微百合です。ご注意を!!
2:れーなちゃん:2020/06/13(土) 10:15 「好きです」
「ぁ、私は好きじゃないです」
じゃあと言って私は顔もろくすっぽ見ていない女の子から遠ざかった
だいたいさぁ話したこともないのにいきなり好きだって言われても困る話だよなぁ
そう思いながらわしゃわしゃ髪をいじる
私の短めで、ねこっ毛な髪ははね放題跳ねている
若干ルーズな感じはいなめない
着ている制服は首が苦しいからネクタイを緩めて
間違って丈を詰めすぎたプリーツスカートは短過ぎる
全体的にそう私はルーズに見られがち
でも告白される回数半端ない
「お嬢様学校はんぱねー」
これが女子校パワーか?って思いながらわしゃわしゃ髪をいじる
入学して早半年……いい加減めんどくさい
「ちょっと!!あんたこっちが決死の覚悟で告白してるのにいい度胸じゃない!!」
「えー?」
後ろから制服が引っ張られて何だよって思って振り返れば
「あ、可愛いねアンタ」
可愛い女の子がいた
ちょいと吊ってはいるが大きな目
スレンダーって言うか胸ねーまあいいけど
長い茶っぽい髪はふわふわ
アニメキャラで言うところのツンデレヒロインってところだろうか
「はっ?な、何よいきなり!!」
「いやさっきは顔よく見てなかったなーって。見たら可愛かったからびっくり」
「は?顔、見ないで、好きじゃないとかって私に言った訳!?」
「ええ。まあそうですけど」
そうしたら女の子は信じられないって呟いて私を睨む
でもさぁ見てなかったものは仕方ないじゃない
「私一回も話したことがない人の告白とか律儀に聞けるほど暇じゃないので」
「何それ。あんた良いのは外見だけなのね。ちょっとは女の子心考えなさいよ」
告白がどんなに勇気がいる行動か考えなさいよ!!っていいながら腕を叩かれた
っていうか案外遠慮がない。痛い
「痛いです」
「当たり前よ!!痛がるように叩いたんだから!!私の痛みを思い知れっ!!」
そう言いながら表情を歪ませていく女の子
そしてしまいには目に涙がいっぱいたまってる
「最悪!!どうしてこんな最悪な奴に惚れたの私」
「はあ。まあ見る目が無いってことじゃ」
「うるさいっ!!あんたの顔がもろに好みだったんだから仕方ないじゃないっ!!」
「えーそれ一目惚れってやつだったりしちゃいます?」
「そーよ!!入学式で見かけて、それでっ!!」
へーって思った
本当に一目惚れなんてあるんだーって思いながら私は名前も知らない女の子の頭を撫でていた
私の方が身長が高いから、かなり良い子良い子って感じの図になってると思う
「そうですか。ところで何年生?」
「2年だけど」
女の子は私に撫でられっぱなしで泣き始めた
ぐすって感じで
あー泣かしちゃったって思いながら私は頭を撫で続けた
「まじ?先輩?見えねー」
「失礼っっ!!本当に良いのは外見だけじゃない!!」
いやアンタも大概失礼だけどねって思うけど言ったら面倒そう
だから私はそうですねって言いながら頭を撫でている
「んで、先輩はいつまで泣いてんの?」
「知らないわよっ」
「そ。別にいいけどさー泣き顔かわいーね」
「性格最悪でしかも軽い。もっと最悪」
「人のこと最悪最悪言い過ぎじゃありませんか?」
「最悪な人に最悪って言って何が悪いのよ!!」
「え、あーそんなに自信持って言われると正論に聞こえるけど、それ大概間違ってる」
「いいの!!私を泣かせた罰」
へーへーと気のない返事をかえす
しかし何だろうか、この先輩は口では私の悪口を言いながら私の撫でている手を止めない
撫でられっぱなしなのに、最悪な私に撫でられてるのに拒否しない理由がわからない
「先輩、名前は?」
まあ別にいいけどさ
泣き止んでくれるまで、撫でていても
拒否られても
私には関係がない
でもまあ撫でている間にだんまりって言うのもアレだし
名前くらいは聞いておこうと思った
