どうも、ごきげんようアポロです。今回は映画化第二弾が決定したフェアリーテイルを書こうと思います。
お話は少しシリアスめに進みます。何てったって今回はジュビア成り代わりで成り代わり主は原作知識を持ったお話です。
主人公はジュビアに成り代わってしまい、ジュビアの為にグレイから遠ざかろうと徹底します。流れ的には原作を変えぬようファントム→フェアリーテイルへと移りますが見た目と口調をジュビアに似せぬよう眼鏡に短髪、水系各種魔法+刀に和風装備と成り代わってしまった時に持っていた現代のジャージ、口調は少し堅いです、「〜〜したまえ」とかですね。
原作を変えぬよう努力はしますがよく出ばります。六魔将軍編やエドラス編とか。
みんなとどこか一線引いていますがだんだん打ち解けます。
この話だけをするとジュビア成り代わり主が冷たく表情筋を使わない人だと思いますがちゃんと人並みよりかは厳しいかもしれないですが優しく、ちゃんと笑ったりします。
次の投稿でイラストを乗せますが成り代わり主はジュビアに全く似せて居ません、でも胸は一緒ですけど。
こんなのジュビアじゃない! 見た目はジュビアじゃないと嫌だ! と言う方は見ない方が良いかと思われます。
三回目の投稿はストーリー、ファントム編からです。
ルール。
ここはリレー小説ではないので続きは書かないでください。
ここのスレは自由に小説を投稿できる場所ではなく私が投稿する場ですので御了承ください、ですが、コメントやアドバイスは大歓迎です、敬語は要りません。
最後に荒らしや中傷等はやめてください。ぜんざいメンタルのアポロはそんなことをされると容器の中の白玉やぜんざいが飛び出します。ぺしゃぁです。不味くなります。
それでは、アデュー!
・
ジュビア成り代わりです。
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ジュビアのイメージを壊したくない方は見ない方が良いかと思われます。
それはいきなりだった。大学生になって、バイクに跨がって少し遠いコンビニへの道を楽したからバチでも当たったのだろうか、それならそんな神崇めるものか、逆に呪ってやると断言しよう。こんな些細な事でバチが当たってたまるか、この子になって憤りを激しく感じた。
私がこの子の未来を奪ってしまったのだ、居場所も愛する人も全部、ふとした瞬間に、なんの前触れもなく。なら、彼女の為に彼には近づかないでおこう。彼女のしたことを彼に関すること以外全てやろう。生まれて名前を付けられた時に絶対を誓ったのだ。
それから、生まれつき雨女になり水系各種魔法を使えるようになり、それより先に剣術を我流で覚えた。彼女はきちんと存在すると言う証拠を残すために、ここにいる私は別人だと言う証明の為に、髪型も口調も服の趣向も何もかも変えた。
私は、ジュビア・ロクサーと言う彼女の為に生きている。
**
和風の服を纏い、身の丈程の携えて我がギルド、ファントムロードへと足を踏み入れる。
彼女に近づくために、彼女の為に死ぬ気でファントムロードのエレメント4の水を担っている。
現在、前の原作ではアリアの方がジュビアより強かったのだが、今は私の方が強く、エレメント4最強の座に君臨している。もちろんガジルには叶うとは思っていない。
そんな今日、ガジルがレビィ達を潰した。
今頃ナツやマスターマカロフが戦争だなんだと言っている頃だろう。
おっと、マスターから呼び出されてしまったね。さて、ルーシィを捕らえに動きますか。
・
「はぁー。みんなあたし置いてっちゃうんだもんな」
ルーシィを発見した。原作と変わらずに置いていかれたらしい。そこでぽつぽつと雨が降ってきた。私の雨である。
『しんしんと……か。私は雨女なんだ、すまないな』
「はあ!?」
『君は何女かね?』
「あの……誰ですか?」
予想通りの返答に口元が緩む。雨の激しさは一層増し、ルーシィはあきれた顔をしている。こういう反応をされるのは分かっていたが実際やられると辛いな。
『楽しかったよ、それじゃあ失礼させていただこう……やはり、しんしんと、か』
「え!!? なんなの!!?」
原作ではジュビアはピンクのハート柄の傘を差していたが、私はそれを差す勇気がなく、何も差さず振り返って去ろうとした。このまま何もなく終わってくれと思う気持ちとジュビアの為にと言う想いがごちゃ混ぜになるが、ここでノンノンノンと声が聞こえてきた。やはりこうなる原作通り。
地面から出てきた髭男、ルーシィは「また変なの出たっ!!!」と警戒を露にする。やっぱり可愛いよルーシィ、いや、原作のジュビアのがよっぽど可愛いけど。
「ジュビア様、ダメですなぁ仕事放棄は」
『ムッシュ・ソルか、何をしに来た』
「私の眼鏡が囁いておりますぞ、そのお嬢さん(マドモアゼル)こそが愛しの標的(シプル)だとね〜え」
『ふむ、この娘(こ)だったかね?』
いや、本当は気付いていたけれど、ここは原作通りに。恐らくルーシィは意味が分かっておらず、え?と声をあげるがすまない、ジュビアのした事なんだ、やらないと言う選択肢はない。
「偉大なるファントムロードよりお迎えにあがりました」
『私はエレメント4の一人にして雨女、ジュビア。覚えておきたまえ』
ルーシィが目を見開き「ファントム!?」と大声をあげたあと、レビィの事を思いだし鍵を手に取る。が、「ノンノンノン、3つのノンで誤解を解きたい。ギルドを壊したのもレビィ様を襲ったのも全てはガジル様」とムッシュソルが呟き、私が水流拘束(ウォーターロック)で閉じ込める。
「まあ、我々のギルドの総意である事にはかわりませんがね」
『私は納得しておらんがな、こんな事をするのは胸が痛むが……』
「んっ、ふ……ぶはっ、な、何…これ!!!」
『私のウォーターロックは決して破れん』
「あぶっ」
そのまま酸素がなくなって意識を失うルーシィを見て胸が痛くなったが、致し方無い。
『大丈夫だ、私は君を殺さん。君を連れて帰ることが私の任務なのでね、ルーシィ・ハートフィリア君』
「ん〜!! 勝利(ビクトワール)!!!」
『捕獲完了だ』
その場にはルーシィの落とした精霊の鍵のみが落ちていた。
.
時は過ぎて色々あったが、我がギルド、ファントムはフェアリーテイルにジュピターを放った。第一砲目はエルザが捨て身で庇ったのだが、流石としか言えない。
そして今、この瞬間がやって来た。
「ん? 雨……なんか降ってたか?」
『しんしんと……か』
「!!」
彼、グレイ・フルバスターとの戦いが幕を開ける。
通気口のような所を這い出てきたグレイに自己紹介を挟む。
『そうだな……私はエレメント4の頂点にして雨女のジュビアだ』
私の自己紹介にグレイは神妙な顔をしてエレメント4とおうむ返しのように呟く。
『まさか二つのエレメントが倒されるとは思わなかった。しかし、私とアリアは甘く見ない事だ』
そこで、グレイの表情が明らかに変わる。ここだ、ジュビアがグレイに惚れるのは。
だがしかし、私はもうそんなので惚れる様なことはないと断言しよう。戦いを挟んでちゃっちゃと倒されよう。私だって青空を見たい。
「悪ィけど女だろうが子供だろうが、仲間を傷付ける奴ァ容赦しねぇつもりだからよォ」
『君ならそういうと思ったよ』
「わかってんじゃねえか! じゃあこの巨人を止めやがれ!」
グレイが私に向かって駆け出すが、私は口元に笑みを浮かべてウォーターロックを発動。その際ガルナ島でリオンに受けた傷が開き血液が大量に噴出、私はそれをなんとも思わずに水圧をあげる。
だが、グレイはウォーターロックを凍らせて自力で脱出、「やってくれたなァ、コノヤロゥ」とこちらを睨み付けてきた。それさえも滑稽に見えてきた。「痛て」と服を脱ぎ始めるグレイに少し戸惑いを覚えてしまう。やはり目の前で脱がれるとどうもな……。
「アイスメイク“槍騎兵(ランス)”!!!!」
いきなり攻撃を浴びせられ、刀の心配をするが、刀を引っ提げている紐だけが千切れたので安心する。そのまま刀を手に握る。その間ランスが体を貫通するが私の体は水なので問題なし。
『私の体は水で出来ている、そんな攻撃はそうそう効かん』
「水だぁ!!?」
ここでジュビアならよくわからん事を言うだろうが、私は早く終わらせたいのだ。そのまま「水流斬破(ウォータースライサー)!」と叫び浴びせる。そのままグレイからの「戦斧(バトルアックス)」を反撃として腹辺りに喰らってしまうが水で流れてしまう。
『……君は、まだ私には勝てんよ。フェアリーテイルに……こんなことを言うのはファントムに居て、ファントムの一員としておかしいと思うのだが、私はルーシィは連れていかん方が良いと思っている、君達が言うのなら私も助太刀させて頂こうと思っている。
非道なマスタージョゼの考えていることは私は正しいと思っておらんからね』
グレイは面を食らったような顔をして固まった。しまった、原作が変わったら元も子もないぞ!? なんてことしてんだよ私。
だが、彼を見る限りそれは無さそうだと安心した。
「なに言ってんだてめえ……。仲間じゃねえのか!? そんなこと言やぁ仲間売ってんのと変わんねぇぞ!!!」
『ふう……安心したよ、グレイくん。やはり君は芯がしっかりしているな。……そのまま私に協力してくれと言うものならば……そうだな、君の首を飛ばしていただろうな』
私が不敵な笑みを浮かべ、刀に手を掛けるとグレイはばっと首を押さえて顔を青くした。
さあ、負けてあげるよ。グレイフルバスター。
.
原作ではジュビア自身が熱湯になりグレイを襲うのだが、生憎とちょっと勇気が足りない。なんか、こう……うーん。
なので私は刀を抜いて足だけ水化してグレイを斬りつけた。「速ェ!!! 俺の造形魔法が追い付かねえだと!!?」とグレイはほざいているが知ったこっちゃない。もう一度構えて切り付けるがまあ、やっぱり避けられた。まあ、そうだろな。
「時間をかせがねえと」
私の攻撃を避けたグレイは這い出てきたところから飛び降りガシャと言う盛大な音を立てながら地面に着くなりアイスメイクで盾を造る。だがしかし、今の私の水は高温だ、それは刀も一緒である。私が幼い頃、とある有名な鍛冶屋に頼んで私と同じ体質のようにしてもらったのだ。散財したとは思うよ。後悔はしてない。
まあ、そんなお陰でグレイの盾は意味を成さずにじゅうじゅうと溶けていく。
『すまないね、あの子の為にならなきゃダメなんだ』
「何じゃそりゃ!!!」
足の水でグレイの皮膚を焼く。今度は水を多目でグレイを包んだ。上へと突き上げるとこのあとはジュビアの水にグレイが手を突っ込んで凍らせてちょっとグレイに役得アクシデントが起こると言う事態が発生するがそんなヘマはしない。
凍らされたとはいえ足だけ掴まれている状態だ。……まあ、スカートが氷の中でとんでもないことになっているが。
その氷も自力で破り、水でざぶざぶと攻撃していくとなんか、キレたグレイが叫びながら私を凍らせていき、とてつもない魔力で雨までも凍らせアイスゲイザーで私自身凍らせられてしまった。
『ふむ……私は負けたのか』
「どーよ? 熱は冷めたかい?」
『……頭は元々冷めているよ、グレイ君。
……雨がやんだな』
私の声にグレイが空を見上げて「お! やっと晴れたか」と嬉しそうに笑う。
そんなこと私は見ることもせず前世でよく見た青空がとても懐かしくて、少し涙が出てきた。
「で……まだやんのかい?」
『ん? 何か言ったかね? グレイ君』
「……」
『勝負なら私の敗けだ。……カッコつけるのは……まあ、虚しいだけだから、……やめた方が良いんじゃないか? それ』
「……」
『安心したまえ、私はここで大人しくしているよ』
.
