こんにちは!
掛け持ちしまくりの岬です。
急に書きたくなりました!
初のファンタジー完結です。
では、よろしくお願いします!
新連載おめ!!!
ファンタジー系頑張れ!
『花咲学園霊用倶楽部 1
初めましてオバケさん』
主な登場人物
針山 ゆもも
幽霊や妖怪が大好きな女の子。
地味で目立たない。
薫見 翔
クラスのイケメン。
幽霊や妖怪が見える。
トイレの花子さん
自称ゆもものご先祖様。
1.クラブって何?
もーう。
どうして決めなきゃならないの!
クラブなんか、適当でいいのにさ。
手芸に入っていたけど、先生がイヤでやめた。
やりたいのとかないしー。
「針山さん、書いて」
先生に注意されて、渋々名前を書く。
針山ゆもも。
みんな、初めまして!
私立花咲学園中1のゆもも!
って言っても。
地味だし暗いし目立たない。
取り柄もなければ成績もよくも悪くもないんだよね。
「クラブ9個の中からですよ〜」
あれ、10個じゃない?
うっすら文字で『霊用倶楽部』って書いてあるのに。
わたし、幽霊や妖怪、オバケが大好きなんだ!
霊用って面白そう。
わたしは、第一希望に『霊用倶楽部』と書き込んだ。
「楽しみだな〜」
ひとりでつぶやきながら、みんなの会話をちょっと聞く。
約束してるじゃん。
何のクラブ入るのか。
「バスケどお?」
別に何でもいいじゃん。
わたしは、遠くを見ながらうつむいた。同じクラブにしたい人もいないと思うと、ちょっと悲しくて。
翌日の朝。
職員室に呼ばれてしまった。
ヤバイことしたかな?
「失礼します」
「あ、針山さんこっち」
先生に書類をドバッっと渡される。
いきなりだよ!?
この先生おかしいかな。
桜が窓から入ってくる。
カワイイ、ハート形。
「霊用倶楽部ありがとう。顧問は、わたしよ」
担任の先生___愛尾先生か。
愛尾先生に案内されて、花咲学園でひとつ謎の部屋、『霊用室』へ。
「針山でーす」
霊用室に入ると、クラスの、女の子に人気の男の子だけがいた。
知らない女の子ひとりくらいいてくれたら良かったのに。
これじゃ、クラブじゃないじゃん。
やる気を失う。
「こちらが、薫見くん」
「おれの名前は薫見。よろしくお願いします、シェリーニ様」
しぇりーに様?
何それ。
薫見くんを見ると、ちょっと笑った。
「シェリーニっていうのは、霊感が有り余って、見えない人のこと。君みたいに有りすぎると、霊感のケムリが見えなくなる。君は霊と闘ったり、仲間になったりする」
オバケと闘うの!?
仲間になれちゃうの!?
わたし、シェリーニに産まれてきて良かった。
闘うのはもちろんイヤだけど。
「いい?」
「もちろん!」
薫見くんはニッっと笑い…。
これが、舞い上がるスマイルかな。
わたしは何ともないけど。
「じゃあ試しに…」
薫見くんは、女の子の人形を出した。
文楓ちゃんありがとう!
良ければ、これから読んでくれると嬉しいな!
岬!久しぶり‼新作おめでと!
私、ファンタジー好きだから楽しみ!
最近ますます来れなくなってるけど……楽しみにしてるね‼
久しぶりだね!
薫ちゃん、コメントありがとう。
ぜひ楽しみにしてて!
ちょっと自信ありかもだから。
6年の時から書いては消してを繰り返してる作品でね…。
来れるときに、ぜひ読んでね。
「シェリーニの君。何とかして、この人形と話してみせて」
「ええ?そんなの無理ですよ!人形なんか、話すわけないし…」
ボソボソつぶやいていると、薫見くんは声を張り上げた。
思わず嘆く声を上げたわたし…。
バカだ…。
「人形を侮辱するな。素晴らしきオトキサマと思え」
「おときさま?」
薫見くんは、ため息をつきながら顔を曇らせた。
怒られてはないよね。
だけど怒ってるっぽい。
「お前何にも知らないのか」
「聞かされたことありませんし…」
言い訳するように言うけど、実際そうだしね。
そもそも、シェリーニの存在も初耳。
もちろんだけど、オトキサマも。
どういうことかさっぱり分からない。
「オトキサマっていうのは、人形に他の生命が宿ること。世の中の人形で、オトキサマじゃないのはいっぱいいるんだ。そいつらをこらしめるのも、お前の仕事」
こらしめるぅ?
わたしが!?
出来るわけない、出来るわけない。
傷つけたくないもん。
反論しようとすると、薫見くんににらまれた。
「何か文句あるのか、お前。急にクラブ入ってきたって軽いことじゃない。シェリーニにしか霊用倶楽部という項目は見えないんだ」
だから、わたしだけ10個って思ったんだね!
何なら早く言ってよ〜。
分かりにくいな〜、薫見くん。
「ってことで。人形と話してみて」
だから、わたしには無理だってば〜!
2.人形がしゃべった!?
とりあえずやってみなきゃ分からないし、何かするか。
「初めまして。わたしは針山。よろしくお願いします」
すると、薫見くんの厳しい指導が飛んできた。
「お前バカか。日本語話すわけないだろ。オトキサマ語を話せ」
オトキサマ語ってどんなの?
わたしねえ、日本語と英語しか無理。
勝手に教えること教えないでよ!
「いいか?おれが話してやる」
ふん、勝手にしたら?
わたし、こういうのヤダ。
やりたかったのと違うし!
こーんなめんどくさい、クラブ活動なのに仕事とか言ってたし。
に、参加するもんか。
こっそり抜け出てやる。
「おーい、針山。オトキサマが教えてくれた。バカが出てくって」
「ちょっと、あなた、女の子に向かって、それも初対面。バカバカって言い過ぎでしょ!」
薫見くんを思いっきりにらみつける。
オトキサマが何よ。
シェリーニが何なのよ。
わたしには無関係!
「お前聞けよ。針山って呼んでやる。おれを、名前で呼ばせるくらい上げて見せたら謝る」
カーッ!
絶対絶対、ぜぇーったい言わせて見せるんだから!
しょうがないなあ、シェリーニの仕事聞いてやろう。
「シェリーニっていうのは、針山みたいな、人形に宿った生命を守ったり、幽霊やオバケ、妖怪の生命を守る。悪いやつはこらしめるんだ」
どうしてそれがわたしなの!?
薫見くんを見ると、やれやれといった顔でため息をつく。
「先祖代々、針山のご先祖様がやって来てる。知らないか、しずえさん」
「知ってる、知ってる!わたしのひいおばあちゃん!」
ひいおばあちゃんは、わたしが産まれてすぐ亡くなったから、あまり覚えてないんだ。
だけど、写真で見たことある。
ひいおばあちゃんの顔。
わたしと遊んでるところも。
「しずえさん、シェリーニだったんだぞ。で、針山のひ孫が、第11代目」
ってことは、わたしが第10代目!?
めちゃめちゃ切りいいじゃん。
…って、どーでもいいか。
「そろそろ理解したか?」
うん、一応。
とりあえず話せば、名前で呼んでくれるんだよねっ!?
「でぇ、オトキサマ語は?」
薫見くんが、カバンから何やら分厚い辞書みたいなのを出した。
タイトルは『オトキサマ語辞典』。
そんなのまであるんだ。
結構大きい組織かも。
「これ見ながら話してみろ」
はいはい。
まず…初めましてはどこにあるの…?
