ちょこちょこ更新
2:宇治金時:2018/02/11(日) 15:41 「この家のものはおるか!!!」
耳を突き刺す甲高いロリ声。
日曜の昼過ぎ、柔らかな空気を
ブチ壊す声で私の昼寝は終了した。
ピンポーン、ピンポンピンポンピンポーン…
「……うるさい」
ピンポンピンポンピンポンピンポーン
普段なら居留守を使うところだけど、
やけにしつこい。
止めて、インターホン壊れる。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン「おらんのか!?」
「在宅だと思います、テレビの音
するでしょう?」ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
話し声は二人ぶん。
二人とも女のようだ……そして両方
アニメ声と言うか、キンキンしていて
聞くのが苦痛な声をしている。
これ以上は近所迷惑、とっととお帰り願わないと。
そう思ってドアを開けると…
「なんじゃっ、居るのならもっと
早く出てこい!!!!」
「こら失礼ですよ。私達は挨拶をしに来た側なんですから」
「うぐ、そ、とれはそうじゃが…」
……こいつら人間?
ばばくさい口調の女子…いや少女は
ショッキングピンクの髪を、左右違う高さでツインテールにしている。
服装はクラシカルロリィタ。意味が分からない。
もう一人の方は、柔らかそうな
黄色のワンピースに白のカーディガンを羽織っている。
言葉使いも変な所は無い。
普通だ。
………ただし、青紫の髪と緑の瞳を
除いて。
呆然としている私を無視し、
ピンク髪の少女は笑顔で叫ぶ。
「隣に越してきた者じゃ、よろしく
頼むぞ!!」
「よろしくお願いします……
すいません、この人馬鹿なんです。」
昨日、隣の空き屋に人が越してきた。
人工的な色のピンク髪を、ツインテールにした少女。
ロリな見た目に反して、口調は傲慢婆さん……なんだこれ。
もう一人は、長い青緑の髪をした
美少女。多分大学生くらい。
それだけなら、コスプレ趣味の二人組なんだろう。とか……無理矢理自分を納得させられる。
が。
……青緑ちゃん、ピンクの子を
抱えて歩いてるんだ。
人形でも持つかのように、両手で
抱きかかえて、歩いててる。
ピンクの子を下から
すくうように抱えているのに、足が邪魔そうにも見えない。
ていうかあの子、足が無い。
謎しか無いよあの二人組……
「……よし、関わらないようにし」
ピンポーン。
「………」
「生糸です、あの…回覧板を渡しに
伺いました」
「はよう出んか!!!」
「いま、出ます……」
おのれ回覧板。おのれ町内会。
続き希望
5:宇治金時◆s.:2018/02/13(火) 23:31>>4 あざます
6:宇治金時◆s.:2018/02/13(火) 23:55 これも回覧板のため。
仕方なく、本当に仕方なく、私は
目に優しくない色彩の二人組と対峙していた。
「平塚さん、どうぞ」
「どうも…」
そう言って回覧板を手渡してくれたのは、青紫こと『生糸うずら』さん。
「感謝の言葉は『ありがとうございます』じゃろう?」
このピンクの傲慢ババァ幼女は
『ぱみ』さん。
……なんだその名前。
百歩譲って『生糸うずら』はまだしも
『ぱみ』って。
名字はどこへ旅に出た。
「あの……」
と、うずらさんから話しかけられた。
「あ、はい?」
「そういえば平塚さんの下の名前、
聞かなかったなと思って…」
あぁ、そういえば言ってなかった。
「平塚由奈です。由々しきの『由』に
奈良の『奈』でゆな」
「なっ……!?」
?
