リヴァシュナイダー
ユラ
フランチスカ
シーリン
アレクサンドラ
ユウ
マコト
彼らは求めていた、誰かの助けを。人の温もりを……
後半のやつ誰だ?
3:匿冥:2018/07/13(金) 19:44 フレデリック=A=リヴァシュナイダー三世……
本名、不明
彼は、今となってはあれほどのふざけた人間ではある。
しかし、昔はとある財閥の御曹司であった。一人息子故、将来の成功は生まれながらにして約束されていた。
その代わり、彼は自分の好きなものを何も見つけられなかった。ある出来事をきっかけに、彼は自分の生きがいや、存在を見つけることができたのだ。
>>2
板に出すつもりのない少年と青年なのさ……
「リヴァ!何をモタモタしてるんだ、早く着いてこい!」
腕を引かれながら、草木生い茂る山の獣道を登り行くその少年。過剰なまでの箱入り息子であったため、体に筋肉などは一切ついていない。そんな細い体を奮い立たせ、リヴァはボーイスカウターたちと共に進み行く。
目の前に目映い光が一筋。その先は町を見下ろすほどの高い空。皆の歓声が飛び交う。リヴァシューも、初めて見る目の前の光景には感動以外の感情が湧かなかったようだ。
その山は、リヴァシューの町の中では一番高い山である。
「リヴァ、良いもんだろう?俺たちはこうやって体を鍛えているんだ!町を守るためには、町で一番高い山を軽々と登るほどの力をつけないとな!」
リヴァに向き、優しい暖かな笑顔を分かち合う。
「僕……もっと色んな世界を見たいな!」
彼はこの瞬間でのみ、本当の自由を感じることができたのだ。
それが、許されなかったことも知っていた。彼は、なんとなく親の考えに勘づいていたのだった。
「さあ、リヴァシュー……今日からここがお前の住む場所だ」
寝床と言われて、連れてこられたそこは……煉瓦で固められた城。
窓も最小限、外の景色は充分に見ることが叶わない……そんな閉鎖的な空間へと閉じ込められたのだ。
「どういうつもりなの……?」
彼は震えるような声で囁く。
誰もいない部屋の中で囁く。
生きた心地を感じぬ世界で。
「出してよ……ここから出してよ!」
ある日、日の光の入らない部屋で彼は狂った。怒り、悲しみ狂った。
「出せよ!!箱入りも大概にしろよ!!」
悲しみに支配された、細かった彼の体は更に痩せこけ、
怒りに憑かれた、彼の骨ばっていた手は血に薄汚れていた。
それでも、彼の声は誰にも届くことは二度と無かった。
彼は、誰よりも束縛してきていた両親に捨てられていたのだ。
次は、彼の『両親』の話をしよう。
二人が出会った頃は、とても幸せそうなカップルであった。常に相思相愛で、以心伝心でお互いを理解しあい、悲しみも喜びも分かち合い、世界で一番幸せであるとすら思った。
彼の父親も、彼と同じように束縛された環境の中で育てられ、流れてくるかのように組織の権力を受け継いだ。
誰ともまともな関係を築かなかった父親にとっては、彼の母親は最初で最後のパートナーとも言えただろう。
リヴァシュナイダーという名の子供が産まれた瞬間は、この上ない幸せに包まれたものだった。
……その先なのだ、彼らの幸せが崩れ始めたのは。
二人は初めて対立をした。それは他でもない、リヴァシュナイダーについてだった。彼の教育方針で二人は初めて意見をぶつけあった。
父親としては『自分と同じ幸せを味わってもらいたい』という願いから、同じ轍を歩ませようとしたのだ。
母親はそれに反対した。『人は繋がりあってなんぼである』ということを経験していた母親にとっては、彼の生き方そのものに理解を示すことが難しかった。
どんなに気持ちが通じあっているように感じても、所詮は人の情。
幸せだけでは、本物の愛を育むことなどできない。
それを理解していなかった二人は衝突した。父親の腹の中は相当煮えくりかえっていたものだ。
その矢先、リヴァシュナイダーが外の世界に興味を持ちつつあった。それが彼の父親の逆鱗に触れてしまったのだ。