「白崎 瑞希(しろさき みずき)」
案外先輩は素直に名前を教えてくれた
じゃあと思って私も自己紹介しておこうと思った
「陣内 奏(じんない かなで)どうぞよろしく」
「私のこと好きじゃないって言ったくせにどうぞよろしくってどんな神経してるの?」
「いや、一応初対面じゃないですか。社交辞令的にね」
「初めから社交辞令ってわかってるのに宜しくする気はないわ」
ああ、どうしてこんなに私に噛み付いてくる
嫌ならスルーしたらいいじゃないか
それこそさっさと立ち去ってしまえばいいものを
「先輩は面倒くさい性格してるね」
「は?」
私を罵るくせに離れない体
退けない手
されるがまま
「本当はさ」
私は先輩から手を退ける
そうすると先輩はそれにぴくっと反応した
「先輩私のこと好きで好きでどーしようもなかったりしちゃったり、ね?」
そう言って先輩の顔を見て、もう大分涙が収まった瞳の下に指を当てて少し残っていた涙を取った
そうすると先輩の顔が一瞬にして真っ赤になる
「へーその反応、やっぱりそーなんだ」
私は何か面白いものでも見つけたかのように口角が上がっていた
今まで振った人でこんなに私に食いついてくる人いなかったし
しかも人のこと好きなくせに罵ってばっか。こんなに性格が素直じゃない人あんまり出合ったことがない
「でもやっぱり。私はまだ好きじゃないかなー」
私がそう言うと先輩はまた泣きそうになった
ああ、もうって思った私は携帯を取り出して先輩に向かって差し出した
「教えるから、頑張ってよ」
「え?」
「どーぞ私のこと落としてみてください」
「は」
「それが望みでしょう?私のこと手に入れたけりゃ毎日毎日頑張って先輩のこと大好きにさせるしか方法ないんじゃない」
ほらって私のアドレスと携番を出して先輩に手渡した
そして適当に登録しなよって言ってから手持ち無沙汰になってしまって、さっきさわり心地が良かったからまた先輩の頭を撫でていた
「出来るかな?まぁ先輩次第だけど」
私のことをちょっと睨み気味で見ている先輩と目が合った
そして先輩は無言で自分の携帯を取り出して赤外線通信を自分で始めていた
携帯と携帯を向かい合わせてやり取りを一人でしてる
「むかつく」
そして通信が終わった先輩は私の携帯を私に投げてよこした
それからやっと私の手を払って退ける
私はその抵抗に少し笑う
多分ちょっと寂しいくせに。だって払う時に少しためらってた
そして私から一歩、離れた先輩は一気に顔を赤くしていた
「私のも、その、登録しておいてあげたから……!!ありがたく思いなさいよ!!」
そう言って先輩は勢いよく私に背を向けて走り去ってしまった
私はといえば若干面白くてニヤケル顔を片手で隠しながら静かに笑った
「何、あれ。惚れてんの自分の癖に随分上から目線」
おかしい。変なの
私はそう思いながら先輩の後姿が見えなくなるまでその場に立っていたのだった。
〜おしまい〜
【10秒前】
去っていく背中
それを見ている私
号泣するまで10秒
1秒、出会いを思い出す
2秒、片想いしていた日々を思い出す
3秒、勇気を出して初めて声をかけた日を思いだす
4秒、少しずつ仲良くなってきた日を思い出す
5秒、告白をした日を思い出す
6秒、両思いになった瞬間を思い出す
7秒、初めてのデートを思い出す
8秒、初めてお泊りした日を思い出す
9秒、よそよそしくなってきた日を思い出す
10秒、頭の中が真っ白になった
「どう、して?」
去っていく背中に向かって小さい声を出しても、背中は遠のくばかり
「弘(ひろ)」
10秒前まで彼氏だった背中に声をかけても振り向いてはくれない
「どうして、何で?」
ごめん好きな人が出来たんだ何て……どうして私がいるのに他の人のこと好きになるの?
「何でよ弘」
目から涙がポロポロ流れて止らない
私は別れ話をされた公園、今居る場所から動けないでいた
もう嫌、信じらんない本当に何なの?
