東方Projectの二次創作
独自設定and捏造あり
主人公は『猫ショウ』と呼ばれる『猫妖怪』
ヒロインは『藤原妹紅』
それらが嫌な方々はブラウザバックを推奨
荒らし厳禁
時は飛鳥時代。
藤原氏なる氏族あり。
始祖の名は『不比等』という。
『不比等』は『輝夜』という女子に『蓬莱の玉の枝』を渡した。
しかしそれは紛い物であった。
怒り狂った『不比等』は偶然にも、『蓬莱の薬』を手にした。
そしてある噂が流れた。
『蓬莱の薬を飲んだ者は不老不死となるだろう』
それを鵜呑みにした『不比等』は、娘である『妹紅』に『蓬莱の薬』を飲ませた。
だが、これといって特に変化はなかった。
あの事件が起きるまでは......。
『蓬莱の薬』を飲まされて数年後
『女子達』が『妹紅』を謀殺したのだ。
その者達は成功した事に歓喜した。
だが、これが失敗する事を『女子達』はまだ知らない。
(謀殺した理由は、『妹紅』のあまりの美しさに嫉妬したからである)
翌日、謀殺されたはずの『妹紅』が何食わぬ顔で現れたのだ。
(刺された部分の服は赤く染まっているが)
『女子達』は何故生きているか理解できなかった。
『不比等』は「何故服が赤く染まっているのだ?」と問うてきた。
『妹紅』は『不比等』に『女子達』が自分を刺してきた事を教えた。
『不比等』は問う。「どこを刺されたのか教えて欲しい。」
『妹紅』は答える。「腹部を刺されました。」
再び『不比等』は問う。「刺されたのであれば、何故平気でいられるのだ?」
『妹紅』は答える。「傷口が塞がったので問題ないと判断したまでです。」
『不比等』は心の中で『妹紅』に恐怖する。
そして同時に思い出す。
まさか、『あの時妹紅に飲ませた蓬莱の薬』の効果は本当だったのか!?と。
更に翌日
『妹紅』は『女子達』を貶めるため『不比等』に虚偽を伝えたとして、
『罪人』として投獄された。
当然、『妹紅』には理解できなかった。
自分は事実を伝えたはずなのに、何故虚偽だと言われなくてはならないのだ!?と。
そして、大衆の前で打ち首にされる事になった。
更なる恐怖が待っている事も知らずに......。
『妹紅』の頸は切り落とされた。
何故か不明だが、頸は灰塵と化した。
そして、残った体から炎を纏って頸が再生した。
大衆の皆は恐怖に駆られて逃げだした。
ある者は精神を病み、ある者は自ら命を絶ち、ある者は平常心を保った。
その後『妹紅』は、決して誰も寄り付かない牢獄に囚われ続ける事となった。
真っ暗な場所で何も食べられず、鎖に縛られ自由に動けず、誰とも会話ができない。
地獄のような生活が何年も続いた。
時は平安時代初期まで進んだ時、『妹紅』に転機が訪れた。
???「はぁ、まったく。今日は最悪だ...!飯は食えないし雨も降る!」
『人の言葉を話す尻尾が三本生えた猫妖怪』が愚痴を零しながら、
『妹紅』が囚われている牢獄に雨宿りをしようとしていた。
猫妖怪「ん?何であそこから『人間の臭いがするんだ?』」
『猫妖怪』は訝しむと同時に興味が湧く。
ここはもう『人間が120年以上も来ていない』。
『何故此処にいるのか聞いてみようではないか!』
猫妖怪「おーい、人間!!こんな所で何してんだぁ!!」
『猫妖怪』は話を掛けてみる。
