数々の超能力者が蔓延る2068年。
両親を殺された女子高生【札原浄花】は、復讐のため犯人を殺害してもらうよう敏腕殺し屋【スペード】へ殺害を依頼する。
しかし要求された報酬額は5000万円!
支払いが困難な浄花は、代わりに殺し屋の手伝いをすることに。
数々の超能力者が争う中、無能力者の浄花は素手で参戦?!
ブラッド・ジョーカーのリメイク版になります
>>02設定
>>03人物詳細
【大罪封印説】
昔、神は人間に超能力を授けた。
しかし人間の心に潜む感情『七つの大罪』が暴走し、人々は能力を使って殺し合いを始めてしまう。
そこで神は人々の心に棲む大罪を封印したが、その反動で人々は能力を失う。
こうして人間はデチューンされたが、希に心に棲む大罪の封印を解き放ち、能力に目覚めてしまう者がいる。
【アウトロー】
物理法則や科学現象を無視する超能力保持者のことを指す。
能力は数種類あり、今のところ政府に確認されているのは6種。
大罪の封印を解いてしまったがために、憤怒や強欲といった厄介な感情を爆発させる。
彼らを社会から隔離させようと専用の施設に閉じ込める政策が行われた。
そのためアウトローであることを隠し、密かに暮らしている者が多いが、大体は犯罪を犯してしまう。
マイクロチップを埋め込もうとすると拒絶反応が出るため、そこで判別が可能。
【マイクロチップ】
表向きは計算力や判断力が格段に伸ばすために開発されたが、その実態はアウトローの発現を防ぐためにある。
使用が義務付けられており、全世界の人口約98%が脳に埋め込んでいる。
出生時にしか埋め込めないため、後から付けることは不可
【ニュートラル】
世界の人口98%が脳内にマイクロチップを埋め込んでいるかアウトローであるのに対し、無能力かつマイクロチップも持たないという非常に珍しい生まれたままの存在。
そのため高値で売り飛ばされることもあり、ニュートラルであることを隠す者が多い。
発症抑制効果のあるマイクロチップを埋め込んでいないため後天性でアウトローになる可能性があり、政府は存在を危惧している。
【札原 浄花】 (ふだはら じょうか) 16歳
両親を謎の殺人鬼【エース】に殺害された平凡な女子高生。
ロシアの格闘技、システマを使う。
判断力や知識に欠け、後先考えず突っ走る。
無能力者だが高い格闘センスでスペードのサポートをする。
事情があってニュートラル。
【スペード】
本名及び年齢不詳の謎に包まれた殺し屋。
裏社会で知らぬものはいないというほどの有名。
殺害するのはアウトローのみで、無能力者は相手にしない。
アウトロー能力 『熱操作』
大罪『憤怒』が解き放たれて得られる能力。
今のところ世界で唯一の能力で、政府からは認知されていない。
左手は熱を逃し、右手は熱を集めることが可能。
右手で鉄を溶かし、左手で冷却することによって武器を形成したりと応用の効く戦闘が可能。
【黒羽 惹】(くろば じゃく) ♂ 22歳
表向きは大学生だが、その実態は世界的マフィア【デッキ】のボス。
イタリア人の父が統治していたマフィアを継ぎ、トップに君臨した。
スペードとは協力関係にあり、度々スペードの元へ遊びに来る。
アウトロー能力 『等価交換』
大罪『強欲』を解放すると得られる能力。
あらゆる物の価値を見抜き、それと同等のものであれば瞬時に交換できる能力。
惹は常に札束を持ち歩いている。
【九院 ダイア】(くいん だいあ) ♀ 20歳
が統治するマフィア【デッキ】のスパイ。
常に惹と行動を共にし、惹に忠誠を誓っている。
また、スペードとは情報提供などの取引もしている。
アウトロー能力 『毒性』
大罪『色欲』の封印を解いて得られる能力。
体液に毒性を含む能力。
唾液は睡眠薬程度の効果しかないが、彼女の血液は一滴で即死する猛毒を持つ。
検査しても普通の血液と変わらないため、検出が難しい。
また、涙には神経を麻痺させる毒が含まれており、摂取すると3日ほどは全身が痺れてしまうらしい。
【エース】
3年前、浄花の両親を殺害した謎の殺人鬼。
数々の不審火を引き起こして殺害する。
焼け跡にはトランプのハートのエースの札が残されていたため、エースという名がついた。
「やっと見つけた……!」
長年──といっても約2年だけど、16歳の私にとっては多大な年月を費やして探した場所。
何の変哲もない、古びたビルの地下にある薄暗いバー。
埃やクモの巣が張っており、営業しているかすら怪しい。
けど、電気の通った電工看板が『スナック シャッフル 営業中』と示しているのだから心配はないだろう。
もしアメリカやイギリスみたいな遠い外国だったらどうしようかと思っていたけど、なんと都内……しかも学校から約5駅程先の、こじんまりとしたバーにいるという。
──凄腕の殺し屋、”スペード”が。
早速中へ入ろうとドアノブを回したが、扉が開かなかった。
何度か押したり引いたり繰り返してみるものの、鍵がかかっているらしい。
「あの〜……すみませ〜ん!」
ドアの隙間から光が漏れている。
ということは誰かしら中にいるはず!
