小説板で書いていたけど、短いのでこっちに移動。
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voyage=仏語で『旅』
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作者について
名前 碧氷空 aozora
偽名です。ご了承ください。
注意
・荒らし行為禁止
・感想,アドバイス以外の書き込み禁止
・スレ主を特定するのはやめましょうね( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
【>>0004】
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基本恋愛物です。矛盾してるところがあっても、見逃してくださぁい。・゚・(ノ∀`)・゚・。
打ち間違い、明らかな矛盾は指摘してくださいね。
また、更新は早かったり遅かったり。書き始めた作品を突然やめることもありますが、温かい目で、ね( ´∀`)bグッ!
1.
___私は恋愛未経験。
好きな人なんて出来たことなかったけど。
あの人にドキドキしてるのは、
___夏の暑さのせいかな。
(>>0005は辞めます,すいません)
1.
炎暑の夏が来た。
「よー、行こっ!」
太陽の様な眩しい笑顔。
田辺梨華は私の手を引いて、足早に歩く。
「ごめん、私が朝弱いばっかりに……」
「何言ってんの、そんなこという余裕あったら歩け歩け!」
梨華にはいつも助けてもらうばかりだ。
私は少しでも梨華の役に立ちたいと、いつも思っている。
「わ、あれ、裕斗くんじゃない?」
歩道橋から見える、スラっと伸びた長い足。
梨華の彼氏、緒川裕斗。
美男美女の、お似合いのカップルだ。
「ん?」
裕斗くんに、1人の女の子が駆け寄る。
眼鏡を掛けて、地味な色のカーディガンを羽織った地味な子。
「あのこ、誰だろ?」
梨華に聞くと、梨華は横に居た派手な女子軍団を睨んでいた。
「梨華?」
梨華は涙を目に浮かべながら、そそくさとその場を去ってしまった。
「先、行ってる」
「え?梨華!!」
「私、裕斗くんのことが好きですっ!」
___は?
思わず耳を疑った。
裕斗くんは梨華の彼女でしょ……。
「うわ、あいつマジで言ったんだぁ〜」
耳にピアスをつけた、女の子。
髪は茶色で、カールがかかってて……。
あの地味な子とは正反対の、ものすごく派手な子。
「___柏原根性あるねぇ」
ロリポップをペロリと舐めて、その子はそうつぶやいた。
梨華の様子がおかしい。
そんなこと誰にだって解る。
__私のことを避けてるの?
そう気づいたのは昼休みだ。
お弁当はいつも2人で、秘密の中庭で食べていた。
私がいつものところに行くと、梨華が朝見た派手な子とレジャーシートを広げて、楽しそうに笑っていた。
は、何あれ……。
「なんか音しなかったぁ?猫かな〜なんてねアハハ」
その派手な子__愛河幸妃佳の声に、私は思わず近くの茂みに飛び込んだ。
「猫!あり得ない〜風でしょ」
梨華は少しぎこちなく笑う。
幸妃佳は気づいていないんだろうか。
__梨華の手が震えていることに。
「__それで、梨華チャン?本題に入るけどぉ」
幸妃佳はお弁当箱を風呂敷で包むと、ポケットからロリポップを取り出した。
「うん……っ」
梨華は今まで以上に顔をこわばらせながら、そそくさとお弁当箱を片付ける。
「裕斗くんとはぁ、もう別れたんだよねぇ〜?」
「なんでそれっ……」
「陽都が言ってたんだもん〜!私はしらなかったしぃ〜」
___はあ?
「陽都が?なんで__」
「ゆ〜は、そんなの知らないし?!」
梨華が手をぎゅっと握る。
梨華、ずっと嘘ついてたの?
「___あんたも終わりだねぇ?梨〜華チャン!ゆ〜、あんたのこと、
ずっと大嫌いだったんだぁ♪死んじゃっていいよぉ♪アハァ!」
「明日からあんたはターゲット。柏原の変わりだよ?カ・ワ・イ・ソ!」
梨華はついに泣き出した。
眼鏡に水滴がついて、目が見えない。
__梨華。私は、梨華の役に立ちたいと。
___ずっと思っていた。
でももう……いいや。
私に嘘つくような人は、
嫌いだ。
私はその場をあとにし、教室へ向かった。
「よし!できた!」
梨華の椅子に、釘が並べられていた。
うわぁ、こんなことまでするんだ。
梨華、これから大変だなぁ。
私は他人事のように本を読み始めた。
主人公は正義感が強くて、いじめなんて見過ごさない。
馬鹿らしすぎて、笑えてくる。
いじめなんて見過ごさない?そんなこと、
あるわけないじゃない。
2.
