いつも現実味が無かった
まるでディスプレイごしに見ているようで
みんながマニュアル通りに言葉を発しているようで
その感覚は自分が当事者になっても変わらず
その感覚を言葉で表すのならば
心が、[無い]と表してみる
「鳳、帰りマック寄らねー?」
面識の無いクラスメイト
正確には、認識したことが無いんだろう
「いーよ」
仲良くしても何も支障がない
そんな皮肉な考えで相手との交流を行う
それは友達でも恋人でもそうだった
何でもいい加減にすれば良い加減になって戻ってくる
フワフワ宙に浮いてる感覚でも
悪目立ちして周りから浮いた感覚よりましだった
平凡な毎日で良かった
平凡な日々には微かな変化が付き物だ
それはときに生活に大きく支障をもたらしたりする
「今学期から転入してきた伊吹愛さんだ」
彼女の事情で喋ることができないが仲良くしろよ
担任の声はもう、届かなかった
俺はその"伊吹愛"の虜になっていた
長い睫毛、滑らかな髪、整った顔
そして瞳の奥に潜んだ闇
彼女の一つ一つで俺はいつしか夢中になった
彼女が少し微笑んだ気がした