妹紅「.........。」
『妹紅』が『猫妖怪』の話を聞いている様子はない。
猫妖怪「無視しないで欲しいんだがなぁ...。
ん?『こいつ何で鎖なんかに縛られてんだ?』
『肌は艶々で髪はボサボサ』、そして『この虚ろな瞳は何だ?』
『人間がして良い目じゃねぇぞ?』」
『猫妖怪』は『鎖に縛られた妹紅』が普通の状態ではない事に即座に理解する。
猫妖怪はなんのアニメ(漫画、ゲーム)のキャラですか
7:匿名さん:2019/12/26(木) 20:18 ID:L7Aオリキャラなんじゃないの?知らんけど
8:匿名さん:2019/12/26(木) 20:19 ID:b02 猫妖怪「『俺の能力で鎖を壊すか?』いや、『此処に人間が来たらどうする?』。
バカらしい、『ここはもう120年以上も来てないんだぞ?来る訳がない』。
だが、『鎖を壊した所でこいつが俺を認識する事はないだろう』。
なら方法は一つだけ。」
『猫妖怪』は大きく息を吸い込んで声を出す。
猫妖怪「おい!!こっちを見やがれ!!俺はお前に用がある!!!」
妹紅「.........?」
『妹紅』はようやく『猫妖怪』が『自分の目の前にいる事を認識した』。
妹紅「.........誰?」
『妹紅』は少し怯えていた。
『この猫が人の言葉を話しているからではない』。
『自分に害を為す者ではないか?』と警戒しているのだ。
猫妖怪「俺か?俺の名前は『猫ショウ』って言うんだ!」
『猫ショウ』は笑顔で名前を教える。
警戒心を解くためだ。
>>6
オリキャラです。
一番初めに書いておくべきでした。
猫ショウ「所で、お前の名前を聞きたいんだが?」
『猫ショウ』は『妹紅』の名を知らない。
だからこそ聞くのだ。
妹紅「......教えたく......ない。」
猫ショウ「...理由を聞きたい。」
名前を教えない理由を聞く『猫ショウ』。
妹紅「お前は...猫なのに...人の言葉を話せる...。
私には...理解できない...。怖くて...堪らない...!」
警戒心が解けていなかったようだ。
『まずは自分について教えるとしよう。』と思った。
猫ショウ「俺が何故言葉を話せるかについてか?それについては今から教える。
まず、猫は20年以上生きると『猫又』と呼ばれる妖怪になる。
だが極稀に30年以上生きる奴もいる。
そいつらは俺みたいな『猫ショウ』と呼ばれる妖怪になる。
他に聞きたい事は?」
妹紅「お前が...言葉を話す理由はわかった...。
なら、『お前の名前は...本当に猫ショウで...合っているのか?』」
猫ショウ「?あぁ、合ってるぞ?自分に人間みたいな名前を付ける『猫妖怪』なんて、
『人間好き』が殆どだからな。」
妹紅「...お前は...人間が嫌い...なのか?」
『妹紅』は『猫ショウ』に問う。
『人間が嫌いなのか?』と。
猫ショウ「別に?心底どうでも良い。
でも、自分の欲望を優先する人間と必要以上に臆病な人間は嫌いだ。」
妹紅「そう...か。」
『妹紅』は思い出す。
自分をここに閉じ込めた『父親』を。
確かに好きにはなれない。(前は好きだったけど)
妹紅「私の名前...今から教える...。」
猫ショウ「あぁ、わかった。」
名前を聞くために耳を澄ませる『猫ショウ』。