「アハハァ!」
人を嘲笑うような声が、2年生の教室の廊下に響き渡る。
_______酷。
この一文字がピッタリな状況だ。
まわりにいる人は何も言わない。
私も、だ。
梨華と目が合わないように……、私はひたすら本を読んでいた。
梨華の叫び声と、幸妃佳の笑い声。
天国__と、地獄_____。
いや、地獄だ。
そして梨華を助けない私は……。
それ以上かもしれないけど。
「誰かぁ___!誰か___誰か助けて________っ!!」
梨華。
私はあなたのことを助ける気なんてないよ?
「愛河?お前何してんの?」
大きくて頼もしい手が、梨華の震える手に重なる。
「緒川……っ、ありがとう__」
緒川__かぁ。優しい男。
「ちょっと緒川?勘違いしないでよ?私達遊んでただけだよね?」
幸妃佳は引きつった顔で周りの取り巻きに合図を送る。
「そ、そうだよぉ〜ほら梨華!立て〜」
「梨華って本当、ドジだね〜」
ははっ。嘘っぽ。
「そうだよ……遊びでちょっと私がパニックなっちゃ__」
「田辺って嘘下手だな?俺、いじめとか反対」
緒川は梨華の手を取り、ぎゅっと引っ張って梨華を立たせた。
「うわぁっ、____っ!!」
バタッ。
「えっ____うわぁ!」
梨華は瞬時に立ち直すと、階段の方へかけ出した。
緒川_____いや、裕斗くんはその場で座ったままだったが……
顔は熟した林檎のように赤かった。
「なにあれ__梨華チャン調子のりすぎだし」
幸妃佳はポケットからチュッパチャップスを取り出し、包装紙をぽいと廊下に投げ捨てる。
「ねぇ__愛河さん?それ__その……ごみが_」
後ろから、地味な女の子が……あれは、
か、柏原?!
「いいじゃんね?こんぐらいさぁ?ね?柏原チャンも立場わきまえろ?アハハ」
幸妃佳は高らかに笑うと、柏原を突き飛ばす。
「い、痛ぁ__ッ」
柏原はその場に尻もちをついてしまった。
「だっさぁ柏原〜ヤバ写メ撮る?」
幸妃佳のバックから、スマホのケースが日光に当たる。
「それは__止めとけば?」
横の教室からでてきたのは__
隣のクラスのボス、澤雪火だった。
3.
「は?あぁ__雪火か」
幸妃佳は軽く舌打ちをし、スマホをバックにしまった。
「幸妃佳__調子乗ってる?よね?」
雪火は窓にもたれかかった。
「ごめんね〜?私と実花、幼馴染でね?」
実花……柏原の下の名前。
「柏原とあんたが幼馴染?ウケル〜」
幸妃佳がバカにした様子で笑う。
ドンッ。
うわぁ、壁ドn……壁ガン。
「バカにしないでくんない?私の力総動員すれば__
あんたなんか、地獄に落とせるんだから」
「なんで……雪火と柏原が仲良いのぉ?」
幸妃佳はわざとらしく首を傾けた。
「あんたみたいなお・ク・ズじゃないからかなー?フフッ」
雪火が幸妃佳を見下ろした。雪火は身長が170もある。
「雪火っ_もういいよ、有難う」
緊迫した状況の中、柏原が雪火の方をぐいっと引っ張った。
「っ__あんたも運が良かったね、相手が実花で」
雪火は幸妃佳に嫌味を吐き捨て、教室の中へ入っていった。
「______あれ?幸妃佳?梨華のいじめはもう終わりなの?」
___悪魔の囁きが聞こえる。
私は机から離れると、窓際に置いてある棚にもたれかかった。