しばらく大人しくしていれば下からドカンドカンと音が聞こえてきてその直後の明るい光がフェアリーロウだとわかるのに時間は要らなかった。
『……あー、暖かいな』
**
それからギルド間戦争は終了、手早くルーンナイトに身柄を拘束され事情聴取、聞かれたことを手短に話し、私は全てをマスタージョゼに押し付けさせていただいた。全く、良い働きしてくれるぜマスタージョゼ!
今はフェアリーテイルの再建中だと言うので顔を出しにいこうかと考えていたのけど、よくよく考えればあちらは私をよく思っていないだろうしやめようかと思ったのだが如何せんやはり私はジュビア、影で全体を見守ることにした。
『……私の好きなキャラ……いっぱい……』
おっと思考があらぬ方向へと逸れた。落ち着け落ち着けジュビア・ロクサー、前世じゃ紙面上のキャラでも今は現実を生きる人間だ、馬鹿なことを考えるんじゃない。
……ルーシィとエルザ、やっぱくそ可愛いな……。
待て待て待て。思いとどまれジュビア・ロクサー!
「お〜もぉ〜て〜えぇ〜」
ナツ君が柱を一気に何本か持ち上げて唸っている。あれに上から乗りたいな……待て、やめるんだジュビア・ロクサー。
「一度にそんな持つからだよ、バカじゃねーの……。……?」
ヤバイヤバイ、影から覗いてるのがバレたかも知れんと焦るが此方に来ないのを見る限り気付いていないだろう、安心した。
「ははっ!!! おめえは軟弱だからそれが限界なんだろーなァ」
「ア? 俺がその気になればてめえの倍はいけるっての!!!」
そのあとはグレイが柱を持ちすぎて下敷きになったりエルザが叱りに来たり、ロキがルーシィの鍵を渡しに来たり。
ごめん、鍵は私も探した方がよかったと思ってるよ。ごめんロキ。ごめんマジごめん。
**
アカネビーチの件はスルー……と行きたいところだが私が居ないと楽園の塔に入れなくなるので仕方なく向かう。向こうでは偶然を装うか。
.
時間は過ぎてアカネビーチへと来たわけだが、夜に事件が起こることは分かっている。
さて、今がこの時間なのだが、カジノにやって来て早速スロットを打つグレイを発見した。「はっはー!! しょうがねえなアイツは」と笑っているグレイに近付く。
『やあグレイ君』
「ん?」
『久しぶりだね、こんなところで会うとは偶然だ』
「ぶほっ」
ぐもっ、そう驚くグレイは「お…おお……お前は…ええ!!?」と訳のわからない声をあげる。それに私は苦笑いしてバーに移った。私は今すぐにでもルーシィのところへ飛んでいきたいのだが、ジュビアの居場所を奪ってしまったんだ、自由は言わないよ。
「聞いたよ、ファントムは解散したんだって?」
『ああ。そのお陰で私は今フリーの魔道士だ、まったく。
今言うと言い訳がましいと言うのは分かっているんだが、私もルーシィを拐って一生飼い繋ぐと言うのに反対はしていたよ。
それでね、謝罪を込めてフェアリーテイルに入ろうかと思っているんだ、私は』
「しっかしあんなことの後だからなぁ、俺は構わねーがマスターが何て言うか」
『大丈夫じゃないか?』
「その根拠はどっから来んだよ」
『私の能力がそう言っているのだよ』
グレイが渋い顔をするがそこで大男が背後に影を落とした。流石に殴られるのは嫌なので異空間から刀を取り出してガードするが、あまりの力に吹き飛ばされた、痛い。隣で「ジュビア!」と名前を呼ぶグレイの声が聞こえる。そして大男、シモンは言った。「エルザはどこにいる?」と。
「エルザはどこだ?」
「ア?」
「どこだ?」
「誰なんだてめぇ……」
険悪な空気が流れ一触即発な雰囲気が漂うけど、私が鞘に入れたままの刀を二人の間に挟む。
『待ちたまえ。こんなところで物騒な喧嘩をするならば、私が相手をしてやる』
「ジュビア」
『早くエルザのもとへ行かないか、危険が迫っているんだぞ』
そう言ったとき、ぴくんとシモンが何かに反応した。口振りからエルザを見つけたらしい。「了解」と口を開いてボヤァとだんだんと回りが暗くなり、真っ暗へと変わる。
「闇の系譜の魔法、闇刹那」
「ぐはっ!」
「ぐっ」
.
グレイを水の中で匿っているとルーシィが駆けてきた、やはり脱出出来たかと感心し姿を見せると「ひっ」と声をあげ、「あ……あんたは!!?」続ける。
『安心したまえルーシィ、グレイ君はちゃんと生きているよ』
「い……生き……あは……あはは……」
『あのときはすまなかったねルーシィ』
「い、いや……」
微笑みを携えているとなんか引かれた。なんだよ悲しいな。
「突然の暗闇だったからな、身代わり造って様子を見ようと思ったんだが」
『私も少しパニックだったらしい、余計な事をしてしまった』
「ホントにな、逃がしちまったじゃねーか」
『だから謝っただろうが。しつこい男は嫌われるぞ』
「あ¨ぁ!?」
『それよりルーシィ、火竜のとエルザは?』
「ナツは分かんない、エルザは……」
私が聞いたとたん後方で爆発が起きる。明らかにナツだろ……。
.
とりあえず、ナツの鼻を頼りに楽園の塔へ辿り着いた私達。グレイとは険悪になりつつも距離は取ってある。いや、グレイに限らず、だ。
楽園の塔に来たので下で道を探す。
「見張りの数が多いな」
「気にする事ァねえ!! 突破だ!!」
「ダーメ!! エルザとハッピーが捕まってる、ヘタな事したらエルザたちが危険になるのよ」
「しかも塔らしきものはずっと先の方だ、ここでバレたら分が悪いな」
その言葉を機に私は海から顔を出した。うん、水はまだ冷たいな。「水中から塔の地下への抜け道を見つけた」と告げれば「マジか!! でかした」とグレイから返答が返ってくる。
『どうだねルーシィ。今度一緒に買い物に行かないか?』
「はいはい」
グレイをガン無視してルーシィに話し掛ければ適当に流されてしまった。悲しきかな。
『とりあえず、水中を10分ほど進むが、息は持つか?』
「10分くれえなんともねーよ」
「だな」
「無理に決まってんでしょ!!!」
ルーシィからの鋭いツッコミに苦笑いをしつつやはりこうなると思っていたので予想通りとなので空気の入った水の玉を一人ひとつ渡した。
**
楽園の塔侵入の際の戦闘か終わったところでエルザと出会った。
「お……お前たちがなぜ、ここに……」
「なぜもくそもねえんだよ!! なめられたまま引っ込んでたらフェアリーテイルの名折れだろ!!!
あんの四角だけは許しておけねー!!!」
非常に憤りを感じているナツは歩き出そうとするがエルザに全員帰れと一蹴される。
そこからまたごちゃごちゃあって、エルザの過去の話を聞いた。アニメでも漫画でも見たけど実際に聞くとかなりダークなお話だ。
「私は……ジェラールと戦うんだ……」
震える声で涙を流しながらそういったエルザはとても気高いように思えた。
.
もう色々ぶっ飛ばして天狼島編、行きまーす!(ガンダーム)
楽園の塔編、ニルヴァーナ編、エドラス編をスッ飛ばし、天狼島編へ突入しようとしている私達。
遠くでルーシィがカナの事できゃんきゃん吠えているがみんなそれどころじゃないらしく仕事仕事と騒がしい。そんな私もたった今、魔物討伐の仕事から帰ってきたところなのだけど。
まぁ翌日、マスターからの発表でS級昇格試験出場者に選ばれてしまった訳だが。
『……私はこの試験を辞退したいのだが』
「ええ!? なんで!?」
『面倒臭いからだ。厄介事は回さないでほしいものだね全く』
「ア? ジュビアてめえ……なんつー言い草だ?」
グレイと睨みを効かせ合う。気はなぜかびっくりするほど合うのだが、喧嘩は絶えない。今のところ戦績は五分五分だ。
『なんだ? やるのかグレイ君? 私は別に構わんよ』
「上等だ」
『では負けた方は辞退と言う事で良いな?』
「構わねーよ」
『よし言ったな? 私の敗けだ、辞退させていただこう』
「ハメられた!」
結局突如現れたロキに全力で止められた。
.
ロキはグレイのパートナーになるらしく、ルーシィとは今だけ縁を切るらしい。
「君がジュビアだね? なんて格好いいんだ、今日の夜、一緒にご飯でも?」
『君の女の子が全て私にかっ拐われても良いなら考えてやらん事もないよ』
「……この話は無かったことに」
そして冷や汗を掻いたロキはグレイと少し話している。するといきなりグレイがこちらを見た。
「つー訳で、お前も本気で来いよ、久しぶりに熱い戦いをしようぜ」
『構わないがパートナーが決まらんことにはどうもね』
「私がジュビアと組むわ!!」
そういって名乗りをあげたのはリサーナだ。原作とも変わりはないリサーナの様子に微笑ましくなる。
「私……エドラスじゃジュビアと仲良かったのよ、それにこっちのジュビア……なんかすごくかっこいいんだもん」
『リサーナ……』
「決定ね!!」
『よろしくリサーナ。そうだ、親睦を深めるために今日私の家に来ないかね? なに、飯を一緒に食うだけだ』
「あんたどんだけ女の子好きなのよジュビア!! やめなさい!!」
ルーシィからのルーシィキックを御見舞いされたが華麗にかわして『可愛いのを付けているなルーシィ』と微笑めば眼鏡をかち割ろうと顔面にパンチを頂いた。もちろん避けたが。
ふと斜めのグレイと目が合えばふいと顔を逸らされた……思春期は大変だな。けらけら笑っていると「なに笑ってんだてめえ」と本人に睨まれてしまった。
『……思春期は、大変だな』
「「いきなりなに言ってんの!!?」」
その場の全員からツッコミを頂いた、ジュビアさん可哀想だからやめてくれ。
.
「アツい! 冬だってのになんなのコレ……。
あたし溶けちゃうかも、アイスになってハッピーに食べられちゃうんだ」
「マズそうだね」
「ルーちゃんだらしないよその格好」
「この辺は海流の影響で一年中この気候なんだとさ」
ルーシィ、ハッピー等がだらけながら到着を待っている中、水着のリサーナが私に声を掛けてきた。
「ジュビア、アツくないの? 着物ってアツいんじゃない? その上からジャージなんて……」
『暑くは無いな、だがしいて言うならば……女の子達が輝きすぎていてアツい!!!』
「はいはい……」
あ、呆れられた。グレイは全裸だし、酔いに酔ったナツがロキの方へ歩いていくしでしっちゃかめっちゃかだ。
グレイに関しては見ていられないので落ちていたグレイの下着と私の水色のジャージを顔面に投げ付けてやった。今はコップで隠れているが立たれたら本能的に潰してしまうかもしれない可能性があるからだ。
「うぷっ、ジュビアてめえ! 毎度毎度……喧嘩売ってんのか!」
『あのだね、見苦しいからとっとと下を履いて私のジャージを巻いておきたまえ、潰すぞ』
「どこをだよ!?」
渋々と言った様に下着を吐いてジャージを巻き付けているグレイに溜め息を吐きこんなののパートナーのロキに同情の視線を寄越す。
ふとルーシィを見れば暖かい視線をいただき首をかしげて『どうした?』と問えば「別にぃ〜?」とはぐらかされた。一体なんだと言うのだ。
そして見えてきたのは天狼島、おかしな形をした大きな島で初代マスターの墓があるらしい。所謂フェアリーテイルの聖地だ。
.
