ブラッド・ジョーカー

葉っぱ天国 > 小説キーワード▼下へ
1:Fひろき:2018/07/29(日) 23:24

両親を殺された女子高生【札原浄花】は、復讐のため犯人を殺害してもらうよう敏腕殺し屋【スペード】へ殺害を依頼する。
しかし要求された報酬額は5000万円!
とても支払えない金額に絶望していると、ある条件を持ち掛けられる。
それは、殺し屋の手伝いをするということだった──。

>>02 登場人物

2:Fひろき:2018/07/29(日) 23:24


【札原 浄花】 (ふだはら じょうか) 16歳
両親を謎の殺し屋【エース】に殺害された少女。
幼い頃からロシアの格闘技、システマを習っているため身体能力が高い。
一方で判断力や知識に欠け、キングからは『オツムが弱い』と評される。


【スペード】 
本名及び年齢不詳の謎に包まれた殺し屋。
裏社会で知らぬものはいないというほどの有名。
非常に冷酷な性格故に人付き合いを苦手とする。
依頼を受けるのは基本復讐目的のみで、自身の私利私欲 (遺産目当て)などは突っぱねる。
常に作戦や計画の中心にいるため、浄花や惹、ダイアからは【キング】と呼ばれている。


【黒羽 惹】(くろば じゃく) ♂ 22歳
表向きは大学生だが、その実態は世界的マフィア【デッキ】のボス。
イタリア人の父が統治していたマフィアを継ぎ、トップに君臨した。
スペードとは協力関係にあり、度々スペードの元へ遊びに来る。


【九院 ダイア】(くいん だいあ) ♀ 20歳
惹が統治するマフィア【デッキ】のスパイ。
常に惹と行動を共にし、惹に忠誠を誓っている。
また、スペードとは情報提供などの取引もしている。

【エース】
3年前、浄花の両親を殺害した謎の殺し屋。

3:Fひろき:2018/07/30(月) 23:53


「やっと見つけた……!」

長年──といっても約2年だけど、16歳の私にとっては多大な年月を費やして探した場所。

何の変哲もない、古びたビルの地下にある薄暗いバー。
埃やクモの巣があって本当に使われているか怪しいが、電気の通った電工看板が『営業中』と示しているのだから心配はないだろう。

もしアメリカやイギリスみたいな遠い外国だったらどうしようかと思っていたけど、なんと都内……しかも学校から約5駅程先の、こじんまりとしたバーにいるという。

──凄腕の殺し屋、”スペード”が。

4:Fひろき:2018/07/31(火) 00:19

早速中へ入ろうとドアノブを回すも、扉は開かない。
何度か押したり引いたり繰り返してみるものの、案の定鍵がかかっているようだった。

「あの〜……すみません〜!」

ドアの隙間から光が漏れている。
ということは誰かしら中にいるはず!

「すみません、どなたかいらっしゃいませんか!」

ドンドン、ドンドンと少ししつこいかなぁ、と気後れしてしまうくらいにドアを叩くが返事は無い。
水をグラスに注ぐような音が聞こえてきたから、絶対誰かしらいるということは確定した。
要は居留守を使われているのである。

「あの、怪しいものではないんです! 少しお話があって……!」
「帰れ」
「……えっ」

何度か執拗にノックをした後、ようやく返事が返ってきた。
冷たく低い男の声が、無残にも私を追い返す。

「な、なんでですか!? 話だけでも……っ」
「高校生のガキが来るところじゃない。どうせ噂を聞きつけて冷やかしにきたんだろ」
「冷やかしなんかじゃなくて、真剣に依頼があって来たんです! というか、どうして高校生だって……」
「相当オツムが弱いようだな、お前は。こちとら裏社会の人間だ。監視カメラくらい付けているに決まっているだろう」
「ええっ!?」

彼の言葉を聞いて、初めて天井に小さなカメラが仕掛けられていることに気が付いた。
私はドアの向こう側ではなく、相手に見えているであろう監視カメラに向かって強く言い放った。

