや手塚さんも。
11.放課後の約束
昼休み、給食を班で食べる。
隣の真理ちゃんと目があった。
真理ちゃんは頬を染めた。
「こっちばっかり見ないでよ…。なんか恥ずかしいでしょ…」
真理ちゃんは箸をギュッっと握って、次々にご飯を口に運ぶ。
照れ隠ししてる?
斜め後ろの席の陽香ちゃんがふふっと笑う。
「カワイイね、真理ちゃん。ミオちゃんが来てくれたから、みんなが仲良くなれたし」
「友情、壊しちゃってない?…いずみちゃんと陽香ちゃんとかっ!」
向こうに座っている奈菜ちゃん(手塚さん)もニカッっと笑った。
みんな、そうやって言ってくれるならいいのかな…?
「そ言えば、ミオりん!また今度放課後寄り道しなーい?」
奈菜ちゃんが手を打つ。
それに対して、真理ちゃんがボソッっとつぶやいた。
「この辺りなんて寄り道するところないでしょ…」
確かにソウデスネ…。
前はひなたちゃんーーー歌井ひなたちゃんと寄り道してたけどね。
奈菜ちゃんはうーんと考え込む。
クラスのメンバーは14人。
男の子は5人だけ。
本当に少なくて田舎なんだよね。
「え〜っ!まりっちそう言うけどさ、まりっち何か案ないの〜?」
真理ちゃんがうつ向く。
確かに、叔母さん家初めて来た時、何も出来なさそうって思ったな〜。
「あっ!私、いいとこ知ってる!」
陽香ちゃんが嬉しそうに笑う。
すると、奈菜ちゃんは興味深そうに身を乗り出した。
「美術館だよぉっ!海王美術館!」
その時、私は思い出した。
海王コンクールの存在を。
すっかり忘れてたぁーっ!
「何で美術館なの?オシャレなカフェ行きたーい!」
「でもないじゃん…。ほら、そろそろ小学生美術コンクールあるでしょ?参考にもなるし」
…うーん、何だかいずみちゃんの視線を感じる。
急に離れていった陽香ちゃん。
やっぱり感じるよね…。
私がもしいずみちゃんだったら、海王美術館行かなくても、私が教えてあげるからって言いたい。
いずみちゃんも、そんな気持ちなのかな?
「まあいいよ。よっちゃんが言うなら、何か収穫ありそうだし。今日行こ!計画したらすぐっ!」
奈菜ちゃんはニヒヒッっと笑って給食を口に運ぶ。
久しぶりの放課後。
友達と過ごせるなんて嬉しいっ!
12.オシャレな奈菜ちゃん
途中まで真理ちゃんと帰る。
叔母さん家って駅と近いけど学校から遠いんだよね…。
学校に行くにつれて高くなっていく盆江野町。
ここは、すっごく低いところ。
「ただいまー」
入ってすぐの和室に入る。
ランドセルを置いて私服に着替えた。
ポーチにサイフとハンカチなどを詰め込んだ。
「あら約束あったかしら。マオちゃん誰と遊ぶの?」
「陽香ちゃんと真理ちゃんと奈菜ちゃんだよ!」
叔母さんは首をかしげる。
真理ちゃんと奈菜ちゃんは知らないよね。
私は、いずみちゃんとケンカしてみんなと仲良くなったことを話した。
「良かったわね。5時には帰ってくるのよ。行ってらっしゃい」
にっこり笑った叔母さん。
お母さんみたいに見守ってくれてるみたいですごく嬉しい。
家を出ると、真理ちゃんと陽香ちゃんがもう来ていた。
「奈菜ちゃんはまだ?」
真理ちゃんはうなずいて、奈菜ちゃんの家の方を見る。
すごく和って感じで、奈菜ちゃんとはイメージが違う家だった。
「ちょっと訪ねてみる?」
陽香ちゃんが腕時計に視線を向けながらつぶやいた。
すると、見ていた家からオシャレな格好をした奈菜ちゃんが来た。
「待たせてごめんよっ!美術館に合わない格好かもだけど可愛くしたくて」
ネックレスが太陽の光に反射して輝いて見える。
すごくオシャレ…!
真理ちゃんが目を輝かせる。
「東京の女の子って感じね。真理なんかは普通すぎるよね…」
「そんなことないってば!」
奈菜ちゃんがキラキラの笑顔を見せる。
すると、電車が来た音がした。
急がなくちゃ!
わたしたちは、みんなで駅へ走った。
13.憧れのノンノン先生
海王美術館に着くと、みんなビクッっと立ち止まった。
インターネットによく乗ってる先生、ノンノン先生がいたんだ。
カメラが回っていて、撮影中。
奈菜ちゃんは目を輝かせた。
「私でも知ってるよ、ノンノン!よっちゃん、解説!」
いきなり話を振られた陽香ちゃんは、頭の中を整理して分かりやすくノンノン先生の説明を始めた。
ところどころ付け加えたいところはあったけど、ちょっとやめておいた。
物知りで秀才の陽香ちゃん以上の頭脳を持っているとは思えない。
「まりっちーっ!ここは対応が得意なまりっちが聞いてきて!」
奈菜ちゃんが真理ちゃんにすがりついた。
真理ちゃんはちょっと引いていたけど、ノンノン先生に惹かれたのか受け付けカウンターへ向かっていった。
「ちょっと、ミオりんとよっちゃん!まりっちがあんなに…」
奈菜ちゃんがうるうるしながらつぶやいた。
受け付けカウンターで冷静に対応している真理ちゃん。
さすが、大人だね。
「私ヤバイかも。ノンノンにあそこまで動くまりっち…!」
ちょっと、奈菜ちゃんお母さん目線で話してない!?