「すみません、どなたかいらっしゃいませんか!」
ドンドン、ドンドンと少ししつこいかなぁ、と気後れしてしまうくらいにドアを叩くが返事は無い。
水をグラスに注ぐような音が聞こえてきたから、絶対誰かしらいるということは確定した。
要は居留守を使われているのである。
大体、営業中って書いてあるのに鍵を閉めているなんておかしい。
「あの、怪しいものではないんです! 少しお話があって……!」
「帰れ」
「……えっ」
何度か執拗にノックをした後、ようやく返事が返ってきた。
冷たく低い男の声が、無残にも私を追い返す。
「な、なんでですか!? 話だけでも……っ」
「高校生のガキが来るところではないよ。どうせ噂を聞きつけて冷やかしにきたのだろう?」
「冷やかしなんかじゃなくて、真剣に依頼があって来たんです! というか、どうして高校生だって……」
「相当オツムが弱いようだな、君は。こちとら裏社会の人間、監視カメラくらい付けているに決まっているだろう」
「ええっ!?」
彼の言葉を聞いて、初めて天井に小さなカメラが仕掛けられていることに気が付いた。
私はドアの向こう側ではなく、相手に見えているであろう監視カメラに向かって強く言い放った。
「ここにあなたが……スペードさんがいるって、2年もかけてようやく手に入れた情報なんです! そんな、やすやすと引き下がるわけにはいかない!」
「ガキに僕が雇えるとは思えないね。帰ってくれ」
「嫌です。無理にでも入りますよ!?」
「君みたいなお馬鹿おさんにピッキングで鍵を開ける能があるとも思えない。勝手にしたまえ」
ドアの向こう側の声が次第に小さくなったから、恐らく彼はどこかに行ってしまったのだろう。
融通の利かない頭でっかちさに苛々しつつ、覚悟を決めた。
「開けますよ? ドア、開けちゃいますからね!?」
大声でドアの向こうに呼びかけてみるも返事は無く、代わりにコトンと何かを置く音だけが響いた。
返事がないということは、肯定としてとるべし!
右足に重心をかけ、全神経を集中させる。
頭も悪い、要領もない私が唯一誇れるこの馬鹿力を!
