魔王はただ1人孤独に生きる。

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1:猫らー:2022/07/05(火) 07:30


─プロローグー

──ああ、またこれか。
何度も蘇り殺したくもない人間をころす。
ただ、俺が魔王であるために魔王であるべき行動に徹する。
その行動こそが神が決めたこの世の理。

2:猫らー:2022/07/05(火) 07:31

最初は小さな疑問だった。
何故神は魔王であるこの俺の存在を自らの手で消すのではなく1人の人間に勇者の地位を与えてその者に討ち取らそうとするのか?
何故神と呼ばれるだけの力を持っているのに俺が蘇らぬように永久に封印しようとしないのか?
神の力を持ってすれば俺の存在を消すことなど雑作もない事だろう。
なら何故わざわざ人間にその役目を任せるのか?それは簡単な話だ。

勇者という英雄を作り出してその者を使って人間達の乱れをコントロールするためだ。
魔王という悪がいるからこそ人々は共に助け合い手を取り合って生きることができる。
その悪に立ち向かう勇者は人々にとっての希望となり魔王を倒した後は英雄として称えられる。
そうなれば、人々は勇者に従い平和に暮らすだろう。
つまり、魔王であるこの俺はこの世の秩序を守るための神の1ピースに過ぎないのだ。

俺は後何度しねば良いのだろうか。
何度嫌われ、蔑まれ、恨まれねばならぬだろうか。
あと何度同じことを繰り返せば──報われるのだろうか───。

3:猫らー:2022/07/06(水) 20:14

1.魔王の役割
ーーーーーーー
俺は勇者に倒されようとも50年という周期で再び甦る。
それは神が俺に与えた役割を全うさせるため魔王である俺に与えた能力だ。
もう蘇りたくないと思っても50年経てば勝手にこの場所、魔王城にリスポーンしてしまう。

人は魔王という悪に対し手を取り合い助け合い立ち向かう。
その結果、俺に挑んだ者達は互いに称え合いそして人間間のいざこざが無くなりこの世界の秩序が守られる。
だが、人間は遅かれ早かれ必ず死ぬ。
そして新たな世代へと受け継がれるのだ。
そうなれば魔王である俺との激闘を知らぬ者達が増え再び人間達のいざこざが起きうる事になるのだ。
そうならぬように俺、魔王は倒されてから50年の周期で甦る。
神がこの世の秩序を守るために。

そして今俺は10回目の魔王人生が始まる。

4:猫らー:2022/07/06(水) 20:16


俺は玉座に腰掛け城内を見上げる。
前回蘇生した時と変わらない城。
古くなる事も誰かが手を加える事もない。
ただ、いつまでも変わらない空間がそこにはある。

「今回の人生もまた・・・恨まれないといけないのか。」


8回目の蘇生の時に俺は神に足掻こうとしたが神の強制力は絶対だったようで気づけば俺は人間達を殺していた。
自分で体を動かしたわけでもなくこの城から出たわけでもないのにいつのまにか俺の目の前には血まみれの死体の山があった。
抵抗しようとも神は決してそれを許さない。

「そろそろ始めるか。」

そう言うと俺は魔力を込めた言霊を人間達の住むすべての国へと打ち付ける。


『我、魔王は今此処に復活した。覚悟するがいい人間ども。必ず人間界を我が支配してやろう。』


こんなものでいいかな。
きっと今頃俺の復活を知った人間界は大慌てだろう。
そこに神官を通じて女神が見繕った勇者に加護を与える。そして勇者が誕生する。
後は勇者の成長の頃合いを見て俺が勇者に倒される。
これまで通りそう言うシナリオだろう。
恨まれる事にも憎まれる事にももう慣れた。
これから先もずっと俺は神達の秩序を守るための道具としてこの世に蘇り続けるだろう。
そしてその度に憎き悪として勇者に倒される。

5:猫らー:2022/07/06(水) 20:23


だが、そろそろ俺の精神も限界に近い。
最初の頃はただひたすら物語の悪役に徹して魔王を演じていた。
そんな俺に感情を芽生えさせたのは5回目の蘇生をした時の勇者だった。
彼・・・いいや彼女は俺との共存を目指そうとしてくれた。
それまでただ蔑まれ、恨まれ、憎まれるだけの存在だったはずの俺に彼女は手を差し伸べてくれたのだ。
そんな彼女の優しさに次第に人間のような感情が芽生えた。
あの感覚は何とも不思議だったな。

「私が必ず貴方と共存する未来を作って見せる!だからそれまで・・・」

そう言ってくれた彼女のおかげで俺は初めて生まれてきて良かったと思えた。
だが、神は残酷で・・・そんな未来を決して許してはくれなかったんだ。
俺は神に抗おうと必死に奮闘したが気づけば俺は──彼女を殺していた。
神にとっては勇者ですらただの道具でしかなかった。
ひたすら泣いて泣き叫んだな。
それと同時に神をも恨んだ。
そして、神に抗えなかった自分の非力ささえも恨んだ。
だからもうあんな思いは二度とごめんだ。
要らぬ感情を抱かぬように今はただ悪の魔王を演じる。
ただそれだけでいい。
たとえ俺の心が壊れようともこの世が平和であるのならそれでいい。


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