真理ちゃんが戻ってくると、奈菜ちゃんは「まりっちーっ!」と抱きつく。
感動したってこと…?
「マーオ」
聞き慣れた声。
一緒にいるとウザくてイヤ。
だけど、助けてもらってばっかりで本当は優しい幼なじみ。
「どうして翼がいんのよ!」
「いちゃダメ?」
相変わらず冷たい〜。
荻窪翼、コイツのせいで家出したんだからね〜!
翼と会うたび思い返すあの日。
旅行バッグを手に電車に乗った。
って…!
「ちょっとごめん!」
翼の手首を握って、目立たないところへ行く。
不思議そうな顔をした翼。
天然って、翼みたいなヤツのこと!?
そう思っていると、翼は握られていた手首を離した。
「マオも友達出来たんだな」
「そりゃあまあ。友達くらい作れるってば!あ、ひなたちゃんどお?元気?歌聴きたいな〜」
ホント。
たまに思い出すひなたちゃん。
私の親友だったけど…。
家出してから会えてないや。
「あ!あと翼。友達がいるところではミオって呼んで!美しいに櫻で美櫻」
「美櫻かぁ…」
翼は何度か「美櫻、美櫻、ミオ…」とつぶやいて笑った。
髪の毛を大きな手でかきまわす。
「いい名前だな。真櫻もお前に似合ってていいけど、美櫻の方が似合ってる」
翼が私を誉めた…!
クスッっと笑って美術館を出ていく翼。
その背中が頼もしく見えた。
14.奈菜ちゃんの恋
みんなのところに戻ると、それぞれおしゃべりしたりスマホをしたりして時間を潰していた。
今、入れないんだ〜。
みんなが座っているベンチのすみっこに腰かける。
「あ、ねーねー!さっきのイケメンって誰?私チョータイプーっ!」
奈菜ちゃんがスマホから顔を上げる。
私は、幼なじみってことと、性格を軽く教えてあげた。
「いいヤツだよ、翼は」
奈菜ちゃんはふふふと笑って、翼が出ていった向こうを見た。
サッっと立ち上がり、カバンにスマホを詰め込む。
「翼君追いかける!」
奈菜ちゃんは持ち前の速い足で翼が行った方へ駆け出していく。
私たちも奈菜ちゃんを追いかけた。
言葉で話しただけの翼。
それだけでも翼に感情を持ったとしたら…。
「あっ、あのっ!」
翼に追いついた奈菜ちゃんは声を張り上げて立ち止まる。
瞬間的に翼はこちらを振り返った。
奈菜ちゃんと目が合うと、ペコリと頭を下げた。
「私の名前は手塚奈菜。あの…翼君ですよね?私のことどう思いますか!?」
率直にそこを聞くの!?
ちょっとビックリしつつ、翼の答えを待つ。
多分、何度も告白されてる翼は、他の子からしたら王子様系。
そんな翼に…。
「まだあんまり君のこと知らないけど、いい子だと思うよ」
「何でそう思うんですか?」
「ま…ミオと仲良くしてくれてるからかな。めんどいヤツだけど、仲良くしてやってな」
最後にニコッっと笑った翼は、今来た電車に乗って帰っていった。
今の状況がなかなか掴めていない奈菜ちゃん。
真理ちゃんが、奈菜ちゃんの肩に優しく手を置いた。
「良かったねえ、奈菜ちゃん。これがずっと見てきた夢でしょ?」
やっと我に返った奈菜ちゃんは、黄色い悲鳴を上げて顔を押さえる。
指の間から覗いた顔は真っ赤だった。
「私、翼君好きかも!ミオりん、これからは情報提供よろしくね〜!」
大変なことになっちゃったかも?
でも、いっか。
青春だもんね、奈菜ちゃんの。
そう思いながら、盆江野町行きの電車に乗り込んだ。
15.ママがタレント!?
家に帰ると、早速筆を手にコンクール出品作品を描き始めた。
タイトルは『歩』。
1日、1日を人を描かずに表す。
「マオちゃん、オレンジジュース」
叔母さんがアトリエに飲み物を運んできてくれる。
ズビビッっと飲み干すと、また筆を握って絵を描く。
自然を表すためには、緑と赤と黄色、ちょっと青も使って…。
「頑張ってね」
叔母さんはそっと部屋を出ていく。
ホント、お母さんみたい。
…なんて考えてると眠くなってきた。
筆を洗って干す。
アトリエの鍵をかけると、大きなあくびが出た。
楽しかったなぁ、今日は。
ノンノン先生はシルエットでしか見れなかったけど見れたし。
久しぶりに翼に会えたし。
久しぶりの寄り道。
そんなことを考えながら布団に入る。
ぬくぬくしててあったかい…。
…はあ…楽し…かった…。
ジリジリジリジリジリジリジリ!
うーんもう、うるさいなあ。
目覚まし時計を止める。
あと5分…。
「マオちゃーん?起きてるー?」
一階から叔母さんの声が聞こえる。
起きるしかないかっ!
布団から出てジャージに着替える。
ちょっと寒いよ〜。
「おはよう、叔母さん」
おちゃわんにご飯を盛り付け、おわんにお味噌汁を盛り付ける。
居間の机に朝ごはんを並べてニュースを付ける。
「今日、特大のニュースが入ってきました。まずひとつ目のニュースです。新しいタレント活動がスタートしました」
映像が切り替わり…。
えっ…?
はっ?
どういうこと!?
「私、高野茉琴はタレント活動を始めたいと思います!」
「ママっ?」
ど、どうしてママがタレント?
『高野茉琴』とバッチリ書かれているし、この顔はママまちがいなし。
何で今さらタレントなの!?