「そだよ幸妃佳?こんなの__まだ本気じゃないでしょ?」
私はニヤリと笑った。
(短編は人来ないから大丈夫かなぁw)
「なんでっ___」
梨華は私を睨む。
「あんたが嫌いだから__これで満足?」
「良いじゃん莉緒っ!やるぅ」
肩に掛けられた幸妃佳の手に、自分の手を重ねる。
「梨華は私を騙した__その罰よ」
梨華は絶望の淵に立たされていた。
ざまあみろ。
梨華の嘘のお陰で、こっちはどれだけ自分の感情を押し殺したか。
「ねぇねぇ!トイレの水で梨華を洗ってあげよ!」
私の提案に、幸妃佳は
「梨華チャン汚れてるもんねぇ、ここもここも……誰かバケツに汲んできて!楽しみアハハ」
賛成か____良かったぁ。
「うわ、汚ねぇ」「いじめかよw」「いじめられてんの田辺じゃんださぁw」
周りの声が、どんどん梨華を追い詰める。
もっと____もっと_____梨華なんて、
死んでしまえばいいんだもの。
「莉緒!何で!?仲よかったじゃない!私があんたのことどれだけ助けてあげたと__」
「黙れ!」
梨華が私に突っかかってきた。
うざ。
上から目線__。
「梨華チャーン♪用意できたよぉ!綺麗にしてあーげるっ」
バシャーン
ポタ、ポタ、ポタ______。
梨華のカールのかかった髪から、絶え間なく水滴が落ちる。
「わぁー!梨華チャン、透けてない?」
幸妃佳が背中に回る。
梨華は慌てて背中を隠した。
が____。
「ねぇ男子!梨華のこれ、どう思う?」
私は梨華の手をがっちり掴み、男子の居る方へ背中を向けた。
「ほんとに止めて_____!」
梨華の悲痛な叫びが、校舎中に響き渡った。
4.
「莉緒、職員室に聞こえたかも」
流唯に言われてからハッとした。
私___何してるの……。
「ごめん、ちょっとやり過ぎたかも___」
私は幸妃佳にペロッと舌を出した。
「___莉緒、酷い」
梨華が顔を真っ赤にしてそう言った。
「ちょっと田辺さん?どうしたの!濡れてるじゃない……一体誰が__」
「私達ですが__何か問題でも?」
幸妃佳の後ろから、眼鏡を掛けたボブカットの美少女が出てきた。
新川潤。
車メーカー・SINKAWAの社長の愛孫。
多大なお金を寄付しているそうだ。
「あら新川さん!なんでこんなこと___こけちゃって水が田辺さんにかかってしまったのかな?」
今、先生の態度が明らかに変わった。
大人って、キタナイ。
「そうだよぉ〜ほんとごめんね?梨華!」
幸妃佳が眉を上に上げ、お得意の困り顔をする。
「いいよ______全然。私も前見て無かったし___気に__しないで__?」
そう言って笑う梨華の目尻は、キラキラと日光の光りに反射していた。
「全く____莉緒?潤が居なかったら私達今頃停学だからねー?」
幸妃佳が眉間に皺を寄せる。
「だよね__ごめんっ」
私は手を合わせ、皆に頭を下げる。
「まぁ無事でよかったですが___梨華__あなたもいい仕事しましたね」
潤は腕を組み、真顔で言い放つ。
梨華は、先生に助けを求めなかった。
「言ったら__果たしてどうなるかしらぁ?ウフフ」
いかにもお嬢様という様子で、手を口に当てて___
目が笑ってない、笑い方。
5.
