短編メンヘラ小説

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1:うぃるそん:2019/12/05(木) 23:51

第1回

「ごめんね。私はこの人ともっと世界を見たい。世界に貢献したいんだ。」

ぼくは只々何も考えれなくなって、拳を握る力もなくなって、気がつけば家に帰っていた。


ぼく、誠と恋人の優子は付き合って8年になる。
僕は地方公務員、優子は外資系の総合商社に勤めている。

優子は仕事柄、海外出張を多くてぼくは寂しかった。けれど付き合った当初からの彼女の夢だったので喜んでいる僕もいた。
僕も仕事の合間、趣味であったダンスに熱が入り今となっては休日ではインストラクターとして活動したりもする。

最近出張が頻繁に増えた優子が、日本に帰ってくるなり急に冒頭の言葉を発するまで、ぼくは本当に本当に毎日幸せだった。

たまに優子が旅行チケットを出張先から送ってくれて二人で海外を楽しむ時もあった。

優子はどうやら勤めてる会社の人が好きになったらしい。その人の志や仕事の取り組む姿勢に意気投合したのだと思う。

出張後はいつもはお互いどちらかの家に行くはずなのに、喫茶店で少し話そうなんて事を言われて違和感や恐怖はあった。

この後優子は上司と会うんだろう。
二人のその関係になるまでにどんな事があったんだろう。二人が心も肌も交わりあって優子の心の中から僕はどんどん消えていったんだろうな。

優子と出会う前までの僕はフリーターでダンサーを目指す夢追い人だった。
優子との将来を考えて僕は公務員になった。いや成れた。あの子がいたから今の僕があるんだ。あの子がいないなら


僕はぼくじゃないし僕でもない。


気がつけば買ってきた練炭を炊いていた。
死への恐怖はなかった。なぜなら優子が喫茶店で話があるという連絡と彼女の言葉が死への恐怖であり、あの瞬間が僕にとっての死だから。


意識が朦朧とする中で優子が現れた。
嗚呼、最後って幻覚とか見るんだなリアルだな。
「誠くんごめんね。私忘れてた。なんで誠君が頑張ってその仕事して、私がこの仕事してるのか。ごめんね。」

寄り添って抱きしめてくれる優子は本当に現実みたいで幸せだった。

このまま最後に一緒にいれるなら本望だ。

ありがとう優子。


だいきらい。




その後、兵庫県の森寺市で二人の遺体が発見された。


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