「それじゃあ、いっきまあああぁあああっす! はっ! うぅうおおっりゃああぁあぁっ──!」
黒いローファーの先が思いっきりドアに衝突。
次の瞬間、厚い鉄のドアはガシャンと不吉な音を立てて情けなく床に倒れた。
「いったたぁ……やっぱ鉄製のドアはちょっと痛いや……」
右足の痛みを抑えながら、破壊したドアの先を見据える。
そして厚いドアの向こう側で見たものは──。
「……おいおい嘘だろ……」
黒いライダースーツを着た若い青年が、ワイングラスを落として唖然としていた。
鼻筋の通った彫りの深い顔立ちに、眠たげな二重まぶた。
そして私を射抜くような、妖艶な流し目。
手足はスラッと細長く、これが黄金比というものか……と納得させられてしまうようなスタイル。
モデルか俳優と言われても疑いなく信じてしまうほどのルックスに、思わず魂を抜かれたように魅入ってしまっていた。
「君……まさかとは思うけど」
彼は割れたワイングラスに見向きもせず、人形だちで突っ立っている私の方へゆっくり歩み寄った。
ハッと我に返って惚けていた頭をなんとか再起動させると、警戒しながら一歩後ずさる。
「蹴って破壊したんじゃないだろうな?」
「……蹴りました」
「なんてやつだ。馬鹿力にも程がある」
「開けますよって言っても返事がなかったですし。それに、これ以外の方法見つからなかったんで。どーせ私は馬鹿ですから!」
「変装して後日来るなり他にも色々方法はあっただろう。蹴り飛ばして入るなんて愚策を選ぶとは……やはりオツムが弱いようだな、君は」
「なんですと〜!?」
一発渾身の手打ちパンチをお見舞したい衝動に駆られたけど、なんとか憤りを沈める。
ここでムキになったら負けだ、挑発に乗るな浄花!
「依頼を聞いてください! お金なら、ある程度は用意してます」
鋭い視線で彼を見据えると、諦めがついたのかため息を吐いてぽつりと言った。
「……3分だ。3分内に収まるよう簡潔に話せ」
「ヱっ、さささ3分!?」
彼はライダースーツの胸ポケットから銀色の懐中時計を取り出すと、蓋を開けて基盤を見た。
「もうカウントダウンは始まっているぞ。59,58,57──」
「ゑぇっ!? えーっとえーっと、話は10年前に遡るんですが!」
──10年前の12月21日。
ごく普通の日だった。
強いていえば、私の6歳の誕生日だったってことくらい。
お父さんとお母さんからプレゼントを貰って、お母さんの作ったご馳走食べて、いよいよお待ちかねのケーキ。
電気を消して、6本のロウソクを付けて、私が日を吹き消そうとした時だった。
「「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバー
スデーディア……」」
──ボォッ。
そんな擬音がリアルに耳に入って、次の瞬間、暗かった部屋が一気に明るくなった。
「な、なに!?」
「火!?」
ドアの隙間から、意思を持ったような炎が床を這う。
火、火、火火火。
「ママ、パパ……?」
「家事よ! 家事!」
「浄花、ママ! 早く逃げるんだ!」
両親は慌てながらも窓を開けると、私を先に窓から逃がした。
一階だったというのが不幸中の幸いで、私はなんとか逃げることができた。
「ママ、パパ! はやく!」
「浄花、離れてなさい。私とパパもすぐに……」
「う……うぅわあああああぁあああああぁ!」
けれど予想以上に火の回りは早くて、炎は蛇みたいにウネウネと二人に迫り、あっという間に。
瞬きをした刹那に、両親を飲み込んだ。
本当に一瞬で、私は二人が炎に覆いかぶせられているところを双眸に刻むことしかできなかった。
「ママ……パパ……?」
ゆらりゆらりと燃え上がる炎の中、二つの黒い影がもがき苦しんでいる。
パチパチと、火の粉がまつげを掠めた。
「ママぁ……パパぁ! い……いやああああぁああっぁっ!」
少しした後激しく慟哭し、あまりの大声に近所の人が心配して見に来て、警察に通報してくれた。
私は警察に保護され、親戚の家へ引き取られることになった。
後日警察の話によると、一連の犯行は連続放火魔『エース』によるものだという。
なぜエースの仕業だと分かったのか。
彼は放火した建物に、決まって必ずトランプのカード……ハートのエースを現場に残す。
私の家の焼け跡からも、ハートのエースが見つかったという。
「模倣犯の可能性もあるかもしれない……でも、何もしないわけにはいかないの。麻薬の運び屋とかやってお金貯めて、裏社会に片足突っ込んで情報収集もして……そして今日、あなたを見つけることができたの」
私は再度強く言い放ち、足を組んで腰かけている男に視線を送った。
「お願い。あいつを──エースを殺害して」
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札原浄花のイメージイラストです