____もうすぐ、文化祭だ。
「潤〜今日のテストやゔぁかったんですけどぉ〜」
私は潤に泣きついた。
普段は梨華と過ごしている休み時間も、今日は幸妃佳達とつるんでいる。
「私もだよ怒られる!うわぁぁぁん」
流唯が頭を抱える。
「全く流唯も莉緒も、しっかりしなさいよ……ハァ」
潤はため息を付いた。
「だって〜ぇ……って、幸妃佳はどうなのよ?」
ペロペロとキャンディを舐めている幸妃佳。
ん?と顔をあげる。
「私はいいじゃん___あっ、潤!ちょっと、やめて!」
大事そうに体の内側に隠していた紙切れを、潤がパシッと奪いとる。
「____皆で勉強会ね」
潤は幸妃佳に紙を返す。
「わぁ〜潤、神!有難うっ」
流唯が大袈裟に声を上げた。
「あ、ねぇねぇ、来月って文化祭だよね?」
私がそう言うと、幸妃佳がうっとりと口を開く。
「メイドカフェ___やりたい」
「わぁ、幸妃佳乙女〜アハハ」
「うるさーい!もう」
メイドカフェ……ちょっとやってみたい__。
「提案してみたら?うちのクラス可愛い子多いし、イケると思うよ?」
私は幸妃佳を押す。
「ハイハイ、あんたもやりたいんでしょ?正直にいいなって〜」
「バレたか」
幸妃佳……鋭い。
キーンコーンカーンコーン____。
「チャイム鳴ったじゃん!行こ行こ」
私たちはそそくさと教室に戻った。
皆さんお久しぶりです。
しばらく更新お休みしてましたが、また再開します(*´艸`*)
「皆、もうすぐ文化祭なのは知ってるな?」
先生の言葉に、皆がわっと沸く。
「せんせー!せんせー!私メイドカフェやりたーい!」
幸妃佳がガコンガコンと机を揺らす。
「でも、恥ずかしいし……」
1人の女子がはにかんだ。
「なにいってんの、メイド服着たら皆可愛く__」
「幸妃佳は可愛いもの。私なんて___グスッ」
垂れ下がった目尻から、ぽろぽろぽろと涙が溢れだす。
クラスでも男子に人気がある、狩野 湖都。
幸妃佳とは正反対で、ちっちゃくて、まるでマカロンみたい。
いやいや、あんたなんか絶対似合うでしょう?
幸妃佳の取り巻き達は冷たい目で湖都を睨んだ。
「湖都ちゃーん、ちょーっと調子乗ってなぁい?」
流唯が、湖都の周りに集まっている男女を掻き分けて湖都の正面に回る。
「……グスッ、ハァ、何__?流唯ちゃん?」
湖都がわざとらしく、流唯に上目遣いをした。
「しらばっくれんなよ、まじウザいから」
流唯の横から、幸妃佳も参戦した。
教室は緊迫した雰囲気に包まれている。
先生はこんな時に限ってどこかへ行ってるし___。
「湖都さんはいいですよね……ぶりっ子さえしてれば男女から好かれる愛らしい顔をしてて」
自分の机に頬杖をつきながら、窓を見つめて潤がポツり、と呟く。
「……何言って___」
バチン!
潤が湖都の顔を叩いた。
「私はあんたにそんなこと言われなきゃいけないほどの存在って言いたいの!?」
潤は顔を真っ赤にして、教室を飛び出した。
「湖都!大丈夫?」
「潤、湖都にこんなことするなんて。酷い」
湖都が腫れた頬に、自分の手を重ねた。
「潤ちゃんはさぁ、好きな子に告白して振られたから、私に八つ当たりしてるんだよ、可哀想」
フフッと勝ち誇ったような表情で、湖都がそう言い放った。
「へぇ、そなの……」
私は頷いた。
幸妃佳達が潤の後を追い、教室に居ないをいいことに、私はその話を詳しく聞くことにした。
「ねぇ湖都、潤は誰に告ったの?」
「えぇ……、言っちゃおーかな、どーしよっかなぁー」
湖都はもったいぶって、苦笑いをした後、あのね……と教えてくれた。
お相手は、鈴木涼太。
なんでも、鈴木は湖都のことが好きらしい。
だから、湖都にやきもちを焼いているそうなのだ。
「ふぅ……ん」
私は意味ありげに頷いた。
いいこと、聞いちゃった。
「潤、落ち着けって」
「そうだよ、湖都も悪いって」
一方屋上では、幸妃佳達が必死に潤を慰めていた。
普段は無表情な潤が、静かに涙を流している光景は異様である。
「ねぇ、潤ってさぁ、湖都に焼き餅焼いてるんだよね?」
皆が潤の肩をさすり、優しい声を掛けている中。
私は手摺(テスリ)にもたれ、嘲笑しながらそう言った。
「はぁ……?潤があんな屑に?」
流唯は信じられないという顔で、潤を見つめた。
「潤。なんであんなことしたの?」
幸妃佳が優しく聞いた。
潤はずっと下を向いて、ついに何も話さなかった。
Characterまとめ
主人公
上月 莉緒 コウズキリオ
:主人公。読書家。
田辺 梨華 タナベリカ
:あることから虐めを受けるようになる。明るく、天真爛漫な性格。
愛河 幸妃佳 アイカワユミカ
:クラスのリーダー格。いつもキャンディーを舐めている。
長谷川 流唯 ハセガワルイ
:幸妃佳の取り巻き。あっさりしていそうにみえて、腹黒い。
新川 潤 シンカワジュン
:SINNKAWA財閥一家。お金持ち。大人びている。
柏原 実花 カシワラミカ
:地味ないじめられっ子。
澤 雪火 サワユキホ
:実花の幼馴染。進み始めると止まらないタイプ。
狩野 湖都 カリノコト
:男子にも人気がある。可愛い系。
緒川 裕斗 オガワユウト
:体育会系の男子。スタイルがいい。
鈴木 涼太 スズキリョウタ
:文芸部に所属する、莉緒達の1つ先輩。
** 書き忘れがある・矛盾しているなどは教えて下さいね **
6.