あいうえ…なにぬねのは…。
って、通りすぎてる!
『は』を調べて、初めましてと発音してみる。
一見日本語を話している感覚なのに、オトキサマ語が口から出てくる。
「わたしは針山。あなたは?」
ゆっくりだけどていねいにオトキサマに声をかけると、オトキサマは返事をした。
「オトキサマ」
あれれ、日本語で聞こえる!
めちゃめちゃ不思議なんだけど。
薫見くんを見ると、ため息をついて、となりに並んだ。
思ったけど、ため息つきすぎ。
そんなにつくことなくない?
「針山が辞典を触ることで、中を読まなくても、日本語を話せばオトキサマ語で出てくるしくみだ。逆に、オトキサマが話したことは、辞典を触っている限り日本語に聞こえる」
本当に便利な辞典。
でも、毎日持ってなきゃダメじゃん。
荷物かさばる〜。
「辞典は触らなくてもいいように覚えるんだ。いいな?」
「はーい」
やる気のなさそうなわたしの返事に、薫見くんはまたため息をついた。
スクールバッグをギュッっと握りしめて家に帰る。
薫見くんに渡された辞典。
これはわたしの物になってしまった。
「名前の欄に針山の名前を書け」
脳裏に、薫見くんの声が思い浮かび、頭をブンブン横に振る。
スパルタコーチだよぉ。
シェリーニの力で、世の中が変わることもあるんだって。
子供が永遠に産まれなくなって、人類滅亡危機にさらされたりすることもあるらしいし。
そんなに大きなことわたしがっ!
「ゆもも、友達よ〜」
ママが階段の下でフライパンを手に呼びかけた。
えっ、誰だろう。
わたしを訪ねてくるなんて。
「久しぶりだわ、ゆももの友達に会うの。しかも男の子」
男の子っ?
ドクンと胸が跳ねる。
ビクビクするよぉ。
「はーい」
予想した通り、薫見くんがいて、手にはあのオトキサマ。
どうして家知ってるのよ〜。
わざわざ今日じゃなくても。
「オトキサマ語、話してみて」
「ええっ、無理です無理です。まだ見てませんから」
すると、薫見くんどころか、オトキサマまでにらんできた。
薫見くんなんか、舌打ちしてくるし。
もっとかわいくて、やる気ある子が産まれて来たら良かったね!
「いいか?シェリーニは世の中を守ると言っても過言ではない。しっかりやれ。さもないと…オモモサマに怒られる」
オモモサマ?
どんどんワード出すぎ!
覚えきれないよ。
オモモサマっていうのは、ゆももに似てオモモ。
わたしのためのオトキサマだって。
もう出来ちゃってんじゃん!
辞典を見ながら、わたしはオトキサマのカゴを見た。
薫見くんから渋々預かった。
「絶対にオトキサマの家作れよ」
めんどくさいと思いつつ、わたしが小さい頃に使ったカゴを出した。
下に柔らかい羽毛があるやつ。
オトキサマは、相変わらず話さない。
「ねえ、オトキサマ。薫見くんのところに帰りたいよね」
辞典に手を置き、日本語を話しているのに、わたしの口から出てくるのは、ヘンなオトキサマ語。
「家は坊っちゃん家じゃない。霊用倶楽部室だ」
いつでも行ったらいるんだ。
こんな怖い人形が…!
益々行きたくなくたったよ〜。
「お前、オトキサマ語覚えないと坊っちゃんに怒られるぞ」
「お前って言わないで。ゆもも」
オトキサマはそれっきり何も話さなかった。
すぐそうなるんだから。
「ええっと、おはようは、日本語で…えほゆい!?」
あっ、待てよ。
オトキサマ語覚えてる場合じゃない!
わたしの部屋にオトキサマ連れてきてさ、薫見くんにチクったら!
何か怒られそうなのいっぱいあるし。
「オトキサマ、移動するよ!」
カゴと辞典を取り出して、わたしはとりあえず廊下に出た。
3.家のフシギな部屋
わたししか入れないところ…。
普段使わないところ…。
物置!
何でか知らないけど、物置は誰も使わない。
使えないと言った方が適切かな。
「物置は、フシギな力を持つ者のための部屋。普通の人は入れない。開けられない」
ママは、おばあちゃんに言われた言葉を信じて、入ってない。
わたしは入ってるけど。
ママ、確認してないのに入らないとか意味分からない。
わたしの秘密の部屋なんだ〜。
「オトキサマはここに」
カゴをすぐそこに置いて、辞典をペラペラめくる。
おはようは、えほゆい。
これは、五十音順で、ひとつ上。
『は』は上がないから、一番下の『ほ』なの。
これは理解したの。
だけど、ありがとうは違う。
『かをざのく』なの。
「オトキサマ、ありがとうって言ってみて」
わたしは辞典から手を離して、オトキサマを見つめる。
すると。
オトキサマの口から出てきたのは、「かをざのく」だった!
「かをざのく!」
わたしは、精一杯お礼の意味で『かをざのく』と言った。
オトキサマ語って覚えにくい〜。
【オトキサマ語検定 1】
『ありがとう』は、オトキサマ語に言い換えると、日本語で発音するのは、『かをざのく』。
どういう性質かな?
答えは、あとがきで!
おおー!書いたり消したりしてるなんてすご!
何度も書き直すって岬っぽい。さすがだね!
そして、オトキサマの設定もしっかりしてて凄い。
オトキサマ検定、わかった気がする!
薫ちゃん、ありがとう!
考えてくれたんだね!
良ければ答え書いてみてね。
これからもよろしくお願いします!
「おい、針山」
ゲッ、この声って、もしや…。
渋々顔を上げる。
家の前のアパートのすみ、ちょっとイライラする感じの顔!
「かっ、薫見くん!?」
荷物を持って出てきた薫見くん。
っていうか、わたしの家の前だったわけ!?
全然知らなかったよお〜。
「早いんだな、朝。針山のわりには」
「針山のわりにはってどういうことなんですかぁっ!」
ちょっと怒りを見せつつも足を速める。すると、薫見くんもあわてて着いてきた。
「オトキサマ連れてきたよな」
「もちろん。オトキサマなんかいらないもの。お返しするから」
オトキサマをカバンから出す。
薫見くんは目を見開いて怒った。
「お前バカか!オトキサマを手放すシャレーニなんか聞いたことない!」
シャレーニはね、やる気ないんだってば!
ずうっと続けるのも無理。
辞典も薫見くんにお返しする。
すると…!
「なっ、何!?」
辞典に浮かび上がる文字。
シャレーニゆもも。
どうしてこの文字が!?
「オモモサマ!」
「ちょっと、どういうこと!?」
久しぶりにこんな大きな声出した…。
薫見くんが腕に付けている数珠を見せた。
「針山、これがオモモサマだ!」
「えっ?」
数珠から光が出てきて、わたしに似た顔の人形が現れた。
光にね。
「ゆももちゃん、オモモよ。オトキも大切にしてあげなさいな。お返しなんてさせません。シャレーニなんですからね。楽しみにしてますわ」
オモモサマは、数珠に溶け混み、光は消え去った。
何事もなかったかのように時は過ぎていく。
「いいか、針山。こういうことだ」
「いつも数珠してるんですか?」
「…ああ。オトキサマに認められたからな」
ふうん。
まあまあすごいってことねえ。
わたしはいつになっても認められないだろうな〜。
そう考えると、ちょっと悔しくなった。
わたしは、オトキサマが入ったカバンをギュッっと握り、走った。
薫見くんが追いかけてきたけど。
すぐ捕まったよ…。
「針山はシャレーニだから、シャレーニじゃなくなるなんて絶対無理だ。世界でひとりと言われているシャレーニに選ばれたんだ」
こう言われると断れないわたし〜。
ガクッっとなりつつ、ゆっくりうなずいた。
これで認めたことになる。
薫見くんはにっこり笑い、数珠を見せた。
オモモサマが見える。
「ゆももちゃん、待ってたわ。わたしたちはそれを待ってたのよ。さあ、数珠よ」
映し出されているはずなのに、オモモサマの手から出てきた数珠。
わたしの腕に、しっかり収まった。
「大丈夫。毎日付けていて。霊用倶楽部の関係者以外見えないから」
オモモサマはスーッっと音もなく、薫見くんの数珠に消えていく。
わたしも認められたってこと!?