天狼島の一次試験の説明を受けて、やはりこうなるかと苦笑い、エルザに勝つ算段を考える。原作じゃ私たちはエルザに負けてしまうから。
原作通りにするなら別に良いのだが、やはり通りたい。頑張るか。
「さあ始めい! 試験開始じゃ!」
『リサーナ行くぞ!』
「え、ええ!?」
リサーナを連れてフリード達より先に船を降りる。リサーナに『これは早い者勝ちだ』と教えれば「そう言うことね」と微笑まれ、海を進んだ。
**
私達はやはりエルザに当たってしまっていた。
『強いな……これほど強いとは……』
「海王の鎧、完全にジュビアの水を防ぐ気だ」
リサーナと共に唖然としていると「どうしたジュビア、そんなことではS級魔導士にはなれんぞ」と挑発してきた。
『……私は、お前に勝つ』
水を浴びせつつ超速連撃を繰り出していく。水は防がれてしまったが剣は防げないだろう、そのままウォータースライサーを喰らわせその間にリサーナがとびかかる、まあ反撃されるのは目に見えているので微動だにしない。原作のジュビアなら食らっていたその攻撃を避けつつ衝撃刃を浴びせて水で目眩まし。
「くっ」
『言っただろう? 私はお前に勝つと』
最後の一撃を喰らわせWIN。原作は変わってしまったが一次試験突破だ。
.
「グレイ、ロキ!」
前方からやって来る二人組にルーシィが「やっぱり一次試験を抜けてきたんだね」と声を掛ける。
「一次試験を突破出来たのはこれだけか!?」
「ナツは……」
「あっちにいるよ」
そんな会話を耳に挟み、私もリサーナもそちらに耳を傾ける。
「カナとルーシィはフリード ビックスローを闘で破り突破」
「ふふん」
「何ー!!?」
「ナツとハッピーはギルダーツの難関を突破」
「嘘だー!!!」
グレイは顔を色々とダメな方に崩壊させつつツッコミを入れていく。イケメンが潰れるぞお前。
他にもレビィ、ガジルの突破を話し、グレイとロキの突破を表したところでグレイは「ジュビアは落ちちまったのか」と告げる。いや、居んだけど。
じーさんもじーさんでグモッと口を開くからグレイが勘違いしてしまっている。
「な、なんだようじいさん……」
「ジュビアとリサーナは奴と当たってしまった、あの手の抜けない女騎士に」
「あ〜あ」
グレイとマスターがそんな話をしているなか、リサーナが苦笑いした。グレイももっと回りを見ろよ。
『まるで私が落選した様な言い方はやめてくれたまえよマスター』
「……と言う訳じゃ。ジュビア、リサーナはエルザを破り、突破した」
「マジでか」
言い方酷いなと思った私は悪くないと思う。
.
とりあえず一次試験を突破したのはこの六組。次から二次試験をするのだが、生憎と墓の場所を忘れてしまった。一生の不覚である。島中を探し回るが変な動物に襲われるわでてんやわんや。
そうこうしているうちに私達はエルザ達のキャンプを発見してしまった。どうやら誰かの話をしているようだ。まぁメストだろうとは思うけど。
『なんの話をしている?』
「ああジュビアか。試験はどうした?」
『実行中だ、偶然ここを見つけてな。なんの話をしているんだい?』
「まだ帰ってきてないウェンディとメストの事よ」
「メストかぁ、私の居ない2年の間に入ったんでしょ?」
「そうだったっけ」
「昔から居たような」
「存在感ないのね」
そんな会話をしていくうちに原作に則った方が良いだろうと『私が探してこよう』と告げる。だがエルザに「お前は今試験中だろう」と咎められるが『試験より仲間だ』の言葉を聞き押し黙った。結局エルザもついてくると言うことで事は決着した。
**
しばらく森を歩けば気絶して倒れているレビィを発見した。意識があって良かったが、グリモアハートがもう来てるのかとレビィの報告を受け、私達は直にガジルの元へと推参した。
で、まぁ倒れた敵から(エルザが強引に)情報を聞き出し、この島に黒魔導士ゼレフが居ることが分かった。エルザも事の重大さが分かっているからかすぐに赤色の信号弾をあげた。意味は全員戦闘配備、敵が来るぞという意味だ。
『エルザ、今からどう動く?』
「とりあえずメストとウェンディを探そう、キャンプの場所がわからず迷っている可能性もある」
その後ろでレビィにガジルを任せ、動こうとすると後ろから「作戦中に敵に遭遇、直にこれを排除」と幼さの混じった少女の声が響く。
「これより殲滅を最優先事項へと変更、戦闘を開始する」
『……子供か』
いや、知ってるよ? メルディでしょ? うんうん、今回だけはジュビアの為にグレイを想ってあげよう、これ以外にメルディ戦を切り抜ける方法は無い。絶対使いたくない切り札のようなものだ。
.
怪しげな雲が出始めた頃、私はバシャとその場の水に平伏した。もちろんメルディからの子受け気で、だ。ちょっと受け太刀を間違えてしまったのだ。これから痛いけど。「13位」と呟いたのが聞こえて殴りたくなったのは内緒。
「エルザ・スカーレット、あなたは4位」
「何の順位だ!?」
「私が決めたおまえたちを殺す優先順位」
二人の斬り合いを見て『あ、もうすぐか』とか思いながら耳を澄ます。あ、来た。
『あああああっ!!!』
上からメルディの魔力で出来た剣が体全身に降ってきてとても痛い、うん、痛いですよメルディさん。
「なぜジュビアを狙う!!?」
「13位なんてゴミだから、早めに片付けておくの」
あげくこの私がゴミ呼ばわり。ジュビアさん堪忍袋の緒が切れそうなんですけど。そしてメルディが殺す優先順位の1位はグレイだと言ったときに反応して見せる。ここが恐らく分かれ目だ。
「私の……!! 私のウルティアを傷付けた男!! 絶対に許さない!!!! 八つ裂きにしてやる!!!!」
メルディがキレてエルザに四方から魔力の剣を向けるが、エルザの周りを水でおおってそれを凪ぎ払う。
先程から好き勝手言ってくれてるじゃないか……でも、今回ばかりは台詞をなぞらねばならなかった。例えエルザに勘違いされようとも、だ。
私は立ち上がって体を傾けさせて告げる。
『許さない? それはこちらの台詞だ。
誰の命を、狙っていると……?』
天輪の鎧を纏ったエルザが遠くでたじたじで「落ち着け」と言ってくるが、さっきからゴミだのクズだの13位だの無能だのムシケラだの好き勝手言って、もう我慢ならん。
「な……なにコイツ、13のくせに」
ぶつっ。
「お、落ち着けジュビア」
エルザが震えながら再び止めに入るが、くせにだと? マジふざけんなよ焙るぞコラ。
『落ち着け? このクソガキが仲間のグレイを狙っているのだろう? 理不尽な理由で』
「いや……その……」
『これが、落ち着いて、居らレルカ? 私はこのクソガキを許さんぞ!!!!』
剣と水を構えてとりあえず水で攻撃する。ばちゃちゃちゃと盛大な音をたてながら滑っていくメルディを見てウォーターネブラを纏わせた剣で天を突く様にメルディへ攻撃。
『エルザ、ここは任せていただこう、早くウェンディを見つけたまえ、あとグレイもだ』
「了解した、ここは任せたぞ」
「4は逃がさない」
メルディがエルザを追おうと構えたので足元に溜まった水で両端から挟むように妨害。
さあ、ここからはほぼほぼ根比べだ!
.
冒頭でミスを発見。
子受け気で×
攻撃で○
.
「不思議、同じグレイと言う人間に対して一方は憎み、一方は愛する」
『愛しとらん』
「同じ人物なのに感情によって見え方が違う」
『……まあ、それが自然。“個”たる象徴、人間と言うこと』
髪の毛を乱雑に掻きながらカチューシャを外して放り投げる。私がキレたときに降りだした雨はいまだ止まず鬱陶しい。いや、ジュビアの個性なんだけど。
「私は運が良い、グレイを殺すことを目的として来た。そのグレイに対して強い感情を抱く人に会えた」
『強い感情と言うが恋愛の方じゃないが……どういう意味だ』
「おまえのグレイへの想いがグレイを殺す。ジュビア、おまえにわずかな天国と大いなる絶望を見せてやろう」
『……』
「さあ……思い浮かべろ、愛しき者の姿を」
『だから愛しくないんだが』
今回ばかりはこれが鍵となるので、グレイを強く強く思い浮かべる。「それだ」とメルディが呟いたとき、感覚連結と叫び私の体に衝撃が襲った。
多分グレイも同じ感覚だろう。
「ロストマジック、マギルティ=センス」
やけにいきってそう話すメルディに笑いを堪えつつ『何をした?』と問うと「グレイと感覚を繋げた」と短く返ってきた。
「この魔法は痛みすら共有する!」
メルディはそう言って私の腕を切りつけに掛かった。まあ回避して一人で納得するが。メルディはそれを見て眉を眉間に寄せて「……おまえが受けた痛みは全てグレイも感じている」と不機嫌に言い放つ。
『……待て、私の大切な仲間をキズつける気かい?』
その場で刀を振り下げ水圧の掛かったかまいたちがメルディ向かって飛んでいく。今、魔力が上がっているのを感じながら、メルディも同じことを思っただろう。どうやら私はずいぶんとグレイにほだされてしまっているらしい。
メルディは自分にも感覚連結を取り付け、それを知りつつ攻撃し、私も恐らくグレイも同じ痛みを共有した。
「私はウルティアの為なら……この命など要らない、おまえを中継することで私と標的が繋がった。
私とジュビアとグレイの感覚が今、繋がっている。これで私たちのどちらかが死んでもグレイは死ぬ。これが絶望の袋小路、グレイの命の行き止まり」
『貴様……!!』
これには少し私も憤慨した。なんて非道なことをするんだと。
.