自分の意思を尊重せず、息子を隔離した彼に激怒した母は、怒りを通り越して病んでしまっていた。
虚無感に飲み込まれた。気力が湧いてこず、薬に溺れ、誰とも話したがらず、ただ確実に衰弱していった。数日後、胸に剣を刺した状態で母の遺体が残されていた。
それに絶望した父親は、すぐ翌日に、彼女の後を追うようにして胸に剣を刺した。
それを知らされぬまま、リヴァシュナイダー本人も次第に病み始めていた。
「……気の毒、なんていう言葉じゃ癒されないよね」
そんな彼を救ったのは、ボーイスカウトの少年たちだった。リヴァシュナイダーが両親によって城に閉じ込められ、その両親が死んだという話を聞き、彼らは動いた。城には特別なセキュリティは無く、彼を救い出すことは誠に容易だった。
「なんで、僕は……」
彼の心が救われることは……例え城から出ることができたとしても、決して無かった。
「僕……生きてちゃダメなのかな」
「それだけは言うでないぞ?」
彼に自殺願望が芽生え始めたとき、彼のその芽を摘んだのはある男。
この男は、後の厨二病リヴァシューを作るきっかけにもなったのだ。
その男は、常に自信を備え持ち、こんこんと沸き上がる情熱を存分に仲間たちに注いでいた。
「君の境遇には些か同情せざるをえない。しかし、いつまでも落ち込んでいても君には何も残らない……」
「……」
彼は、自分のせいで両親がこの世界から消えたことに心底心を傷めていた。
箱入り息子にされていたが、あれでも本当に愛されていたのだ……ということを彼は理解していた。
「君はずっと自由になりたかったのだろう?君の両親は自由を君に与えて死んでいった、名誉な死を遂げたのだ……」
……本当にそうだったのかな?
彼は疑いの心を拭えなかった。それでも、その男の瞳の輝きは揺らぐことがなかった。
「少年たちと共に、私に着いてくるが良い。新たな世界を見せてやろう!」
その姿を追いかけ、彼は自身を変えることができるようになったのだ。
「ふーはっはっは!!我の名は、リヴァシュナイダー三世!」
リヴァシューは、ほどなくして今の彼に限りなく近くなった。周りの皆は、その様子を見て大層驚いていた。
「リヴァ……いつからそんなに煩い子に……?」
「リヴァ君、いつも形から入っちゃう子だからね……」
リヴァシューは、服装、道具、仕草を参考にしてしまう。そのあとでスキルが追い付いてくれるのだからまだ良いもの、それまでの間はただただ煩い。
彼を変えた男も、今のリヴァシューのように煩い男だった。彼は右手どころか、全身から水を産み出し操る力を持っていた。
リヴァシューは、その力に憧れて水の力を求めた。しかし、それはもう少し先でなければそれは叶わないのだが。
ボーイスカウトの面々を追いかけているうちに、彼は心身ともにたくましくなっていった。
ひ弱だった体にはほどよく筋肉がつけられていた。元々顔立ちは整っていたが、その可憐な姿には、ダイヤのような美しさに磨きがかかっていた。
そのうち、彼には恋する女ができた。同じ町の娘、やや大人しい少女だった。ずっと本を抱えて、控えめにあのベンチに座る姿に、思わず一目惚れをしてしまったらしい。
何の面識もない二人であったため、お互いが結ばれることはその先もなかったが。
一方、彼は正式にボーイスカウトの団員になった。誰よりも積極的に、力強く任務に没頭する姿は、全員の信頼を集めた。支えあい、そのボーイスカウトのチームは最高のチームになっていったと言えよう。
最高のチームとはいえ、完璧ではない。例えば国を掛けた戦いに巻き込まれてしまえば、非力な民間はただ恐怖に身を震えさせることしかできないのだ。
ボーイスカウトは街を守る青少年団体ではある、決して兵士ではない。
彼はそれに気がついていなかったのだ。
とある日の昼下がり、隣の国がリヴァシュナイダー達の街へ空爆を行ってきたのだ。
