はいきゅー・ひろあか・わーとり(たまに黒ばす)で二次創作を延々と。
腐女子なんで全体的に腐って見えるかもしれない、がっつり腐はhoge、名前欄にCP表記するのでご安心を!
「かっちゃん?」
「……ンだよ」
「何それ」
「何だっていいだろがクソが」
爆豪がたくさんの傷を負って寮に帰ってきたのは、今から三日前のことだ。
もともと、爆豪はよく夜に外出をする。
ストイックな爆豪のことだからきっとどこかの公園で自主練でもしてるんだろうが、こんなにも傷を負って帰ってくるのは見た限りだと初めてのことだった。
その日はもう深夜で、緑谷がちょうど水を飲みに降りてきたときだった。夜中に目が覚めることなんてほとんどないのにその日だけ目が覚めてしまったのは、神の悪戯か何かなのかもしれない。
傷だらけの爆豪は全く怒っているようには見えなかったし、むしろ諦めている風にも見えた。そんな爆豪を前見たのは、いつだったか。
新技の開発かと疑ったが爆豪がその程度でこんな大きな怪我をするわけがない。
それに、爆豪の個性は爆発であって、打撲や切り傷ができるわけがない。いや、この推測は早計か。勢い余った可能性も無くはない。
それなら一体、何なのだ。
観察しようにも爆豪の睨みつけるような視線がそれを制した。もう、あとはさっきまでに得た情報で結論を出すしかない。何が何でも真実に辿り着かなければならないと考えていた。
爆豪の個性は『爆発』だ。
掌から、ニトロのようなものが入った汗腺を利用して爆破を起こす。
爆発力や殺傷力に長け、機動力にだってそつがない。…もっとも、この個性をここまで有効に活用できるのは天性のセンスと頭の回転力に加えてストイックさを兼ね揃えた爆豪くらいだろうが。
その爆豪がこんな怪我を負っている理由はなんだ。なんなんだ。
「どけ」
一人、悶々と考え続ける緑谷に対して爆豪はそう言い放った。
なんで僕に用が、と思ったけれどどうやら冷蔵庫に用があるみたいで、きっと水でも飲みたかったんだろう。そりゃそうだ、夜な夜な練習してたら喉くらい乾く。
いじめられ根性がまだ少しだけ根付いているのか反射で避けて、爆豪を通した。そして、今しかないとも思った。
じろり、と爆豪を見る。
後ろからは顔の傷を見ることができないが、黒タンクトップを着ている上半身は観察することができた。
腕に切り傷が見える。殴られた痕も複数。少しだけタンクトップに血が滲んでいるように見える。黒い服だから確信ではない。下半身はここからでは見えなかった。
いま、コップを握っている個性を発動するための掌から、砂がすこし落ちた。地面に手を着いたのかもしれない。
すると、水を飲み終えた爆豪がこちらを見ないまま口を開いた。
「…さっきから見てんじゃねェよクソデク」
「え、あ!…ご、ごめん」
「……」
慌てて謝罪を口にしたが、それに対して何の言葉も残さず爆豪は立ち去って行った。
横を向いたお陰で、爆豪の横顔が一瞬だけ見える。
(…………あ、)
頬に、大きな痣が見えた。
「…なぐられ、た?」
爆豪が居なくなって一人に戻ったキッチンで、緑谷はひとり呟いた。
あんな大きな殴打の痕、どんなヘマしたって爆豪がつけるわけがない。
唇から血が出ているように見えた。後ろから見たとき、先程は見えなかった側の横顔から少しだけ砂が落ちたようにも見えたし、髪は乱れていた。
「うそだ」
あの爆豪が、人に殴られるわけがない。
人よりプライドが高くて、誰より強い爆豪が、人に殴られるわけがない。
人に殴られて、あんなに落ち着いてるわけがない!