数珠もらえたってことは。
薫見くんを見ると、首を横に振る。
「その数珠は、シャレーニ見習いの数珠だ。まだまだってこと。俺のは、シャレーニの補佐優秀数珠」
優秀数珠〜!?
さすが薫見くん。
どうしたら上へ行けるの…。
「おい、早く来たのに遅刻するぞ」
げっ…。
わたしは、薫見くんと並んで桜の並木道を駆け抜けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前変えました。
オモモサマに言われた通り、普通の人には数珠が見えてなかった。
手を洗うときとか、腕めくってたけど何も言われなかった。
友達がいないって理由だとは思いたくない…。
薫見くんとはクラスが同じだったみたいで、よく話しかけられた。
周りの女の子から人気らしいの。
「どうして針山さんとは話すのにわたしとは話してくれないの!?」
「絶対わたしの方がいいじゃん!」
わたしだって、あなたたちの方が、カワイイし、シャレーニも剥いてると思うよ。
やる気ありそうじゃん。
薫見くんとペアでやる仕事だし。
「ねえねえ、薫見く〜ん」
クラスの女の子が薫見くんを取り囲む。男の子たちは、外でサッカー。
今だ!
わたしは、オトキサマが入ったカバンを取りだし、中を見る。
オトキサマも寝るんだ。
吐息を立てて眠っているオトキサマ。
わたしは断然、こっち派!
いつもうるさそうだし。
普通の人には聞こえないことをいいことに〜!
「おい、針山」
「どうして針山さんの名前呼ぶの!?」
「わたしのことは呼んでさえくれないし、無視されるのに!」
「だけど、冷たいところもかっこよくない?」
ひとりの女の子の発言で、女の子みんなが黄色い声を張り上げた。
薫見くんは席を立ち、わたしのカバンを取り上げて、腕を握った。
「ちょっと来い」
薫見くんはスタスタ歩いていく。
本当に周りの女の子の目が怖い。
霊用倶楽部入っただけなのに。
薫見くんと特別な関係とかじゃないからっ!
「教室では、オトキサマを見るな。オトキサマは霊用室でしか見てはいけない。疲労がかかるんだ。霊用室は疲労がかからないようにしてある」
はぁ〜。
オトキサマって面倒。
どうしてこんなに複雑なの…。
桜がチラチラ散る中、花びらが降らない屋上。
「普通の人の空気と、力を持つ人との差だ。いいな?」
「すみません…」
「今日は放課後、針山の家で特訓な。オトキサマ語とか」
「え〜!」
薫見くんはキッっとにらんでくる。
ちょっとムッっとしたけど、薫見くんの持ってる数珠がほしくてうなずいてしまった。
わたしは、バカだった…。
わたしの部屋は見られたくないので、リビングを使うことにした。
ママは仕事でいなかったから。
「辞典は?」
「物置にあるから…取ってくる」
わたしは、階段へと足を傾ける。
すると、薫見くんは鼻をクンクンし始めた。
「針山の家、なんかあるな。物置案内しろ」
えっ、なんかあるってどういうこと?
霊が宿りついてる!?
会いたい会いたい、会いたい〜!
「物置へご案内いたしますっ!」
わたしの秘密の部屋が秘密じゃなくなるときがきた。
物置…わたしの秘密の部屋のドアの前に立つと、薫見くんは鼻をつまんだ。
「ここの匂いは強すぎる。俺でも鼻が痛いくらいだ」
「物置がなにかあるの…!?ママたちが言ってたこと本当なのかな」
「何か教えろ。その前に、辞典。そしたらすぐリビング!」
指示されっぱなしでちょっと気分良くないけど、とりあえず従うことにした。だって、霊がいたら、絶対絶対結婚せずにここにいるもん!
「これが辞典」
薫見くんに差し出す。
そのままリビングへ向かい、ソファーに腰を下ろした。
薫見くんは、興味深そうに聞いた。
「ってことで、わたしは信じてないから使ってるの」
話が終わると、薫見くんは警察の人が持っているようなメモ張をしまった。
ニッっと笑い、つぶやいた。
「この家は代々シャレーニの家系だ。すごいぞ」
…はっ?
何がすごいのか。
何があったのか。
何もかも分からないんですけど!
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
トリップ変えました。
4.花咲学園の深夜七不思議
薫見くんはその日帰っていって、わたしはオトキサマ語を練習した。
辞典をめくる時、数珠が見える。
オモモサマ、わたしも出せるのかな。
やってみよっと。
「オモモサマ、出てきて」
すると、モヤモヤオモモサマが出てきた。
やはり映し出されて。
「ゆももちゃんから呼んでくれて嬉しいわ!どんなご用?」
「あの、その…」
すると、オモモサマは吹いた。
わたしがキョトンとしていると、オモモサマは言った。
「芳美ちゃんもそうだったわ〜。ゆももちゃんと似てて」
「芳美ちゃん?」
「ええ。ゆももちゃんのご先祖様よ。聞いたことない?」
う〜ん。
おばあちゃんから名前くらいは聞いたことあるけど。
オモモサマは、ぶつぶつと何かを言い始めた。
「時よさかのぼれ。大地を踏みしめるシャレーニ少女のオヨシサマ、芳美」
すると、オモモサマは消え、ひとりの少女が映し出された。
そこには、わたしの中で薫見くんにあたる男の子もいる。
「これは、芳美ちゃんがゆももちゃんと同い年の頃の映像。男の子が、薫見貫太郎。芳美ちゃんはシャレーニだったのよ」
薫見貫太郎さん…、名字一緒。
やっぱり、シャレーニと補佐の家系みたいなのがあるのかも。
「今調査しているところよ。シャレーニの仕事内容とかは、翔くんに聞いてね」
オモモサマがわざわざ説明してくれている。
花咲学園の深夜七不思議の調査。
今より古い校舎に、芳美さんは忍び込んで行く。
もしかして…、これを…。
「ゆももちゃんたちは、こういうのをやるのよ」
「は、はひぃ。ありがとうございました〜」
オモモサマが写し出されると、にっこり笑って言った。
「芳美ちゃんも、オヨシサマを意味なく呼び出してたらしいわ。さあ、そろそろ寝たら?」
オモモサマはスーッっと消えていき、わたしは辞典を閉じた。
翌日の霊用室。
わたしと薫見くん、そして愛尾先生が机を囲んでいる。
「針山さんは、どうしてわたしが顧問か知らないわよね」
「あ、はい」
確かに、気にならなかったけど、シャレーニである針山家じゃない。
薫見くんと同じ名字じゃないし、別の力の持ち主だったりして!