「娘のマオのことではご迷惑をおかけしたのですがぁ…」
ゴックン。
何を言うのやら。
ママは、ハハッっと笑った。
「取材受けたときビビッってきてぇ、タレントになりたいって思いました!高野茉琴なので、たかまこって呼んでください」
ちゃっかり有名になってんじゃないよーっ!
何やってんの、ママ!
16.朝から大事件
重たい足取りで学校へ行く。
だいたい、ウチのクラスの男の子たちは芸能人の話ばっかりする。
新しいタレントなんて、話題まちがいなしだから。
校門を横目に通りすぎると、男の子の学級委員、和田はじめくんが来た。
「おはよう、ミオちゃん」
「おはよ!」
はじめくんはおっとりしてて癒し系。
お母さんのことは言わないよね…。
ちょっとゾッっとしながら下駄箱へ向かう。
「おーいっ、はじめーっ!」
後ろから走ってきたのは、クラスの男の子たち。
私とはじめくんを見るなり、みんな驚いた顔をした。
「はじめ…お前、ミオのこと好きなのかっ?クラス初のカレカノ!?」
はっ…?
何でそうなんの…?
クラスの男の子たちは、一目散に下駄箱へ走っていった。
待って待って、違うからーっ!
「ちょっとぉ〜!みんなぁ〜!」
はじめくんと付き合ってるわけないでしょ!
私に恋とか似合わないし!
はじめくんを置いて教室に着くと、みんな目を輝かせて私を囲んだ。
「はじめと付き合ってるってガチ?」
「秀才くん付けるなんて、羽折さんやるね〜!」
「いつからいつから!?」
ち、違ぁーうっ!
みんなの言ってること違うからっ!
はじめくんが教室に来ると、私はポツンと取り残される。
みんな、はじめくんの方へ行った。
「違うよ違う!僕なんかがミオちゃんと付き合うわけないでしょ」
みんな面白くないと言ったように散らばっていく。
すると、赤いランドセルを背負った奈菜ちゃんが教室に来た。
「みんなおっはよ〜!」
「おはよお」
「奈菜〜、おはよー」
奈菜ちゃんは手をパンと打って、ニカッっと笑って声を上げた。
「今日のニュース見た!?高野茉琴!ヤバくない!?私、もうファン〜」
えっ、えーーーーーーっ!
17.市長を脅す小学生!?
この日、お母さんの話題で持ちきり。
誰もが高野茉琴と口にしていた。
いずみちゃんと七原さんの会話に耳をそばたてる。
「高野茉琴カワイイしいいと思うけど、マオちゃんほっといていいのかな」
七原さんもうーんとつぶやく。
お母さんのこと悪く言われてる?
それって私のせいだよね。
ネットで炎上したらどうしよう!
「マオちゃんの母親でしょ?今はマオちゃんどこで生きてんの?」
確かに、世間の人には出てないよね。
お母さんにも言わないでって口止めしたし、翼にも。
だけどね、七原さん。
マオはここにいるよっ!
「でもいいじゃん。マオちゃんのこととか関係ないし」
そ、そうだよ。
いずみちゃんや七原さんには関係ないんだから探らないでよ。
「そう言えばさぁ、私海王コンクール出品したんだよね。マオちゃんも出品するから会えるかなぁ」
うん、会えると思うよ。
今も会ってるわけだけど。
いずみちゃんは目を輝かせる。
そんなにマオってすごい存在?
「バラエティーに高野茉琴出るよね!私、録画する〜」
奈菜ちゃんが夢見るように言う。
私も録画してチェックしようかな。
ヘンなこと言わないかとか。
お母さんもキャピキャピしてる感じがするし…。
私が家出してから、お母さんは子供っぽくなった気がする。
気のせい、かな?
「今日はさー!家に帰らずにそのまま寄り道しよーよー!昨日のは寄り道って言わないじゃん」
奈菜ちゃんが足を組む。
読書していた真理ちゃんが顔を上げる。
「今日こそ海王美術館行ってみる?」
「やだやだーっ!カフェーっ!」
行けたら私もカフェ行きたいよ〜。
すると、陽香ちゃんがふと顔を上げて声を上げた。
「盆江野町にカフェを作ってもらうしかないと思う!市役所に行こう!」
キョトンとする私たち。
そんな簡単にカフェ建てれないよ…。
陽香ちゃんは、みんなを手招きして自分の周りに集める。
「私のお父さんは盆江野町の市長なんだけど、なかなか人が集まる施設を建てようとしないの。だけど、お父さん脅しちゃえば一発!」
脅すって、私たちが!?
陽香ちゃん、何する気っ?
18.いざ、市長さんへ!
ランドセルをギュッっと握って、高い建物を見る。
盆江野町には似合わないビル。
ここが、市役所…。
陽香ちゃんを先頭に市役所に入る。
「みんなはちょっと待ってて。市長室に通してもらうから」
受け付けカウンターへ走っていく陽香ちゃん。
真理ちゃんの呼吸が荒い。
すると、奈菜ちゃんが真理ちゃんの背中をドンと叩いた。
「よっちゃんが計画したことだよ?成功するに決まってんじゃん!」
ん、そうだよね。
陽香ちゃんが、盆江野町のために考えてくれた計画だもん。
すると、市役所で働いている人が市長室へ案内してくれた。
一際目立つ部屋の前で止まる。
「陽香さん、ここです」
案内してくれた人は持ち場に戻る。
陽香ちゃんは、スッっと息を吸って市長室をノックした。
中から野太い声が聞こえてくる。
「陽香です。お願いしたいことがあって来ました」
市長室が開く。
中から出てきたのは陽香ちゃんのお父さんであり市長さん。
「初めまして、市長さん。陽香さんと仲良くしている江ノ島真理です」
「私は奈菜でーす!」
「私は羽折ミオです」
市長さんは驚いた顔をする。
とりあえず部屋の中に入れてくれた。
椅子に座ると、早速奈菜ちゃんが切り出した。
「カフェ!盆江野町に、カフェを建てたいと思います!」
「えっと、奈菜ちゃんとか言ったっけ。そんな簡単に…」
「お父さん聞いてっ!」
陽香ちゃんが声を張り上げる。
ここから、陽香ちゃんの脅しが始まった。
「盆江野町はお年寄りが多いでしょ?人口が減ったら、盆江野町はどうなると思う?クラスメイトも13人。どんどん減ってるの!」
圧力半端ない…!