『なんということをするんだ君は、そのようなことをすれば君まで』
「そうよ、これが私の信念。もう終わり、私達三人は死ぬしかない」
彼女の覚悟に圧巻としていると背中に圧迫感、多分グレイがウルティアを探しているときだろう。頑張れよグレイ。
「私とグレイが繋がった今、もはや誰とも戦う必要はない。
自分を殺せばいい」
『やめないか!!!!』
メルディが自分の首に魔力で作った刃物があてがわれる。それに手を伸ばして止めに入るがメルディの覚悟はそんなものじゃないのは分かっている。
すまんグレイ君! 右手の刀で左太股をかっさばいた。
『だああああっ!!!!』
「がはっ」
私の痛みを共有し、メルディがばしゃんと膝を付く。水に太股が浸かって血が止まらない。着物の帯を外して手早く巻き付けて応急処置、ずきんずきんと激しい痛みに襲われるが動けないほどの痛みじゃない。
「自らの足を……!!! マギルティ=センスは痛覚は共有しても傷までは共有できない、私を止めるには殺す他ない。但しこの魔法の特例として死だけは共有する、リンクしている者同士の命は共有している。
それでもまだ抗うつもりか!! 私達三人はもう死ぬしか道はない」
『他にも道はある筈だ!! 三人で生きる道が! 敵を倒すとしてもフェアリーテイルの魔導士は敵の命までは奪わん!!』
メルディが魔力の刃物を造り出し叫ぶ。その際魔力の大きさで周りの水が弾かれる。
「甘えた事を!! 私はウルティアの為にグレイを殺すんだ!!!!」
『させるものか!!!! その前にお前の意識を飛ばしてやる!!!!』
そう言って私はメルディを抱き締めた。原作でジュビアがしたように。
私はジュビアであってジュビアでない、私はただただひたすらに、ジュビアの為に生きている。それは私が彼女を押し退けてここに生まれてきてしまった時から誓っていたことだ。
彼女の言葉をなぞるように言葉を発する。涙は、あまり出なかった。メルディの感情が流れるように入ってきて、壮絶過ぎて涙は出なかった。ジュビアの居場所を奪った私に涙を流す権利はない。
私はバッとメルディの肩を掴みながら体を離して怒鳴る。
『お前にも笑顔があるだろう!!!! お前にも大切な人が居るだろう!!!! 生きることを諦めるな立ち止まるな下を向くな!
お前が生きるなら私も生きよう、人とは愛する人のために生きているんだ!!!! お前も同じだ、愛があるなら生きたまえ!』
途端メルディの心の声が聞こえてきて、じわじわと涙が溢れていく。愛と活力の涙、こんなことジュビアじゃない私が言うのもおこがましく覚束無いぐらい立派なものだった。
二人でばしゃんと座り込み、ぷしゅうと感覚連結が消えていくのが分かる。そしてメルディが水に倒れた。「お前とは戦えない」と言葉を残して意識を飛ばす。
『グレイは逃げも隠れもせんよ』
そして私も例に漏れずじわりじわりと意識が白くなっていった。
.
気が付けば、そこは真っ白だった。
確か私はメルディを倒して倒れたはず……ならこれは私の意識の空間だろうか。別にも考えられるだろう、死んだと。
『……え、マジで?』
これじゃ居場所を奪ってしまったジュビアに顔向けが出来ないじゃないか、私は何てことをしているんだ。……いや、死んでないと信じよう。信じないと気が狂いそう。
ジュビアと代わりたい、今のジュビア・ロクサーは私じゃない。ジュビアは……きっと怒っているだろう。何を今さら、と嘲笑を漏らす。
「怒ってなんか、無いですよ」
フッと、ジュビアの声が聞こえた。ばっと辺りを見回すが誰もいない、気のせいかと思い目を閉じると再び「気のせいじゃないですよ」と優しい声が聞こえた。
この声は……。
『ジュビアちゃんかい?』
「そうですよ」
姿は見えずも聞こえる声に『すまない』と言う謝罪の声しか出てこない。だがジュビアは「謝らないで」と言葉を発し、こういった。
「もうジュビアの為に生きないで良いんですよ」
『……何をいってるんだいジュビアちゃん、私は……君の居場所を』
「最初はそうだったかも知れません、でも、今はあなたの居場所です。もう、ジュビアの為に生きなくても良いんですよ」
『それでも、私は』
「いいっていってるんです!」
ジュビアの怒鳴り声に身が強ばる。「もうジュビアの為にと思わないでください」と泣きそうな声で告げられた。
『……分かったよジュビアちゃん』
最終的には私が折れてため息を吐く。
『でも私はジュビアちゃんを忘れんよ、君も大切なのさ。だから私は自由に生きさせてもらう』
「それで良いんです」
『許してくれて感謝するよ』
そういって私の意識は再びブラックアウトした。
.
Noside
ゼレフを抱えたウルティアがグレイを騙してメルディと合流した時だった。
「何? この女」
「ジュビア、グレイと仲良し」
「ふぅん」
恐らくここでジュビアが起きていたならば『仲良くない』と断言するだろうとメルディが思ったとき、ウルティアが剣を取り出しジュビアを前に仁王立ちをする。
「何を!!?」
「殺すに決まってんじゃない」
「で……でも…ソイツはもう戦意がなくて」
ウルティアの行動を止めるようにメルディが言葉を挟むがウルティアの言葉により遮られる。
「グレイに一分の未来も与えない、ハデスに敗れるかアイスドシェルで死ぬか。例え生き延びたところでお前は仲間を失っているのよ!!!」
ウルティアが叫び、力強く剣を振りかぶった。その時、パキィとどこからか伸びてきた氷がウルティアの行動を静止させる。
ウルティアが暫し唖然とするなか何者かがジュビアを抱えて氷を駆使しその場を離れる。
地面に着地したのは黒髪の男。グレイだった。グレイはジュビアを腕に抱えてウルティアを睨む。
「グレイ!!!!」
「こんなことだろうと思ったぜ」
「あら、意外ね。いつ気づかれたのかしら」
ウルティアがほくそ笑みながらグレイに言葉を投げる。グレイはどうやらウルティアの話など最初から信じていなかったようで、すっとぼろぼろのジュビアを寝かす。グレイの腰には船でジュビアが投げ付けてきたジャージが巻かれている。
「たとえウルの意思がなんだとしても、俺には俺の意思があるんだ。仲間と生きる道の上を歩いてんだ!!!!」
そう叫んだグレイにメルディは感化されそうになる。ジュビアはどうやらこの時点でジュビアの為に生きるのではなく自由に生きることを決めた時だったらしく、涙が見えた。
グレイとウルティアで一悶着あり、グレイが彼女を殴り飛ばした。
.
Noside
「ウルティア!!」
メルディが名前を叫ぶ。ウルティアは自分よりゼレフが大切らしく「私のことはいい、早くゼレフを連れて脱出地点へ!!」と彼女の多少強引な言葉に少し反応が遅れはしたがメルディが動き出す。
そこでジュビアが起き上がった。
『くそっ、こんなところで起きるとは私も馬鹿なことをした!!』
「ジュビア!! アイツを追え! ゼレフを渡すな!!」
『この私に命令するとは何様だお前は!!! この貸しは高いからな!』
レンズが割れている眼鏡など役に立たないと思ったのだろう、掛けていた眼鏡を投げ捨て右足を軸に立ち上がって駆け出そうとするとズキィィンと左股に激痛が走る。そこで舌打ちをしたジュビアは左股をばしんと叩いた。そこで帯を足の止血に使ってしまっていることに気が付き下のスカートはそのままに着物を引き契り胸に巻き付けて一歩を踏み出す。
「ジュビア!!」
『ああ!! 分かっている!』
そのまま刀を水と化した体の中に納めて痛む足に叱咤し走ってメルディを追い掛けた。
しばらく走ってメルディを全速力で追う。
『待ちたまえ!!!』
「ひいいい! なにコイツー!!」
『ゼレフをコチラに渡さないか!!』
「さっきまで愛だのなんだの言ってたくせに!!!」
『君とは争いたくないんだ!!』
そこでメルディの足が失速した。だがそこでグリモアハートのザンクロウが出現、ゼレフを連れて逃げようとするメルディに攻撃を仕掛けあまつさえメルディの街を壊したのはウルティアだと言う事実をつきつけゼレフの服を掴む。
だが、その時ゼレフが動いた。ゼレフを中心に光が漏れ、次の瞬間ザンクロウの命が天へと昇った。
「ごめん……名も知らぬ男……」
その光のせいか、ジュビアとメルディは意識を失っていた。
.
再びハと意識が浮上する。この感覚は初めてジュビアと対面した感覚と同じで辺りを見回しても誰も居ない。やはりこれは……。
「あなたの想像と変わりないですよ」
『やっぱりか。次はどうしたんだいジュビアちゃん』
私がそう言えばジュビアに真剣な声で「これが私とあなたの最後の会話なんです」と告げられ目を見開く。
『なんだと!?』
「はい。……それで、あなたに餞別です、受け取ってください」
『餞別だと!? なんだそれは!!』
もう時間がないのか声にノイズが入り聞き取りにくくなるが、ジュビアの声はちゃんと私の耳に届いた。
「【水の滅悪魔法】です」
それを最後に言葉は聞こえなくなり私の見ていた白い景色は黒へと変わり、何も見えなくなってしまった。
**
<これが俺達のギルドだぁっ!!!!!>
そう聞こえたと思った。バッと飛び起きて辺りを見回せば木々は枯れているが死んでない。なぜかは知らないが左頬がぴりぴりするが気にしない。
原作通りに生きれたのだと安心し、ハデスの倒された船へと向かった。
**
がさがさと草木を分けて開けた場所に出るとみんなが集まっているのが見えて『見つけた……』と苦笑いする。一番近くのエルザが『ジュビア!!!』と声を掛けてくれた。そのあとにグレイが「無事だったか」と言葉を紡ぐ。私は頭に手をやり髪を掻いたまま『ああ幸いにもな。すまんグレイくん、逃げられてしまった』と悔しさ露にして言えば「そうか」とグレイは視線をしたに向けた。だが、続いてハッとしたようにエルザが私を見て驚いたように告げる。
「ジュビア……その頬はどうしたのだ!?」
『は?』
「グレイ!! 鏡だ!」
「お、おう!」
エルザの気迫に圧されてか、私の頬を見てか反応が遅れながらも氷で鏡を造るグレイ。周りはその異様な雰囲気に気が付いたのかなんだなんだと集まってきて頬を見ては驚きの声をあげている。
グレイが作ってくれた鏡を見ては私も「なんだと!?」と声を上げる。
『……頬が黒い』
そしてこれを見て気がついた。これがジュビアからの餞別なのだと。原作じゃ、本誌でもジュビアが水の滅悪魔法を覚える描写は、素振りは一切無かった。多分真島先生も考えていないだろう。
原作がおかしくなるのは覚悟でジュビアはこれをくれたらしい。
「ゼレフの魔法にやられたのか!? それともあの追い掛けていた女か!?」
『落ち着けグレイくん。安心したまえこれは私に害を成さない』
にやっとわざとらしく笑ってやると頬の黒いものはぷしゅんと消えてみんな一様にざわざわする。やけに心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでくるグレイの髪をわしゃとひと撫でしマスターの言葉を待った。
.
「なんだとぉーーーーー!!!!!!」
「だ・か・ら〜、今回のS級魔導士昇格試験は中止とする」
そうなのだ。 今回のS級魔導士昇格試験は中止となってしまった。マスターの言葉に私も最初は戸惑ったが、そのあとの起こりうるナツの有り様を想像しやめておいた。案の定ナツはマスターに拳一本でやられたが。
『あ、グレイくん』
「あ?」
グレイに背後から声を掛けると目付き悪いその顔で私を睨むので『そう睨むな』と宥めておき、用件を述べる。
『すまないが腰に巻いているジャージを返して貰えないか? ズボンも履いている様だしね』
「あ、おう」
しゅるしゅると腰に縛っていた私のジャージを手渡しで寄越して貰えば……うん、まあ。
『……責めるつもりはないが、ボロボロだな』
「すまねぇ……」
『いや、構わんよ。貸した私も悪い。それに君の血を洗い落とせば着れる。ボロボロなのは下の裾だけのようだしな』
ジャージを腕に抱えて足の治療の為、ウェンディに包帯を巻いてもらい椅子に座って休んでいれば、バッと顔をあげて心の中で「カナとギルダーツの感動の再会が!!!」と後悔していれば聞こえてきた音。近くでウェンディが「ドラゴンの声」と呟いたので恐らくこれはアクノロギアだ。
「あそこだ!」と言うリリーの声につられて上を見ればそこには黒いドラゴン、アクノロギア。
「なんだアレ!!」
「でけぇぞ」
『これは……』
「ドラゴン!?」
「なんなの? 一体」
おのおのが声をあげるなか、ドラゴンスレイヤーのガジル、ウェンディ、ナツがドラゴンは生きていたんだと小さくぽつりと呟いた。
.
