憂鬱な、初夏の 

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1: 飴玉 ◆ejLk.:2018/01/16(火) 16:26




  翠雨 / >>2-3


 

931:ましろ◆pQ:2018/01/30(火) 16:24

「金、全部渡してもらおうか」

声をかけてきたのは、ガタイのいい男だった。
男の右手には、ナイフらしきものがチラついている。

…どうやら俺は、強盗に目をつけられたらしい。

「はいはい、いくら出せばいいんだ…?」

「全部だ!大金持ってんだろ!」


俺はふざけた態度で答えてみた。だが男はさらに口調を荒げる。


「全部ねぇ…」

この男は、数分前に俺が質屋に行ったことを知っている。
物を売ったことも。

なので、おのずと大金を持っていると思ってるんだろう…。


「わかったよ、出すから」


俺は片手をあげて、抵抗する意思がないことを男に示す。
そしてもう片方の手は、ポケットに伸ばしていた。


「クックック…」

男は、大金が入ると思っているのか、とてもにやにやしている。


「はいよ。これ、財布だよ」

ポケットから財布を取り出して、男に見せた。


「へっ、利口な奴だ」

男はナイフを俺に向けながら、ゆっくりと近づいてくる。
3、2、1m……


「よこしな」

「ああ、やるよ…」

交換が行われたのは、至近距離だった。
…だからこそ、チャンスが生まれる!


「お前の顔になっ!」

「な―――」


俺は、男の顔に財布を投げつけた。
頑丈な素材でできているので、目に当たれば相当痛いだろう。


「が、ああ!いってぇ!!」

…それは、男の様子を見れば一目瞭然だった。


「…簡単に、渡すかっての」

俺は、男の足元に落ちた財布を拾い上げ、すぐさま立ち去ろうとした……



「こ、このクソアマぁ!」

「っ……!?」


男の目は、思ったより早く回復したようだ。
…そして、距離が広がる前に、男はナイフで薙ぎ払ってきた。


「ふう……」

間一髪で避けた俺は、背を向けずに身構えた。


「何余裕こいてんだぁぁぁぁッ!」

身構える俺に、今度は突進をしてくる。
その勢いで突き刺すつもりだろう。

その速度は速い!左右に避ける暇はない…

「…そうだ!」

俺はとっさに、背負っていたリュックを盾にした。
売りに行ったものを入れてあったものだ。


「それごと貫通して、あの世行きだぁ!」

「くっ……!」

男はお構いなしに、俺に突っ込んでくる―――


「…な、なに!?」

突進の勢いは確かに強かった。
が、リュックの方に分があったらしい。


「こんなものすぐ引っこ抜いてぇッ!」

……掛かった!
男はリュックから、ナイフを引っこ抜こうとした。

932:ましろ◆pQ:2018/01/30(火) 16:28

が、それは力が後ろに行くということ。


「うおおっ!」

俺はそれを利用した。ナイフが抜けるのと同時に、リュックごと男を、思いっきり押したのだ。


「わぁぁぁぁぁっ!」

勢い余っているところにタックルをくらわされた男は、地面にたたきつけられた。
ナイフは拾われることなく、別の方向に落ちていく。


「……はぁ、ひどい目にあったぜ」

男が失神したのを確認すると、俺は今度こそ、全力疾走で家に帰った……。


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