「わたしの祖母が、薫見くんのひいおばあちゃんなの。わたしは結婚して、愛尾に。わたしの兄が、薫見くんの父ってわけ。親戚なの。内緒の」
よく今まで気付かれてない。
薫見くんは、クラスでは愛尾先生って呼んでるけど、ここでは名前で呼んでるもんね。
「で、薫見くん…翔くんの家系だからね、一応。兄は力を持ってないけど、わたしだけ持ってるの」
なるほどね。
愛尾先生が、クラスでも薫見くんのことを親しくしている疑惑も解明。
すると、愛尾先生は声をひそめた。
「始めにも言ったけど、内緒の親戚だから、内緒ね」
愛尾先生は、腕捲りをすると、少し汚れた数珠を見せた。
薫見くんよりは汚れてる。
だけど、わたしよりはすごく綺麗。
「わざわざオトキサマが、オフミサマになってくださって、いただいた数珠よ」
オフミサマか…。
愛尾先生は、数珠をしまい、腕捲りしていたのを直した。
「ともかく。針山さんと翔くんのデビュー調査を発表するわ!」
デビュー調査!?
ドキドキ。
それってさ、やっぱり出るかな?
オバケたち。
「オモモサマ、出てきてください」
愛尾先生が数珠に話しかけると、オモモサマが映し出された。
わたしのよりモヤモヤしてない。
もしかしたら、数珠によって違うのかもしれない。
「針山さんには、説明されました?」
「もちろん。ゆももちゃんが呼んでくれたの」
昨日のことだ…。
少し照れつつ、オモモサマを見る。
大人しくて、優しくて、可愛い。
わたしのご先祖様なら、オモモサマに似るかな?
「針山さん優秀ねえ。では、オモモサマ、ありがとうございます!失礼しました!」
オモモサマは、愛尾先生の数珠の中に消えていった。
愛尾先生は微笑む。
「なかなか優秀ね。さあ、話は早いわ。新花咲学園深夜の七不思議よ」
新花咲学園深夜の七不思議…。
前の調査は、芳美さんと貫太郎さんが行ったらしい。
そこで、新たな七不思議が生まれたものが、新花咲学園深夜の七不思議。
「ふたりで、七つの七不思議を徹底調査してもらうわ」
愛尾先生が、黒板に七不思議を書く。
ひとつ目。
保健室のベッドに、理科室の人体模型が寝ている!?
ふたつ目。
音楽室のピアノを、家庭科室のマネキンが弾いている!?
みっつ目。
職員室のパソコンを、二宮金次郎が打っている!?
よっつ目。
図書室の本を、ベートーベンが読んでいる!?
いつつ目。
野球場のライトを、貞子が付けたり消したりしている!?
むっつ目。
1年1組の出席番号21番の子の椅子に座り、自由の女神が泣いている!?
ななつ目。
ここは空欄になっていた。
「わたしも、どんな七不思議があるか調べてたんだけど、ななつ目だけは、どのサイトにも載ってないの。それを書いてやるの」
愛尾先生がにっこり笑う。
めちゃめちゃ面白そう!
何か分からないなんて、いくつでも見つかりそうじゃん!
「今夜スタートよ。8時にここ集合にして。わたしもいるから。でも、入るのはふたりよ」
今夜ぁ!?
ますます楽しいになってきた!
わたしは、心が踊る気持ちで霊用室を出た。
5.初仕事で初めましてオバケさん
夜の8時。
薫見くんに言われた通り、ママに説得した。
「クラスの男の子の家で、みんな集まって勉強するんだって。わたしだけ行かないのイヤだし、いい?」
もちろんママはオーケー。
騙したり、説得したりは好きじゃないんだけどなあ。
オバケと騙し。
これなら絶対オバケだもん。
「あ、針山」
家の前で薫見くんが待っててくれて、わたしは学校へ向かった。
足取りが軽やか。
薫見くんは、ふとつぶやいた。
「今日は、絶好の調査日和だ。月が満月だから」
よく見ると、今夜は満月だった。
これなら、調査日和なんだ。
運に満ちあふれてるな〜。
「針山楽しそうだな。辞典は忘れてないだろうな」
「もちろん持ってきた。オトキサマはいないと思うけど」
最後の方は言葉を詰まらせながらつぶやいた。
薫見くんに聞かれなかったみたいで、ちょっとホッっとした。
だってねえ、怒られそうじゃん。
「おい、近道するぞ。大通りは目立つ」
薫見くんがわたしの手首を握る。
初めてのことだったから、緊張して歩きにくかった。
だけど、薫見くんはお構いなしに突き進んでいく。
「着いたぞ」
無言だったけど、愛尾先生と会えたから、緊張の糸がほどけた。
最終確認をする。
「順番に、効率よく回れば、10時には戻ってこれるはず。翔くん、下見来たんだし、出来るわね?」
愛尾先生が薫見くんに問う。
下見って…。
後から愛尾先生に聞いてみると、ふたりで効率よく回る道を考えてくれていたらしい。
「行ってきます、先生」
「行くぞ」
薫見くんと、職員室の裏口からこっそり忍び込む。
一応、警備員がふたり警備している。
隠れつつも、ちゃんと調査!
「手」
薫見くんに、手を握られた。
わたしは思いっきり離す。
だって、ねえ。
わたしなんかが、その…薫見くんと手をつなぐ、とか。
恥ずかしいし、無理っ!
「何だよ」
「恥ずかしいから、ちょっと」
「誰かいるのか!」
警備員に見つかる!
あわてて机の下に隠れる。
薫見くんと、至近距離なんだけど!
警備員の足音が消えると、職員室をよく観察した。
…何も、いないじゃん。
「写真撮る」
薫見くんが四方八方写真を撮る。
撮り終わると、職員室から出て保健室へ向かった。
保健室の鍵は、事前に愛尾先生にもらった鍵を使って開けた。
落ち着く人形が置いてある。
カーテンの奥、人体模型が…!
「いるな」
薫見くんはいろんな方向から人体模型を撮っていく。
いるじゃん!
わたしが求めていたやつ。
これなら、シャレーニいいって思えるかも。
「さあ、辞典を出せ。話すんだ」
あわててカバンから辞典を取り出す。
こんばんはからだよね。
えっと…。
「けをぼをほ」
辞典には、こんばんはにそう書いてあったので、辞典から手を離した。
すると、ヘンな言葉が聞こえてきた。
すぐに手を置く。
「あなたはシャレーニ?へええ、芳美ちゃんとは違うんだね」
よく目を凝らすと、人体模型の上に座っている人形。
薫見くんによると、オトキサマの子供サイズだそうだ。
「芳美さんを知ってるの?」
「もちろんさ。花咲学園の女神様さ。可愛いし、優しいし。芳美ちゃんはどこ行ったの?」
えっ、もう亡くなってるし。
わたしは、上を指差した。
すると、オトキサマの子供サイズはニヤッっと笑って、保健室を出ていった。どこかへ走っていくように。
「追いかける?」
「いい。次行くぞ」
薫見くんに手を引かれて、保健室の鍵をかける。
次は、図書室。
ベートーベンが読んでるって本当の話なのかな。
「何だかワクワクするね」
「今までのシャレーニとは違うな。みんな怖がっていた」
「だってわたし、オバケとか大好きだもん!」
あ、ヤバイ。
ついでしゃばっちゃった。
絶対こんなことしちゃダメ。
言い聞かせて、図書室のドアを開ける。
「ベートーベン、あれか?」
薫見くんが指差した先。
満月の次に照らされて揺れ動く影。
ちょっとカーブのかかった髪の毛。
「ベートーベンだ…」
辞典に手を重ねて言うと、ベートーベンが本をパタンと閉じた。
まっすぐ歩いてくる。
薫見くんが前に立った。
「針山は図書室から出ろ。カメラ。これ持って、校庭へ走れ。振り返るな」
薫見くんが持っていたカメラを受け取り、言われるがままに走った。
ベートーベンって悪い人じゃないでしょ?