お願い、市長さん。
許可してっ!
19.時間がヤバイ!
困った顔をした市長さん。
確かに困るよねぇ。
「まず、この町にカフェは合わない。逆で考えてみなさい。お年寄りが多いこの町に誰が集まるんだ」
陽香ちゃんが言葉を濁らす。
すると、市長さんは書類をドンと机に置いてこちらを見据えてきた。
「陽香や友達が盆江野町のことを考えてくれるのは嬉しいけど、無理もあるってこと、分かってくれ」
陽香ちゃんはうつ向いたまま動かない。
私も何も出来なかった。
盆江野町は、確かに集まるとは思えないくらい目立たない地域。
ここの人口が増えるキーワードがカフェに…。
「お父さんっ!来月ね、学園祭があるんだ。私たちのクラスでカフェやるから来てくれない?数が200人以上来てくれたらカフェ建てて!」
陽香ちゃんが涙目になりながら言う。
小学校を利用してカフェを作る。
そこでお客さんを集めればいいんだね!
「お願いします、市長さん!」
私は深々と頭を下げた。
市長さんは「えっ…」と声を漏らす。
すると、次々に真理ちゃんや奈菜ちゃんも頭を下げる。
そして、諦めたかのような市長さんは頭を抱えるようにして立ち上がった。
「分かったよ。1人でも足りなかったら建てないからね、陽香たち」
私たちはコクンとうなずく。
市長室から出ると、みんな一斉にため息を漏らした。
奈菜ちゃんがつぶやく。
「市長さん強っ!家に市長さんが帰ってくるなんて考えられない!よっちゃん、なんかすごいね!」
「そんなことないよ。お父さん、私を大切にしてくれてるから怖くないし」
いいなあ、お父さんがいるって。
元から交通事故でお父さんを亡くしている私。
お母さん、ひとりでいるのかもしれない。
「ミオりん?どーかした?」
「あはは、何でもなーい」
市役所を出ると、もう外は暗くなってきていた。
陽香ちゃんが腕時計を見る。
「うっ…もう4時50分。歩いて帰ると20分…」
昨日、叔母さんに言われた。
5時までには帰ってきてって。
帰れないじゃんっ!
「お父さんに車を出すよう頼む!」
一目散に駆け出す陽香ちゃん。
私たちは顔を見合わせてプッっと吹いた。
だらしない感じ。
しばらくすると、陽香ちゃんを乗せた車が目の前に停まった。
「早く乗って!」
急いで車に乗り込むと、車はゆっくり、でも速く走っていった。
あっという間に道を下る。
盆江野町が素早く走って見える。
「あ、ここ私ん家です!」
さっき見た和って感じの家、奈菜ちゃん家の前で停まる。
奈菜ちゃんが降りると、次は真理ちゃん家。
最後に私の家の前で停まった。
「ありがとうございました。さよなら。バイバイ、陽香ちゃん!」
今日はスリルがめっちゃあった。
朝から、はじめくんと付き合ってるとか言われたり。
今の市長さんを脅したり。
「マオちゃんっ!」
「叔母さん!」
叔母さんは心配した顔をして、こちらに歩み寄ってきた。
そして、私の目の前で止まると、私をギュッっと抱き締めた。
「帰ってこなくてビックリした…。寄り道しないで帰ってきて。それから遊びに行って…」
私は、叔母さんの温もりがすごく嬉しかった。
20.いきなり相談
叔母さんに買ってもらった、白いワンピースに番号札を付ける。
眼鏡を外して、付け髪をして。
今日は、海王美術館で結果発表。
出品作品が賞とってるといいけど。
海王美術館に着くと、高野真櫻様席に案内された。
「こちらが真櫻様の席です。お母様は保護者席へ」
いずみちゃんが隣の席に座ってる。
マオでいずみちゃんに会うのは二度目。
一度目は、彦宮学園で講演会をした時のこと。(短編小説板へGO!)
叔母さんの正体がバレるから、叔母さんはお母さんになりすませないから、親戚ってことで。
付け髪をして眼鏡をかけてる。
絶対、叔母さんって分からない。
「マーオちゃん、久しぶり」
「久しぶりだね」
いずみちゃんと話すのも久しぶり。
ミオのままじゃ、話せないもん。
すると、いずみちゃんは声を小さくして言った。
「始まるまで、ちょっと相談聞いてくれない?友達関係だけど。マオちゃんに聞いてもらいたいの」
私や陽香ちゃんたちのこと?
その予想は見事に的中した。
「マオちゃんの友達にミオちゃんっているで…。ハオミちゃん?」
うーん、設定的にはどっちでもいいんだけど…。
ここはミオで行こう!
