※BL注意
「はぁー……やってらんね……」
怪人は空を仰いだ。正確には怪人のコスプレをしただけの人間だが、人工的なまでに鮮やかな青空を前に自分が何者かなど考えたくはなかった。
暮橋成二、御年26歳。特撮映画のスーツアクターを目指して養成所へ入ったものの、未だ鳴かず飛ばずである。
二十台も後半に差し掛かるというのに、閑散とした遊園地のヒーローショーで悪役徹する毎日。ちなみに雇用形態は契約社員だ。百歩譲って低所得は目をつむるとして、だ。観客が一桁、多くて二桁台というのはいただけない。今日の観客よいえば、休憩がてら座ってスマートフォンをいじる小学生と、井戸端会議に花を咲かせる中年女性二人。せめて主役であればこんな惨めな思いはせずに済んだのだろうかと、成二は嘆かずにはいられなかった。