なのにどうして。
校庭に出ると、愛尾先生が眠っていた。
「愛尾先生、愛尾先生!」
先生が起きると、今あったことを話した。
「翔くん…!図書室へ行きましょう」
愛尾先生とふたりで図書室へ駆け出す。こんなに本気で走ったの初めて。
そう思いながら、図書室のドアを開けた。
「薫見くん!」
そこは、カーテンがなびいており、開いていなかったはずの窓が開いていた。
いなく、なった?
窓に駆け寄り、窓の外を見る。
涼しい春風が吹いていた。
「愛尾っ」
あれ、いない。
となりにいたはずの愛尾先生が、いない…!
さすがにこれは怖い。
急にいなくなるなんて。
「シャレーニのお嬢ちゃん」
月光が照らすさっきと同じ影、ベートーベンだ。
どんどんこちらへ歩いてくる。
「かっ、薫見くんとっ、あっ、愛尾先生はっ?」
「ああ。ちょっと眠ってるだけ。すぐ起きるから大丈夫」
ベートーベンは、わたしのすぐそこまで迫ってきていて、ニヤッっと笑う。
わたしの顔を見回して、高笑いした。
「芳美ちゃんに似ていて可愛いな。一緒に音楽室へ行かないかい?」
「イヤ。薫見くんたちは?」
「芳美ちゃんと本当に似ている」
ベートーベンは、急にキツい目でにらんできた。
足がすくむ。
「芳美ちゃん…。じゃあ、ちょっと行くね」
ベートーベンが指を鳴らすと、図書室のすみで薫見くんと愛尾先生が眠っているのが見えた。
「薫見くんっ!愛尾先生っ!」
ふたりを呼び起こし、今あったことを説明する。
薫見くんにカメラを返し、図書室を後にする。
やっぱり怖かったあ。
みんなでいるとホッっとする〜。
「わたしも着いていくわ。心配」
愛尾先生も一緒に着いてきてくれて、音楽室へ向かった。
途中で、人体模型とオトキサマの子供サイズとベートーベンがいるのも気付かずに。
6.七不思議のななつ目は?
1年1組21番生徒のわたしの席に座っているらしい、自由の女神。
果たしているのか…!
「愛尾先生、カギお願いします」
カギを薫見くんがもらい、1年1組を開ける。
ドアをピシャンと開けると、みんなわたしの席に注目した。
何もいない…。
薫見くんが辺りを注意深く見て、ついでに写真も何枚か撮る。
愛尾先生も反応してないってことは、ここは何にもないんだね。
先に教室を出たわたしは、数珠が見えるようにめくった。
調査なのに制服で来た自由に後悔。
あんまり向いてないもん、この格好。
「ゆももちゃんっ!」
突然、数珠からオモモサマが出てきたので、思わず悲鳴。
薫見くんと愛尾先生も教室からあわてて出てきた。
「オモモサマ、どうしましたか?」
薫見くんが代表して聞くと、オモモサマは人差し指を口元に近付ける。
静かにの合図だ。
「すごい気配がするわ。芳美ちゃんたちの時にも感じた。どうしても調査しきれなかった七不思議が…」
「あれですか?ななつ目の」
オモモサマはうなずいて、数珠の中に戻っていった。
愛尾先生は声をひそめた。
「七不思議より、ななつ目をやりましょう。どんな七不思議かも分からないから、校内を探すのよ」
つばをゴクンと呑み込む。
愛尾先生はひとり。
薫見くんとわたしペアで調査する。
「針山、行くぞ」
薫見くんに引っ張られて、屋上から散策していく。
オバケがたくさんいるのかな、楽しみ!
図書室まで来た時。
緊張とうわついた気持ちのせいでトイレに行きたくなってしまった。
「あの、薫見くん。ちょっとお手洗い行ってもいい?」
さすがにこれには着いてこられちゃ困るので、ひとりでトイレへ向かう。
すると、なぜかヘンな匂いが。
いつも嗅がない匂い。
臭いって表し方の方がいいかもしれない。
何これ…!
「うっ、薫見っ、くん…」
わたしは、トイレの前で意識をプツンと切らした。
目を開けると、蛍光灯が光って見え、愛尾先生の背中が見えた。
「あの…愛尾先生」
愛尾先生は振り返り、急に抱きついてきた。
普通してはならないだろう…。
「良かった…。どうなることかと思ったわ。大丈夫?針山さん」
保健室か…。
ベッドに寝てるんだ!
カーテンを開けてみると、向こうには薫見くんが座っていた。
「かっ、薫見くん!」
「針山っ、大丈夫か!?」
薫見くんは、ベッドに駆けてくる。
わたしはゆっくりうなずいた。
あの時どうして…?
「今、何時ですか?」
「9時ぴったりよ。まだ大丈夫。安心して」
愛尾先生の言葉にほっとする。
すると、薫見くんがベッドに身を乗り出してきた。
「どうして倒れたんだ?」
「えっと…お手洗いに行こうとしたら、ヘンな臭いがして、気付いたら…」
そう。
…どうしていきなり?
わたしも気配を感じた?
「きっと針山、お前のシャレーニセンサーが発動したんだ」
シャレーニセンサー?
とりあえず、原因が分かってよかったかも!
「俺はお手洗いでも気付かなかった。つまりシャレーニセンサーだ。お手洗いに行こう。何かあるぞ!」
薫見くんは、わたしをおんぶしてーーーーーーーーーーーっ!?!?!?
「やだやだやだやだ、重いよ〜!」
わたしの声が保健室中に響いた。
お手洗いに着くと、さっきと同じ空気が流れている。
ちょっと気持ち悪くなった。
「うっ…」
わたしの声を聞き漏らさなかった薫見くんは、各教室にあるベッドに寝かせようと、一年生の教室に入る。
そして、奥の救護ルームのベッドにそっとわたしを寝かせた。
「重かったよね、わたし。ごめん」
「いいよ。一応鍛えてるし」
へ〜。
薫見くんの鍛えてる姿、一度でいいから見てみたいな〜。
救護ルームの電気を付ける。
これで大丈夫。
薫見くんは救護ルームのドアに手をかけた。
「あのっ、」
薫見くんは、ゆっくり振り返る。
大きく息を吸って、笑いかける。
「ありがとう、薫見くん」
薫見くんも微笑み、救護ルームを出ていった。
きっと頑張ってくれる。
ななつ目もきっと、何とかなる。
だったら、わたしも頑張らないと。
何をしたらいいんだろう。
「うおっ、コイツらだ!」
薫見くんの声!
それに重ねて、愛尾先生の声も聞こえてきた。
見つけたのかも!
ななつ目は何なんだろう。
考えるたびに、疑問がふくらむ。
体調なんてどうでもいい!
気になるし、オバケがいなくならないうちに、行こう!
疑問に任せて、救護ルームを出て、一年生の教室も出た。
「薫見くんっ!」
って、女の子のお手洗いなの!?
普通に入って…ちょっと!
わたしは女の子だから普通に入る。
薫見くんの上靴をちょっとにらみ、ふたりがいるところへ行った。
気持ち悪いけど大丈夫!だよね!?