「羽折ミオちゃんのこと?」
「そうそう!…でね。私、ミオちゃんとケンカしちゃったんだけど…」
すると、電気がパッっと消えた。
スポットライトが海王美術館の館長さんに集まる。
「このたびは、我が海王美術館に出品、そして閲覧ありがとうございます。ただいまから、海王コンクール結果発表を行います」
前の方の席に座っているノンノン先生に目を止める。
一見、髪の毛をポニーテールにした元気な女の子のイメージ。
顔を隠しているノンノン先生。
見えちゃうっ?
「まずは佳作賞からです」
モニターみたいなのに名前がズラッっと並んだ。
この中に『尾原いずみ』といずみちゃんの名前が書いてある。
「佳作賞、おめでとう」
「ありがと」
「次は館長賞です」
モニターに映し出されたのはたったひとりの名前。
隣の席の人だった。
「やった!」
私の名前、出るといいけど…。
21.結果は?
モニターが消える。
館長さんがマイクを構えた。
「次に、知事賞です」
すると、ついに私の名前が。
たったひとり、私の名前『高野真櫻』と映し出された。
「おめでとう、マオちゃん!」
「ふふっ、ありがとう」
その後もどんどん発表されていき、最優秀賞はノンノン先生だった。
表彰で、代表でノンノン先生が前に出ていった。
ノンノン先生の正体。
「表彰状。ノンノン。あなたは…」
館長さんが読み終わると、ノンノン先生が賞状を受けとる。
辺りから拍手が起こった。
ノンノン先生が振り返る。
「スピーチをお願いします」
館長さんからマイクをもらい、ノンノン先生はにっこり笑った。
そして、マイクを構える。
「初めまして、ノンノンです。本名は清田望です。海王コンクール出品者の方々はたくさんいると思います。賞をとれた皆さん、おめでとうございます。この中で、私の作品が最優秀賞をいただき、お決まりの本名を発表させていただきました」
清田望っていうんだ。
ノンノン先生は、またマイクを構え直してみんなを見回した。
「皆さんの作品も素晴らしく、私には描けません。自分の作品に誇りを持って、描いていってほしいと思います」
わぁーっと歓声が上がり、拍手の雨を浴びるノンノン先生。
気持ちいいだろうなあ。
私もあそこに立ってみたい。
「ありがとうございました。これにて終わらせていただきます」
また歓声が上がる。
部屋の電気が付いた。
いずみちゃんが相談の続きを話し始めようとした時のこと。
「いずみっ」
向こうでいずみちゃんのお母さんが手を振っている。
いずみちゃんは振り返ってにっこり笑って見せた。
「やっぱりいいや。ありがと。また会ったら聞いてね。バイバイ!」
いずみちゃんはお母さんの元へ帰っていき、賞状をもらって帰っていった。
ちょっとボーッっとしているうちに、叔母さんが来る。
「おめでとう!マオちゃん!」
「ありがとーっ!」
海王美術館を出るとき、知事賞のトロフィーと賞状をもらった。
初めてのコンクールがトロフィー!
うーん、正確に言えば初めてじゃないかもだけど。
「今日はごちそうね。何がいい?」
「ピザ食べたいっ!」
叔母さんは張り切って大型スーパーへ車を動かした。
私の海王コンクール出品に向けていろいろあったけど、今日くらいはいいよねっ!
私は、車の中でトロフィーをギュッと握りしめた。
(つづく)
あとがき
こんばんは!
『マオの内緒アート日記』作者の相原梨子です。
今回の2巻はいかがですか?
ケンカしてしまったミオちゃんといずみちゃん。
なかなか複雑な友情です。
今回は真理ちゃんもキーパーソンですよね。
みんなの友情、見守ってください。
マオの内緒アート日記は8〜10巻ほどで完結させる予定です。
最後のあとがきでも会えたら嬉しいと思います!
ヨロシク!
でも、完結したら残りのレスは感想やオリジナル小説を書いてね。
著作権は大丈夫。
私が許可しましたからっ!
2巻も1巻に引き続き、読んでくださってありがとうございます。
3巻もよろしくお願いします。
これからもずっと読んでいただけると私は泣いて喜びます。
じゃあね!
完結を目指す相原梨子
☆次回予告☆
校内学園祭が開幕。
美術展示会もあるし、カフェで人も集めなきゃだし…。
大丈夫!?
★ミオの仲間プロフィール★
岡田 陽香
おっとりしているが、本気になるとおっとり度がなくなる。
優しいまとめ役。
手塚 奈菜
元気なスポーツ少女。
いざという時は守ってくれるが、基本空気読めない。
江ノ島 真理
読書が大好きな地味っ子。
密かにミオを待っていた。
平均的すぎる成績。
『マオの内緒アート日記 3
絶対成功!?盆江野小学園祭!』
登場人物
高野 真櫻
美術が大好きで得意な女の子。
ミオとハオミの異名を持つ。
昨日コンクールで知事賞をとった。
岡田 陽香
盆江野町の市長の娘。
ミオの入っているグループのひとり。
おっとり屋。
手塚 奈菜
元気なオシャレっ子。
考えたらすぐ行動する気任せ。
だけど信頼度は超高い。
江ノ島 真理
ミオのことが誰よりも好き。
何もかも普通。
クラス一の地味っ子。
1.今日は私の誕生日!
10月に入って涼しくなってきた秋のある日のこと。
私、高野真櫻は誕生日を迎えました!
「誕生日おめでとう、マオちゃん」
叔母さんがにっこり笑う。
ここは叔母さん家。
だけど、私はここに住んでます!
理由は家出したから。
詳しくは『消えた画家の日記』を読んでね!
お母さんも今は認めてくれてて、応援してくれてる。
詳しくは『コンクールは事件祭!?』を読んでね!
