未定
2:ニャー◆pY:2020/10/31(土) 06:35 小さな女の子が枯れ葉や土にうもれて、横になっていた
「さうです」
かきわけるようにして、ちいさな体をおこして、彼女は言った。
そのこの顔はつぶれていた。
輪郭もなんだか落書きみたいにぼやけていて、表情もわからない。
胸にカラフルなトーテムポールを抱えていた。
「こんにちは」
ぼくは言った。そこはどこかの広い草原だった。
ぼくはどうしてここにいるのか分からない。
記憶の前後があいまいで、もっと遡ると2体の死骸があった。
その生きものがなんなのかはわからない。ぼくはそこで回想を止めた。
そのこはぼくの顔をじっと見つめている。
「あ〜、ここはぼくは、なんなんだっけ」
尋ねても、そのこはなにも応えてくれなかった。
辺りを見ると、どうやらそこは昨日の景色のようだった。
直感的にわかった。
ぼくは昨日もここに居て、このこと喋っていた。
おそらく夢ではなくて、現実の世界のこと。
同じことをしている。でもその顛末はわからない。
「さうです」
彼女は繰り返し言った。ぼくはあきれた。
「誰か〜」
まのびした声で、言ってみた。
すると足元に枯れ葉が落ちてきた。
見上げてもなにもない。どこから降ってきたのだろう。
晴れていて、きもちのいい風が吹いていた。
ぼくはひどく眠たかった。
嘘つきばかりだ。
さうは死んだ。
そう思い込んだ瞬間さうは居なくなった。
ぼくは音のない木の陰で途方に暮れている。
さうが齧っていた林檎が脈を打っている。
触れてみるとぼくは痺れたようになってその場にへたり込んだ。
「君さぁ……君さぁ!やっぱヘンだよ!最低だよ!」
さうの声だった。さうはそこに居た。
どうやらさうは僕の意思に応じて浮き沈みする存在らしい。
ぼくは相当頭がわるいらしい。
「ぼくは相当頭がわるいらしいね」
ぼくらは2人で歩きだした。
そこはさうの存在に適応しているようなチグハグさがあった。
まず視界の右から半分がちぎれている。
びっしり覆われた雲は電飾のように次々と色を変えていく。
時折、首から上が枯れ葉みたいになっている鳥が飛び交っていた。
寒いのか暑いのかわからない。
温度というものが存在しないのかもしれない。
あるいはぼくの感覚が壊れているのか?
さうは、とぼくはいった。
「さうは、何時からここにいるの?」
やっぱり何も返ってこなかった。
小さくかがんで素足のつま先をグニグニと押している。
再び歩きだす。ぼくらは前にまっすぐ進んでいた。
一歩、一歩と歩みを進めるごとにぼくの存在は濃くなっていくようだった。
けれども、ぼくは周りの景色が一向に変化していないことに気づいた。
「ねえ」と隣をみるとさうはぼくになっていた。
ぼくはあわてて自分の顔を触った。
へんな感触がして鳥肌がたった。
人間の腸をじかに触るとこんな感じかもしれない。
こんなヘンテコな空間にあれこれ頭を使ってもしょうがない。
ぼくはまともな最後の記憶、14歳の夏の日について考えることにした。
嘘つきばかりだ。
日夜みんなが必死で保ってきたものはなんの役にもたたなかった。
死んで当然だ。全員