いつもは賑やかで明るいその街は、その空爆からしばらくはその明かりを取り戻すことができなかった。
空は黒い煙におおわれ、大地は地獄の如く赤く染まり燃えたぎった。彼は急いで皆の集まる場所へと駆けていく、しかし時既に遅し、その場は悪魔の魂の如く凶悪な炎に包まれていた。
彼は叫ぶ
「誰でも良いから出てこい!!頼むから……!!お願い……」
彼は目に涙をたっぷり溜め、力の限り声を出す。
「泣くんじゃない……リヴァ君!」
どこからともなく聞こえた声は、彼が憧れを抱いていた男の声。
「我々は自分でどうにかできる、私が側にいるのだからな、君は他の誰かを連れてすぐに外へ出るんだ!さあ、走れ!」
彼はその声に弾かれるように走り出した。彼が向かったのは、あのベンチだった。
しかし、ここも手遅れだった。次こそは完全に手遅れだった。
彼女がいつも持っていた本が、その厚みを残して炭へと姿を変えていたのだ。
彼は絶望感に叩きつけられ、思わず腰を抜かしてしまった。そして発狂したかのように走り出した。
何もできなかった、誰かを救うこともできなかった。彼の脳に『助けて……』と、枯れる声がこだまする。誰もいないはずなのに、声だけがまとわりつく。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!」
それは、彼が14歳であった話。
幸せだった彼の人生は半年余りでその姿を残さず、壊されたのだ。
彼は廃人になり、汚れた人形のようになり、その瞳にかつての輝きは一切残っていなかった。
むせび泣くこともなく、声すらもあげることもなく、静かに歩いている。
『助けて……』
その声だけが脳内を支配している。彼は、苛立ちの衝動に駆られて自分の頭を思いきり殴る。
自身の力になぎ倒され、体が横たわる。意識が混沌とし、彼には死線が見えていた。リヴァシュナイダーとしての美しき自信は、その姿からは見ることができない。
見えるのは、弱々しく可憐であるだけの彼の姿だけ。
サァ……
風が吹く。それは星が静かに、朧気に瞬いている森の中の話。
彼の、鉛のように濁った瞳にはある女の姿が映った。森の奥からゆっくりと歩みを進めてくる。
「……親からの虐待に、戦争……幸の薄いお坊っちゃんだこと」
黒い無地のドレスを見に纏うその女の瞳は、優しくその少年を見つめている。慈しむように、彼に言葉をかける。
その言葉が届いているのか否か、定かではないが。
「この森に迷ったってことは、あなたは心の中に迷いがあるのよ……それを晴らさないまま、死にゆくような存在でいいのかしら?」
彼はやっとの思いで顔を上げる。月光の光が影を産み、その女の顔がにわかにしか見えなくなってしまっている。
「月の導きに……」
その女が彼に触れる。彼は今までの無気力さが嘘であるかのようにムクッと立ち上がる。
「……!?」
彼のそばにその存在は無かった。あれは幻影か、それとも亡霊か。
しかし、彼の目には丘の上の城だけは見えていた。それだけは確かに。
固まる足を動かし、その城の重い扉を押し開ける。中に照明は無い、月光が城の大きなステンドグラスを通し、その場を照らす。
その陰気な世界に、彼は呆然と立ち尽くし辺りを見渡す。
壁にはひとつのランプ、それには小さな炎が灯っていた。それを手に取り、その場に再び立ち尽くす。
どこからか、微かに風が吹く。それはリヴァシューを誘うようにある小さな扉へと流れていく。
眠っているかのような夢心地の中、彼は引きずる足でその扉を押す。
その先は暗闇、永遠と続くかのようにリヴァシューを飲み込む。彼を惑わす夢心地は、暗闇に紛れて更にその強さを増す。
どれだけ歩いても、彼はどこへもたどり着けない。彼は僅かに感じていた、死の香りを。
フッ……と炎が何の予兆もなく消えた。そして彼の耳には音が聞こえる、オルゴールと、パイプオルガンの身の毛もよだつような重苦しい音が。
彼の目の前に、ほんわかと光が差す。