妹紅「藤原...妹紅...。それが...私の名前...。」
猫ショウ「妹紅かぁ...。よし、覚えた。よろしくな、妹紅!」
妹紅「うん...!」
一人と一匹は互いに名を知った
『猫ショウ』は『妹紅がここにいる理由を敢えて聞かなかった』。
『彼女の心が壊れてしまわないように』。
ここまでが第一話です。
続きは明日になるかもしれません。
猫ショウ「ところで、妹紅はこれからどうしたいだ?」
妹紅「え?...今すぐ...ここから出て...自由になりたい...。
でも...この状態...じゃ...。」
鎖に縛られた状態では何もできない。
目の前にいる『彼』に頼りたいが、
永い間誰とも会話をしなかったせいで上手く言葉を紡げない。
猫ショウ「...少し待ってろ。今からその鎖を壊す。」
『猫ショウ』は三本ある尻尾を伸ばし、鎖に妖力を少しずつ流す。
すると、
パキンッ
鎖は壊れた。
『猫ショウ』は残りの鎖も壊していく。
妹紅「...!あ、ありが...とう...。」
『妹紅』はお礼を言う。
猫ショウ「お、おう。そりゃ、どうも。」
今までお礼を言われた事がなかったのか、気恥ずかしくなる『猫ショウ』。
妹紅「ぐっ......わっ!?」
妹紅は立ち上がろうとしたが、足に力が入らず倒れてしまう。
猫ショウ「おい!?大丈夫か妹紅!?」
『猫ショウ』は心配する。
妹紅「大丈...夫...。壁に手を...付けて...体を...支えれば...歩ける...から...。」
不器用な笑顔で『妹紅』は言う。
永い間外に出る事が出来なかった。
今外がどれ程変化したか気になる『妹紅』は高揚感に満たされる。
そして、
『妹紅』と『猫ショウ』は牢獄を後にした。
妹紅「...えっ?何...これ?草...だらけ?」
閉じ込められてから『120年以上』経過した外の世界は雑草が生い茂っていた。
猫ショウ「そりゃそうさ。永い間人間が来なけりゃ、こうなっちまうものさ。」
妹紅「猫ショウ...都は...どこに...あるの?」
都がどこにあるのか気になる『妹紅』は『猫ショウ』に聞いてみた。
猫ショウ「都?そんな所に行ってどうするんだ?」
『猫ショウ』は何故『妹紅』が都に行きたがるのかわからなかった。
妹紅「都には...私の友達が...いる...帰って...皆を安心...させたい...から...。」
猫ショウ「...都に帰らない方が良いぞ、妹紅。」
妹紅「ッ!?...どう...して?」
何故駄目だと言うの?都には友達がいる。家族もいる。
これ以上不安にさせたくない。『自分が無実だと証明したい。』
猫ショウ「その前に聞きたい事がある。妹紅、お前が住んでいた都は何て呼ばれていた?」
妹紅「...飛鳥京。」
『猫ショウ』は大きく目を見開いた。
『妹紅』は今なんと言った?『飛鳥京』?そう言ったのか?
だが、今は『平安京』が都だぞ?
猫ショウ「...妹紅、言い難いんだけどさ。『俺の知っている都は平安京で』、
『飛鳥京はもう都じゃないんだ』。」
妹紅「えっ...?」
『妹紅』には理解できなかった。
『飛鳥京はもう都ではない?』『猫ショウが知る都は平安京?』
でも、『猫ショウ』が嘘を言っていないという事はわかった。
自分はそんなに永い間牢獄に閉じ込められていたというのか?