「ここにあなたが……スペードさんがいるって、2年もかけてようやく手に入れた情報なんです! そんな、やすやすと引き下がるわけにはいかない」
「ガキに俺が雇えるとは思えないな。帰れ」
「嫌です。無理にでも入りますよ」
「ふん、貴様みたいな馬鹿にピッキングで鍵を開ける能があるとも思えない。勝手にしろ」

ドアの向こう側の声が次第に小さくなったから、恐らく彼はどこかに行ってしまったのだろう。
融通の利かない頭でっかちさに苛々しつつ、覚悟を決めた。


ドアの向こう側がどんな世界であっても、私は飛び込んでいく──って。

5:Fひろき:2018/07/31(火) 00:31

「開けますよ? ドア、開けちゃいますからね!?」
 
大声でドアの向こうに呼びかけてみるも返事は無く、代わりにコトンと何かを置く音だけが響いた。
返事がないということは、肯定としてとるよ!

右足に重心をかけ、全神経を集中させる。
頭も悪い、要領もない私が唯一誇れるこの馬鹿力を!

「それじゃあ、いっきまあああぁあああっす! うぅうおおっりゃああぁあぁっ──!」

黒いローファーの先が思いっきりドアに当たったかと思うと、ガシャンと不吉な音を立てて、情けなく床に倒れた。


「いったたぁ……やっぱ鉄製のドアはちょっと痛いや……」
右足の痛みを抑えながら、破壊したドアの先を見据える。

そして厚いドアの向こう側で見たものは──。



「……おいおい嘘だろ……」

黒いライダースーツを着た若い青年が、ワイングラスを落として怯えていた。

6:Fひろき:2018/07/31(火) 21:04

鼻筋の通った彫りの深い顔立ちに、眠たげな二重まぶた。
そして私を射抜くような、妖艶な流し目。
手足はスラッと細長く、これが黄金比というものか……と納得させられてしまうようなスタイル。
モデルか俳優と言われても疑いなく信じてしまうほどのルックスに、思わず魂を抜かれたように魅入ってしまっていた。

「お前……まさかとは思うが」

彼は割れたワイングラスに見向きもせず、人形だちで突っ立っている私の方へゆっくり歩み寄った。
ハッと我に返って惚けていた頭をなんとか再起動させると、警戒しながら一歩後ずさる。

「蹴って破壊したんじゃないだろうな?」
「……蹴りました。開けますよって言っても返事がなかったですし。それに、これ以外の方法見つからなかったんで。どーせ私は馬鹿ですから!」
「変装して後日来るなり、他にも色々方法はあっただろ。蹴り飛ばして入るなんて愚策を選ぶとは……やはりオツムが弱いようだ」
「なんですと〜!?」

一発渾身の手打ちパンチをお見舞したい衝動に駆られたけど、なんとか憤りを沈める。
ここでムキになったら負けだ、挑発に乗るな浄花!

7:Fひろき:2018/08/01(水) 00:37

「依頼を聞いてください! お金なら、ある程度は用意してます」

鋭い視線で彼を見据えると、諦めがついたのかため息を吐いてぽつりと言った。

「……3分だ。3分内に収まるよう簡潔に話せ」
「ヱっ、さささ3分!?」

彼はライダースーツの胸ポケットから銀色の懐中時計を取り出すと、蓋を開けて基盤を見た。

「もうカウントダウンは始まっているぞ」
「えぇっ!? えーっとえーっと、話は10年前に遡るんですが──!」


──10年前の12月21日。

ごく普通の日だった。

強いていえば、私の6歳の誕生日だったってことくらい。
お父さんとお母さんからプレゼントを貰って、お母さんの作ったご馳走食べて、いよいよお待ちかねのケーキ。
電気を消して、6本のロウソクを付けて、私が日を吹き消そうとした時だった。