やっぱりそのドラゴンはアクノロギアで、天狼島に攻撃を仕掛けてきた。ギルダーツの「船まで急げェ!!!」と言う怒鳴り声を皮切りにみんな駆け出す。私は松葉杖をついて居てどうしようと悩んでいればグレイに俵担ぎにされてしまった。
『すまんグレイくん!!!』
「一大事だ、すまんもくそもねぇ!」
そのままエルザの「走れ!!! みんなで帰るんだ、フェアリーテイルへ!!!!」と言う声を聞きみんないっそうスピードをあげる。
そしてナツがアクノロギアに吹き飛ばされた時、マスターがみんなを背にアクノロギアの正面に立った。
「船まで走れ」
マスターはそう一言残して巨大化し、アクノロギアを抱え込む。マスターだって怪我人だ、アクノロギアの力に圧されてごぷりと喉から血液が逆流して吐き出される。
グレイやエルザの制止も聞かずマスターは繰り返すように「走れ」と呟く。雷神衆が当たって砕けてやるとマスターに加勢しにいくがマスターの「最後くらいマスターの言うことが聞けんのかぁ!!!! クソガキが!!!!」と怒鳴りによりぴたりと雷神衆が動きを止める。ナツが自分はドラゴンスレイヤーだと叫び倒すと言い掛けたとき、ラクサスがナツの服を掴んで駆け出した。
「走るぞナツ!!!」
「ラクサス!!!! お前……!!!!」
ナツがラクサスに怒鳴り散らそうとするも、彼が涙を堪えていることに気が付きナツも押し黙る。そしてエルザが悔しげに顔を歪ませつつ駆け出したことによりみんな走り出した。
.
結局みんなマスターを置いて逃げると言うことをするわけもなく。みんなでマスターの元へ戻りアクノロギアに応戦する。
さて、ここでどうしようか悩む私が居る。水の滅悪魔法を使うか使わないか。ここで使ってしまえばタルタロス編でどうなるや分からんし、うーんと悩んでいれば。
「かかれーーーーっ!!!!」
エルザの一声にみんなが全力を出し始め、ここで出し惜しみをすれば恥ずかしいなと言う思考に至り、覚悟を決める。
にやりと口角を吊り上げていれば怪訝な顔でグレイがこちらを見ていた。私はそんなのお構いなしに立ち止まる。
「おいジュビア!!」
『安心しろ、逃げるつもりはない!!!』
一歩左足を下げ、ふうと一息吐く。のち、下を向いていた顔をバッとあげてアクノロギアに狙いを定めた。初めてだが、大丈夫だと言う確信があった。
『水魔の激昂!!』
ドゴォンと大きな音をたててアクノロギアへ命中するブレスに私は内心成功したことに喜び、っしゃあ!! と叫びながら外見ではにやりと笑って見せる。
みんながみんなこちらを見て目を見開いているので叫んだ。
『ボーッとするんじゃない!! 攻撃の手を休めるな!!!!』
私の言葉にハッとしてみんなも攻撃を再開。だが、その途端アクノロギアが飛び上がる。まずい! と思ったのも束の間、ガジルが「ブレスだーーっ!」と怒鳴った。
エルザの指示により防御魔法が使える奴は全力展開、文字の魔法を使うフリードたちに魔力を集めるためみんなで手を繋ぐ。
「俺達はこんなところで終わらねえ!!!!」
「うん!!! 絶対にあきらめない!!!!」
『こんなところであきらめていられん!!!!』
「みんなの力をひとつにするんだ!!!! ギルドの絆を見せてやろーじゃねーか!!!!」
全員で固く手を繋ぎ、来るべき衝撃へと身構えた。
.
Noside
X784年12月16日天狼島、アクノロギアにより消滅。アクノロギアは再び姿を消した。その後半年にわたり近海の調査を行ったが、生存者は確認できず。
そして、七年の月日が流れた。
.
マグノリアの郊外になるかならないかぎりぎりのところに、ショボンとした小さなギルドがあった。名前をフェアリーテイル。その建物の中央で、マスターらしき男が怒鳴る。
「ロメオはまだ戻って来ねえのか!?」
ドンと大きな音をたてて酒入ったジョッキをテーブルに叩き付ける中年の男、マカオ・コンボルト。彼は現在、居なくなった天狼島組が居なくなった一年後、しぶしぶマスターの座についた。
うるせぇとこれまた老けた男、ワカバ・ミネがマカオに文句を告げ、二人はまた喧嘩へ発展。そんなのには俄関せずと言ったようにマックス・アローゼが「また人減ったかな」とぼやく。
現在ギルドに残っているのはウォーレン、ナブ、ビジター、髪の伸びたラキ、ジェット、太ったドロイ、リーダスぐらいだった。他は現在仕事で出ているアルザックとビスカ、ロメオである。
そんなしんみりした空間に、大勢の足音と複数の声が聞こえてきた。
「相変わらず昼間からしんみりしてるねー、これだから弱小ギルドはやだよなー」
明らかにバカにした声は金棒を持った男たちから発せられていた。「覇気がねぇよ覇気が!」と笑う男にも充分な覇気は見受けられないが。
彼らは黄昏の鬼と書いてトワイライトオーガと読む今やマグノリアを代表する魔導士ギルドとなっているギルドの所属だ。
そんな彼らにマカオが何をしにきたんだと聞けば「金だよ」と返ってくる。
「今月は良い仕事がまわってこなかったんだよ!!! 来月まとめて払うから待ってやがれってんだ」
マカオがそう聞けばこれまたトワイライトオーガが余計なことを言い、ジェットとトワイライトオーガが喧嘩へと発展しそうになるがマカオが止める。そのままトワイライトオーガの中でリーダーの様な男がマカオを蹴り飛ばし他のメンバーがギルド内を荒らす。
来月だ。そう言い残したリーダーは荒らすだけ荒らして去っていった。荒らされたものの中にリーダスのスケッチブックがあり、中身がばらりと飛び出る。
そこには居なくなったと天狼島組のメンバーのイラストが。
「あれからもう七年か」
「懐かしいな」
「ぐすっ、あれ以来何もかも変わっちまった」
「天狼島が消滅したって話を聞いて、必死にみんなを探したよな」
「だけど誰一人見つからねえなんて」
「話が本当ならアクノロギアってのに島ごと消されたんだ」
「実際色々な機関が捜索に協力してくれたけど、何も手がかりは見つからなかった」
「そりゃそうだよ、あの日……天狼島近海のエーテルナノ濃度は異常値を記録している」
「あれは生物が形をとどめておけないレベルの……」
「なんて威力なんだ!!! アクノロギアの咆哮ってのは」
そこまで会話をし、ウォーレンがとあるドラゴンの書を手に持ちながら「アクノロギアになんて人間が叶うわけが」と泣きながら言葉を紡ぐ。
マカオは言った。
「あれ以来、ロメオは一度も笑わねぇんだ」
.
その時だった。
ゴゴゴと言う地響きのような音がギルドに響き、またトワイライトオーガの嫌がらせかと外に出てみれば空には青い天馬(ブルーペガサス)のクリスティーナ改が浮遊していた。
そこから飛び降りてくるのはとある一人の男、一夜。メェーンなどと叫びながら地面に衝突し全員からツッコミを入れられている。そのあとヒビキ、レン、イヴが降りてくる。そして一夜が残るフェアリーテイルメンバーに告げる。
「天狼島はまだ残っている」
と。
**
半分ほどのメンバーが船に乗って海へ出ていた。もちろん一夜から告げられた言葉を辿って。しばらくして、ウォーレンが「七年も連絡ねぇんだから最悪の場合を考えろよ」と厳しい言葉が告げられる。
そこでマックスが何かを見つけた。それは水面に足をついて立っている少女を。一同が騒然のする中、少女は海面から球体に包まれた天狼島を浮き出させる。
少女が島へ向かったのをキッカケにみんな天狼島へと走っていった。島に上陸したみんなは期待を半分胸に込めながら少女の駆けていく方へ足を動かす。そしてジェットが崖から発見した。
「……ナツ」
土に埋もれながら倒れているナツを。
.
ギルドにて。仕事から帰宅したロメオにマカオは「お前は行かなくてよかったのか」と声を掛ける。机で魔法書を読んでいるロメオは冷たく「生きてるかわかんねえだろ」と現実論をマカオにつきつけた。
そこで再び扉が乱暴に足で開けられ、前記と同じメンバーのトワイライトオーガが入ってきて「人数がすくねえ」だの「なにこれ同好会?」などとほざく。
ワカバが「ティーボ!! 支払いは来月の筈だろ!?」と反論するも「ウチのマスターがそうはいかねって。マスターに言われちゃしょーがねーだろ」とティーボと呼ばれるリーダーが告げる。そこでロメオが本を畳み、立ち上がった。
「お前らに払う金なんかねえよ」
そう告げたロメオにマカオはやめろと止めに掛かり、ティーボは「なんだクソガキその態度」と見下す。
「こんなやつらに良いようにされて、父ちゃんもみんなも腰抜けだ、俺は戦うぞ!!! このままじゃフェアリーテイルの名折れだ!!!!」
ロメオは右手に魔法を発動させ、炎が現れる。恐らく憧れの彼に近付くようにその魔法を覚えたのだろう。だがその炎もティーボの一息でふしゅうと消え去る。
「名前なんかとっくに折れてんだろ」
ティーボはそういいながら背中に所持している金棒をロメオ向かって振りかざした。マカオが叫んでやめろと言うが、ティーボは止まらない。
金棒を振り下ろしながらティーボが怒鳴る。
「てめえらは一生俺達の上には行けねえんだ!!!!」
そういったとき、彼は何者かに蹴り飛ばされた。吹き飛ばされるティーボを目に唖然とするギルド内員とドスの聞いた声を発しながらティーボの連れが振り返る。が、そんなもの意にも介さず残りの四人は氷、鉄、剣、拳にあっさりとやられてしまった。
そこで一人のマフラーを着けた男、ナツが笑う。その後ろには七年前に消えてしまったかつての仲間たちの顔触れが。
「ただいま」
「ふん」
「今戻った」
「みんなー」
「酒だ酒ー!!」
「なんじゃこの小さいギルドは」
「ただいま戻りました」
「わあ、素敵じゃない」
「よ」
『久しぶりだな』
各々が帰還の言葉を述べる中、ロメオは目を見開き、ラキ、ナブ、ビジターの順に「若いっ!!!」「七年前と変わってねーじゃねーか!!」「どーなってんだー」と泣きつつ笑いながら叫んだ。
.