目の前が真っ白になっていく...。
妹紅「......猫ショウ。」
猫ショウ「...何だ?」
『妹紅』は問う。
妹紅「今の元号は......何?」
『猫ショウ』は答える。
猫ショウ「...大同。...今の元号さ。」
『妹紅』は何かを失ったかのような感覚に陥った。
自分が閉じ込められた時の元号は『朱鳥』だったのだ。
西暦は幾つだ?確か...『690年』のはず...。
『妹紅』は問う。
妹紅「...今の西暦は?」
『猫ショウ』は答える。
猫ショウ「...『810年』。」
『妹紅』の体は横に倒れた。
『理解してしまった。自分が閉じ込められてから120年も経過しているではないか!?』
『自分は先程まで何を抱いた?家族や友との再会、無実の証明』。
『人間は何年生きられる?長くて60年、短くて30年。』
『自分は齢幾つの時に閉じ込められた?......16年?それから120年も生きたと言うのか!?』
妹紅「あっ......あぁぁぁっ......。」
自分の体を抱きしめる。
これ以上、恐怖に支配されないように...。
『猫ショウ』は何も言わない。
まるで、禁忌に触れた罪悪感を背負っているようだった。
妹紅「...猫ショウ。...人の姿に...成れる?」
猫ショウ「?成れるけど?そんな事して何にーーーーー
妹紅「いいから早く!!!」
声は震えていた。鼻水を啜る音も聞こえる。
今『妹紅』が何の感情に支配されているのか理解した。
そして『猫ショウは髪の長い少年の姿と成った』。
猫ショウ「成ったぞ?次は何をすれば良い?」
『妹紅』は小さな声で何かを言っている。
聞えなかったので耳を近づける。
妹紅「ぐすっ......お願い......『一人にしないで』......。私から......『離れないで』......!」
その言葉を聞いた『猫ショウ』は、今にも泣き出しそうな顔で『妹紅を優しく抱きしめた』。
『猫ショウ』は思った。自分が泣いてどうする?一番泣きたいのは彼女だぞ?と。
妹紅「ぐすっ...うぅ。(猫ショウの体......温かい)」
『猫ショウ』に優しく抱きしめられた事で、
氷山のように凍り付いた『妹紅』の心が解けていく。
猫ショウ「俺は...『妹紅を一人にしないし、離れもしない。』
だから......今は好きなだけ泣くと良い。」
妹紅「ッ!?うっ...うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『好きなだけ泣くと良い』
その言葉を聞いて慟哭を始めた『妹紅』。
そこには一体どれだけの悲痛な想いが込められているか、『猫ショウ』にはわからない。
だが、一つだけわかる事がある。
それは、『大切な者との離別』である。
猫ショウ「(妹紅の気持ち、痛い程わかる。俺も『母さんと離別した時、耐えられなかった』。
でも、『ここで壊れちゃ駄目だ』。『壊れたらもう、後戻りできなくなる』。)」
『猫ショウ』は『一度壊れてかけて暴走した事がある』。
『あるスキマ妖怪』が止めに来なければ、『猫ショウは本当に後戻りできなかった』。
暫く経つと、『妹紅』の慟哭は収まった。
気になったので見てみると...。
妹紅「......すぅ。」
泣きつかれたのか、『妹紅』は眠っていた。
猫ショウ「...寝たか。
それにしてもどうする?雨は止んでるけど、もう真っ暗だぞ?
仕方ない。『妹紅』がさっきいた牢獄に戻って寝るとしよう。」
少年の姿を変えずに、『妹紅』を横抱きにして戻る『猫ショウ』。
寝ようとした時に気配を判じた。
猫ショウ「......出てこい。『お前らがいる事はわかってる』。」
突然スキマが二つ現れた。
第二話終了 → 続いて第三話
???1「いつから気付いていたのかしら?」
『怪しげな妖怪』は問う。
『猫ショウ』は答える。
