傘はささずに、そしたらあなたに見つけてもらえるかしら。>>2
長続きしなさそうですが書きたいのでスレを立てました、あすたりすくです。仮名です、適当です。
これは、ひとつのお話じゃなくて、いろんな人の雨の日のはなし。細かい話がちょこちょこ、…の予定。そのうちネタ切れ起こしそうです。亀更新ですが、見かけた際はちょっと読んでみてくれたら嬉しいです。コメントどうぞ
薄暗い、曇り空。前までは不穏に感じるはずだったそれは、今では希望の光のようなものに思える。当然、光はさしていないけれど。
やがて、雨が振り始めた。今、多くの人が空を見上げて顔をしかめたことだろう。その通り、周りの人々が、不満げな声を口々に漏らした。
そんな中、わたしは、密かに心を踊らせている。傘も持っていないのに。
わたしにとって雨の日は、あの人に会える、特別な日なのだ。
きっと今もあの場所で、あの人は傘も持たずに立っているのだろう。雨宿りの間だけ許される時間は、ドラマティックだ。
あの人に出会ったあの日も、こんな雨が降っていた。
*(回想)
雨がまた降っている。これで、何日目だろうか。こんなに長く続くと、さすがに気分も落ち込んでくる。
薄汚れた窓から、外をぼんやりと見つめる。そういえば、傘、家に忘れてきたんだった。ふと思い出して、溜め息を吐く。学校から家まで帰るのに、どれほど濡れることになるだろうか。考えただけで憂鬱になる。
「やー佐藤、すっごい暗い顔してんね」
沈んだわたしの表情とは対照的に、にんまりと笑う佳菜(今井佳菜、わたしの友人だ)の顔は晴れやかだった。雨が好きなのだろうか、全く気が知れない。
わたしがまた溜め息を吐いて窓を見ていると、佳菜はやれやれと首をすくめる。それから、春なのにー、と口ずさみながらどこかへ消えていった。
そういえば今は、春だった。それも忘れるくらい、雨は続いているのだ。
佳菜が歌っていたあの曲は、はたしてなんというタイトルだったか。ぼんやり考えてみたけれど、どうにも思い出せなかった。