「なんで、」
どうして、なあ、どうしてだかっちゃん。
僕の知ってるかっちゃんは、人に殴られて、そんな凪いだ目をするわけがないんだ。
「かっちゃん」
幼馴染のはずの爆豪が、ここまで理解できなかったのは緑谷にとって初めてのことだった。
「うわ爆豪、おまえそれどうしたんだよ!」
朝になって爆豪の怪我に気が付いた上鳴が騒ぎ立てる。
爆豪は怪我を隠すことなんてせず、大きなものだけ軽く治療をしただけなのでそれはもう目立つ。湿布だらけでも目立つけど、ここまで堂々としているものだから驚くしかない。
「うるせェ」
「騒いだっておかしくねえだろ!だっておまえそれ、自分の顔見た!?」
「腫れてるだけだ、問題ねえ」
「どこが問題ないんだよ!問題大アリだアホ!リカバリーガールのとこ行ってこい!」
「この程度の怪我で行くかボケ、どっかの誰かみてーに骨折でもしなけりゃ行かねえよ」
「見てるこっちは痛々しいんだっつの!」
まあそりゃあ大きな声で叫んでるものだから、たくさんの人がなんだなんだと寄ってくる。
それを察したであろう爆豪が、いつものように「どけ」と一言言い放って上鳴から離れていった。
「あっ馬鹿爆豪、」
「朝からどしたんお前ら」
「上鳴がバクゴーに突っかかるなんて珍しいねー?」
騒ぎを聞きつけた瀬呂と芦戸が上鳴に声をかけた。
しかし上鳴は爆豪の怪我を隠すべきことだと思ったのか、ごにょごにょと不自然に呟いて黙ってしまった。
※今更ですが軽いリョナ描写がのちにあります、ご注意を
7:篠原:2017/06/04(日) 21:11 ID:0fI それから何人かが爆豪の怪我を見て話しかけたようだけれど、生憎緑谷はそれを知ることがなかった。高校に入って初めてできた友達と課題の話をしていたからだ。
緑谷は、誰が爆豪に何を言い、爆豪が何と返したかも知らない。
(それにしても)
プレゼント・マイクの騒がしい授業を受けながら、いつものように席に座って授業を受ける。緑谷は集中しているフリをして、前に座る爆発的な髪形をした人物を鋭く見つめ思考を逡巡させた。
(どうしてこんなに堂々としていられるんだ?)
それは、緑谷にとって最大の謎であった。
本来爆豪は東京スカイツリーより遥かに高いプライドの持ち主であり、天性のセンスがあり、怒りっぽく、ドジを踏むことなんてなく、大胆にかつ冷静に、それでいて非常に強い精神を持ち合わせている人間だ。
もし、もしも爆豪が転んだりして怪我を負ったとするなら、それを上鳴や瀬呂あたりがからかわないわけがない。ああ見えて分かりやすい人だから、図星であれば怒鳴り散らす。怪我の痕から見るに事故の可能性は少なそうなのはさておき。
そして誰かに殴られたりしたとすればまず殴り返すし、不機嫌さが表情やオーラにすべて出る。そもそも誰かに近寄られたら真っ先に喧嘩をするし、殴り合いだって個性を使わなくても人一倍強い。爆豪に恨みを抱える人間はいるかもしれないが、そうだとすれば爆豪は容赦なく返り討ちにするし隠したりなどしない。
でも、誰にも知られたくないような事実は隠すことが得意な人だ。ひとり、誰にも相談せずに抱え込むのは得意な人だ。それすら抑えきれなくなったときに、爆豪は泣く。
爆豪は前を向いていた。
緑谷と夜遭遇したときも、上鳴と言い合いになったときも、今も。
つまり、爆豪は怪我のことについて一切気にしていないのだ。全部忘れて、今、ここにいる。
なぜ、自分がここまで爆豪の怪我に執着しているのかは分からない。けれど、なんとも形容し難い違和感がずっと胸に引っかかっていた。