「「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバー
スデーディア……」」

──バリン。
そんな擬音がリアルに聞こえてきて、窓が粉々に砕け散った。

そして突然ぴたっと両親の歌声が止んで、辺りが静寂に包まれた。
私はどうしたんだろって思って両親に問いかけた。

「ママ、パパ……?」

返事は無くて、次の瞬間いきなり二人が力なく倒れたのをこの目で見た。
呻き声もなにもなく、ただ静かに、疲れ果てて眠ってしまうように、ごく自然に。


「ママ……パパ……起きてよ! 起きて!」

両親の体を揺さぶった刹那、目の前……本当に目の前に銃弾が横切って、まつげを掠めた。
銃弾は私を通り過ぎると、壁へと突き当たってめり込んだ。

電気を消していたせいで何も見えず、声も出なくて、私はただ怯えて泣いていた。

少しした後激しく慟哭し、あまりの大声に近所の人が心配して見に来て、警察に通報してくれた。
後に聞いた話だと、これは殺し屋エースの仕業だってことが分かった。

なぜエースの仕業だと分かったのか。

警察が両親の心臓から摘出した弾丸を押収したところ、弾丸に『A』というマークが刻印されていることが分かった。
これは殺し屋エースによる犯行で、彼はいつも決まってこの弾丸を使うという。


「模倣犯の可能性もあるかもしれない……でも、何もしないわけにはいかないの」

私は再度強く言い放ち、足を組んで腰かけている男に視線を送った。


「エース……」

彼はぽつりと小声で呟くと、どこか……私が想像もつかないような遠くを見据えた。

「模倣犯の可能性は薄いだろうな。暗闇の中、二人の心臓をたった数発で当てられる程の腕だ。恐らくエース本人……」

なるほど、言われてみれば確かにそうだ。
あの時は外も暗い上に部屋の中もロウソクの火が灯っていただけ。
そんな状況の中、殺し屋エースはたった二発で心臓をピンポイントで狙った。
それほどの腕なら、模倣犯としてエースの名をかたるとは考えにくかった。

8:Fひろき:2018/08/05(日) 19:41

《簡易設定》
人物設定に書き忘れたため追記

・原始、人は物理法則を超越した能力を持っていた。
念動力やパイロゲネシスといった超能力があったが、それを争いや殺しに使ったため、神の逆鱗に触れ、殺人欲抑制と引き換えに能力を封印されてしまう。
そして今日の人類は超能力を持たなくなったが、良心を持つ。

しかしごく稀に、出生時に封印を解き放って超能力に目覚める者がいる。
能力者は封印を解かれたため、成長するにつれて残虐な性格になってしまう。
超能力者は殺人予備軍とのことで差別されたり幽閉されてしまうため、隠しながら生きている。


全世界で脳内にマイクロチップの埋込みが強制させられることになり、コンピュータ並みの頭脳や判断力を持つようになる。
現在の人類の約98%が出生時にマイクロチップを埋めている。
しかし能力者はマイクロチップに拒絶反応を起こすため、そこで能力を保持しているか判別できる。

9:Fひろき:2018/08/05(日) 20:04

【スペード】
能力 『熱操作』
左手から熱を逃し、右手に熱を集めることが可能。
つまり右手が熱くなり、左手が冷たくなる。
左手は絶対零度まで下げられ、右手は計測不能なほどの高熱を持つ。
右手で鉄を溶かし、左手で冷却することによって武器を作ったりと応用の効く戦闘が可能。

【惹(じゃく)】
能力
物体に手に触れることによって原子をコピーすることが可能。
つまり物を巨大化したり伸ばしたりさせることができる。

【ダイア】
能力 毒性体液
体液に毒性を含む能力。
唾液は睡眠薬程度の効果しかないが、彼女の血液は一滴で即死する猛毒を持つ。
検査しても普通の血液と変わらないため、検出が難しい。


書き込む スレ一覧 サイトマップ ▲上へ