「針山…!」
「大丈夫だから。それより、何?」
ここにいるのは、オバケの中でも基本中の基本となるオバケ。
トイレの花子さん。
「会いたかった〜、ゆももちゃん!」
「どうしてわたしの名前を?」
トイレの花子さんは悲しそうな顔をしてつぶやいた。
「知らないのか…アタシのこと」
うん、もちろん。
生きてる間に、トイレの花子さんに会うと思ってなかったし。
「アタシはゆももちゃんのご先祖。桃子。知らない?」
「知ってます!わたしの、ひいひいひいおばあちゃんですよね!?」
“ゆもも”
この名前の由来もここから。
柚子さんと桃子さんが、すごい人だったんだって。
だから、それを合わせたらしい。
「知っててくれて嬉しい!ゆももちゃんのひいひいひいおばあちゃんよ!」
やっぱり!
会えたんだ、ひいひいひいおばあちゃんと。
こりゃまた会えると思ってなかった。
「ゆももちゃんが初めて会ったオバケがアタシ。よろしくね!」
今まで会ったのは?
その疑問に答えたのは、数珠から出てきたオモモサマだった。
7.オバケの種類
「難しいよね。ゆももちゃんのひいひいひいおばあちゃんってことは、オバケ歴がかなり長いでしょ?オバケ検定ってテストに受かった桃子さまは、ちゃんとオバケと言えるの。その称号として、トイレの花子さんと呼ばれているわけ」
オバケ検定なんて受けたんだ。
オモモサマ、桃子さんのこと、桃子さまって呼んでるし!
そんなに大きいんだ、桃子さん。
「わたしは、ゆももちゃんに付いてるオトキサマだから、オトキ。オバケ検定に落ちた物は、オトキになるの。オバケ検定を受けてない者は、ユーレイと言われているわ」
説明を終えたオモモサマ。
オモモサマは、オバケ検定を受けたけど、落ちちゃったんだね。
数珠にスーッと入っていく。
「じゃあ、普通のオトキサマは?」
「ご主人さまが見つからないオトキ」
そっ、そういうこと。
やっと理解出来たかも。
桃子さんは、にこにこ笑いながら説明する。
「ゆももちゃんが今まで会ってきたオバケ?は、ユーレイなの」
だから、初めが桃子さんなんだね!
愛尾先生もにこにこ見守りながら腕時計をそっと見る。
「針山さん。知りたくない事実だろうけど、現実を見て。今は11時。そろそろ帰った方がいいわ」
げっ。
ママが心配して警察呼んだらどうしよう!
顔が青いわたしに、慰めるかのように桃子さんが言った。
「わたしが手を打っといた。ゆももちゃんのベッドに眠っているのは、偽者のゆももちゃん」
ナイス、桃子さん!
桃子さんには、ここに来たらいつでも会えると言うし、ここのお手洗いに限らず、いろんなお手洗いに出ると言うので、そのまま帰った。
シャレーニやってたら、こんないいこともあるんだね!
その日、わたしはなかなか眠れなかった。
偽者のわたしは、部屋に入ったとたんにスーッと消えていった。
今日は不思議なことがいっぱいだったな〜。
そう思いながら、深い眠りに落ちた。
8.そして、倶楽部は続く
慌ただしく走り回る、霊用倶楽部部員と顧問。
昨日の反省とまとめをして、何か紙に書いて。
それから、学園のお手洗いを駆け回っているわたしたち。
桃子さんがいないんだ。
どこのお手洗いへ行っても、気持ち悪くならないし。
シャレーニレーダーが、発動しないということだ。
「どうしたことだろう?何もいない」
わたしはつぶやいた。
薫見くんも「そうだな。今日は引き上げるか」と言った。
部室へ向かうと、書き途中の紙が置いてあった。
「そう言えば、薫見くん。この紙って何なの?」
「ああ、この紙。これは、霊界と言って、ユーレイからオバケからオトキまでがいる世界へ出す紙。倶楽部で調べたことは、全て出すんだ。おれたちは、変なことをしていないかパトロールをしたりするんだ」
パトロールしたり、謎を解決したり!
そういう活動なんだね。
「ふたりとも。これを見て。指名手配中のアンジェル。パトロールよろしくお願いします!」
初パトロール!
わたしたちの活動は、まだまだ続きそうだね。
(つづく)
あとがき
初めまして!
『花咲学園霊用倶楽部』の作者、相原梨子です。
楽しんでいただけましたか?
ゆももちゃんの霊用倶楽部入部。
それから、初のオバケとご対面と、いろいろありましたよね。
好きなシーンはどこですか?
また、好きなキャラクターは?
コメントお待ちしております!
皆さんは、オバケ好きですか?
わたしはキライです。
ちょっとの音や光が怖い!
どうしたら怖くなくなりますか?
だけど、ちょっと怪談は好きです。
どういうことでしょうか。
ですが、本当にオバケはキライ!
みんなはどうかな?
ここまででコメントをくれた、文楓さんをはじめとするみんな、ありがとうございます!
次巻もよろしくお願いします。
ここまで読んでくれた方も、ありがとうございます!
次回会いましょう!
相原梨子
次回予告
わたしの初パトロール!
薫見くんのカワイイおさななじみが、わたしのライバル!?
『花咲学園霊用倶楽部 2
ゆもものライバルあらわる!』
主な登場人物
針山 ゆもも
幽霊や妖怪が大好きな女の子。
地味で目立たない。
薫見 翔
クラスのイケメン。
幽霊や妖怪が見える。
愛尾 多恵子
霊用倶楽部の顧問。
薫見くんの親族。
アンジェル
自称天使のオトキ。
人間界に不正入国して指名手配にされている。
1.今日も霊用倶楽部!
今日も倶楽部へ向かう。
わたしの大好きなところへ。
ドアをノックして、開けるひょうしにきしむ音がするドアを開ける。
くつろいでいる、どこか似ているふたりがちょこんと座っていた。
「いらっしゃい、針山さん」
わたし、針山ゆもも。
ここ、花咲学園の中学1年生。
霊用倶楽部の部員!
ここは、この倶楽部の部室。
部員はふたりだけ。
それには理由がある。
それは、あの日のこと。
クラブを決めるとクラスがざわついた時だった。
うっすら見えた文字。
先生は見えないのかな?
書いてあるのは、霊用、倶楽部。
霊って、幽霊ってこと?
わたしは、そういうのが大好き!
だから、霊用倶楽部に入ったんだけど、いきなり言われた言葉。
「針山はシャレーニ」
シャレーニって言うのは、簡単に言うと、幽霊やオバケとつながりを持っている子。
見えたり、話したり出来るの。
そんな部員のひとり。
もうひとりは、薫見翔くん。
通称、薫見くん。
薫見くんは、シャレーニじゃなくて、シャレーニを支える仕事。
わたしを支える仕事を持ってるんだ。
顧問の先生は、愛尾多恵子先生。
通称、愛尾先生。
薫見くんの親族で、唯一の顧問。
シャレーニと何か関係してるらしい。
「どうしたの?こんな朝早く」
「いえ。いるかなと思いまして」
時計を見上げる。
まだ短い針が、7を指している。
部活に入っていないわたしは、全力で霊用倶楽部の活動をしている。
朝練のある部活の部員は、部室やグランドであわただしく準備している。
「今日は、暇な時に来てね。翔くん、あの紙」
愛尾先生が薫見くんを見る。
薫見くんの手から、滑ってくるように紙が一枚テーブルに置かれる。
「霊用倶楽部部員届。霊界に届ける紙だから、ちゃんと書いて」
ボールペンを借りて、名前や年齢、誕生日、意気込み、なぜか遺書に書くような欄もある。
霊用倶楽部って、そんなに危険?