ああ、あそこが黄泉の世界……彼はそう感じながら歩みを進める。そしてその体は、その世界へとたどり着く前に倒れた。
実際には、そこへと着いていたのだが。
倒れた彼が持ち上げられ、カウチに寝かされる。その様子を、赤く鋭く光る瞳に貫かれているとも知らずに。
白む世界、それは鈍い痛みひとつで歪み行く……
「目が覚めたか?」
不意にかかる、声のする方へ向く。
そこには、ソファに座っている一人の人間……銀髪がシャンデリアの光を受け止め、静かに輝いている。
「……痛ッ」
動こうともがけば、彼の体に痛みが轟く。それに打ちひしがれ、再びカウチに引き戻しれる。
「……無理をするな。君はずっと眠っていたのだから」
その男は立ち上がる。その姿は細く長い。
いいねえ
17:匿冥:2018/07/28(土) 15:16 >>17
あざまっす!!w
>>16
あざまっす!!w
顔を向けられて初めて彼は気がついた。
その男は、声こそ男らしく野太い声であるのだが……
顔は青年くらいの年のように感じる、そんな美形だった。
二重である目はやや釣り上がっており、その中に納められている瞳は貫かれるほどに濃く赤い色で、肌は病気のように白く、鼻はスラッと細長く、唇は笑みを浮かべるように上がっていて自信に満ち溢れているような印象を受けた。
「いきなり部屋に入ってきて倒れるとは……よっぽど疲れていたのだな。それは体か、心か……」
その男は彼の目線に合わせて屈み、彼の様子を伝えていた。
「両方だな。とにかく疲れたというより、辛かった……」
彼は顔を膝に埋める。今にも泣き出しそうだった。
「近辺の街で空爆が起きたのだったな。その時と照らし合わせて……君はその空爆によって孤児になったのか」
「いや、孤児だったのはもう少し前からだ。親が両方とも自殺したから、俺だけがこの世界に取り残されたんだ……」
その男は彼の服装を見る。
「……ボーイスカウターか。なるほど、その団体で世話になっていたのか……」
「……」
彼は、それ以降は口を聞こうとは思わなかった。
彼がこの城へ来てから一週間。ボーイスカウトで活動していたことの影響か、環境に慣れるのには時間を多くは要さなかった。
それでも、彼は積極的にその男と話そうと行動することはなかった。
「キャプテン!ブラックサンダー買ってきたわよ」
そこで入ってきたのは、目付きの鋭い……というよりは目付きの悪い、金色の長髪の女だった。豊満な胸にほどよく肉付いていて、そして引き締まっているモデル体型の女が部屋を訪ねて来た。
彼は、そういう女が大嫌いなのだ。
「何、そこのイケメン。新入り?」
「いや、ここを訪ねてきた孤児だ。まだここに住むという返答はもらっていない」
ふーん……といい、女は彼に近寄る。目の前から顔をまじまじと見ている。
「本当、イケメン来たって感じね……私はユラ。よろしくね」
軽く挨拶をして、女は去っていった。
変な女に好かれたものだ……彼は心のそこからそう考えた。
彼はぼう……と、夜空を見る。永遠と続く星空、月が照る空を。
気を落ち着かせようとせずとも、彼は夜空を見ることが習慣となっていた。
「そんなに、この空が気に入ったか?」
後ろから男が話かけてくる。猫を撫でているような柔らかい声色である。
「この空は遥か昔から何一つ変わっていない。そういう空なのだ」
「……何が言いたい?」
リヴァは、男が気に入らないのだ。明確な理由はないが、側にいられるだけでイライラするのだった。
それほどに、彼の情緒はささくれ立っていたのだ。
彼は気分を少しでも晴らすために、城の外へと出ていった。城という窮屈な環境から離れ、久々の解放感を味わっていた。
その代わりに、『森』という閉鎖的で陰湿な空気も味わうことになったけど。
森と言っても、ここは異常なほど広い。話を聞いていると、川は蜘蛛の巣のように伸び、泉は滴のように無数にあり、どこまでも遠く続く海もあり、輝く大きな地下へと続く洞窟もある。
リヴァシーは、椰子の木も生えている砂漠のオアシスのような泉の畔にいた。