「12歳ね〜、早いわ〜。さあさあ、朝ごはんですよ」
居間に並べられた朝ごはん。
お米にお味噌汁、卵焼きにほうれん草のごま和え。
「いただきまーす!」
箸をギュッっと構えてご飯をかきこむ。
今日から学園祭の準備。
市長さんにはカフェやるって言っちゃったけど、まだみんなに言ってない。
とりあえず、みんなを説得するんだ。
「そう言えばマオちゃん。学園祭楽しみにしてるわね。そろそろでしょ?」
「うんっ!絶対6年1組来てね!」
叔母さんは笑いながらお味噌汁をすする。
宣伝もしなくちゃだし…。
まだまだ大変なことがいっぱい。
大丈夫だよね、カフェ。
家を飛び出すと、和って感じの家からひとりの女の子が出てくるのが見えた。
その子に手を振る。
「ミーオりーん!」
「奈菜ちゃーん!」
手塚奈菜ちゃん。
私、陽香ちゃん、奈菜ちゃん、真理ちゃんの4人グループのひとり。
「Happy Birthdayミオりん!」
「ありがと、奈菜ちゃんっ」
誕生日を友達に祝ってもらえるなんて、チョー嬉しい!
2.まさかの出来事
教室に行くと、陽香ちゃんと真理ちゃんが私と奈菜ちゃんを囲う。
岡田陽香ちゃんと江ノ島真理ちゃん。
「誕生日おめでと、ミオちゃん!」
「12歳の仲間入りね」
私たちの会話を聞きつけた子たちが、さらに私たちを囲う。
みんな口々に声を上げた。
「え〜?ミオちゃん誕生日なの?おめでとう!」
「羽折さんおめおめ〜」
「羽折ちゃんおめでと!」
こんなに大勢の人にっ!
みんなにっこり笑ってくれる。
それが、すごく嬉しかった。
ずっと前までは、人数が多すぎてみんなの誕生日が覚えられず、祝ってもらうなんて夢だった。
だけど、人数が少ないのもいいよ。
みんなの誕生日覚えられるから。
「ありがとう。みんな!」
わいわいと盛り上がっていると、担任の守口先生が入ってくる。
たちまちのうちに散らばっていく。
ついに、この時。
学園祭の出し物を決めるのかと思いきやっ!
「後期の学級委員を決める。推薦、立候補はないか〜?」
すると、スッっと奈菜ちゃんが挙手した。
みんなの視線が奈菜ちゃんへ向く。
ふっとこちらを見て不敵な笑みを浮かべた奈菜ちゃん。
イヤな予感が体内を駆け回る。
そして、ニヤッっと笑って言い放す。
「ミオりんがいいと思いまーすっ!」
やっぱり言うと思った…。
どうして言っちゃうのよぅ。
呆れながらボオッっとしていると、辺りから拍手が起こった。
「よおし!羽折ちゃんでいい人は、挙手っ!」
クラスの男の子が言うと、私を除いたみんながビシッっと手を挙げる。
そりゃあ、やりたくないもん。
守口先生がにっこりしながらこちらを見る。
「いいか?羽折さん」
「は…はい…」
あーーっ、もうっ!
こんな予定じゃなかったよ〜!
3.ふたりの言い合い
結局男の子の学級委員は決まらず、私ひとりの進行で学園祭の出し物決めを行った。
「悪いけど羽折さん。先生は用事があるんだ…。ひとりでいいか?」
「分かりました…」
守口先生は責任感を持たずに教室を後にしていく。
すると、クラスの間で守口先生の愚痴がこぼれ始めた。
「何で羽折さんひとりに?かわいそ!だいじょおぶぅ?」
彩葉ちゃんーーー七原彩葉ちゃんが嫌味を言うかのようにつぶやく。
私といずみちゃんーーー尾原いずみちゃんがケンカした時のこと。
彩葉ちゃんはいずみちゃんの味方をしたんだ。
だけど、長いから彩葉ちゃんって呼ばせてもらってる。
「いろちー、意味ありげ!」
奈菜ちゃんが持ち前のネーミングセンスで彩葉ちゃんに言う。
元々は、奈菜ちゃんと彩葉ちゃんが仲良しふたり組だったんだけど、私たちのケンカを通して割れたんだよね。
「何?そういうのやめた方がいいよ。奈菜の悪いとこ」
あーっ、めんどくさいことになってきてるんじゃないのっ?
ふたりの言い合いを見守るクラス。
みんなの目は「羽折さんどうにかしなよ」や「学級委員っ!」や「もー、やる気なくなったわー」って感じ。
私、どうしたらいいっ?
すると、真理ちゃんが机をバンッっと叩いて言い放した。
「真理が代わりに一緒にやる。学園祭の出し物決めよう」
真理ちゃん…。
すごく気が利く真理ちゃん。
友達ってすごく大切!
