零番線特急

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1:麗奈:2021/04/06(火) 20:13

【お降りのお客様はご愁傷様です】
不気味なアナウンスが流れるその電車は、乗ってはならない電車だった。
停車駅はどれも現実離れした不気味で危険な駅ばかり。彼女らの運命は……。

2:麗奈:2021/04/06(火) 20:14

※この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

3:麗奈:2021/04/06(火) 20:25

1[乗車]

ホームに向かう階段は、さっきまで降っていた雨の匂いを残していた。
空気が湿っている。空には薄い雲が掛かっていた。
私は数段前を歩く莉菜の後頭部を見ながら、何とも言えないこの気持ちを飲み込む事に専念する。

「莉菜の事が好きなの、瑠奈、莉菜にこの事言うなよ」

小学校に上がる頃からずっと一緒に過ごしてきた慶太が、見た事も無い顔と、聞いたことも無い声でそう言ったのはいつだっただろう。
もうずっと前の様な気がするけど、つい最近の様な気もする。

慶太は私の幼馴染だ。正義感が強くて、男なのに小柄でパワフルで、なんと言っても優しくて格好いい。
本人に言ったことはないけど。

莉菜も私の幼馴染だ。私が小学校4年の時に隣に越してきた1つ年上の幼馴染。
外国の血が入っているのではと思わせる顔立ちと、母親の影響で続けているのだと言うバレエのせいか、すらりとした体型と姿勢の良さが際立つ。背も高いし、何より莉菜もまた慶太と同じ様に優しい子だ。慶太が莉菜に惹かれる事に不思議は無い。

でも、私の方がずっと早く慶太と一緒に居たのにな。

4:麗奈:2021/04/06(火) 20:35

いつも一緒にいた少年の事を好きになったのがいつかなんて覚えてないけれど、慶太も少なからず私に好意を抱いてくれていると思っていたのに。
ホームに降り立つと、いつもの癖で向かい側のホームを見てしまう。
そこには、制服姿の慶太が居て、恥ずかしそうに手を振っていた。
私は頷くだけだが、莉菜は律儀に振り返す。
ちょうどその時、慶太の姿をかき消すように電車がホームに入って来た。

私は2人の間に特別な空気が生まれるのを見たく無くて、黙って電車に乗り込んだ。
発車ベルに変わって、地元の作曲家が作ったらしい童謡が流れてくる。
それを合図に私達は向かいのホームにいる慶太に軽く手を振って「また明日」と別れるのだ。
今日もまた、私たちは窓際に立って慶太を見ていた、これがいつものパターン。
だが今日はちょっと違っていた。慶太は片手を上げたまま、ぽかりと口を開けている。
何かあったのだろうか。慶太は、私たちでは無く宙を見つめたまま微動だにしない。
電車が動き出し、遠ざかる彼の姿は可愛らしい様な、間抜けな様な感じで。
明日何があったのか聞いてみようと思った。


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