そう思いながら、ボールペンを走らせた。
書き終わると、誰も何も触っていないのに、紙がふわふわと浮き、ポストに投函される。
不思議そうに見ていると、愛尾先生が人差し指を立てた。
「まだ針山さんに見えないかしら。オトキサマが運んだのだけれど」
全然、見えない。
それを知った薫見くんは、手をポンと打って声を上げた。
「針山。今日から特訓だ。オトキサマ語のついでに、レーダーも!」
「どういうこと!?」
オトキサマ語は、ちょっと知ってる。
性質に沿って、オトキサマに対応する言葉があるんだ。
それは、前から覚えさせられてるんだけど。
「シャレーニレーダーは、大きなものにしか発動しない。普通のレーダーが発動出来るように特訓だ」
「そんなにいっぱい無理だよ〜」
そう言ったものの、わたしはやる気で満ちあふれていた。
だって、ちょっとでもオバケみたいなのに近づけるんだから!
「やってみる?針山さん」
「はい!やります!」
その日朝から、部室にわたしの声が大きくこだました。
2.薫見くんの幼なじみ・すみれ
放課後の部室。
愛尾先生は出張でおらず、本当は倶楽部がないんだけど、薫見くんに呼び出されて来た。
「ここの部室には、オトキサマが5体いるんだ。それらがどこにいるか。勘でもいいから、手当たり次第探してみろ。レーダーが発動してなければ、見つけられないはずだ」
えええっ!
じゃあ、絶対無理じゃん。
わたしレーダー発動しないからね?
そう思いつつも、薫見くんを見ると、早くやれとでも言うようにうながしてくる。
もーう、やればいいんでしょ。
「すみませーん。レーヨー倶楽部さんでしょーか?」
部室を訪ねてきたのは、ハキハキしていてキラキラしてる女の子。
誰だろ、この子。
霊用倶楽部知ってるの!?
見えないはずだよね!?
「あ〜、知らないよ。翔くんがレーヨー倶楽部の部員だって言うから来ただけだから」
えっ、どうしてわたしの考えてることが分かるわけ?
そう思っていると、うんざりとでも言うようにその子はつぶやく。
「あたし、何でか知らないけど、人が考えてることが分かるの。キミの考えてることも分かるよ」
えーっ、そりゃすごい。
この子の前は無にならないと。
勝手に心の中見られちゃ困るし。
…これも見られるんだ!
あわてて無になる。
すると、ずっと無口だった薫見くんが口を開いた。
「何で来たんだ、すみれ。ヘンなお芝居はやめて、元の姿に戻れ」
すみれさんって言うんだ。
薫見くんに言われると、渋々すみれさんは元の姿、に戻った。
身長はどんどん小さくなり、無邪気な小さな女の子。
そこに、もふもふのしっぽ。
それからピョンと生えた耳。
きつねみたい…。
「初めまして、ゆももさん。あたしの名前はすみれ。翔くんの幼なじみ。ずっと前に死んじゃったんだ。今の身長くらいの時に」
それって、めちゃめちゃ前だ。
4歳くらいかな?
なんか、かわいそう。
「あたしはオトキのひとり。本当は隠れててって言われたんだけど…」
あ、5体のうちのひとり?
みっけ!
レーダーじゃないけど、見つかって良かった!
「ねえねえ、ゆももさん」
すみれさんがかがむよう指示する。
わたしがすみれさんの身長に合わせると、そっと耳元でささやいた。
「サポーターの翔くんに、好意持たないってこと約束して。翔くんが好きなのは、あたし」
こっ、好意!?
わたし持ってないけど!
訂正すると、すみれさんはにこにこ笑ってつぶやいた。
「くれぐれも、今は違っても変わらないようにすること、約束ね」
そう言い残して部室を後にするすみれさん。
薫見くんが好きってこと、かな?
じゃあ、ちょっと距離置いた方がいいって解釈したらいいの…?
「針山?すみれを抜いて4体、探してみろ」
ハッと我に返った。
えっと、どうしたらいいの?
ちゃんと指導を受けたらいい?
それとも、今すぐ部室を出たらいい?
「針山大丈夫か?」
とうとう薫見くんが顔を覗き込んでくる。
ひっ、ひぇぇぇえええ!
こんなことしてたら、すみれさんに怒られることまちがいなしだよーっ!
「始めるぞ」
「ちょ、ちょっ、ちょっと待って。お手洗い行っていいっ?」
薫見くんはコクンとうなずく。
あわてて部室を後にすると、すみれさんがいるのに気が付いた。
「すっ、すみれさん。道に迷いましたか…?」
わーっ、絶対ないよね。
言ったことに後悔していると、すみれさんはクスッと笑った。
「いい度胸ね、ゆももさん。あたし、絶対負けないからね!勝負だ!」
待って待って待って待って。
だから、ホントに違うってば〜。
そう言うのも、もう遅い。
すみれさんは足早に去っていった。
ちょっと〜、どうするの!?
薫見くんのこと、す、好きみたいになってるよ…!
「針山、こんなところにいたのか。すみれと針山の声が聞こえて何かと思ったら…。もう済んだか?」
わたしはコクッとうなずいた。
その日家に帰ると、わたしの部屋の椅子にすみれさんが座っていた。
何でいるわけ!?
そう思ったけど、すみれさんはクルリと椅子を回転されて笑って見せた。
「あの後、何にもなかったみたいね。どうやって対決しようか?」
「何度も言うけど、わたし薫見くんのこと、すみれさんみたいな感情持ってないからね」
すみれさんはクスクス笑う。
何で笑うの…。
そう思うのもつかの間。
すみれさんは人差し指でわたしを突き刺した。
「バレバレなのよ、あなた。翔くんのこと好きなくせに隠して!いい加減、やめてほしいくらいね」
この子に、通じないじゃん。
わたしの気持ち。
薫見くんは、頼もしいパートナーだと思ってるだけなのに。
「何が頼もしいパートナーよ。…指名手配されてるアンジェル知ってる?」
「もちろん。前から目を付けてる」
すみれさんはちょっと退く。
だけど、すぐ強気になって言い返してきた。
「あなたとあたし、どちらがアンジェルを捕獲できるか勝負よ。いい?」
「薫見くんと一緒じゃダメ?」
「当たり前でしょ!」
マジか…。
わたし、どうしても気持ち悪くなっちゃうかもしれないんだよ!
そういうときこそ仲間が…。
「そんなの知らない。あたしなんてこんな小さいんだからおあいこ。ってことで、よろしくね〜」
もぉう!
霊用倶楽部部員の名にかけて、受けて立ってやる!
3.呼び出されたシャレーニ
翌日の朝。
わたしは部室に行かなかった。
昨日、気付いたら置き手紙があった。
『霊用倶楽部の部員には隠せ』
すみれさんからだよね。
呼び出されてるの。
朝、裏庭って。
「針山」
薫見くんと、ちょうど同じ時間だったので、一緒に途中まで行ったけど。
周りの視線がキツい!
「あ、あの、今日は部室行かない…行けないから。あと、先行くね!」
薫見くんに追いかけられたけど、その辺の角をとりあえず曲がって何とかなったものの…。
ここ、どこ!?
周りには、花咲学園の生徒が全然見えない。
どこから来たのかも覚えてないよ!
どうする、ゆもも。
「ねえ、あれ花咲学園の生徒じゃん。頭いいのかな〜?」
代わりに公立の生徒がいるっ!