……
つづく。
「……いつまでこうしているつもりなんだろう」
不意に、彼の口からこう溢れた。その景色を見ていると、自分は全く違う世界へと飛んでいっているような気がして、自分さえも美しく感じるようになっていった。
それでも、いや、むしろそれがキッカケで彼の心の戸惑いの気持ちが浮き彫りになっていってしまう。
「仮にも一人の男が、そんな弱いような顔をしてて……恥ずかしくないのかね」
後ろからかつての『ユラ』と名乗る女が現れた。
いつにもなく静かな雰囲気を放っている。
ユラが隣へ座って何十分も経ったとき、やっとユラは口を開いた。
「あんたには『自分だけのもの』っていうものは無いの?」
その声色は、優しいような印象だった。口先では自身に呆れの感情を込めているようでいても、ユラは最大限気を使っているのだ……と、リヴァにも分かったのだ。
「……無いね。あったとしても、どれもこれも誰かの影響を受けたものばかりだ」
一方、彼はすでに諦めに似た感情を思いきり含めていた。その様子は、ユラにとっては一瞥するほどのことでしかなかった。
「……当たり前じゃない。
何も無い状態から、何かを持つなんて、無理に決まってる……
誰かから貰った知識を自分で磨いていく、そうして自分だけの物ができるんだよ……」
彼にはもの言わせぬとでも言うように、ユラは続けざまに言う。
「あなたが目指していたものは何?」
そう言われて、リヴァはある人を思い浮かべる。
自分に情熱を注いでくれた恩人。自分を導いてくれた先駆者。
いつも自信に満ち溢れていたその瞳と、威風堂々とした立ち振るまいに、リヴァはいつも惚れ惚れしていた。
「……うわっ!?」
その最中、いきなり泉へと突き落とされた。空を映す水の鏡は波を立たせて震えた。
「何をするんだ!?」
「……ははっ、やっと個性が出てきた!」
いきなりの出来事に怒りに似た驚きを見せるリヴァを見下し、ユラは続けて泉へと飛び込む。
水を掛けあったり、泳いだり、潜ったり……純粋に少年少女のようであり、輝かしい笑顔が取り戻された瞬間でもあった。
いいぞ〜^^
誰を出すことにしたのですか?
>>25
あちらの本編(?)では、とりあえずマコトくんを出しました。。。
結局全員出ることになりそうですけどもww
「……随分帰りが遅いじゃないか」
「いつでもこんな景色なんだ、時間の感覚なんてマトモに保てるはずがねぇよ」
泉の世界で大いに遊んだリヴァたちは、散々濡れた状態で帰ってきた。
服のまま泉に飛び込んだためか、静かであった彼は更に大人しそうに見えた。
「……覚悟が決まったみたいだな」
魔王は空へと向けていた顔をリヴァに向き直し、貫くような赤い瞳を彼に向けた。
「君はここに残るのかね?」
「……いつかは出ていくが、しばらくはいさせてくれ」
その言葉を聞き、魔王は小さく頷く。
「契約だ、ここの孤児になる者には私から何かしらの力を与えることにしているんだ……
君が望む力はなんだ?」
そう聞かれ、リヴァの脳裏にはある人が浮かんだ。
水を纏わせ、その顔一杯に絶対なる自信を携えてきたリヴァの憧れ。
自信、歳に似合わぬ黒い制服姿、青い髪の毛、彼が唯一手にすることができなかった物は、水を操る力だった。
「俺に水を操る力をくれ」
……それこそが『フレデリック=A=リヴァシュナイダー』という男が誕生する瞬間だった。
もともとユラは、魔王の元へ来た初めての孤児であった。
とはいえ、その当時は既に17の歳をを向かえていたのだが。
リヴァシュナイダーとは違い、彼女が拠り所とするところは、生まれたときから無かった。
母親が娼婦であったためいつも夜は家にはおらず、その上父親などは分からず、親戚とも疎遠であった……
それでも彼女は陽気な女に育った。
普通人は親に冷たくされ続けるとサイレントベイビーという、非常に悲しい存在になってしまう。
それでも彼女は強く、優しい女に育った。