ルーシィの話に寄ると、アクノロギアの攻撃の寸前、みんなが集めた力を幽霊となった初代フェアリーテイルマスター、メイビス・ヴァーミリオンが妖精三大魔法のひとつ、妖精の球(フェアリースフィア)へと変換し、助かったのだという。しかしみんなを凍結させたまま解除するのに七年も掛かってしまい、こんなことになったらしい。
なにはともあれ、七年ぶりに見た憧れの男の顔を見て、ロメオは震える。確か、天狼島組が消えたのはロメオがまだ5歳頃の話で。
ロメオの姿を見つけた彼はこう言った。
「大きくなったな、ロメオ」
その言葉にロメオは瞳に薄い膜を張り、やがては瞳から溢れさせてから彼らに向かって告げる。
「おかえり、『ナツ兄』、みんな」
ロメオは泣きじゃくりながら、七年間一度も見せなかった笑顔を顔に表してみんなの帰還を喜んだ。
.
女主side
X791年、私達が天狼島から戻ってきてから、アースランドでは七年の時がたっていた。
前世の原作でこの未来を知っていたのに回避できなかったなんて私としたことがとんでもない失態を犯してしまった。ジュビアが優しい声で私を送り出してくれたのに、顔向けが出来ないじゃないか。
だが、あの夜のフェアリーテイルでのひとときを、私はずっと忘れないだろう。飲んで歌って踊って、七年の時を埋めるように騒いだのだ。
そうそう、私も口調や風貌等を変えたよ。こんな堅苦しい大佐喋り等ではなく、前世での私の喋り方に。
髪型はそのままに、カチューシャをはずしてバンダナを巻き付けている。そうだな、テニプリの海堂とやらを想像してくれれば良い。眼鏡も外したよ。元々伊達眼鏡だ。前世で私は目が悪かったから。
それと、和風の服でも無くなった。白いシャツに水色のネクタイ、水色のラインをあしらった黒いスカート。だが、ジャージは外せなかった。シャツはルーシィを見習って同じぐらいボタンを開けているよ。
「ねえジュビア、前の服とすごく雰囲気が変わってるんだけど」
ギルドに来て早速ルーシィに声を掛けられた。はははと苦笑いして『生まれたときからの蟠りが吹っ切れたかんな』と私より頭ひとつ分低いところにあるルーシィの頭をくしゃりと撫でる。
「しゃ、喋り方も変わってない? あんた……」
『さっき言ったろ? 色々と吹っ切れたからな、その影響だと思ってくれて構わねーよ』
ルーシィにそう微笑めば「それなら良いんだけど。手、どけてちょーだい」と言われ渋々手を退ける。
そのままドカッとロメオの隣に腰を下ろした。
『久しぶりロメオ、でかくなったな』
「ジュビア兄!」
『待てロメオ……私、女なんだけど』
「良いじゃんジュビア兄で。っていうか珍しいね、話しかけに来るなんて」
『私もちっとは変わったんだ、それよりロメオはなんの魔法を使うんだ?』
魔導士ギルドにいんだから、と続けて言えばロメオは「火だよ、火」と嬉しそうに話す。実は展開を知っているのだが、微笑ましく清聴しよう。
「お前も火の魔法を使うのかロメオ!」
「またギルドの温度上がっちゃうねー!」
早速ナツとハッピーとハッピーセットが話題に絡んできてそうしゃべる。近くのリリーに「冷たい炎も出せるぜ」と手のひらに水色の炎を召喚した。
「あと父ちゃんと同じ紫のくっつく炎と、変な臭いの黄色い炎」
「お前オヤジよりスペック高くねーか?」
ガジルのツッコミに苦笑いし、ナツがこの魔法見たことあると呟く。
『兎兎くんか』
「そう! 父ちゃんには内緒で兎兎丸先生の魔法教室行ってるんだ」
小声で話すロメオに笑いつつ、ガジルも嬉しそうな顔をするので、ナツが「懐かしいなー! 俺、あいつの炎全色食ってねーしな!! おし、俺も会いに行こーかな!」と笑顔で満足げに喋るも、ナツの話は禁句なんだとロメオから一刀両断された。
そのままグレイの隣に移動して「お前色々変わったな」とまたしても言われ、『吹っ切れたんだ、気にすんじゃねーぞ』とにやりと笑って見せた。そこでまたルーシィからの船の時のような暖かくもにやにやした顔を向けられてしまった。グレイがやめろと止めに入るが止めに入る理由が分からなかったので『そんな顔でも可愛いよルーシィ』と言っておいたら二人から頭を叩かれる。なんだこのいじめ。
そこでギルドの戸が開き、そこからラミアスケイルの面々が現れた。
「おおーん」
「皆さんのご帰還、愛を込めておめでとうですわ!」
「また騒がしいギルドに逆戻りか」
「息災であったか?」
「七年間年を取ってねえ奴等に言ってもな」
リオンを筆頭にやって来たラミアスケイルにグレイが「お前ら!」と立ち上がる。ルーシィも「ラミアスケイル!?」と驚いたように声を出した。
マックスからラミアスケイルが捜索に付き合ってくれていた事を知り、「カリが出来ちまったな」とグレイがぼやく。
まあ、ここからがリオンとか絡んできて私が大変になるのだ、まあ、原作通りに行けばの話だが。
.
グレイの言葉にリオンが「気にすることはない、天馬に先を越されたが実力は俺たちの方が上だしな」と笑われ「そっちかよ」とグレイが呆れたように告げる。
そしてジュラが何か言い終えた時だ。リオンが私に気付いてしまったのは。
『……』
リオンを見やると彼は頬を染め、私は『あ、これ原作通りだわ』と顔を青くした。だって面倒じゃないか! 嫌だぞ!? 大魔闘演舞編の隅で意味わかんねーやり取りに付き合わされるのは!
「これが人目惚れというものか」
『……えー』
「うわ、超ストレート」
「まためんどくせーことになってきた!!!!」
口を両手で押さえて頬を赤く紅潮させるルーシィに若干呆れつつグレイに何がめんどくせーことになってきたのか聞きたいちょっと待ってマジわかんねぇんだけどグレイくーん!!?
『何がめんどくせーことになってきたんだよグレイくん説明しろ!!!』
「この状況がだよ!」
『リオンくんが私んとこ来ただけじゃねーか!!!』
「このイケメン女の子理解してなーい!!!!」
『ルーシィありがとう愛してる!』
「「黙ってろ!!!!」」
ルーシィにイケメンと言われたのでリオンをほっぽってルーシィに飛び付こうとしたらグレイとルーシィに頭を叩かれた。
待ってだからこれなんてイジメ!!!?
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かいつまんで話そう。
あれから二週間が過ぎた。私たちの帰還は大陸中に広がったようだ。もちろん週刊ソーサラーがいち早く取材に来た。みんなは七年の時を埋めるかのように毎日お祭り騒ぎ、ルーシィも死んでしまった父親のことから立ち直ってきているし、トワイライトオーガの事はマスターとエルザとミラが全て(力ずくで)解決させていた。
そしてセイバートゥースの話を聞き、そのギルドが現在のフィオーレ王国一番のギルドらしい。私達がいない間に出来た大魔闘演舞、そこで優勝すればフィオーレ王国一位のギルドへ戻ることができると言うことを聞き、周りの反対を押しきって私達は一番を目指して再び騒ぎ出す。
その間にギルダーツが5代目マスターとなり、ギルダーツはラクサスをギルドの一員と認め、再びマカロフ氏をマスターに任命した。
だがしかし、私達はどうやらこの時代に自分の強さが着いていけていない。そりゃあ七年もブランクがあれば当然と言えば当然なんだが。大魔闘演舞まであと三ヶ月もある。
ということで、私達は海合宿をすることにしたのだ。
アカネビーチにて。みんな一様な水着へと着衣を変貌させて海へと向かう。アカネビーチの海はきれいでとても安心した。というか待ってくれ、女の子達の水着が眩しい。
スススとエルザの隣へ歩いていき、海へと駆ける女の子たちを見る。
『ルーシィもウェンディもレビィも水着が似合ってるなぁ』
「ああ」
と呟きつつ『エルザも似合ってるぜ、センス良いな』と笑いを浮かべればエルザから照れたような声で「よせジュビア」とそっぽを向かれた。可ん愛いなエルザ。エルザは薄く微笑みながらこちらを見てこう言った。
「ジュビアはバストバンドにショートパンツか、ジュビアらしい。着けているバンダナとジャージはどうするんだ?」
『あー、そんときんなったら考える。バストバンドがキツい、胸がデカイのも困りようだ』
「贅沢な」
エルザは微笑みつつ海に入りながらジェットとドロイに「こういうときはメリハリが肝心だ、よく食べよく遊びよく寝る!」と豪語している。おいおい、修行が抜けてんぞエルザ。
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午後からは真面目に修行に取り組み始めた私達。午前中のジェットとドロイのルーシィ、レビィ、エルザを見る目がエロかったのでとりあえず蹴りを入れておいたが大丈夫だったろうか。
そんなことを深海で剣を振り回しながら考えてみる。なぜ深海に居るのか? って? ふん、愚問だな。深海は静かで落ち着くし集中できる、ただそれだけだ。まれに自害した男女の骨を見つけるが知ったこっちゃない、私に害をなさなければどうってことないだろう。
さて、剣を一通り振り回し続けたところで水の滅悪魔法の練習へと移ろうか。
『(……滅悪魔法をもらったは良いが、どんな技があるんだ? 原作じゃグレイは自分で創ってたし……)』
まあ、その時に作れるものもあるだろう。とりあえず水魔の技を思い付く限り作っておこうか。
手始めに。
『(水魔の激昂!!)』
水の中なので被害はでないと思うが水の流れがドゴオオオオとか大きな音をたてながら急激に変わっていったのでやはり滅悪魔法スゲーとか感心する。
私が原作で知ってる滅悪魔法の技はこれのみ。なのでここからはオリジナルだ。滅竜魔法みたいにできないだろうか。
『(……水魔の旋牙(せんが)!!)』
指先でぶおんと技を出せばまあ行けるんじゃね的なぐらいの完成度。まあまあだなとか手のひらを見つめながらこの滅悪魔法と水系各種魔法と合わせられれば強力になるかもと好奇心で技を繰り出した。
『(水魔の……ウォーターカーネ!!)』
ドッ、ビキビキビキ、ドドオオオオン。そんな轟音を轟かせて地が裂けた。うん、ここまで酷いことになるとは思ってなかったよ正直。うん。
水の中なら良かれと思ってきてみたが逆に地球に被害をもたらしてしまったことから目を逸らし、上を見れば日はもう傾き空が茜色だったのでもういいかと浮上して宿へと向かった。
あ、このあとの風呂で男どもに覗かれそうになる描写があった気がする。でも私的には見られたってどうってことないので放置だ。
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やって来た温泉パート。風呂の方でルーシィに「ジュビアー、はやくー!!」と可愛らしい声で呼ばれる。『おー』とだけ返事をしててしてしと石段を降りていき、『待たせたな』とルーシィに微笑む。
ルーシィは私の笑みを見て「……ジュビアに見られるのは、ちょっと複雑だわ」とじとめで言われてしまった。
私はちゃぷんとルーシィの隣に腰を降ろして疑問を投げる。
『なんでだ?』
「だって……ジュビアの顔がイケメン寄りの美人だから……女の子って分かってても複雑っていうか……」
ぶくぶくと湯のところまで顎を降ろして泡立てるルーシィに微笑んで「ルーシィ」と頭を撫でる。呼ばれたルーシィは頭に?を浮かべながら「なに?」と私の言葉を待った。
『……言っちゃ悪いんだが、ルーシィはこの先ナツに見られるからそんなんじゃ気がもたねぇぞ』
「不吉なこと言ってんじゃ無いわよ!!」
『うお、おお……!!!!!』
ルーシィキックがモロで鳩尾に入り唸る私にルーシィは「ジュビアが悪いんだからね!!」とビシッと指を指してきた。
エルザはそんなことをスルーし、「やはり体を動かしたあとの風呂は格別だな」と笑っている。くそぉエルザぁ……!!