そう噛み締めて進行していった。
4.出し物でハラハラ
彩葉ちゃんはふて腐れたようにそっぽを向いてしまう。
真理ちゃんはトンと教卓を叩いてみんなを見回した。
「今回の学園祭の出し物を決めたいと思います。案がある人はいますか?」
計画通り、陽香ちゃんが手を挙げる。
私は陽香ちゃんを指名した。
みんなの視線が陽香ちゃんに集まる。
「カフェがいいと思います」
普通さを装って椅子に座る。
すると「はいはーい!」といずみちゃんが手を挙げた。
指名するべきだけど…。
ゆっくりと真理ちゃんを見る。
「大丈夫。指名して」
そうだよね…。
計画では、陽香ちゃん以外の案は上がらないつもりだったけど。
「いずみちゃん」
「校内美術館をやりたい!特にこの教室を中心に、廊下にもいっぱい絵を貼って見てもらいたい!」
すると、クラスの子たちは口々に自分の意見を好き勝手に言い始めた。
「カフェとかだりぃー!美術館とかいずみとミオだけのためだろ」
「いずみちゃんが自分の実力認められたいだけでしょー?」
「カフェとか恥ずかしー」
真理ちゃんが「うるさいっ!」と声を上げるまで収まらなかったみんな。
たった真理ちゃんの一言でシンとなった。
「陽香ちゃんがカフェをやりたいと言ってくれたのには理由があります。陽香ちゃん、どうぞ」
真理ちゃんが陽香ちゃんを見る。
不敵に笑った陽香ちゃんは、みんなを見回してニコニコ笑った。
「盆江野町は田舎でどんどん人口が減ってるけど、父にカフェを建てたいと言ったら、私たちがカフェでお客さんを集めればいいって言われたの」
すると、女の子の顔がパアッっと明るくなってきた。
男の子は上の空。
「オシャレなカフェに寄り道っ!絶対カフェだよ〜!陽香サンキュー」
「男子、やるよぉっ!」
「陽香ちゃん気が利く〜」
そして、男の子の許可も出てカフェに決定した。
ここからは役割分担。
またいろいろごちゃごちゃしそ〜!
5.いざ準備開始っ!
なんやかんやで守口先生が来て、みんなブーイングの嵐。
天然かもしれない守口先生はハハハッって笑ってたし…。
「ありがとな、江ノ島さん」
「いえ…」
真理ちゃんは席に付き、守口先生と一緒に進行することになった。
責任感なさすぎ…。
そう思いつつみんなを見回す。
「カフェはどんなカフェにしますか?具体的に案を出してください」
計画で行くと、陽香ちゃんが手を挙げるはずなんだけど…。
チラッっと陽香ちゃんを見ると、頭を抱えて困っていた。
セリフ忘れちゃったっ?
それに気付いた奈菜ちゃんは、陽香ちゃんの代わりに手を挙げた。
「コスプレカフェがいいと思います!カワイイの着たいし〜」
また女の子たちの反響を呼ぶ。
「カワイイ」や「奈菜も頭いいんだ」や「コスプレしたーい」との声が。
男の子はというと、アニメ好きの子以外はやる気なし。
「いいじゃん男子〜!モテるよ〜?」
ニヤニヤ笑った奈菜ちゃん。
その言葉に、男の子みんながピクンと反応して口々に言った。
「俺たちもやるかぁ」
「コスプレ燃えてきたーっ!」
さすが奈菜ちゃん!
コスプレカフェも決まったところで、役割分担が行われた。
買い出し組、衣装作り組のどちらかひとつ。
接客組、調理組のどちらかひとつを選ぶことになっている。
合計ふたつを持つ仕事。
「買い出し組がいい人!」
ザッっと目を通すと6人。
つまり、衣装作り組が8人。
って、男の子と女の子に別れてる!
買い出しは私が着いてけばいっか。
「では、接客組がいい人!」
ここはばらつきがあり、9人。
こんなに接客が多くても…。
私も接客がいいし。
「調理組が多い方がいいので、移動してくれる人はいませんか?」
仕方なさそうに手をあげている彩葉ちゃんといずみちゃん。
これで7人だし、まあいいかな。
先生に役割分担の紙を渡す。
「じゃあこれでやってもらう。明日、家庭科の時間をとるので、調理組は調理実習。接客組は調理組と相談してメニュー決め。買い出し組は、メニューに入っているものを買うこと。衣装作り組はどんなものを作りたいか決めてデザイン画を描くこと」
あ〜、面白くなってきたっ!
6.着地と進む学園祭
接客組と調理組、つまりみんなでメニュー決めを始めた。
だいたい、20個くらいの種類を作りたい願望もあった。
「スイートポテトって季節だよね?作りたい作りたい!」
奈菜ちゃんが身を乗り出す。
私は黒板にスイートポテトと書く。
みんなを振り返ると、たくさんの手が挙がっていた。
「じゃあ、陽香ちゃん」
「和風プリンです」
お年寄りの方も来てくれたら、和風プリンってめちゃめちゃ好評だよね!
またも黒板に書き込む。
「次は〜、健一くん」
「ドーナツーっ!」
健一くんって、ドーナツ好きって有名だったけどホントだったんだ。
カフェやるって言ったら一番始めに乗ってきたし…。
「それから…彩葉ちゃん」
「クッキーがいいと思いまーすぅ」
このような感じで書いていくと、あっという間に20個出てきた。
守口先生は相変わらずの責任感のなさだよ…。
うとうとしたかと思えば寝てる。
「では、衣装作り組はデザイン画を描いてください。買い出し組はこちらに来てください」
守口先生の分も、学級委員として買い出し組の責任も負わないと。
男の子たちがぞろぞろとやって来て、決まったメニューを書いた紙を見せた。
「このメニューに必要なものを放課後に買いに行くんだけど、コンピュータ室でクックパッドを見て必要なものを調べてください」
ダダダッっとコンピュータ室へ駆け出す男の子たち。
はじめくんーーー和田はじめくんがいるからいいよね。
頼れる穏やかなはじめくんだもん。
ユーチューブとか見ないよね…?
「ねえねえミオりん!美術女だけだと時間かかるから、ミオりんも描いて」
デザイン画がもう決まったらしく、早速スケッチに取りかかる。
大変だけど、今が一番楽しいかも。
みんな、そうやって言うもんね!
7.買い出しで恋っ?
そして放課後。
奈菜ちゃんと私を含めて男の子たちみんなと買い出しに行った。
盆江野町のスーパーだと売ってないのがあるから、もうちょっと大きいスーパーにね。
だから、今は電車に乗ってます!
