一心に

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1:匿名:2018/07/13(金) 01:22

「あなたを好きになりたかったのだ。」

2:匿名:2018/07/13(金) 01:27

蝉の声が聞こえた。

じっとりと汗ばむ額に氷を当てる。頭が沸騰しそうだ。
「好き」と、そう、そう言われて、私はあなたになんて返したのだったか。
ああ、と呻きが漏れる。何も思い出せなかった。すべて幻だったのだと思いたかった。
けれどそうもいかないもので。
今しがた来た催促のラインを見返す。
「どう」。
知らないよ、私が知りたいよ。そう思うのだけれど、答えを出せるのは私しかいないのだ。

3:匿名:2018/07/13(金) 01:33

もともと仲が良いとか、幼馴染だとか、そういうのではまったくなかった。
顔は悪くないなとか、前女の子助けてあげてたとか、バスケ部かっこいいよねぇとか、よく聞く。
わりと、モテるひとだったように思う。

けれど私は彼が苦手だった。
どうしてか、と問われても、なんとなく、としか返せない。直感が駄目だと伝えているのかもしれない。
ただ、席が近かったら軽く喋るくらいの関係性の私に、一体どうして恋心を抱いてしまったのだろうと、思うのだ。その読めなさもまた苦手だった。

汗が首筋をつたう。氷はもうほぼ溶けている。
彼からの問いかけを無視して、氷を追加しに台所へと向かった。

4:匿名:2018/07/13(金) 01:39

台所に母は居なかった。勝手に氷を持って行くついでに冷蔵庫を覗き見て、開栓済みの炭酸飲料を取り出す。
しゅわり、と音を立ててグラスに注いだ。
そして、意味もなく死にたくなった。
蝉になりたい、できることなら七日目の蝉に。蝉ならきっと、こんなことで悩んだりしないのだろう。
憎らしいほど蝉がうるさかった。
それに比べて彼の催促はなんて静かだったことだろう。

5:匿名:2018/07/15(日) 14:45

もういやだ、と思った。
いつもは明るくて、騒がしい方の人だったのに。どうして、あんなに静かに答えを待つの。
今更臆病にならないで。わたしにもどう応えればいいのかわからないの。
炭酸飲料を飲み干す。炭酸が口内を、喉を、胃の中を震わせた。心さえ揺らされたような感覚だった。暴れん坊の怪物みたいだった。
氷を額にあてた。
唇を噛む。よく分からない悔しさに駆られた。叫びたかった。でも、声にならなかった。
どうすればいい、どうすればいい?私はどう向き合っていけばいい?


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