諸行無常
きれいなものだけ見ていたい
毎年桜が咲くたびに
こんなに淡かったものかと思いながら
美しさに思いをはせ
気づいたら散り
花弁は長雨でできた水たまりをせきとめる
一生みていられる美しさ
けど無常美のためにある淡いそれは
永遠を苦手とする神様の
中途半端な力作なのでしょうか
自分もこうでありたかったと
そうして一日はおわってしまう
じわりと広がるような湿気
空には雲の峰
まだ春だけどもう春
春雷がなる頃に
疲れ切った足はまた明日の為に
わたしのこえは
だれにもとどかないので
しょうか
彩ったガーランド
割れる卵
そしてかけぬけていけ
そう思えば思うほどわたしのこえは砂埃にかきけされる
曖昧に溶かされる
そうしていきてゆく
ねむい
おなかすいた
さむい あつい
ねむい
そうして帰路につく
未だリュックに居座るガトーショコラ一本
食べるタイミングなくずっとそこにいるのだ
まわりの目を気にして食べられない
それはまるで人生だろうか
挑戦はこわい
失敗がこわい
成功のその先がこわい
人間が抗えない恐怖の感情を盾に
今日も挑戦から逃げる
口に広がる飴
砂糖、砂糖、砂糖
歯に当たるからり
存在をかんじる
それはまるで彼女のようで
最後の最後にぱりっとかむ
空腹も満腹もせなかあわせ
人工甘味料の風味は
きっとじぶんみたいなのでしょう
じわり夏めく
足元のくっきりした木漏れ日
じわり夏めく
日焼け止めを塗るようになる朝
じわり夏めく
肺に広がる夏のそよ風
じわり夏めく
腕まくりをするあなたの手首がみえる
じわり夏めく
夏めいてゆく
じりじりと
太陽が照りつく
夏の空
自分の影と
星の影
どちらもきれいな
夏の空