普通に名乗っただけなのに、ぱみさんがひどく驚いている。
いたって普通の名前だろうに……
貴女と違って。
「そうか、そう、か………」
かと思えば、憐れむような視線を
私に向けてくる。
なんなんだこのロリババァ。
「こら、もう帰りますよ。」
うずらさんが若干上ずった声で
ロリババァに言った。
「ああ……おい、平塚。困った事があれば、なんなりと申せ!!」
「へ?」
「私は、憐れな人間に情けをかけられぬような冷血ではない。
つまらぬことでもよいから、頼るのじゃぞ!!」
「余計な事言わない!!!………すみません、本当に」
「………はぁ。」
遠くから、すみませんーと謝り続ける
うずらさんの声が聞こえる。
(なんで私『可哀想な人』扱いされたんだろ…)
何も考えたくなくて、耳をふさいで
家へ戻った。
とりあえず、アイスでもかじろう。
【帰り道のぱみとうずら。】
ぱみ視点です
「……なぁ、うずら」
「はい。どうしたんですか?」
隣人の平塚に回覧板を届け、家へと
戻る途中。
どうしても我慢ならず、私はうずらに
話しかけてしまった。
「最近の親は……馬鹿なのか…?」
平塚の娘の名前は『由奈』。
ゆな、という言葉が持つ意味を
知っているのなら、決して子供に名付けたりはしない。
「お言葉ですが、ぱみ」
「なんじゃ」
けれど、うずらはどこまでも冷静に
淡々と事実のみを口にする。
「お気持ちはわかりますし、正直
私も自分の娘には絶対つけません。」
「なら…」
「ですが。」
「もはやこれはありふれた、普通の
名前なんです。
『ゆな』という響きで『湯女』を連想する人の方が少ないんですよ。」
……これが、普通?
私なら、親から自分への、人生最初の
侮辱と受けとる。
だが、これをうずらは、普通だと言い切った。
ならば……
「…そうか。」
ならばそれが、普通なのだろう。
私も、考えを新しくせねばならんな…
「ちなみに妹さんは『初花』ちゃん
だそうですよ。」
「は?」
前言撤回。
やはり平塚の親は、馬鹿だ。
私だけは平塚の見方でいてやらねば…!!!
使命感で体を焦がしていたら、いつの間にか家の前。
うずらが玄関のドアをあける音が
聞こえた。
「生糸うずらです。
早くクラスに馴染みたいです…宜しく
お願いします。」
…まじかよ。
私、平塚由奈の通う 私立杉原高校は
衝撃の偏差値43。
まぁ所謂、滑り止め高校。
本命の市立四つ葉高校に落ちた私も
今ではすっかり杉原生。
その杉原高校2-Dに、青紫の髪をした
美少女が転入してきた。
「はい、じゃあ生糸さんは
一番後ろに席を用意してますから。
あそこに座って下さいね」
「はい。」
目に優しくない色彩の、怪しい隣人。
残念ながら、今日からその一人が
クラスメイトになりました。
「……ほし、ぐみ?」
「そうそう。2-Dの通称だよ!!」
休み時間、うずらさんの席には
沢山の生徒が群がっていた。
彼女は真後ろなので、嫌でも話が聞こえてくる。
「ちなみに2-Aが牡丹組で、2-Bは百合組、2-Cは……」
クラス委員の井上桜ちゃんが
明るく説明をしている。
……明るく語る事ではないよね?