猫ショウ「『この娘』が寝た後に気付いた。で?後ろにいる『奴』は誰だ?」
???2「私は『紫様の式神』である『八雲藍』という者だ。」
腰から九本もの尻尾が生えた『紫様の式神』と名乗る『狐妖怪』は『八雲藍』と名乗った。
そして『猫ショウ』に話を掛けた『妖怪』は、
『暴走した猫ショウを止めたスキマ妖怪』である『八雲紫』である。
猫ショウ「何しに来やがった。ここにはお前が興味をそそるものなんて無いはずだ。」
紫「私は『そこで眠っている娘に用があるのよ』。
でも、その様子だと『その娘』は朝になるまで目が覚めないようね。」
『紫』は『妹紅』の様子を見て言う。
猫ショウ「...『この娘』に何をするつもりだ?」
『猫ショウ』は警戒する。『妹紅』の名を『紫』には絶対に教えない。
『紫』が一旦興味を示すと何を仕出かすかわからないからだ。
紫「『その娘』と一緒に『マヨヒガ』まで来て欲しいのよ。
『放っておいたら壊れるかもしれないでしょ?貴方みたいに』。」
猫ショウ「ッ!?(こいつ!?)」
自分が危惧していた事を理解していると知った『猫ショウ』。
つまり『妹紅』の名を既にこの二人は知っている。
だが、油断は禁物だ。
鎌をかけている可能性もある。
藍「貴方達二人には悪いが、拒否権はない。大人しく付いて来て欲しい。
こちらとしても、手荒な真似はしたくない。」
藍の言葉は本心だ。故に答えは一つ。
猫ショウ「わかった。付いて行く。だが『この娘』には絶対に手を出すな。」
紫&藍「わかった(わ)。」
『紫』はスキマを作り、『藍』は『妹紅』を横抱きにして、
『猫ショウ』は大人しく付いて行く。
暫くしてマヨヒガに到着した。
Arcadiaという二次創作サイトにも投稿する事にしましたので、こちらの更新は遅れます。
25:匿名さん:2019/12/28(土) 23:45 ID:zl2 描写がとても丁寧で凄くいいと思います!
正直、今まで読んできた葉っぱ小説の中ではトップクラスに好きです!
これからも更新頑張ってくださいね!
マヨヒガに到着した『猫ショウ』は今、『紫』の家にいる。
因みに『妹紅』は畳の上で眠っている。
藍「猫ショウ、今から私は食事を作りに行くのだが、食べていくか?」
『藍』に夕食はここで食べていくよう誘われたが、
猫ショウ「俺は『この娘』が起きるまで絶対に食べない。」
『妹紅』が心配故に断った。
藍「...そうか。ならば仕方ない。だが絶対にここから脱走するんじゃないぞ?わかったな?」
少し凹んだ様子の『藍』だったが、絶対にここから出るなと忠告する。
猫ショウ「出る訳ないだろ...。」
『猫ショウ』は少し呆れた態度でそう言った。
翌日
妹紅「......んっ。」
『妹紅』が目を覚ました。
猫ショウ「おはよう、妹紅。」
『猫ショウ』は『妹紅』が目覚めた事に安堵していた。
妹紅「...猫ショウ?ここは...どこ?」
『誰かの家』で寝ている事を知った『妹紅』は『猫ショウ』に問う。
猫ショウ「ここは『マヨヒガ』だと聞いている。そして『この家の主』は『八雲紫』だ。」
妹紅「そう...なんだ...。」
攫われた訳ではない事を知って『妹紅』は安堵する。
紫「二人とも起きたかしら?」
襖を開けた『紫』がそう言ってきた。
妹紅「八雲......紫?」
『妹紅』は彼女が『八雲紫』本人であるのか聞いてみた。
紫「えぇ、そうよ。私が『八雲紫』よ。」
そういって『紫』は『妹紅』に微笑んだ。
『妹紅』は少しだけ恥ずかしくなったのか、顔を逸らしてしまった。
『妹紅』が目覚めたのは『紫』と『藍』が朝食を食べる前だったので、『猫ショウ』と『妹紅』は四人で朝食を摂る事となった。
猫ショウ&妹紅「.........。」
二人は料理に目が釘付けとなっていた。
藍「どうした二人共?早くしないと朝食が冷めてしまうぞ?」
