私立白峰学園高校へようこそ!

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1:桃子:2018/08/17(金) 18:33

私立白峰学園高校

ここは日本中の問題児が集まる、全寮制の高校。
何らかの事件を起こした者、引きこもり・不登校、親から邪魔者扱いされて無理矢理入学させられた者……

様々な環境の人間がこの学園に集まり、同じ時を過ごしている。
だがこの学園は荒れに荒れており、まともに機能していない。
教師もやる気がなく、授業はほぼ自習。

これは、このイカれた学校・私立白峰学園高校の日常物語である。

2:桃子:2018/08/17(金) 18:33

「奏、もうちょっとで着くからね」
「…………」

車に揺られ窓の外を見ていた少女・桜木奏はとっても憂鬱だった。
理由は今日から白峰学園に転校することになり、今その寮に向かっている最中だからだ。

「また無視?まったくもう…朝日と違ってどうしてあなたはこうなのかしら」

奏の母が呆れたように溜息をつく。朝日とは奏の4つ上の兄のことだ。
そんなことを言っていると、学園の寮についた。
レンガ造りのそこそこキレイな寮だ。
車を止め、トランクに置いてある荷物を取る。

「次会えるのはお盆ね。ま、元気でやんなさい」

奏の母はそれだけ言い残してさっさと帰っていった。

(お母さんは私のこと、本当にどうでもいいんだね)

奏は生気のない目で母の車をずっと見ていた。

3:桃子:2018/08/18(土) 01:41

「うわ…汚いな…」

外観とは違い中は酷いものだった。
落書きやゴミ、異臭まで漂っている。

「えーっと、私の部屋は307号室ね」

エレベーターに乗り部屋まで向かう。
エレベーターを降りたら、307号室と書かれた部屋に入った。
6畳ほどの部屋でベッドと机、そして家から送られてきたダンボールがあった。

(今日から約3年間…ここで暮らすのね…)

奏は荷物を置いてから部屋を出て、寮を見回ることにした。
寮生は今授業を受けているため誰もいない。

(ここが食堂…意外と大きい…えーっと次は大浴場ね)

パンフレットの案内図を見ながら大浴場へ向かう。

4:桃子:2018/08/19(日) 02:12

しばらく歩くと『つぼみの湯』と書かれた浴場についた。

(ザ・普通って感じね…)

扉を開け、中を見るとごく普通のお風呂だった。
寮内のように浴場も汚いのか?と思ったがそうでもなかったようだ。

大浴場を見た後、奏は部屋に戻り大の字になって寝そべった。
真っ白い天井が奏を見下ろしている。

「はー…やだなぁ…」

目を瞑り、これからのことを考える。

(ここはお盆・正月以外、外に出してもらえない。必要なものは学校側が用意してくれるらしいからね…)

ありがた迷惑にも程がある。
そんなことを考えていると、時計の針は5時を指していた。

(そろそろ他の寮生が帰ってくる頃ね…)

奏は悪名高き白峰学園の生徒がどんなものか、不安で心がいっぱいだった。

5:桃子:2018/08/19(日) 23:39

不安という気持ちもあったが、[どういう人達なんだろう]という気持ちも湧いてきた。

「どんな人達なのかしら…こっそり見に行こっと」

奏は起き上がり部屋を出た。
1階の柱に隠れ、寮生が帰ってくるのを待った。
しばらくすると、2人の女子が入ってきた。

「もーまじだるーい。どーせ授業しないんだから教室行く意味なくね!?ずっと寮にいたいよー」
「ほんとそれ。男子はうるさいし…」
「てゆーかアイツさぁ……」

どうやら愚痴を言い合っているようだ。
愚痴のレベルが小学生のようで、吹き出しそうになる。

「栞さん、雅さん、なんですかその言葉遣いは」
「ゆ、百合子様…」

もう1人出てきた。2人の反応からして恐らくこの2人のボス的存在だろう。

「まったく…わたくし達は良家の子女なのですよ?回りに影響されてはいけません。そのように下品な言葉遣いはおやめなさい」

「申し訳ありません百合子様…」
「ですが辛くて辛くて…もう家に帰りたい…」

栞と呼ばれる女子は目に涙をいっぱ溜めて百合子を見た。
それを見た百合子は目を瞑り、

「栞さん、あと2年です。2年耐えれば解放されるのです。わたくし達は他の者共とは違います。気を強くお持ちなさい」
「……………はい!お心遣い感謝します、百合子様!!」

栞が笑顔で返事をした。
それを聞いた百合子と呼ばれる人物は少し微笑み、寮の奥へ去っていった。

「アイツまじうぜー。こっちがちょっと下手に出たら調子乗りやがって」
「『下品な言葉遣いは、おやめなさぁ〜い』」

雅と呼ばれる少女が百合子の物真似をする。明らかにバカにしている。

「ぷくく、似てる〜。なんなのあいつのしゃべり方」
「エセお嬢様って感じ。ていうか盗み聞きとかきもくなーい?」

2人は百合子の悪口を言いながら寮の奥へ去っていった。

(うわぁ…今の見ると普通に頭悪い女子高生って感じ…)

奏は白峰学園の生徒はこんなのかと、少しびっくりした。
(もっとヤバそうな人達だと思ったのに…)

続々と帰ってくる寮生は、普通の子達だった。

(ま、問題児って言っても、所詮高校生だもんね…)
奏は寮生を見るのに飽きたので、見つからないよう、ひっそりと部屋へ戻った。

6:名梨:2018/08/20(月) 12:21

面白いデス!頑張ってください!

7:桃子:2018/08/21(火) 01:39

部屋に戻り荷物を整理していると、コンコンと誰かが扉を叩いた。

(誰…?)

恐る恐る扉を開くと、そこには美少女が立っていた。
長いまつ毛に大きな瞳、甘いピンク色の髪は柔らかく三つ編みに束ねられている。
だが…よく見てみると顔にあざや切り傷があった。頭には包帯が巻かれている。

「転校生の桜木さんだよね?寮長が呼んでるからあなたを迎えにきたの」
「あ、はい、ありがとうございます」
「一緒に行こっか」

美少女はにこりと微笑み歩き出した。
廊下はゴミやら投げ出された机・椅子やらで凄く汚い。
それをこの美少女が悠々と歩く姿はまるで、天使が地獄に迷いこんでしまったようだ。
しばらく沈黙が続いたが、それを破ったのは美少女のほうだった。

「私の自己紹介まだだったよね。私は小林蜜柑。あなたと同じ高1、よろしくね」
「私は桜木奏です。よろしくお願いします」
「奏って言うんだ。いい名前だね」
「あ、ありがとう…」

顔を近づけられ、奏は顔が赤くなった。
互いの自己紹介が終わった後、私達は再び食堂に向かって歩き始めた。

「奏ちゃんはさあ、どうしてこんなとこ来たの?」
「え…?」
「いやさぁ、転校生ってことは普通の高校いたんでしょ?ならなんでかなぁって。」

美少女は小首を傾げ、笑顔で問う。
奏は少し間を置いた後、

「別に、理由なんて、ないですよ」
奏は下を向いて少し自嘲気味に笑った。

8:桃子:2018/08/21(火) 11:32

「ふーん…ま、ここに来たんだからなんかやらかしたんでしょ」
小林は興味なさそうに言った。

「あ、食堂ついたよ。じゃあね」
「うん、案内ありがとう」

どういたしましてと微笑むと小林は戻っていった。

(ふう…1人になると急に不安になってきた)

一体何をされるんだろう、怖い、そんな思いばかりが心を支配する。
だが覚悟を決め、扉を開けた。


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