霊鈴

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1:りん◆Xs:2019/05/18(土) 22:50

自己満足ですがのんびりあげていきます

霊鈴【れいりん】
死んだ人が近くにいると、鈴の音がするんだってーーー

2:りんご◆cE hoge:2019/05/18(土) 23:36

風が吹いている。
くしゃみや目の痒みも落ち着き始めた、じんわり汗ばむ梅雨入りの午後。特有の湿った空気の中で吹く風は珍しく、さながらオアシスのようだ。葉の擦れる音に目を向ければ、風が吹くたび程よく木々が揺れ、新緑にそまりつつある土手の芝生が舞い踊る。と、そこに。

制服を纏う少女。

6月。平日。昼間。
学生ならこの時間にそこにいるのはおかしいだろうが、少女はそこに溶け込んでいた。いや、世界が、そこの空間が少女を受け入れているのか。あるいは。
土手のなだらかな斜面、芝生に腰を下ろしている少女。そして。

それを見つめる、1人の少年。

年の頃は少女と同じくらいか、少し下か。幼さを残した少年は、ただ土手の上に繋がる道路に立ち、少女を見下すような形で、ただ少女を見つめる。
しかし、不思議威圧感は感じない。感じさせない何かを少年は持っている。

不意に少女の髪がなびく。

少年からは少女の顔は見えない。黒髪がなびく、後ろ姿しか捉えられない。ならば何故、少年は見つめるのか。

見つめる。
見つめる。

…数秒か。数分か。やがて少年は少女の隣に腰を下ろした。近すぎず、遠すぎず。けれど声が届く距離に。

少年が何を思い、そうしたのか。
それが明らかになるときには、きっと鈴がなるのだろう。

3:りんご◆cE hoge:2019/05/18(土) 23:41

≫2
まって、これ誤字脱字博物館じゃん…
「ただ土手の上に〜」の「ただ」はいらないです。
「不思議威圧感」は「不思議と威圧感」の間違いいいいい

4:りんご◆cE:2019/05/19(日) 13:02

「綾。」

玄関で靴を履く。目の前の玄関扉に右手をかけたところで、綾は自分を呼ぶ母親の声に動きを止めた。
能面のように変化のない顔。1年前から変わることのない制服。切らずにいる重たく長い黒髪が肩から滑り落ちる。
そんな我が子の後ろ姿を、母親は見ている。

「学校…行くのよ?」

綾はその言葉を最後まで聞くことなく、立ち上がり、それを耳障りだというように大きな音をたてて扉を閉めた。
コツコツとアスファルトを踏むローファーの音。じんわりと汗ばむ、湿った梅雨入りの朝。外に出ていても綾には手に取るように分かる。
今日も土手に彼がいること。
今日も閉められた扉の前で、先程返事もなく家を出た自分を、哀しげな瞳で想う母親の存在を。

「ーーーおはようございます。2年3組の…はい、はい、…そうです。」

鞄に隠し入れてきたスマートフォンを当然のように取り出し、学校に欠席の連絡をする。

この時間帯に電話を掛けると、毎回電話をとるいつもの事務の人。名前も声も、お互いに覚えているだろうに、直接会ったこともない。その程度の繋がりが、妙に心強い。

「はい…はい、ありがとうございます。失礼します。」

ツー、と無機質な電子音がする。電話の切れたその音に、どうしようもなく責められているような気がした。

5:りんご◆cE:2019/05/22(水) 17:51

綾は学校への連絡を終えた後、駅前の自動販売機に小銭を突っ込…もうとしたが、実際は当然のごとく一枚一枚、ちまちまと入れるしかなく、大袈裟なほどに大きなため息をついた。また学校を休んでしまった。そんな罪悪感を込め息を吐き出しながら、投げやりに自販機のボタンを押す。

ガチャン。チャリン、チャリン。

購入したペットボトルを取る為に屈み、手を伸ばす。

「……ん?」

買いたかったのは、お茶。
手元には『水』。
炭酸水は彼の好みではないので避け、毎回お茶にしていた綾だが、流石に水はちょっと…と思いながら、自身の手元にある『天然水』と書かれたラベルを横目に、苦い笑みをこぼすのだった。

その後、何度目かもわからないため息をつきながら、お釣りを回収しようとして、ふと金額が合わないことに気づいた彼女が、盛大にまた大量の二酸化炭素を吐き出したことは、言うまでもない。


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