『藍』は二人に早く食べるよう催促する。
妹紅「ッ!?い、いただき...ます。」
『妹紅』は遠慮がちな態度で食事を始めた。
猫ショウ「ッ!?わっ、悪かったって!?全部残さず食べるから!!」
『猫ショウ』は怒られたのかと勘違いしたらしく、慌てて早食いを始めた。
紫「ちょっと、そんなにがっつかなくても...。」
『紫』は苦笑いをしていた。
妹紅(......美味しい。)
『藍』の作った料理は、今は亡き母の作ってくれた料理と『味が似ていた』。
だからなのだろう。『妹紅』の目からは涙が溢れ出していた。
猫ショウ「ゲホッ、ゲホッ!?(くっ、苦しい!?お茶を飲まないと...!)」
早食いをした結果、朝食をのどに詰まらせた『猫ショウ』はお茶を飲んで全部胃の中に入れようとしていた。
紫「はぁ...だから言ったのに...。」
『紫』は前回、『藍』の作った料理が余りにも美味しかった故に早食いをした事がある。
その後『紫』が『藍』に説教された事は言うまでもない。
藍「お、おい人間...。何で急に涙なんか流して...。私の料理がそんなに不味かったのか?」
『藍』の言葉で『妹紅』が泣いている事を知った『紫』と『猫ショウ』。
猫ショウ「もっ、妹紅?」
『猫ショウ』は『妹紅』を心配している。
紫(...そう。彼女の名前は『妹紅』と言うのね。)
『紫』は『妹紅』の名を知る事が出来て内心喜んでいた。
妹紅「うっ...ぐすっ......ひぐっ.........!(どう...して?涙が......急に?)」
茶碗と箸をお盆に置いて、これ以上両目から涙が出ないように両手で顔を覆い隠す『妹紅』。
猫ショウ「だっ、大丈夫か?」
『猫ショウ』は『妹紅』の肩にそっと触れる。
妹紅「ッ!?(もう...無理だ...これ以上は......!)」
既に『妹紅』は我慢の限界だった。ただでさえ忘れかけていた記憶を思い出し、感傷に浸っていたというのに、そこから『猫ショウ』が自分の肩に触れてきた。
猫ショウ「...え?ちょっ、待てって!?」
『妹紅』は力強く『猫ショウ』に抱き着いた。
>>25 応援ありがとうございます。
小話 第一話、第二話、第三話と書いておりましたが、気にしないでください。
妹紅「ぐすっ...嫌だ...嫌だぁ......!」
猫ショウ「なっ、何が嫌なんだよ?ちゃんと説明してくれないか?」
何故『妹紅』が泣くかを『猫ショウ』はわからなかったが、少ししてある考えに至る。
猫ショウ(多分、『120年振り』に『飯を食って何か思い出したんだろう』...。じゃなきゃ、『嫌だ』何て言わないよな。)
『猫ショウ』の考えは間違いではない。
『人間も妖怪も』、『懐かしい味を思い出せば涙を流してしまうのである』。
妹紅「ぐすっ...だって...『ここにはもう母さんはいない』のに......『母さんが作った料理と同じ味がするものがここにある』......。
だから...それが嫌なんだ...。ひぐっ...これ以上食べたら......『私が私でなくなりそうで嫌なんだ』!!!」
現実逃避とは正に今『妹紅』が言っている事を示すのだろう。
それを見ていた『紫』と『藍』は、
藍「紫様、こういう時は一体どうすれば?」
紫「とりあえず、二人がさっきまでいた部屋に連れて行きましょう。
そうすれば『この娘』は落ち着くと思うわ。」
藍「畏まりました、紫様。」
『妹紅』が先程眠っていた部屋に連れて行く事にした。
藍「ほら、着いたぞ。」
『藍』は二人を案内した。
猫ショウ「...どうも。」
『猫ショウ』は『妹紅』を横抱きにして『藍』に付いてきた。
『妹紅』は決して涙を見せまいと、『猫ショウ』の胸に顔を擦り付けていた。
藍「礼はいらない。それよりも、早く『その娘』を泣き止ませてあげろ。『私達』は『その娘』に教えなければいけない事があるのでな。」