あわててその子たちから逃げるけど、行くども行くども公立生が。
裏庭、間に合わない!
「お〜い、ゆももさん。花咲学園行かないの?まさか、不登校?」
すみれさん…!
わたしは、敵だけど、すみれさんに助けを求めた。
「こんな子と勝負するんだ、あたし。いいよ、案内する」
良かった〜。
でも、学園の生徒じゃない人に案内される学園の生徒…。
不思議。
何とか学園に着いた。
結構外れてたなあ、道。
すみれさんはスーッと消えて、どこかへ行ってしまったけど、裏庭に行ったんだよね。
時間に間に合わない。
仕方ないから、直で裏庭行こう。
花咲学園の裏庭は、木が生い茂っていて暗い。
ひとりで行くのは本当に怖いところ。
すみれさん、どこ〜?
「よく来たね、シャレーニちゃん」
誰よ、この声。
すみれさんの声じゃない。
声のトーンが低くて、すごく暗い。
身近で思い当たる人がいない!
「そりゃあそうだろう」
この人、考えてること分かるの?
すみれさんと一緒。
ってことは、やっぱりすみれさんが脅かしてきてるだけ…?
「ねえ、すみれさん」
「すみれじゃない」
もぉう、すみれさんったら。
ドスンと大きな音を立て、わたしの前に立ちはだかった人?は…。
「あたいが誰か分かる?」
どこかで見たことがある顔。
人じゃないから、オバケかオトキサマかユーレイの誰か。
会ったことがあるのは、桃子さんことトイレの花子さんのオバケ。
オトキサマは、あちらこちらにいるよね。
ユーレイはあんまり会ったことないと思うんだけど…。
「なかなか筋がいいわね。あたいは、あなたが会わないユーレイよ」
ユーレイ…!
じゃあ、最近ユーレイになったの?
それとも、長い間オバケ検定を受けなかった?
「ハハハ。面白い子ね、あなた。最近ユーレイになったって推理で当たり。よくやるわね」
そろそろ自己紹介したらどうなのよ。
それに答えるように、そのユーレイはニヤッと笑って見せた。
「初めまして。あたいはアンジェル。指名手配されてるユーレイよ」
あ、アンジェル…。
ついに会えた。
これを捕獲したらいいんでしょ?
それに、霊用倶楽部でも一見落着になるはずだよね?
「あたいの正体見られたからには…えいっ!」
わたしはアンジェルに吸い寄せられ、スクールバッグを裏庭に置いてヘンな世界へ連れ込まれたのだ。
多分だから分からない。
ホントかどうか。
だけど、何か感じる。
わたしが眠っている姿を見下している誰かがいること。
「そう思うのかい、シャレーニちゃんは。いい勘だわ」
この声、このしゃべり方…。
心の声を読み取る力…。
もしかして、主はアンジェル!?
「ふふふ、当たり。さすがシャレーニちゃん。オモちゃんも言ってたわ」
オモちゃん…。
これで思い当たる人物は、オモモサマかも知れない。
オモモサマは、わたしに使えているオトキサマのこと。
「教えたげるね。あたい、シャレーニちゃんをさらう前に、オモちゃんもさらったの。その時言ってたわ。今回のシャレーニはすごいと」
オモモサマ、そんなことを!?
う、嬉しい!
さらわれている身にも関わらず、怖さも捨てて喜んでしまった。
すると、アンジェルはクスクス笑って指差した。
「シャレーニちゃん、あたいとすみれちゃんの関係知ってる?」
すみれさんとアンジェル…?
関係あったの…?
だけど、ちょっとおかしくない?
アンジェルを先に捕獲した方が勝ち。
関係あった人を捕獲したら…。
「オモちゃんのウソツキ。シャレーニちゃんバカじゃないの」
バカなんかじゃないし。
確かに、入学テストは50位程度。
140人の中でね。
これでは優秀とは言えない。
「すみれちゃんとは、親友だったの。あたいが先にユーレイになって、それから入ってきたわけ。だけど、あたいは罪を犯したの。すみれちゃんには、あっけなく捨てられた。今まではどうしてるのか知らないけど、もう無関係でありたい関係よ」
その時、やっとすみれさんが言いたかったことが分かった。
あの時笑っていなかったすみれさん。
真面目な顔で、意志を感じた。
会いたかったんだね、アンジェルに。
「ありゃ、こっちがこう思っちゃ良くないんだけどさ…」
アンジェルが微笑む。
今までとは違う笑みだった。
もしかしたら、本当に心から笑えてるのかもしれない…!
そう思って、嬉しかった。
「シャレーニちゃん、いい子だね。気に入ったよ。天使のあたいからそう思ってもらえるのはすごいよ!」
アンジェルの名前って、もしかして天使から来てる?
天使はエンジェルだから。
ちょっと、ウケる…。
「指名手配だから、一旦シャレーニちゃんに捕まるよ。そしたら、訳話してシャレーニちゃんの友達になってもいいかい?」
「友達、ですか?」
わたしに友達ができるの?
ウソッ、嬉しいっ!
目を輝かせたわたしは、アンジェルにもそんな風に写ったみたいで。
「いいのかい?シャレーニちゃん」
「もちろんっ!」
アンジェルはにっこり笑って、手を前に出してきた。
指名手配されていいってこと?
結局、いい人じゃん。
「わたしは、今指名手配出来ないの。薫見くんのところへ来てくれる?」
アンジェルはにっこり笑って、わたしの後ろに着いてきてくれる。
本当の友達みたい。
こんなに側にいてくれる友達なんて、アンジェルが初めてかも。
「ゆももっ!心配したんだぞっ!」
呼び方が変わった…?
いつもは針山なのに…。
すると、突然薫見くんの顔が変わる。
もしかして恥ずかしがってる?
ふふふっ、ちょっとカワイイ。
「指名手配のアンジェル。捕まえて」
薫見くんは、制服のポケットから手錠みたいな物を取り出して、アンジェルの手にそれをかけた。
捕まっちゃった、アンジェル。
「翔くんっ!針山さんっ!」
職員室から、愛尾先生が走ってくる。
愛尾先生は、アンジェルを見るなり目を見開いた。
「アンジェルを捕まえたのは針山さんかしら…」
「捕まえたんじゃないです。助けてあげたんですよ」
愛尾先生も薫見くんもすごくキョトンとしている。
アンジェルと、さっきあったことを説明する。
仲良くなったことも含めて。
「そうなんですか。まあ、針山さんの友達になってもいいと思いますよ、アンジェル」
愛尾先生がアンジェルと何やら話している。
アンジェルも、すごく楽しそう。
…いいこと考えた!
そうしたら、いっそのこと…。
「アンジェルも霊用倶楽部入ればいいんじゃない?楽しそう!」
わたしの言葉に、薫見くんは首を横に振った。
「人間じゃない者は、倶楽部に入ることは出来ない。ただし!」
ゴックン。
なんか緊張する!
「協力することなら出来る。手柄がアンジェルだとしても、アンジェルの手柄と発表はされないが」
協力っ?
それでもほぼメンバーのひとりじゃんっ!
アンジェルを見ると、すごく目を輝かせている。
「アンジェル、協力してくれる?」
「ええっ!」
協力者が増えたぞーっ!
こんにちは。
ドジで地味っ子なゆももちゃんとイケメンでモテる謎少年の薫見くんのふたりが主役の物語、どうですか?
私は葉っぱを卒業するのですが、今巻でこの物語は完結します。
短かったですが、ありがとうございました。
完結したら、読者さんのオリジナル小説を書いてください。
楽しみにしていますね!