「ひろ」
「呼んだ?」
下を向きながら、目を擦りながら泣いていたら前方から声が聞こえた
まさか弘が戻ってきた?一瞬そう思って私は勢い良く顔を上げる
「うわ。ぶっさいくだねー泣き顔」
顔を上げた瞬間失礼極まりない言葉を吐かれるわ、前方の人物は弘じゃないわで更に泣きたくなった
前方の人物は弘とはまず性別から違う
どこからどうみても女の子。だってセーラーの制服着てるし
そして制服から覗く手足は健康的に少しだけ焼けていて、何か部活でもやっているのか方には大きめのスポーツバックを下げていた
顔はキリッとしたラインで目もキリリとして切れ長だった。そして瞳が色が透き通ってるような茶ついでに髪も茶っぽい肩少し下の髪だった
全く弘とは違う容姿の女の子
「目の周りが黒い。前衛的だね」
「う、うるさいっ!!」
「お姉さん振られてたねー豪快に」
女の子はバックからタオルを出しておもむろに私の目の下あたりをぬぐい始めた
っていうか何なのこの子?初対面なのに何この図々しい感じは
「せっかくお姉さん綺麗なのにもったいないよ。泣いてるなんてさ」
「さっきは……ぶさいくって言ったくせに」
この子の馴れ馴れしい感じが伝染したのか私も普通に受け答えしちゃってる
変なの。確実に軽く無視して立ち去るくらいの出会いなのに
「んーだって黒かったんだもん」
「しょうがないじゃない……泣いてるんだから」
「じゃー泣かなきゃいいよ」
「簡単に言わないで。見てたんでしょ?私が振られるところ」
「ばっちり見てたよ。最初から最後までね。白昼堂々と別れ話なんてしない方がいいんじゃない?ジロジロ見られてたよお姉さん達」
「私だって……したくてしてたんじゃない」
そりゃそうか何て言って頷いてる女の子
女の子は私の目の周りを拭いていたタオルをバックにしまう、しまってから今度は私の手を掴んで歩き始める
私は慌てた、でも引かれるから歩かなきゃいけなくて歩いている
「ちょっと、何なの?さっきから」
「動物園の動物みたいに遠巻きに眺められているのがお好きならどーぞここにいてくださってけっこうですけど?」
そう言われて私は初めて回りを見た
そうすると公園に居た人達がジロジロ遠巻きに私たちのことを見ているのが視界に入った
自分が見られている、と自覚した瞬間恥ずかしくなって俯く
そして女の子に引かれるまま足を進めていた。だって嫌だもんジロジロ見られてるの
私は女の子に引かれるまま歩いて公園を後にしていた
女の子はどこに行くのか、さっきからだんまりで歩き続けている
「あ、あの」
「んー何?」
「どこ行くの?」
「ゆっくりできるとこー」
まさかイカガワシイところじゃ……いやいや待って千秋(ちあき)相手は女の子
まさかホテルになんて私を連れ込むはず
いや待って仮に連れ込まれたとしても私そういう経験多くない……し。どうやって逃げればいいのか?
24歳社会人になったけどそういった知識が多くない私
「あ、その、私。ここらへんで――」
「ついたよー」
女の子から逃げようとした瞬間女の子が目の前にあった建物のドアを勢い良く開けて
そのまま中に私を引っ張り込んでいた
私は拒否する時間さえも与えられずに室内に入っていった
「いらっしゃーい」
室内に入ると聞きやすくて感じがいい声が聞こえてきた
室内には邪魔にならないくらい音量の洋楽が流れていて、少し暗めにはなってるけどほっとするような少しレトロな感じのところだった
周りをきょろきょろ見ると何かのアンティークなのか古そうだけどお洒落な小物や道具がバランスよく配置されていた
なんとなく喫茶店なのかなって思った。だってカウンターとかテーブルとか設置されているし、店内には食事をしているお客さんが居るから
「あら、いらっしゃい」
私と女の子の前には感じがよさそうな綺麗な女性が立っていた
ゆるくウェーブしてる髪を後ろで結んでいて、エプロンをしていた
「こんにちは冬美(ふゆみ)さん。適当に座っていー?」
「どーぞ」
ありがとうと女の子は言うと私を連れて移動して窓側の席に移動した
女の子は私の手を離してから大きなバックを肩から外して床に置いてから自分の前の席に座っていた
だから私も何か女の子と正面で向かい合って座ってしまった
何か私って流されやすいのかな?ってふと思う。だってこの子とは初対面なのに
「ここ、どこ?」
「見てわかんない?カフェだけど」
「何となくわかってたけど……どうして?」
「お姉さんメイク道具は持ってきてる?」
「まあ少しは」
「じゃー直してきなよ。その微妙な顔で帰りたいならいいけど?」
テーブルに肘をついて、それに顔を乗せたまま私のことをじっと見ている女の子
その真っ直ぐな目に見られているのが恥ずかしくなった私は急いでバックを手に持って席を立った
「直してくる」
「いってらっしゃい。真っ直ぐで右ね」
笑いながら手を小さく振っている女の子
私はありがと、と言って言われた方向に移動していった
次が最終回です。
7:れーなちゃん&◆1w hoge:2020/07/28(火) 15:26停止します。