そう言って『藍』は部屋を後にした。
猫ショウ(『教えなければいけない事?』)
『猫ショウ』はそれが何か気になったが、
猫ショウ「わかった。」
『妹紅』を泣き止ませてから聞こうと思った。
『妹紅』が眠っていた部屋
妹紅「...うぅ......ぐすっ......。」
『妹紅』は『猫ショウ』の太股に引っ付いて泣いていた。
猫ショウ「...妹紅。いつになったら泣き止むんだ?『さっき喰った飯の味がまだ忘れなれないのか?』」
その言葉に『妹紅』は頷く。
妹紅「ぐすっ...さっきの朝食......『母さんと同じ味だった』...。ひぐっ...『とても懐かしくて......おかしくなりそうだった』...。」
猫ショウ(......どうしたものか。)
『猫ショウ』は思う。ならば少し意地悪な質問をしてみよう。
猫ショウ「妹紅、そのままの体勢でいいから俺の質問に答えて欲しい。」
それを聞いた『妹紅』は頷いた。
猫ショウ「藍の作った朝食は美味しかったか?」
『妹紅』は思った。『何故味の感想を聞く必要が?』と。
妹紅「......美味しかった。」
『懐かしくて悲しくなった』のは事実だが、『美味しかった』のも事実。
だから『妹紅』は『美味しかった』と答える。
猫ショウ「じゃあ次の質問。『もしこのマヨヒガに来れる時があったら、また藍の作った飯が食べたいか?』」
妹紅(何て意地悪な質問だ...!)
『妹紅』は思った。
だが、『もしここに来れる時があったら、また藍の作った料理が食べたい』。
『忘れかけた記憶を思い出す切っ掛けを作ってくれたのだから』。
だからこそ、『妹紅』は顔を上げてこう答える。
妹紅「また...食べたい。『忘れかけた記憶』を...『今あるこの気持ち』を...失いたく...ないから。」
それが、『藤原妹紅』という一人の少女の『心』を形作るものなのだから。
猫ショウ「(泣き止んだみたいだし)よし!早く紫と藍のいる部屋までいくぞ。妹紅に教えなきゃいけない事があるって言ってたしな。」
妹紅「え?教えなきゃ...いけない...事?」
あの二人が何か不満になる事をしたのだろうか?
『妹紅』は不安になる。
猫ショウ「真剣な顔で言ってたからなぁ...。飯の話じゃない事は確かだ。」
『妹紅』が不安になっている様子を見て少し茶化す事にした『猫ショウ』。
妹紅「そっ、その話は良いから!?(部屋に着いた時謝らなきゃ。)」
『猫ショウ』は『妹紅』が怒れる位にまで機嫌が直った姿を見て安心した。
『紫』と『藍』のいる部屋
紫「あら?もう来たの?『その娘』を泣き止ませるまでもっと時間が掛かるのかと思ってたわ。」
『紫』から何か言われたが、『二人』はそれを受け流した。
『妹紅』は『藍』の近くまで来ると...。
妹紅「あっ、あの...藍...さん?」
藍「ん?どうした人間。それと私の事は呼び捨てで構わない。」
『妹紅』は意を決して頭を下げた。
妹紅「ごめんなさい!食事中にいきなり泣き出してしまって...!食べていく内に色んな事を思い出して、涙が止まらなくなったんです...。」
突然『妹紅』が頭を下げてきた様子を見て驚いていた『藍』だったが、
藍「そうか...。だから泣き出してしまったのか...。だが、私の作った料理は美味しかったのだろう?」
『藍』は微笑みながら『妹紅』に問う。
妹紅「え?...はっ、はい!美味しかったです!」
藍「ならば良い。次ここに来た時はお前が笑顔になる料理を作れるように努力しよう。」
そう言って二人は笑いあった。
紫「藍、二人を呼んだ理由は『その娘』にある事を教えるためでしょう?」
『紫』がそう言うと『藍』は真剣な顔に戻った。
藍「そうでしたね、紫様。さ、二人共。早く机の下に座るんだ。」
『藍』は二人に机の下に座るよう催促した。