「ミオさぁ、学級委員やめとけば良かったのにマジで引き受けたよな」
「奈菜の圧力ぱねぇもん」
「ちょっと、どゆこと!?」
学級委員って、断る乗りだったの?
全然分からなかった…。
言われたらやるもとだと…。
「だけど偉いよね、ミオちゃん。彩葉ちゃんにいろいろ言われてたけど」
はじめくんがボソッっと言う。
すると、隣に座っている奈菜ちゃんがふふっと笑いながらつぶやいた。
「ミオりんが断ると思ってたからわざと言ったけど、マジで引き受けたからビビった!」
ガーーーン!
やっぱりやめれたんだ…。
今更ながらトホホ。
すると、健一くんが声を上げた。
「羽折ちゃんしっかりしてるし、俺学級委員やるわ。よろー」
他の人の視線がより一層厳しくなる。
健一くんが大きい声出すからあっ!
ぷうっとふくれる奈菜ちゃん。
そう言えば、奈菜ちゃんと健一くんって幼なじみだったよね。
仲良しだし。
ちょっと気になっている存在の健一くんだけど、私じゃ無理。
奈菜ちゃんも、きっと健一くんのことが好きだし。
「羽折ちゃん降りるよ」
ズッキューンッ!
こういうのが、健一くんはいいんだよ〜!
8.奈菜ちゃん作戦実行?
スーパーに着くと、カートとカゴをセットして足を踏み入れた。
何だか主婦になった気分。
「おい、男子!自分が持ってくるもの持ってきて!」
奈菜ちゃんが指示する。
係を持ってないのは健一くんと、私たち女の子だけ。
私が健一くんのこと密かに思ってるのは内緒だから、奈菜ちゃん気付いてないと思うけど。
「ああっ、バナナいるよね!?チェックし忘れた〜!ミオりん行ける〜?」
「オーケー!バナナね」
ほぼ正反対だから遠いな…。
そう思いながら、遅れないようにバナナを取りに行く。
もしかしたら、奈菜ちゃんの作戦だったりして。
まあ、私は奈菜ちゃんを応援したいんだけどね。
「あれ?ミオちゃん担当あったっけ」
はじめくんとぶつかりそうになって、ふと顔を上げる。
私は首を横に振って、訳を説明した。
はじめくんはなるほどと笑った。
「僕もバナナ探すよ」
はじめくんと並んで歩きながらバナナを探す。
なかなか見当たらない。
なぜかぶつぶつ何か言っているはじめくん。
どうかしたんだろうか…。
「ミオりん遅い!あれ?はじめ?」
「バナナが見つかんないの!」
「えっ?」と困った顔をする奈菜ちゃんの隣、健一くんもキョロキョロとバナナを探してくれた。
ズッキューーーン!
健一くんも探してくれてるよ〜!
「あ、あったよ!」
はじめくんが指差した向こう。
黄色の果物、バナナがあった。
あわてていい色をしたバナナを取ってカゴに入れる。
「ありがと、ミオりん」
たくさんのものが集まり、会計を済ませると、健一くんを中心に男の子たちが重たい荷物を持ってくれた。
ズッキュンズッキューーーン!
今まではこんなことあんまりなかったのに〜!
9.翼と過ごす誕生日
また電車に乗って、盆江野小学校へ長い坂を上って、重たい荷物を交代に運んで解散した。
奈菜ちゃんと途中まで帰る。
幸せそうに、奈菜ちゃんは健一くんの話をしていた。
「だから好きなの!健一カッコいいでしょ?私、おさなで良かった〜!」
ホント、健一くんの幼なじみなんてひとりしかいないからね。
それが奈菜ちゃんなんだもん。
私の幼なじみ…。
翼、今どうしてるんだろう。
私の誕生日とか忘れてるよね。
「ウチここ!じゃね!」
奈菜ちゃんと別れると、長い坂を下まで走って駆け降りた。
家に入ると、男の子の陸上靴が脱ぎ捨ててあった。
クラスメイトじゃないよね?
居間に着くと、見慣れた顔、翼がいた。
「よぉ、マオ!」
「何で翼がいるの!?」
「いちゃダメかよ…」
いや、そういう訳じゃないけど…。
もごもごしていると、翼がクシャッっと私の髪の毛をかき回した。
「誕生日おめでと、マオ」
「ありがと」
何だか照れくさい。
翼なんて、いつもこんなこと言ってくれなかったもん。
赤面化している翼。
あの翼にしてはすごいかも。
わざわざ来てくれたし。
「翼くんも夕食食べてってね。今日はおごちそうにするつもりだから」
叔母さんのご飯は美味しいからね!
翼もにっこり笑って居間でゴロッっとくつろいでいる。
「そう言えばさぁ、マオ」
翼がこちらをジッっと見つめてくる。
そして、眼鏡を取り上げた。
もう視力がかなり落ちていて、ちょっとぼやける。
「マオ、眼鏡似合わないよ」
こんばんは。
花粉で苦しい人もいるでしょうが、予防を気を付けてください。
ここで、私からお知らせがあります。
他のスレで知った読者さんもいるかもしれませんが、3月15日に葉っぱを卒業します。
本当に急なことですみません。
葉っぱ依存症に悩んでいて、悩みに悩んだ結果です。
ここまで短かったですが、読者さんにはすごく感謝しています。
今までありがとうございました。
これからは、完結に向けて小説執筆を行いたいと思っています。
この巻が最終巻です。
3月15日は、私のスレに来てください。
完結したら、オリジナル小説をここに書いてください。
マオの小説のオリジナルです。
読めるとき読むので楽しみにしています。
では、引き続きお楽しみください。