笑ってよ、
もうこれで “お別れ” なんだからさぁ
プロローグ、
「ね、 聞いて! 好きな人が出来た! 」
「私、 ××君が、 好きなんだ...... 」
勿論、 応援するよ。
1、
××君...... 恋バナではよく出てくる名前。
所謂 “モテ男” だけど、 何がいいのかさっぱり分かんない、 そんな非モテな私。
雀も鳴くのを諦めるような五月蝿さの中の教室、 朝休みは唯一の休憩時間だ。
そんなモテ男の名前が、 まさか友達の口から零れるとは。
「彩舞は...... 優君一筋だもんね。 」
それ、 いつの話...... 優君、 それは名前の通り優しくて可愛い、 そんな子で。
ああ、 申し遅れました。 宮下彩舞、 中学3年です。
趣味は...... ありません。 特技は...... やっぱりありません。 特出した所も何もない、 地味で何処にでもいそうなヒトです。
「××君ってさ、 優しいよね! カッコイイし、 成績優秀だし、 運動神経だっていいし! 」
優しい? 成績がいい? 運動神経がいい?
「そう思わない? だってさぁ...... 」
認めてあげよう、 仕方ない。 これは、 惚気を聞かないようにするための......
......
なんか遥が五月蝿くなりそうだから、 黙っておくのが1番だな。
「ね、 遥。 ××君って、 そんなに...... 」
話してる途中なんだけど......
すごい殺気を感じるのは気のせいだよね、 ね!
「あ、 ××君来た! 」
そんな機嫌も吹き飛ぶほどの、 格好良さらしい。
そんなの何処から感じられるのか、 気になって仕方がない。
××君が教室に入って期限が良くなるのは、 遥だけじゃないみたい...... です。
「××君! 」
あ...... 話に行ってる。
××君の周り、 女子ばっかり、 飽きないのかな?
女子なんて...... おもんないよ。
まあ、 モテ男はね......
「おはよ。 」
え...... 私に挨拶した? 今、 さっき......
しぃん...... と静まり返る教室に、 ××君の声の余韻に浸るヒト。
挨拶って返した方がいいよね。
静かな教室にさよならを告げて、 笑顔をつくった。
「おはよう。 拓海君。 」
あの日から何日も経ったけど......
相変わらず、 女子の視線が痛い毎日であります......
「宮下さん! 」
授業のノートを集める係の私は...... 拓海からの呼びかけに応じる毎日でもあります......
青いふちの眼鏡の度数は私にぴったりだった。
突然何かと思ったか? まあ、 そりゃそうなるでしょ。
なんと...... 席替えで、 席が隣になってしまったのです......
あ、 勿論拓海とね。
それで、 視力Bのわてくしは、 黒板の字がギリギリ見えない訳ですわ。 だから拓海から眼鏡を借りてる......
ああ、 近付きたい理由じゃないからね!
私の拓海の印象は大分よくなった、 多分。
結構優しいところとか、 見つけることが出来た。
けど、 そんなに...... 他の男子と何か変わるわけでもなく。
むしろ、 他の男子の方が......
遥が怒るから、 ここまでにしとくよ。
拓海とは特に何も喋らない。
目を合わせて、 にこって笑い合うだけ。
ただ、 それだけ。 他の何でもない。
何でもない、 はず......
実は、 拓海と私は同じ小学校。 あんまり話さなかったけど......
ああ、 他にも同小の人いるよ!?
ううん、 話してなかった訳じゃない。
違うんだ。
拓海は小学校の時からよくモテてて......
友達も好きだって言ってた。
応援してた。
その人とを、 ずっと......
拓海は元々フレンドリーな人で。
そうだった。
こんな私とも、 たくさん話してくれた。
中学に入って、 なかった事のように接してた。
こんなの、 駄目だって分かってたのに......
2、
思ってもみなかったものが、 目からこぼれ落ちた。
それは、 ゆっくり教室の床に落ちて轟く。
やり直さないか...... って。
瞬く光に連れられて、 見たことのある光景に目を瞬かせる。 もしかして......
「おはよ。 」
そこには、 拓海がいた。
......
え?
え? え?
え......
「宮下さん? 」
挨拶って返すもの...... だよね...... 返してなかったから不思議に思われたみたい?
待って!
“中学の” 友達に、 “中学の” 教室...... あれ、 なんか違う?
「彩舞! 」
あれ? 小学校の友達?
「彩舞、 名札忘れてるよ。 ランドセルの用意もしてないし...... どうしたの? 突っ立って。 」
ランドセル? 名札? ...... もしかして......
小学生に戻った!?
えっと...... ついていけてない人、 多分殆ど、 というか読まれてるかも怪しまれてるような......
読まれてる前提で話を進めちゃいますが、 ついていけてない人のための、 まとめといきますか!
モテ男の拓海に、 非リアの私。
拓海はなんだかんだ言って、 私に干渉してくるけど、 私は拓海とは話したくない。
遥たちにも隠してたけど、 私と拓海は同小。
話したくない...... そんなのおかしいけど......
色んな思いがこみ上げてきた涙に乗って、 私は小学生に戻って......
これって小説の物語中に言う事じゃないよね!?
まあ、 許してくだはい......
はい! 小学生に戻った私。 だけど、 色んなことがまだ慣れてない。 小学生の時は......
拓海呼びな訳ないよね。 拓海くん、 かな。
「では、 席替えします。 」
色んなことを考えている内に1時間目が始まった。
朝の会とか、 全部記憶にないんだけど。 これやばいやつ? アルツハイマーとかそういう系? そんな訳ないよね! こんなことで、 アルツハイマーとか、 世の中のアルツハイマー患者に失礼だね。
「4班は...... 東さん、 谷川さん、 宮下さん、 富士丘さん。 」
いつの間にか名前を呼ばれる、 馬鹿氏。
待って、 ねえ待って。 拓海...... ごほんごほん...... 拓海くんと同じ班じゃない!?
あ、 富士丘さん=拓海くん、 だからね。
にこっと笑う拓海くん。 あ、 思い出したんだけど、 拓海くんなんて言ってなかった気がする。 フジさんじゃなかったっけ。 皆そう言ってるし。
「宮下さん、 何番がいい? 」
「何番でも! 」
この番号というのは...... 私のクラスでは班ごとに番号を決めて、 その番号にあった仕事をすることになっている。 例えば、 1がノート配り、 2がノートあつめ、 3が発表、 4がリーダー、 とかね。 仕事は日替わりだよ。
「じゃあ、 こう、 でどうかな? フジさんが1番で...... 東さんが2、 谷川が3、 私が4。 」
「いいんじゃない? 」
みんな、 適当だな。 これ私が言っていいやつか分かんないけど。
これから、 はちゃめちゃな小学生生活が始まります!?
中学生の私はどうなってんだろ......
フジさんの隣は東さん。 東さんの好きな人は...... フジさん。 フジさんの好きな人は...... ?
好きだけど、 話せない。
元々仲良くないし。
東さんとフジさんの関係はきっとこんな感じ。
フジさんだって、 どんなにフレンドリーでも全く話してこなかった人と話すのは...... きっと気が引けるんだな。
...... だからと言って、 そんなに私と話そうとしなくてもねぇ......
フジさんと私の席は前後の関係。
フジさんは後ろを向いてくる。
きっと、 寂しいんだろうな。
でも、 東さんとだってたくさん話すよね。 勿論。
あれ? 少し、 寂しいって思ってる?
そんな訳ないよね!
絶対、 あるわけない......