あんなことを言った後、私は当然1人だった。
「なにそれウケルー」
「幸妃佳なにしてんのー」
教室の後ろ、窓側では、幸妃佳の席の周りに流唯達が屯(タムロ)していた。
私は最近買ったばかりのヘッドホンをバッグから取り出すと、耳に装着して周りの音をシャットアウトし、ただ、本にのみ集中する。
ふぅ___。
幸妃佳の梨華へのいじめは、最近ピッタリとやんだ。
今まで梨華のことを避けていたクラスメイトも、いじめがなくなったためか梨華を積極的にグループに入れようとしている。
もともと梨華は明るい性格だったから、行く宛は幾つもあるのだ。
___根暗で性格が悪い私とは違って。
いや、梨華も性格という点では私と似ているのかもしれない。
だって___。
梨華。私はあなたを、きっと、ずっと、忘れないまま、恨んでいるんだろう。
🎍皆さんあけましておめでとうございます🐔
「莉緒、ちょっと来て?」
手洗い場から教室へ向かう途中の事だった。
ふいに聞き覚えのある声がして、恐る恐る振り向くと、そこには梨華が立っていた。
「__ね?」
その顔こそ笑っていたが、目は冷たく、私を睨んでいた。
「いや、あの、今から用事あって……」
こいつに付いて行ってはだめだ。
私の本能が、そう言っている。
「__あんたみたいな“屑”が私に口答えする気?」
その口元が、まるで口裂け女のようにニタァ……と笑った。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
音を立てないよう細心の注意をはらいながら、私は資料室のロッカーの中に隠れた。
あのあと、私は咄嗟(トッサ)に近くの階段を降り、西校舎のこの場所へと飛び込んだ。
あの目、梨華は本気で私をどうにかしようとしていたに違いない。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなると、廊下を走る音が大きくなった。
私も教室に戻らないと……。
ゆっくりとロッカーのドアを開けると、私は反対側の校舎にある自分の教室へと走った。
「遅れてすいませんー……ん?」
教室の薄汚れた扉を開けると、教室内にはぽつんと1人、幸妃佳が居るだけだった。
あんな風に喧嘩売った後だ、できるだけ関わりたくない人物。
時間割を確認すると、次は体育で、体育館からボールの跳ね返る音が聞こえてきた。
げ……よりによって……。
幸妃佳はおもむろにイヤホンをポケットから取り出すと、それを鞄に隠していたケータイに差し込んで、音楽を聞き出した。
その様子からして、私に何かするような動きはない。
私は一息つくと、素早く体操服を持って更衣室へと走った。
なんだったんだ……?
運動が好きな幸妃佳が、体育を休んだことは一度もない。
なのに、何故__。
まぁ、いいや。
私は着替えてから、直ぐ様体育館へと向かった。
7.
体育では今日からバスケットボールだった。
「ねぇねぇ」
ドリブルの音とシューズの擦れる音が交互に鳴る中、私は暇そうに試合観戦をしている湖都の肩に手を掛けた。
「んー?なぁに?」
湖都はお得意の高い声を出して振り返った後、私の顔を見て小さく舌打ちをした。
「チッ___なんだ莉緒か 何の用?」
おいおい、その対応は無いだろうよ……。
私は苦笑いしながら、目の前に居る相手に聞こえるくらいの声で言った。
「幸妃佳、なんで一人で居んの?」
すると湖都は不気味に笑った。
「なんかぁー、梨華からの“ほーふく”があったらしくってさぁ、幸妃佳はびびってんじゃない?」
報復__?
あの幸妃佳が?
梨華、まさか私たちを___。
私は咄嗟に梨華を見た。
梨華は楽しそうに友達と雑談しているような、そんな、ごく普通の、
中学2年生、だよね_____?