ウェンディがそれに相槌をうち、シャルルがここの湯は美肌効果が有るらしいと教えてくれた。レビィはハッピーがいることに怒りつつ私は『……ここは天国だな』とルーシィの隣で風呂の縁にもたれながら呟く。まあ直ぐ様「うっさいわ!」と返され先程セクハラ紛いの事を言ってしまったからか「仕返しよ!!!!!」とか言われつつ胸を後ろから揉まれた。
『うおおっ、やめろルーシィ!!』
「よくもあんな不吉なことを!」
『しゃあねえだろー!!』
一通りばちゃばちゃ暴れたあと、ルーシィは疲れたのか空を見上げ、呟いた。
「見て、星が綺麗」
その言葉に促されるようにみんなで上を見上げる。
「あたしももっと頑張んなきゃ!!」
ルーシィが意気込んだ所でエルザが男湯の方へ反応し、くないを四つ叩き込んだ。
「どうしたのエルザ」
「いや……曲者の気配がしたような……気のせいか」
エルザの言葉にレビィとウェンディが「まさかあいつら覗きに!?」「サイテーです!!」と焦る。私は苦笑いしながらその光景を見つめ、エルザに問う。
『火竜のたちなら良いんじゃねぇか? エルザ』
「ナツたちか? ならば構わんな、呼んでこよう」
「ダメえええええ!!」
ルーシィの反応が思いの外可愛かった事に満足だ。
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夜、OVA通りの出来事が起こり、酒に酔ったエルザが「うるさいぞグレイ。お前たち、こっちに来い、そして酒を注げ。てか酒を注げぇい!!」と叫び、それがキッカケでみんなが暴走し始めた。
私も酒は飲むが女の子達の暴走が見たくてにこにこと上機嫌でベランダから室内を見ている。レビィのしゃっくりが可愛いので満足満足。
そしておろおろと止めに入るべきか飛び火が来る前に逃げるべきか迷っているグレイを発見、彼方も私に気付いたのかサッと顔を青ざめる。恐らく私も酔っているとでも思って居るのだろう、苦笑いしながら私はグレイを手招きした。
『グレイ君、早くこっちに来いよ。そこにいるとエルザから飛び火が来るぜ』
「げっ」
慌ててこちらにやって来るグレイに笑っていれば「お前は酔ってねえのかよ」とじとりとした視線をいただき、『おー』と女の子を見ながら笑顔で返答すると「女共止めろよジュビア!!」と本気のチョップが頭めがけて飛んできた。流石にそれはヤバいだろうと白刃取りで回避する。途端コイツの腹からグウと音が聞こえた。グレイは顔色変えず「あー、腹減ったー……」とずるずる座り込む。
『まぁ私も飯食ってねーし、厨房借りてなんか作るかお前も来るだろグレイ』
「おう行く」
やっと飯にありつけるのが嬉しいのか顔を輝かせながら即答したグレイにハハッと笑い、部屋を出て女将に厨房を借り、調理を始める。
どうせならまだ食べたことのない物を食わせてやろうと思い、にやつく。とりあえずたこ焼き粉はなかったので小麦粉で代用。タネを作ったあと、そこに紅生姜をぶち込む。それを見て後ろから何を作るんだと興味津々に眺めていたグレイが「え」と声をあげた。それにげらげら笑いつつ、たこ焼き機にタネを入れてその上からタコを入れる。ここ明音旅館は日本からの取り入れが多く、たこ焼き機はあった。
たこ焼きをちょうどいい具合でくるんと竹箸でひっくり返し、焼ききったあと、二枚の大皿に移す。こんな事もあろうかとソースとマヨネーズ、醤油をカバンに入れていて良かった。
一枚の大皿にソースとマヨネーズを掛けて、もう一枚に醤油を掛ける。その上からあおさ、鰹節を掛けて、かなりの量のたこ焼きが完成した。
見たことがないのか、完成品のたこ焼きを見つめながらグレイが聞いてくる。どうやら見たことも無かったようだ。
「なあ、これなんつー飯?」
『たこ焼きっつーんだよ、東洋のちっせー島国の関西ってところ発祥の飯、本場はもっとうめー』
そこまで言ったところでドタドタと走って来る音が聞こえてきた。グレイが「うわー、来た」と嫌そうに顔を歪めて椅子に座る。扉を開いてやって来たのはそう、鼻のとっても良いナツだった、しかもルーシィを背負って。恐らくトイレからの帰りなのだろう。もうルーシィは酔ってないんじゃないのだろうか。
「うおー!!! なんだこの旨そうな匂いとそれ!」
『たこ焼きっつーんだぜ』
「俺も食いてえ!」
『おー』
かなり作ったからなと言えば目を輝かせて駆け寄ってくるナツに「ルーシィ」と呼び、ルーシィを起こす。ややはっきりした声色で「あ、ジュビア。ここどこ」と目を擦りながら聞いてきた。
私は鼻血を垂れ流しながら「厨房」と返す。「ええ!? 厨房!?」と驚きながら周りを見回すルーシィはもう酔っていない。匂いに気が付いたのか「良い匂い」と鼻をすんすん動かしてたこ焼きを見つけたのかあれなにと聞いてきた。
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ルーシィにも『たこ焼き、早く食べろよ』と告げて私も食いに掛かる。分かるけど、ソースマヨの方しかみんな食べて居らず、未確認で手が出せないのだろう、ナツがマゴマゴしている。するとタイミングよくグレイが「ソースとマヨネーズは分かるけどよ、もう一個のソースはなんだ」と聞いてきたので『醤油っつー、大豆を発酵させて作られる東洋の島国発祥のソース、旨い』と言えばみんなそちらも我先にと手を伸ばしては旨い旨いと絶賛。
「中にはタコが入ってるのね」
「そうなのか!?」
『火竜の、てめえ丸飲みせずにちゃんと噛んで味を噛み締めろよ』
「タコが入ってっからたこ焼きなのかー」
『中身の具材は色々変えてロシアンたこ焼き等が出来る、私の知るなかでは切ったソーセージとか烏賊とか入れても旨かったぜ』
「今度それもつくってくれー!」
「ミラちゃんにメニューに加えて貰えば良いんじゃねえか?」
『あー』
「ねえジュビア、この赤いの何?」
『紅生姜っつーの』
等々話しているうちにたこ焼きはなくなってしまい、まだ足りないのか三人共こちらを見てくる。私は苦笑いしながら先程余ったたこ焼きのタネで御好み焼きを作ることにした。
「今度は何を作るの?」
ルーシィが聞いてきて、見れば三人共わくわくしたような顔で次の料理を待っている。私は笑って『御好み焼きだよ、たこ焼きと同じとこ発祥』と呟き、熱した鉄板にタネを広げ、上から豚肉を数枚乗っけてテコでびっくり返す。それを何枚か作り、トッピングはソースマヨにあおさに鰹節。それを人数分の皿に乗せて『かんせー』とみんなの前に立つ。
「あー美味しい! ねえ、この国の名前は?」
『日本だ、日本は自然が多いし先進国だから便利な物も多いから私は好きだ』
ぱくぱく食べていくみんなを見て私も箸を進める。
前世の私は実は関西の大阪に居り、たこ焼き等を作るのがかなり好きだった。家がたこ焼き屋を経営しており、中学生がよく来る。確か私の出身校の男子中学生が多かったはず。中でも顔を覚えるぐらいやって来ているのが遠山金太郎と言うテニス少年だ。あと左腕に包帯を巻いた白石蔵ノ介と忍足謙也、財前光と言った私の出身校の子たちがたくさん。四天宝寺テニス部は上手いらしく、東京から来た青学の子たちも来ていたなと懐かしくなった。
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海合宿二日目、私達は精霊界へと赴いていた。どうやら七年の月日から帰還した祝いだと言う。一気に騒ぎ出す彼らを見て、微笑ましげな笑みを携えながら席へと腰を降ろす。途端アクエリアスがやって来た。
「いつかのルーシィと合体したイケメン女ね」
『ははは、可愛い女の子と合体できりゃどんだけ嬉しいだろーな!』
恐らくアクエリアスは楽園の塔編の事を言っているのだろう、私は笑いながらそう答えた。
「男は出来たかい?」
『アクエリアスはあんな格好いい彼氏が居て羨ましいぜ』
「おっ、言うねぇ。ルーシィみたいになっちゃ駄目だよあんたは」
「どーゆー意味よ」
『そんな顔してても可愛いぜルーシィ!』
「うっさいわ!!!」
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妙にアクエリアスと意気投合してしまい、「苦労してんだねあんた!」『アクエリアスこそな!』と微笑みながら手を取り合った。
その後、精霊王がルーシィの事を頼むと言い残し去っていった。
そして精霊界での一日が人間界の三ヶ月と知り皆一様に唖然とするのだった。
「ヒゲー!!!! 時間返せー!!!!」
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大魔闘演舞まであと五日ほどに迫った今日、私達は脱獄したジェラールや元グリモアのウルティア、メルディに呼び出され、クリムソルシエールと言う独立ギルドを立てたことと大魔闘演舞にて毎年開催中に感じる妙な魔力の正体を突き止めてほしいこと、その報酬が私達の能力の底上げ、いわゆるセカンドオリジンを解放することだった。
私達は快くそれを了解し、再開を喜びながらセカンドオリジン解放の為、激痛を伴いながら魔法陣が体に描いてある。
一番最初はナツが実験台になってくれたがそれはそれは苦しそうだった。
「服、脱がなきゃ魔法陣……描けねーのかなァ」
『てめえはそれ、心配しなくていいんじゃねぇか?』
「それね」
ああ。エルザとジェラールの事は割愛しましょう。
最終的にみんなあああああ! と苦しみに苦しみ抜いたよ。
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やって来たクロッカスでは流石花の都と言われるなあと理由を理解した。花がいっぱいだ、エルザが好きそうだな。今回はいつも通りのシャツにネクタイとあまり変わらない服装に身を包み、私は一人でクロッカスを散策していた。
私はフェアリーテイルAチームには選ばれなかったのだ、少し残念だがBに行けたので良しとする。
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ナツ、グレイ、エルザ。ここまでは良いんだけど、あたしとウェンディ。
「えー」
「無理ですよ、ラクサスさんやガジルさんもいるんでしょ?」
「だってまだ帰ってこないんだもん」
あたしとウェンディは顔を見合わせ、エルザから激励の言葉を貰ってしまい、「うん、そだね」「頑張らなきゃ」と各々の反応を見せる。
「ガチで挑むならギルダーツとラクサス、ミラジェーンとジュビアが欲しかったなぁ……と思ったり」
「「口に出してんぞ!」」
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Aチームを決めるときの会話は知らないが。
そしてふとグレイを発見。それと同時に腹も鳴ったので食事でも誘うか。
『偶然だなグレイくん』
「ジュビア、なんでお前が」
『私だけじゃねえ、ギルドの奴等が応援に来てるぜ。よかったら一緒に飯でも食わねえ?』
「そういや腹減ってきたな」
さて行くかと言う所でリオンがぬんと出てきて私がリオンに華麗にエスコートされながら連れ去られそうになる。……エスコートされるのは慣れないな、なんて思いながら『飯食えんならどこでも良いぜ』となげやりになる。そこでグレイが静止の怒鳴り声をあげるが、まあそれがややこしいことに発展。
何やら賭けが始まり、ラミアスケイルが優勝すれば私はラミアスケイルに、フェアリーテイルが勝てば私はフェアリーテイルに残留と言うフェアリーテイル側に利益が無い賭けとなった。
「負けるのが怖いのか?」
「なんだと……?」
『なあ、ラミアスケイルって可愛い子居るか?』
「お前ぜんぜん話見えてねーだろ」
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おや? ジュビアが一人称を『俺』に変えた様です。
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無事『空中迷宮(スカイラビリンス)』を二位で通過しはんははーんと調子付く。
そして俺達Bチームお披露目の時がやって来た。
<おおっとこれは意外! 堕ちた羽の羽ばたく鍵となるのか!? まさかまさかの……
フェアリーテイルBチームだぁ!>
俺達Bチームの面子を見てAチームが騒ぎだし、ルーシィがラクサスとか反則でしょーーー! と叫んだ。
俺達Bチームのメンバーは俺から始まり、ガジル、ミラジェーン、ラクサス、そしてミストガンに扮したジェラールと言うなんとも反則無敵の無双チームである。負ける気しねえ。
まあそこからごちゃごちゃと話し合いしてナツたちと対立したわけだが、負ける気はねえ。
セイバートゥース? 雑魚は退いてろ!