ここ杉原高校では、特殊なクラス
分け方法がとられている。
容姿端麗、文武両道、品行方正
完璧な生徒が集められるのがA組。
通称、牡丹組。
勉学に秀でた生徒が集められるのが
B組。
毎年女子の割合が多い。
通称、百合組。
B組とは間逆、運動に秀でた生徒が
集められるのがC組。
通称、菫組。
E組は、不登校や知的障害などがある
生徒のサポートクラス。
ここだけ通称無し、ただのE組。
そして我らがD組は、
キラキラネーム、DQNネームその他諸々……
『常識的な名前ではない』と判断された人が入れられるクラス。
通称星組。
名前がクラス分けに影響する理由は
入学式で説明された。
なんでも
『ペット感覚で子供に名前をつける
親は、頭が足りない場合が多く
その親に育てられた子もまた、歪んでいるかもしれない』
とかなんとか、無茶苦茶な事を
言っていた。
本当は、校長の娘が名前で
いじめを受けた事があるらしく
『普通の名前の中にあるから異端なのだ。
異端を寄せ集めた中に居させれば
目立って苛められることも無い』
との考えのもと設立されたらしい。
成る程、木を隠すなら森の中…
「由奈ちゃーん、私たちも
うずらちゃんと話に行かない?」
あ。
「うーん…私はいいかな」
今話しかけてくれたのは、私の親友
東田伽夜ちゃん。
かよちゃん、ならいい名前なのに。
「ちぇ、ノリ悪ぃな」
悪態をついたのは坂木原海星。
「黙りなさいよヒトデ」
……あ、うずらさんビックリしてる。
聞いちゃったんだね。
クラス委員の桜ちゃんは、
井上桜と書いて井上桜(イノウエ・チェリーブロッサム)って読む事。
授業中、後ろの席からメモ用紙が
回ってきた。
……私の後ろはうずらさんです。
仕方なくたたまれた紙を開くと
『明日は ぱみ も転校して来ます』
の文字。
えっ。
数学のノートを破り取り、すぐさま
『まじですか』と書いて回す。
十秒と立たずに『まじですよ』
と書かれた紙が、私の机の上に置かれた。
見るからに怪しいから、関わりたくないのになぁ……
ていうか、あのロリBBA高2かよ。
うずらさんも高2かよ。
なんで二人暮らししてんの……?
今日はいつになく疲れた。
交差点で伽夜ちゃんと別れ、一人
家までの道を歩く。
「なんなのあの二人は……」
揃って人工的な髪色の
ロリBBAと美少女が、隣に越してきたのは昨日のこと。
手足が無いピンクツインテールの
幼女『ぱみ』さんと
ぱみさんを抱えて歩く、青紫ロング
ヘアの『うずら』さん。
明らかに見た目おかしいし、近づきたくないのになあ……。
近所ならまだしも、隣人。
最低限の付き合いはせざるを得ない。
ましてやクラスメイトでもあるのに、
邪険にするのは宜しくない。
……私のクラス内ヒエラルキーが
下がってしまうから。
『ぱみも明日転校してくる』
という言葉を思い出し、私は
面倒くさくなる予感で身震いした。
『本宮乃塚ぱみじゃ、よろしく頼むぞ‼』
........本当に来やがった。
うずらさんに抱き抱えられ、声高に叫ぶ
ピンクツインテールのロリBBAは、確かに
杉原の制服を纏っていた。
「あ、平塚ではないか!
貴様名前だけでなく頭まで悪いのか⁉」
失礼な。
「は、はい。もとみやのじゅ...づかさんは、
生糸さんの隣の席に...」
あ、噛んだ。
「担任!人の苗字を噛むとは、どういう
神経をしておる?」
「やめなさいぱみ。
貴女の苗字珍しいんですから、それくらい
スルーすべきです。」
目に痛い色彩のロリBBAの登場に
ざわつく外野をよそに、私は『生糸』も
大概珍しいだろ、などと考えていた。
「ぽるちゃん先生ー」
その声で、ざわついていた教室が
しん、と静まりかえった。
稀に起こるこの空気、私は苦手。
声をあげたのは海星。あのアホ……
「坂木原くん、どうしたの?」
「なんで本宮乃塚はE組じゃないん
すかー?」
訂正、グッジョブ海星。
その疑問は当然のものだった。
何故なら見て分かる通り、
あのピンクロリには手足が無い。
身体及び知的障害サポートのある
E組に入るのが自然だ。
「ええっと、それはですね…」
「金を詰んでクラス変更してもらったからじゃ。」
先生の声を遮るアニメ声。
……いや、金を詰んだって言った?
「は?何だそれ本宮乃塚………さん」
「長いじゃろ、ぱみでよい。
言った通りじゃ。ここは私立、普通の学校より融通がきく」
「だから金詰んで普通クラスに
入れたっつーこと?」
「そんなところじゃな。」
そんなところじゃな、じゃないよ。
先生顔面蒼白じゃん。