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第一種目は『隠密(ヒドゥン)』、参加人数は各チーム一名、主催者側が作った疑似町でお互いが鬼であり追われる側、その町で互いを見つけ、どんな魔法でも構わず、一撃浴びせる。ダメージの有無を問わず、攻撃を与えた側に1ポイント獲得、コピーに攻撃してしまえば減点と言うわけだ。
出場選手はクワトロケルベロスからイェーガー、マーメイドヒールからはベス、レイヴンテイルからナルプディング、ブルーペガサスはイヴ、セイバートゥースからはルーファス、ラミアスケイルがリオン。
Aからはグレイが出るので俺も出場!
『……なるほどな』
コピーがうよつくこの疑似町でどれだけ身を隠し、どれだけ多くのポイントをとれるかと言うことか。
遠くでナルプディングに背後から襲われるグレイを発見、俺もそこへ参戦する。
『わりーな、貰ってく』
「でっ」
「たっ」
すぱぱんと二人の頭を刀の鞘で殴り、宙で一回転しスッとコピーに紛れる。後ろから「なんでさぁあのバンダナ剣士女!」「くそっ、ジュビアあいつ」と悔しげな声が聞こえたが無視だ無視。そのあと屋根へと登り、辺りを見回す、と早速発見した。
仕切り直し言ったように歩き出すグレイにベスがニンジンミサイルを食らわせるが、グレイはそれを避け、逆にベスはイェーガーに点を取られてしまった。その直後、はっはーとバカな笑いをするイェーガーに攻撃したリオン。
「俺も見ていたさ」
「リオン」
「見つけたぞグレイ」
二人が対面したところで上から『リオンーー!』と叫びながら飛び降りる、スカートが捲れて二人にパンツが見えるとかそんなもん気にしてる暇ねえ!
ちゃき、と落下していく途中で刀を構え、鞘でリオンの頭を強打する。
「ジュビア!!!」
「パ……パンツ」
『おらぁっ!』
「んがっ」
バッチリ上を見上げる二人に少し呆れつつ、「おいおい手助けは無用だぜ」と言うグレイに『誰が手助けするかザコ』と暴言を吐く。
『俺はお前に勝たなきゃなんねんだ、他の奴等がマスターと約束してたから』
「じいさんと約束だぁ?」
『おう。勝った方のチームがもう一方を一日好きにできるっつー。俺はキョーミねえけど』
「ふざけんなっ!!!! オイ!! じーさん!!! 聞いてねえぞ!!! そのローカルルール俺達のチームにも適応されるんだろうな!!!!」
「も、もちろん」
怒鳴るグレイを置き、もうすぐ来るであろうナルプティングに備えて構えを取る。序盤じゃ滅悪魔法は使わねえ!!!!
そしてどこかから聞こえてきた「ひひひ」と言う声に反応し、一歩下がる。
「妖精まとめてゲットでさぁ!!!!」
「うあっ」
『誰がやるか馬鹿野郎!!!』
落下してきたナルプティングの攻撃を避け、すかさずズバッと攻撃をする。今の俺の点数は……四点か!!!
「またしてもこの女でさぁ!」
『さぁさぁうるっせぇな!!!』
と突っ込みを入れたところで、雪が降ってきた。
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そののち、ルーファスがてっぺんで吠えて星降ル夜ニを発動させた。
この技な上空で見つければ二秒で緊急回避出来るから、俺以外は全員ルーファスにポイントを取られている。
一回ルーファスが驚いたようにこちらを見たが知らんし放置。
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短い
いろいろあって大会三日目の夜。まったく俺の出番が無くてフラストレーションが溜まりまくりだ。
それを知ってか知らずか、みんなは『リュウゼツランド』と言うプール園へいくと言う。これは喜んで行かなければと嬉々としてルーシィの隣で俺は立っていた。
前回海ではバストバンド+短パンだったが、今回は赤と白のグラデーションビキニである! 只し、黒の短パンプラスいつもの水色のジャージ(前のチャックは全開)着用だ!
『やって来たぜー!』
「着いたー!!」
「広いですね」
「んー、気持ちいいな」
「エルザ傷大丈夫なの?」
「まぁエルザだし」
みんなで各々会話して、俺は女の子の眩しさに遠い目をして瞳を細める。ペタペタと歩いていけば以前ジュビアがグレイに一緒に乗ろうと言っていた代物を発見。そして、思い付いた。にたりと笑って見れば、エルザに「なんだその顔は」と微妙な表情を見せられた。そういう反応が一番傷付くんだぜ?
一旦ルーシィとエルザの二人と別れ、目当ての人物を見つけにいく。発見すれば直ぐ声を掛ける。
『グレイ君、あのラブラブスライダーなるものに一緒に乗ろうじゃないか! まずネーミングセンスに驚きだぜ!』
「ホントにな、なんなんだそのスライダー」
『抱き合った形でのスライダーらしいんだ! 驚きだぜ!』
「乗れるかっ!!」
『安心しろ、俺も乗る気はねぇ! どうだ驚いたか!』
「驚くわ!」
一通りグレイをからかい、大笑いしたところでスッと体が持ち上がる。リオンである。来ていたのか、とかわぁお姫様抱っこだ! とか心内で笑っていたが、してもらったことがないので暫し呆然としてリオンの顔を見、次にグレイを見る。
その後、沈黙が続いたが、俺はハッとしてリオンに告げる。
『リオン君、ラブラブスライダーなるものに一緒に乗らないか?』
「あぁ、乗ろうか」
『え、からかって悪い。
冗談だ。本気で返されると意外と戸惑うんだぜ?(キリッ)』
「さあ行こうか」
『無視とか結構辛いんだぜ?(キリッ)』
「こっち見んな、ってかてめえリオン! どっから湧いてきた!」
そこからリオンが俺を降ろし、グレイとリオンが二人で睨み合い、俺がほぼ蚊帳の外なので、ルーシィのところへ行こうとすればグレイに「張本人がどこいくんだ」と言う視線と共に腕を掴まれ阻止された。
「どこいくんだよ」
『ちょっと……ルーシィにセクハげふんげふん、ルーシィに会いに』
「てめえ……」
言い合い揉み合いになりながらスライダーの乗り場へやって来る。リオンが乗ろう乗ろうとうるさいので乗ってやろうとすればグレイに阻止され「じゃあグレイ君と乗るか」なんて言えば訳はわから無いが、顔を真っ赤にさせたグレイ君に頭をすぱんと叩かれた。悲しみ。
そこで何があったのか知らないがナツが飛んできて、グレイ君とリオン君に衝突二人は後ろに倒れる勢いでそのままスライダーへと吸い込まれ、二人で抱き合って滑り出した。
『BLかよ!』
そう叫んだ俺は悪くないと思う。
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それから、まあいろいろありまして、最終日。
ルーシィが王国側の勘違いでセイバートゥースのユキノと共に王国の牢屋に捕まったらしい。フェアリーテイルがルーシィを取り戻しにいくには合併したA.B両チームの内五人で優勝すること。
現在フェアリーテイルは他のみんながいろいろ泣けることをしてくれたので嘗ての人気を既に取り戻していた。
原作でも読んだのだが、チームにはエルザ、グレイ、ラクサス、ガジル、そしてジュビア…即ち俺も含まれるわけで、現在割れんばかりの歓声に包まれながら入場したのだった。ナツとウェンディは別動隊としてルーシィを助けにいった。
フェアリーテイルから家族をさらって、ただですむと思うなよ。それがたとえ王国だとしても。
原作通り最終日最終種目__クロッカスの町を使ったバトルロワイヤル。
開始当初は幽体として暇だから様子を見に来たと言う初代に指示されて動かなかったが、時間が来て駆け出した。
「妖精の星作戦発動!」
「「「「「了解!」」」」」
初代の声を合図に弾かれたように走り出した俺たちに観客がざわめく。
気合いを入れて臨む、そう決めたときから大会最終日の競技はこの服装で挑むと決めていた。綺麗な蒼い狩衣。その上にジャージを肩に羽織っているのだ。なぜ落ちないのかは気合いということで。バンダナは外せない。眼鏡も外せない。
こっちがただひたすらに目的地へと駆け回っていれば、放送から聞こえるのはみんなが相手を倒して得点したことを実況する声。そのうち、グレイがルーファスを倒したらしい。流石だ、グレイくん。
そして不意に聞こえてきた「天神の……」と言う声に反応して身を捩れば「北風(ポレアス)!」と紫色の風がこちらの先程までいた地面を抉った。
シェリア、彼女はウェンディの友達で、原作でもリオンに好かれているジュビアを敵対視していた天空の滅神魔法を使う可愛らしい少女だ。実力は可愛くない。彼女はやはり俺を追ってきた、初代の読み通りだ。
「あなたはリオンの愛する人!」
『いや知らん』
「だったら……消えて!」
そう物騒なことを言いながら襲い掛かって来るシェリアの攻撃を刀で切り裂き、彼女の肩から腹に掛けて大きく刀で裂く。彼女は自己治癒能力を持っているから大丈夫な筈だ。
初代は足止めと言っていたがその様な気はそうそうない。生憎と、初代から滅悪魔法の使用許可がやっと降りたのだ。傷を自己修復する彼女なら、行ける。
「魔法を切り裂く!? そんな刀があるなんて!」
『どうだい、スゴいだろうこの刀は。全く違う話になるが……昨日にな、とある魔法の使用許可がやっと降りたんだ、行くぞ』
「どこからでも!」
そんな彼女に笑みを溢して『水魔の……』と頬を膨らませる。頬が何かに染まっていく感覚に襲われる。きっとあの黒いのだ。
ハッとした彼女が腕で防御態勢をとったが、間に合ったか……どうだろうな。
『激昴!!!』
「うああっ!」
口から出てきた水の渦に巻き込まれた彼女はドドドドドと背中から壁に激突して、よろよろと身を起こす。
<フェ、フェアリーテイルのジュビアァァァア!? 彼女は今まで出し惜しみしていたのか!? 古代魔法(エンシェントスペル)である滅悪魔法を炸裂させてきたーー!>
<いやぁ驚きですね、滅悪魔法なんて初めて見ました>
「うぅ…」
<重傷のシェリアたーん! 傷は無いが体力の消耗が激しいようだ!>
そんな言葉ににやっと笑みを深めた。
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